【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第二章

オタク失格

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 結果、オレはルークの素性以外ほぼ全て言ってしまったのではないだろうか。
 あれ以上追求されていたらきっと洗いざらい話していたかもしれない。それくらいの猛攻だった。
 エスタに王宮からの迎えが来てなんとかその場は解放されたものの、オレの心は晴れない。
 今日はエスタに愚痴のようなものを聞いてもらうだけだったはずが、気が付けばとんでもないことになっていた。

「……」

 貴族街を抜けて家までの道を歩く。
 エスタの屋敷からオレの家まではそれなりの距離があって、散歩にはちょうどいい。歩きながら息を吐いて、空を見る。
 来た時は昼時の青空だったのに、もう空はオレンジ色になっている。もっと早くに帰るつもりだったのに、気付けば数時間も拘束されてしまった。

「今日の晩飯なんにしよ」

 そう呟いて、頭の中に色々なメニューが浮かぶ。
 昨日は野菜のクリーム煮だった。それなら今日は肉がメインのやつにしようか。その方がきっとルークも喜ぶだろうな。
 そこまで考えて、足を止めた。

 ああ、やっぱり今日エスタのところに行くんじゃなかった。

 オレはそう頭の中で呟きながら唇を噛んだ。
 いつまでも足を止めているわけにもいかず、再度歩き出していつもの八百屋に寄る。

「あらリアスちゃんいらしゃぁ~~い! ……どうしたの? 鼻の奥に鉛玉が詰まったみたいな顔して」
「どんな顔だよ」
「そんな顔よ」
「……おすすめある?」
「もちろんよぉ! あのイケメンの血肉になる素材ならバッチリ取り揃えてるわぁ!」

 今日も店主が腰をくねらせながらおすすめの野菜や果物を用意してくれている。その様子を見ながらオレはなんとか顔から力を抜こうと息を吐いていた。

「それで、あのイケメンとは恋人になったの?」

 その言葉にまた顔に力が入る。

「あらやだすごい顔」

 店主の言葉を無視して会計を済ませ、野菜の入った袋を持って家へと向かう。
 なんとも言えない気持ちのまま家に着き、店の扉を開ける。するとカーテンを閉め切った店内に人の気配がして、思わず目を丸くした。

「戻ったか」

 聞き慣れた低音に瞬きをした。

「ルーク」

 今日は店の定休日だ。休みの日は自由にしようと決めているから、特にお互いの行動を制限はしていない。だからこそルークが今この時間、店の中にいるのが不思議だった。

「どうした? なんか急に依頼でも入った?」
「違う。お前を待っていた」

 その言葉に心臓がぎゅっと握られたような感覚になる。

「聖女に会いに行くとは聞いていたが、遅すぎる。もう夕方だぞ」

 ルークが少し不機嫌だ。しかもその理由は、多分オレが帰ってくるのが遅かったからだ。

「ごめん、話し込んでたら時間経っててさ」
「もう少し早く帰ってこい。探しに行くところだった」
「そんな無茶な」

 ルークが俺に近付いて、手に持っていた袋を持ってくれた。

「あの店に行ったのか」
「うん。晩飯なんにしよーって思って」
「リアスが作るものなら何でもいい」
「……」

 屈託なく伝えられた言葉にまた心臓が騒いだ。
 つい言葉に詰まると、ルークが気遣わしげにオレを見る。

「どうした、具合でも悪いか?」

 大きくて温かい手がオレの頬に触れる。体温を確かめるみたいに手のひら全体で頬を包んで、しっかりと目を見つめてくる。
 オレを見る紅い目に滲んでいるのは、どこまでも優しい光だった。

「うああ」

 オレは思わず両手で顔を覆ってしゃがみ込んだ。

「リアス?」

 すぐにルークも膝を突き、心配そうな声でオレの名前を呼ぶ。
 これはオレの知っているルーク・ディベットじゃない。オレの知っているルークは敵の強キャラで、クールで、それで孤高の狼みたいなキャラだ。
 けど今目の前にいるのは違う。

 確かに強くてミステリアスでクールだったけれど、そんなのは表面だけだった。彼の内面は、ただ優しく意地悪で、そして少し寂しがり屋だ。
 しかもそれを知っているのは、多分世界でオレ一人だ。
 こんなの、優越感を感じるなという方が無理だ。

「……エスタのとこ行くんじゃなかった」

 行かなければ、多分オレはこんなに真面目に考えずに済んだ。ずっとずっと曖昧に先延ばしにできていたかもしれないのに、どうして相談なんてしてしまったんだ。

「リアス、どうした」

 少し焦りが滲んだような声に顔を上げた。
 そこにいたのは、ただオレを心配してくれるかわいい人だ。

 ──一節によれば、かわいいと思った時点でもう沼にハマっているらしい。

 そんな文章を思い出してオレは嘆いた。

「解釈違いだってええええん」

 オレは多分、ていうか絶対、ルークが好きだ。それも、恋愛的な意味で。

「オタク失格だああああ」

 オレの嘆きが、薄暗い店内の中に響いた。

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