性別で子を判断するのはやめませんか?

細木あすか(休止中)

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 シャルロッテが生まれて、今日で6ヶ月が経とうとしていた。

 私の足は相変わらずあまり上手く動かせない。
 立つことはできるしゆっくりなら歩けるけど、少しでも油断すると転んでしまうの。おかげで、膝には大小合わせて6つのアザ! とうとう、サフランから「アザが1つになるまで、歩くの禁止です!」って言われちゃった。
 あの子、怒らせると怖いのよ。ここはここは従っていた方が良いでしょう。だから、今はベッドの上でシャルロッテとおしゃべり中。

「シャルロッテは可愛いわ。ずっと見てるのに飽きないんだから」
「あう」
「うんうん、そうよね。そうそう、わかるわ」
「あー!」
「ふふ、楽しい」

 シャルロッテは、よく喋るようになった。
 と言っても、「あー、うー」って単語だけね。生後2ヶ月から発するようになって、今はさらに頻度が増したって感じ。お医者様が言うには、「クーイング」という発達過程のひとつみたい。早い子だと、1ヶ月から話始めるのですって。1歳ごろまでしか聞けないらしいから、今のうちにたくさん聞いておくの。

 隣国には「録音機」っていう機械があるんだとか。その時の音を拾って、いつでも好きな時に聞ける機械らしい。かなり高価なもので、王族であれど簡単に手に入るようなものではない。……ないのだけど。

「お嬢様、容量が目一杯になったようです。交換しても良いでしょうか?」
「……そうね。お義父様とお義母様が欲しがっていたから」
「はい! 任せてください、交換に慣れてきましたよ!」
「……ええ、そうね」
「だぷ」
「シャルロッテ様、しゃべっちゃダメです! 今すぐ交換しますから!!」

 なぜか、この部屋に大きな録音機がある。
 なぜかって、まあわかってるけど。お義父様とお義母様が、隣国の王族との会合の時に話して取り寄せたらしい。先2ヶ月の自分達の食事代や衣服代をケチって、代金を払ったとサミュエル様から聞いたわ。そこで国のお金を使わないところが、国民に愛される王と王妃って感じがする。……するけど、食事代とか衣服代ってケチって大丈夫なものなの?

 お義父様いわく、「ラベンダーさんのために購入したわけじゃない」らしい。お義母様は、「ラベンダーさんが好きに使って良いのよ」って言うけど。
 こう言う時って、どっちの言い分を信じれば良いのかな。王も王妃も、どちらも国のトップ。私には選べない。

「よし、できました! さあ、シャルロッテ様。存分にお話ください!!」
「……」
「あれ?」
「ふふ。シャルロッテは、好きな時に好きなようにおしゃべりしたいのですって」
「そ、そうですか……」

 急いで替えたのもあって、シャルロッテが喋らないとわかるとサフランがしょんぼりしている。

 私が出産してから今まで、彼女が居なかったらこうやってゆったりとシャルロッテを抱きながら笑えていなかったと思う。相変わらずヴァレリー様は姿を見せてくださらないし、使用人たちに聞いても「存じ上げません」と少し怒ったように返事されるだけだし。
 少しで良いから、シャルロッテを見て欲しいのよね。お世話をしてってことじゃなくて、可愛らしい容姿を見て欲しいの。特に、ヴァレリー様に似たお目目とか。

 でも、彼は来ない。
 どこにいるのかしら。正直な話愛情はないけど、この子の父親ですもの。心配だわ。私がここにいるせいで帰ってこないとかだったら、申し訳ない。
 もしそうなら、早々に身体を回復させてシャルロッテと一緒に旅にでても良いな。この子にたくさんの景色を見せてあげるの。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」

 にしても、この沈黙は何?
 サフランの圧がものすごい。何も言葉を発していないのに、シャルロッテに「おしゃべり! はい、だぱー!」と言っているのが聞こえてくるような気がする。
 そんなことしていたら、余計しゃべらないじゃないの。

 と思って、「そろそろ普通にしない?」って言おうとした時だった。

「だぱ」
「しゃべった! しゃべった!」
「あぶー」
「あはは、お嬢様! おしゃべりしましたよ! やったあ!」
「……サフラン。貴女の声で録音できてないかも」
「しまった!」

 観念したのか、シャルロッテが話し出した。
 やっぱり可愛いわ。サフランがはしゃぐのもわかる。でも、せっかく大金をはたいて買った録音機を有効活用しないとね。

 録音機に、映像を記憶するものもついていれば良かったな。シャルロッテのフリル付きお洋服が可愛いんだもの。今しか見れないのは寂しいでしょう。
 でも、映像を残すなんて技術はこの国にない。隣国と共同開発中らしいけど、まだまだ時間はかかりそうな感じね。先日、この録音機を届けてくださったお義父様とお義母様が悔しがっているのを見たところだったし。

「……あら、誰かしら?」
「開けても良いですか?」
「ええ、良いわ。ヴァレリー様かも」
「……開けますね」

 すると、そこにノック音がした。
 部屋の前に誰か居るみたい。反射的にヴァレリー様の名前を出したけど、ダメだったかな。サフランの表情が一瞬だけ曇った気がした。

 そんな彼女が扉を開けると、そこには……。

「やあ、調子はどうかな」
「サミュエル様!? ど、どうされたのですか?」
「息抜きにね。お邪魔じゃないなら、少しここに居ても?」
「ええ、いくらでもどうぞ。サフラン、お茶をお願い」
「はい、ただいま!」

 そこには、第二王太子で次期国王のサミュエル様がいらっしゃった。
 毎日王となるために過酷な生活を送っているようで、今も目の下にくまが酷い。授乳で6ヶ月寝不足な私ですら、あんな酷くないと思う。

 サフランに指示を出した私は、ベッドから足を出してそちらに向か……おうとしたところ、慌てたサミュエル様に止められちゃった。大丈夫なのにな。
 サミュエル様は、私の腕の中に居るシャルロッテに向かって「お兄ちゃんでちゅよ~」とデレデレと話しかけている。

 ……こう見ると、完璧主義と言われている彼もお義父様とお義母様の子だとわかるわね。

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