愛されたくて、飲んだ毒

細木あすか(休止中)

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知らない方が良い?

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いつもお読みくださりありがとうございます。
新作投稿のため、更新頻度が2~3日に1度になります。すみません。
完結は必ずさせますので、引き続きお楽しみいただけますと幸いです。


***

《アリス視点》



 シャルル様から受け取った用紙を見た私は、震える唇を抑えながら口を開く。

「裏カジノ事件について、教えてください」
「へ? 義兄さんの方が詳しいと思うけど……」
「貴方の口から教えてください。この、植物カレンダーとの接点は貴方の方がよく知ってると思うから」

 これは、私がお仕事として依頼を受けて作成したものだわ。依頼されたのに、新聞社で門前払いされた時の……。
 なぜ、門前払いされたのに元老院に回収されたの? それに、裏カジノ事件で問題になった暗号とそっくりってどういうこと?

 自分自身のことだからわかるけど、私はカジノなんて知らない。
 隣国を拠点とするカジノ施設の支店がこの国にもあるって……その程度の知識がない。なのに、どうして? 

「良いけど……義兄さん、話しても良い?」
「許可すっけど、30字以内で話せ。そろそろベルは休んだ方が良い」
「無理なんですけど!? まじで、なんで義兄さんはそんなこの子に過保護なの!?」
「はあ、俺が過保護? んなわけねえだろ、なあイリヤ」
「そうですね。過保護と言うより乱暴。ねえ、アレン」
「過保護って言うのはもっと、そのあれだろ。ジェレミーは過保護じゃねえよ。もう少しお嬢様に優しくした方が良い」
「……ダメだ、この空間がダメだ」
「あ、あの……お話は?」

 裏カジノって言葉がそもそも重々しいのに、それを30字って……。挨拶して終わりじゃないの。いえ、挨拶なんて必要ないけれど。でも、そのくらいの文字数でしょう。
 しかも、話が逸れてるし! シャルル様は、話す気がないのかしら?

 私は、植物カレンダーの書かれた紙を持ちながら、その光景を静止させた。今までの経験だと、この手の話は誰かが止めないとずっと続く。

「イリヤは、このバカ義弟記者アホさんとお話がありますので、失礼します」
「え、ちょ……え、なん!? ベル嬢に話さなくて良いの!?」
「イリヤとのお話が優先だと思うのです。ねえ、ジェレミー」
「そうだな、行ってこい」
「え、え……に、義兄さああああん!!!」
「……なにこれ」

 すると、近くに居たイリヤが強制的にシャルル様を引きずって、部屋の外へと連れ出してしまった。せっかく、話を聞きたかったのに。何だか、意図的に話を中断させたような気がするけど……気のせい?

 よくわからなくてドミニクの方を見たけど……あ、にっこり笑ってくれた。私も笑い返しましょう。って! 違う違う!

「ねえ、どうして話を中断させたの?」
「お前のため」
「私の……?」
「あの馬鹿にお前がアリスだってバレたらそれこそ狙われるどころか殺される騒ぎになんだろ。あいつには、あんま情報をやりたくねえ。もらうだけにしたほうが良い」
「わかったけど……。じゃあ、カジノ事件だけ情報をもらっても良かったんじゃ?」

 遠くからシャルル様の「え、うわ! ちょ、なにそれえええ!」みたいな声を聞きつつも、私は私でドミニクに向かって話し始めた。その隣には、いつの間にか心配そうな表情のアレンが居る。さっきまであっちのソファに居た気がするんだけど。

 というか、この人今大変なんじゃないの? 犯罪者を逃して、どうしてここに居るのかしら。シャルル様と一緒に来たのもよくわからない。

「お前は、カジノ事件を知らない方が良い」
「どうして?」
「今の話だと、カリナからもらったその暗号に見覚えあんだろ?」
「……見覚えというか。これ、私が作ったやつ」
「は? どゆこと」
「え……?」
「あの……。私が、マドアス様に依頼されて作ったやつで……ひょっ!?」

