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第五章
意味のない復讐
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「納得していないようだな」
「なんかなぁ。……無理してねえ? お前自分が思ってるよりずっと優しいって知ってる?」
「なんの話だ」
「後悔してないのかってこと」
そう言うとルークの眉が少し動いた。
「ユウの町でリリアさんを見てた時のお前、ちゃんと仲間っぽい顔してたと思うんだよ。そんな人の情報渡してしんどくなってないか?」
少しの間沈黙が流れた。
ルークは頭の回転が速いと思う。だから大抵の言葉にはすぐに答えが返ってくるのに、この問いには間が開く。それが答えだと思うけれど、オレはルークの言葉を待った。
「……お前の気のせいだと言いたいが、その様子では無理そうだな」
苦笑とともに吐き出された言葉に少し安堵する。
ベッドの中をもぞもぞと動いてルークを抱き締め、広い背中を撫でた。
「仲間とは思っていないというのは本当だ。俺はあそこにいた時、誰も味方とは思っていなかった。敵でもないと思っていたがな」
ふう、と息を吐きルークがオレの髪に顔を埋める。
「ただ、申し訳ないとは思っている」
「なんで?」
「ダリアの復讐に巻き込んでしまったから」
重たい言葉を受け止めるのが精一杯で口からは何も出ない。ルークの責任じゃないなんて頭では思っているけれど、それを口に出すことはできなかった。
「……母が勝手にしたことだ。けれど俺はあの人の血を引いていて、彼女の暴走を止めることができなかった人間だ。もしどこかで止められていたら、今また人生を狂わせようとしている奴らも、真っ当な道を歩けていたかもしれない」
「……」
「母にはこの世界に復讐をするだけの理由があった。けれどあいつらには何もない。意味のない復讐をさせるくらいならまだ何もしていない今、その芽を摘むしかないと思った」
話し切ったルークは俺を抱き締めたまま何も言わない。オレもそんなルークを抱き締めながら、どんな言葉を掛けたらいいのか頭の中で探した。
けれど何も浮かんでこない。こんな重圧を感じたことがないから、ルークの今の気持ちがわからない。でも、ルークが苦しんで出した結論というのだけはわかる。
「……そっか」
正しいとも間違っているとも、オレには判断できない。そんな権利はないから。
「お疲れ、ルーク」
「ああ、ありがとう」
ひどく疲れた声だった。
やはりそれくらい、ルークにとっては大きな決断だったのだ。
「話してくれてありがと」
それにルークは頷いて、やがて眠ってしまった。
オレより先に眠るのはすごく珍しい。なんやかんやいつもオレが先に眠らされているし、そうじゃない時は大体同じようなタイミングだ。
だからルークの寝顔を見るのだって、随分久しぶりだった。
眉間に皺が寄っている。ルークはオレが思っている以上に表情が豊かで優しくて、それでいて繊細だ。ただ辛いことを経験することに慣れていて、それを表に出すことがない。
辛いとか、疲れたとか、ルークは言わない。その言葉を知っているのかすらわからない。
それくらいルークが弱音を吐いているイメージがない。
「オレにくらい、言ってくれてもいいのになぁ」
思わず溢すけれど、多分これは望みすぎだ。
そうなるにはもっと時間が掛かる。だってオレも一度ルークの手を離してしまった。
ルークの人生を思えば、あの時オレが突き放したことでどれだけ傷付くのかなんて容易に想像できたはずなのに。我ながら過去の自分を殴りたいと思ってしまう。
信頼を築くには時間がいる。ゆっくり寄り添っていくしかない。
そう思いながら息を吐くと、食事の時のルークを思い出す。「軽蔑したか?」ルークはそうオレに聞いた。そのあと嫌いか? とも聞いてきた。
オレがルークを嫌うなんてあり得ないのにそう聞かれたということは、その可能性がルークの中に存在するということだ。
「なんかなぁ。……無理してねえ? お前自分が思ってるよりずっと優しいって知ってる?」
「なんの話だ」
「後悔してないのかってこと」
そう言うとルークの眉が少し動いた。
「ユウの町でリリアさんを見てた時のお前、ちゃんと仲間っぽい顔してたと思うんだよ。そんな人の情報渡してしんどくなってないか?」
少しの間沈黙が流れた。
ルークは頭の回転が速いと思う。だから大抵の言葉にはすぐに答えが返ってくるのに、この問いには間が開く。それが答えだと思うけれど、オレはルークの言葉を待った。
「……お前の気のせいだと言いたいが、その様子では無理そうだな」
苦笑とともに吐き出された言葉に少し安堵する。
ベッドの中をもぞもぞと動いてルークを抱き締め、広い背中を撫でた。
「仲間とは思っていないというのは本当だ。俺はあそこにいた時、誰も味方とは思っていなかった。敵でもないと思っていたがな」
ふう、と息を吐きルークがオレの髪に顔を埋める。
「ただ、申し訳ないとは思っている」
「なんで?」
「ダリアの復讐に巻き込んでしまったから」
重たい言葉を受け止めるのが精一杯で口からは何も出ない。ルークの責任じゃないなんて頭では思っているけれど、それを口に出すことはできなかった。
「……母が勝手にしたことだ。けれど俺はあの人の血を引いていて、彼女の暴走を止めることができなかった人間だ。もしどこかで止められていたら、今また人生を狂わせようとしている奴らも、真っ当な道を歩けていたかもしれない」
「……」
「母にはこの世界に復讐をするだけの理由があった。けれどあいつらには何もない。意味のない復讐をさせるくらいならまだ何もしていない今、その芽を摘むしかないと思った」
話し切ったルークは俺を抱き締めたまま何も言わない。オレもそんなルークを抱き締めながら、どんな言葉を掛けたらいいのか頭の中で探した。
けれど何も浮かんでこない。こんな重圧を感じたことがないから、ルークの今の気持ちがわからない。でも、ルークが苦しんで出した結論というのだけはわかる。
「……そっか」
正しいとも間違っているとも、オレには判断できない。そんな権利はないから。
「お疲れ、ルーク」
「ああ、ありがとう」
ひどく疲れた声だった。
やはりそれくらい、ルークにとっては大きな決断だったのだ。
「話してくれてありがと」
それにルークは頷いて、やがて眠ってしまった。
オレより先に眠るのはすごく珍しい。なんやかんやいつもオレが先に眠らされているし、そうじゃない時は大体同じようなタイミングだ。
だからルークの寝顔を見るのだって、随分久しぶりだった。
眉間に皺が寄っている。ルークはオレが思っている以上に表情が豊かで優しくて、それでいて繊細だ。ただ辛いことを経験することに慣れていて、それを表に出すことがない。
辛いとか、疲れたとか、ルークは言わない。その言葉を知っているのかすらわからない。
それくらいルークが弱音を吐いているイメージがない。
「オレにくらい、言ってくれてもいいのになぁ」
思わず溢すけれど、多分これは望みすぎだ。
そうなるにはもっと時間が掛かる。だってオレも一度ルークの手を離してしまった。
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そう思いながら息を吐くと、食事の時のルークを思い出す。「軽蔑したか?」ルークはそうオレに聞いた。そのあと嫌いか? とも聞いてきた。
オレがルークを嫌うなんてあり得ないのにそう聞かれたということは、その可能性がルークの中に存在するということだ。
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