【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第一章

手は離さない

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 もう一度呟かれた言葉に、オレはなんて返したらいいのかわからなかった。
 オレはゲームのエンディングも知っている。ダリアを討伐し、王都に戻ってきた聖女たちに国王が労いの言葉を掛けるのだ。その行為自体は、多分この世界でも変わらなかったと思う。
 けれどゲームでは王はダリアのことにすら触れなかった。その後のエンドロールも、聖女と攻略対象の姿や復興をしていく街の景色しか流れなかった。

 王の愛に関しての記録なんて、どこにもないのだ。
 公式ですら記さなかった感情の顛末を、オレなんかがわかるはずもない。
 それでもオレは今目の前で、まるで迷子の子供のように途方に暮れている人を放っておけなかった。

「……オレにもわからない。ルークの両親のことなんて、全然」
「お前が前世で読んだ物語にも、何もなかったのか」
「なかった」

 ルークの視線が下を向く。
 影の中に佇む姿が、こんな状況なのに綺麗だと思えた。
 でも、こんな姿を望んだわけじゃないと一歩ルークに近付いて、勢いのまま手を握る。

「離せ」
「嫌だ」
「どうして俺にそこまで固執する」
「大事だから」

 視線がかち合う。お互いに譲らないと思っているからか、睨み合いになる。

「ルークが大事だから、手は離さない」

 形の綺麗な唇が引き結ばれ、眉根が寄る。何かを堪えているような表情が気になって、もう半歩だけ距離を詰めた。
 片手を伸ばし、顔の左側に残る傷に触れる。

「……触るなって言わねえの?」

 わざとおどけた風に言っても、ルークは何も言わない。その代わり、目が言葉よりも教えてくれる。
 目に拒絶の色はなかった。まだ何かを堪えているようではあったけれど。

「ご両親のことは、オレには何も言えない。でもルークにならオレは言えることたくさんあるよ」

 祭りの賑やかさが聞こえる。すぐそばで行われているはずなのに、世界から隔絶されたようだった。

「オレはルークが大切だ。大事にしたい。幸せにもなってほしい。だから」

 ルークの目がオレを見る。
 綺麗な紅色が、暗がりの中でも宝石のように煌めいている。

「店を回ろう」
「……は?」
「遊ぼう。今日は散財するって言っただろー?」

 困惑しているルークを無視して、オレは再び光の中へと歩き出す。
 でも今度は一人じゃない。掴んだ手は離していないから、今度は二人だ。

「お前は」

 不機嫌そうなルークがオレを睨む。
 それでも手は振り払われないし、それ以上の悪態もない。オレは思わず笑ってしまいながら、光の中にいるルークを見た。
 暗がりの中でも綺麗だったが、光の中の彼は余計に魅力的に見える。
 それに満足して、オレはルークの手を引いて祭りの中へと飛び込んだ。

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