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第六章
災難続き
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「!」
何事かと目を開くと、どうしてだかオレに魔物が寄り付いていないのがわかった。
何が起きているのだと混乱している最中、また魔物が飛び掛かってくる。咄嗟に身構えるけれど、魔物の牙が届く前に何かによって弾き返されていた。
「……は?」
なんだ、何が起きているんだ。
そう思った瞬間、はっとして上着のポケットを見る。そこにはエスタから貰い受けたネックレスが入っている。
この世に一つしか存在しない、どんな災厄からも持ち主を守ると言われている伝説級の装備品だ。
「っ、ありがとうエスタ……!」
事態を理解してオレは出口の方を見た。
ここは多分地下水道のちょうど真ん中の辺りだ。ここからリリアのあとを追えば下町に出ることができる。けれど問題は手足を拘束している縄だ。これを外さなければ、とてもではないが地上には上がれない。
「クソが、あの野郎」
用意周到にも程があるとリリアを思い出して悪態を吐く。
けれどそんな時間も惜しいと目を閉じて意識を手先に集中させる。
オレが誇れるものなんて元々手先の器用くらいのものだ。それなら今はそれに賭けて、1秒でも早く縄を解くべきだ。
幸いにも結び目が指に触れる。荒い縄で縛られているせいで皮膚が擦れているところが痛むけれど、そんなこともどうでもいい。魔物が何度も襲い掛かってくる音を聞きながら指を動かす。
完全に解けはしなくとも、少しでも緩めばいい。それだけで一気に可能性は広がる。
「、きた!」
拘束が少し緩んだ。そこからは力任せに手首を動かして緩みを広げ、そして腕を抜く。開放感や痛みを感じる暇なく足の拘束も解いて立ち上がると、血が抜けすぎているのか立ちくらみがした。
倒れそうになる体をなんとか踏ん張って支え。一度深呼吸してから前を見た。
先は暗闇で何も見えないけれど道はわかる。エスタから貰ったネックレスをポケットから出して首に掛け、それを片手で握りながら足を前に踏み出す。
初めは歩く速度だったのにだんだん早歩きになり、最終的には走るようになった。記憶を頼りに地下水道の中を進み、そして地上につながる梯子を見つけた。この先にあるのはいつか祭りの時に通った裏路地だ。
「っ!」
梯子を掴むと腕というより全身に激痛が走る。力もうまく入らない気がするけれど、歯を食いしばって上を目指す。
頂上にまで上り重たい蓋をどかした先に見えたのは、夜の暗闇だった。
エスタと別れてから相当時間が経過しているのがわかった。
地上に這い出たオレは息つく暇もなくそのまま家を目指す。肺が壊れそうな程痛い、足が重たい。それでも必死に足を前に動かした時、オレは異変に気が付いた。
「おい、あっちがやばいぞ」
「ちゃんと人は逃げれてるの?」
「騎士団はまだか!」
いつもなら寝静まっていてもいいくらいの通りが異常に騒がしい。そして聞こえてくる会話に嫌な予感がして全身から血の気が引いた。
まさかもうリリアが行動に移しているのだろうか。
そう思ったけれど、どうやら違う。
「道具屋が燃えてるってよ!」
心臓が止まった気がした。
何事かと目を開くと、どうしてだかオレに魔物が寄り付いていないのがわかった。
何が起きているのだと混乱している最中、また魔物が飛び掛かってくる。咄嗟に身構えるけれど、魔物の牙が届く前に何かによって弾き返されていた。
「……は?」
なんだ、何が起きているんだ。
そう思った瞬間、はっとして上着のポケットを見る。そこにはエスタから貰い受けたネックレスが入っている。
この世に一つしか存在しない、どんな災厄からも持ち主を守ると言われている伝説級の装備品だ。
「っ、ありがとうエスタ……!」
事態を理解してオレは出口の方を見た。
ここは多分地下水道のちょうど真ん中の辺りだ。ここからリリアのあとを追えば下町に出ることができる。けれど問題は手足を拘束している縄だ。これを外さなければ、とてもではないが地上には上がれない。
「クソが、あの野郎」
用意周到にも程があるとリリアを思い出して悪態を吐く。
けれどそんな時間も惜しいと目を閉じて意識を手先に集中させる。
オレが誇れるものなんて元々手先の器用くらいのものだ。それなら今はそれに賭けて、1秒でも早く縄を解くべきだ。
幸いにも結び目が指に触れる。荒い縄で縛られているせいで皮膚が擦れているところが痛むけれど、そんなこともどうでもいい。魔物が何度も襲い掛かってくる音を聞きながら指を動かす。
完全に解けはしなくとも、少しでも緩めばいい。それだけで一気に可能性は広がる。
「、きた!」
拘束が少し緩んだ。そこからは力任せに手首を動かして緩みを広げ、そして腕を抜く。開放感や痛みを感じる暇なく足の拘束も解いて立ち上がると、血が抜けすぎているのか立ちくらみがした。
倒れそうになる体をなんとか踏ん張って支え。一度深呼吸してから前を見た。
先は暗闇で何も見えないけれど道はわかる。エスタから貰ったネックレスをポケットから出して首に掛け、それを片手で握りながら足を前に踏み出す。
初めは歩く速度だったのにだんだん早歩きになり、最終的には走るようになった。記憶を頼りに地下水道の中を進み、そして地上につながる梯子を見つけた。この先にあるのはいつか祭りの時に通った裏路地だ。
「っ!」
梯子を掴むと腕というより全身に激痛が走る。力もうまく入らない気がするけれど、歯を食いしばって上を目指す。
頂上にまで上り重たい蓋をどかした先に見えたのは、夜の暗闇だった。
エスタと別れてから相当時間が経過しているのがわかった。
地上に這い出たオレは息つく暇もなくそのまま家を目指す。肺が壊れそうな程痛い、足が重たい。それでも必死に足を前に動かした時、オレは異変に気が付いた。
「おい、あっちがやばいぞ」
「ちゃんと人は逃げれてるの?」
「騎士団はまだか!」
いつもなら寝静まっていてもいいくらいの通りが異常に騒がしい。そして聞こえてくる会話に嫌な予感がして全身から血の気が引いた。
まさかもうリリアが行動に移しているのだろうか。
そう思ったけれど、どうやら違う。
「道具屋が燃えてるってよ!」
心臓が止まった気がした。
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