【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

文字の大きさ
17 / 119
第一章

出口の先にある光

しおりを挟む
 そんなことを話しながら迷路のように入り組んでいる街の中を歩く。飾り付けられているのは一部の通りだけで、それ以外の場所はいつもと変わらない。
 それでも今日が賑やかな日だからか、いつもの道が随分と静かに思えた。

 いくつかの通りを抜けると、段々と明るい声が近付いてくる。この道を進んだ先がメインの会場となる広場だ。
 同じ天候、同じ明るさのはずなのに、出口がなぜか光って見えた。多分、オレもなんやかんや祭りを楽しみにしていたのだ。

「人混みに入る準備はできてますかー?」
「馬鹿にしているのか」
「怒るなって」

 けらけらと笑いつつ、光の中へと足を踏み入れる。
 この祭りを見るのは何度目だろうか。もう十回以上は体験しているはずなのに、毎度この鮮やかで明るくて底抜けに楽しい雰囲気にはわくわくさせられる。

 賑やかな声や楽器の音、どこかで歌っている人もいれば、踊っている人も多数いる。
 開放的な楽しさが満ち溢れる光景に見入っていたが、ルークはどんな顔をしているだろうと思って顔を上げた。

「どうだー? すげえだろ、……ルーク?」

 想像では、ルークはきっと驚いていると思ったのだ。
 きっとこんなに賑やかなものにルークは触れたことがない。彼の感性は素直だから、きっと圧倒されているはずだ。そんなことを思っていたのに、実際の表情はまるで違った。
 目を細め、何かを堪えるように下唇を噛んでいる。心なしか辛そうに見えるその表情に、胸が痛んだ。

「どうした?」

 掛けた声は自分が思っていたより小さかった。
 喧騒に掻き消されるかと思ったけれど、まだ暗がりの中にいるルークには届いたようで、ゆっくりと視線が重なった。

「俺はこの景色を破壊しようとした」

 滑り落ちた言葉に、祭りの喧騒が止まった気がした。

「ダリアの、母の最終目標は、王都の崩壊だった。あのタイミングで聖女たちが来なければ、俺たちはこの街を血に染めていただろう」

 シナリオの最終局面、聖女たちがラスボスであるダリアの討伐に向かうきっかけになるイベントだ。ゲーム終盤、聖女たちの活躍によって、ダリアは急激に力を削がれていった。
 それに業を煮やしたダリアが強硬策に出るのだ。
 彼女は生まれつき膨大な魔力を持っていた。それこそ彼女がその気になれば、一つの国なんて簡単に吹き飛ばせる程。
 それでもダリアは最後までその手段を取らなかった。理由はとても愚かしく、そして悲しいものだ。

「……俺は今でも、どうして母があそこまで王に執着したのかわからない」

 ルークの父はこの国の王だ。けれど王はルークの顔すら知らない。
 ダリアがルークを身籠ったと分かった途端、王がダリアを切り捨てたからだ。
 それでもダリアは王を愛していた。
 どんな仕打ちを受けても、存在すらなかったことにされても、それでも愛し続けた。
 王の愛が欲しくて、彼女は暴走したのだ。

「わからないんだ」

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

もふもふ獣人に転生したら最愛の推しに溺愛されています

  *  ゆるゆ
BL
『もふもふ獣人転生』からタイトル変更しました! 白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で息絶えそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 本編、完結済です。 魔法学校編、はじめました! リクエストのお話や舞踏会編を読まなくても、本編→魔法学校編、でお話がつながるようにお書きしています。 リトとジゼの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントなくてもどなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! 第12回BL大賞さまで奨励賞をいただきました。 読んでくださった方、応援してくださった皆さまのおかげです。ほんとうにありがとうございました! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

処刑されたくない悪役宰相、破滅フラグ回避のため孤独なラスボス竜を懐柔したら番として溺愛される

水凪しおん
BL
激務で過労死した俺が転生したのは、前世でやり込んだBLゲームの悪役宰相クリストフ。 しかも、断頭台で処刑される破滅ルート確定済み! 生き残る唯一の方法は、物語のラスボスである最強の”魔竜公”ダリウスを懐柔すること。 ゲーム知識を頼りに、孤独で冷徹な彼に接触を試みるが、待っていたのは絶対零度の拒絶だった。 しかし、彼の好物や弱みを突き、少しずつ心の壁を溶かしていくうちに、彼の態度に変化が訪れる。 「――俺の番に、何か用か」 これは破滅を回避するためのただの計画。 のはずが、孤独な竜が見せる不器用な優しさと独占欲に、いつしか俺の心も揺さぶられていく…。 悪役宰相と最強ラスボスが運命に抗う、異世界転生ラブファンタジー!

処理中です...