 ……あれ? 言わない方が良かったかも。

 私がそう口に出すと、持っていた用紙をものすごい勢いでドミニクに奪われた。それをアレンが覗いている。
 びっくりして変な声を出してしまって恥ずかしかったけど、2人とも気にしていない様子ね。良かった。良くはないけど。

 そのまま2人は、しばらくの間無言でそれを眺めていた。何だか、理由を聞きにくい。

「……アリス。これって、お前が作ったものと何か違うところあっか?」
「特になかったわ。シャルル様って、記憶力がすごいのね。私は作ったから覚えていたけど、彼は見ただけで覚えられるんだもの」
「あー、あいつは記憶力を買われてシャルルに来てっから。一度読んだもんは本でも新聞でも全部頭に入ってる」
「嘘!? もしかしなくても、すごい人だったり……?」
「口が軽いし、女に目がないからただのロクデナシだ」
「ジェレミーじゃん」
「おい、隊長さん。そこに立て。ぶっ飛ばす! 俺は、あそこまで口は軽くねえ!」
「そうよ、アレン。ドミニクは、口が軽いんじゃなくて悪いの」
「ぶはっ!!!! ふっ、ふふ……」
「……畜生」

 私が口を挟むと、ドミニクがムスッとした顔をして黙ってしまった。私から話を逸らしてしまったわ。反省しましょう。

 でも、シャルル様ってすごいのね。こうやって、数年前のこともちゃんと覚えてるんだもの。それに、一度読んだ本の内容を覚えてるって、人間技じゃないわ……。私も練習してできるようになりたい。
 そっか、それでシャルル伯爵へ養子になったのね。

「ドミニクのお父様は、階級を気にせずにそうやって能力があれば受け入れてくださる方なのね。立派だわ」
「……ああ、尊敬してたよ」
「お会いしてみたいわ。……あっ、もちろんお忙しいと思うから、そのいつかって話で」

 ドミニクは、私の言葉に顔を曇らせた。
 でも、それは一瞬で。私は気のせいかな? って感じた程度だった。

 もしかして、今喧嘩中とか? ドミニク、シャルルから籍を外した話をしていたから、そのことで一悶着あってもおかしくないものね。
 いつか、いつもお世話になってますってご挨拶に行けたら良いな。最近ドミニクに助けてもらってばかりだし。

「それよか隊長サン、時間ある?」
「時間はないよ。王宮でやり残しがあるし」
「じゃあ、イリヤ呼び戻すか。ちょっくら出かける用事が出来たから、アリスを頼もうと「時間余りすぎてどうしようかと思ってたんだ」」
「よっしゃ。じゃあ、30分だけ頼まぁー。そのかわり、逃げたあいつらの情報ももらってくっから」
「……どこ行くんだ?」

 あれ、さっき時間ないって言ってなかった??
 アレンは、ドミニクの言葉に手のひら返しをする様に意見を変えた。どういうことなの……。

 ドミニクは、どこかに行くらしい。
 私から奪った紙を折りたたみ、ポケットの中に閉まってしまったわ。もう少し見たかったのだけど……。

「ちょっとな。……アリス」
「なあに」
「お前は、カジノ事件を知るな」
「え?」
「もし、本当にこの暗号を作ったのがお前なら、知らない方が良い」
「……どういうこと?」
「とにかく、耳に入れんな。話がややこしくなる」
「ん、ん……。わかったわ」
「よし、良い子だ。すぐ戻るから、隊長サンとおしゃべりして待ってろ」

 ドミニクは、そう言って私の頭を撫でてきた。
 カジノ事件を知るな? どうして?
 もし、私が作ったものが事件を引き起こしてしまったのならそれ相応の対応をしたいと思ったのだけど……。そのカジノ事件が起きたのがいつなのかすらわかってないもの。最低限、それだけでも教えて欲しかった。

 5年前って、私が生きてた時? それとも、死んだ後?
 聞きたいけど、聞ける雰囲気じゃない。

「ちゃんと帰ってきてね」
「ああ、帰る」

 喉元まででかかった言葉を飲み込んだ私は、部屋を出て行くドミニクの背中に別の言葉を送った。

「……」
「……」

 さて、別の問題だわ。
 アレンと2人きりになってしまった。どうしましょう。



 
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