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第六章
ありがとうエスタ
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唇が震え、止まりかけていた足をもつれさせながら人並みを掻き分けて進む。
「どいて、どいてくれ!」
家が近付くと人は多くなり喧騒も大きくなった。夜だというのに辺りを明るくするオレンジ色が見えて、それと比例して熱を感じた。
人並みの最前線に到着した時、目の前に広がる景色に愕然とした。
家が燃えている。オレの店が、炎に包まれていた。
「リアスちゃん! よかったあんた無事だった、どうしたのその怪我」
「ルークは?」
「え」
「ルークは、どっかで見なかったか⁉︎」
「見てないけど」
マリリンがそう言い終わる直前で家の中から魔力が弾ける気配がした。
「リアスちゃんっ⁉︎」
悲鳴のような声も聞かずに燃え盛る炎の中に足を踏み入れた。
高温過ぎてまともに呼吸ができない。目を開けていたら網膜すら焼かれてしまうくらい熱い。それでもオレは止まらずに足を前に進めた。
「ルーク!」
声を張り上げても返事はない。どうやら一階にはいないのだと調合室の扉を蹴り開け、それから上を目指す。階段が燃え朽ちようとしている中なんとか昇りきり、そこでオレはもう一度声を張り上げた。
「ルーク‼︎」
ばちんと魔力が弾ける気配に寝室の方を見た。
もう辺りは炎に飲まれていて一刻も早く逃げなければならないとわかっているのに、オレの中にはルークを置いて逃げるなんて選択肢はなかった。
肺が燃えるように熱い。煙を吸い過ぎて息ができない。
それでも炎を掻き分けて寝室に向かうと、そこが発火の原因だと一目でわかるほど炎の勢いが強かった。熱風で目を開けていられない。
けれど炎の海の中に呆然と立ち尽くす人の姿を見て、オレは迷わず飛び込んだ。
「ルークっ」
「、……リアス……?」
必死に抱き着くと、今にも消えてしまいそうな程細い声でルークがオレを呼んだ。
「おう、オレだ」
「リアス……!」
力の限り抱き締められて正直めちゃくちゃ痛いし苦しい。
でも会えてよかったという安堵がそんなものを追い越して、オレもルークにしがみついた。
「無事か? リリアにやなことされてねえ?」
「それはお前だ。お前の方が」
「大丈夫。オレには聖女様のご加護があるんだぜ」
こんな状況なのに少しおかしくて笑えてしまう。それはルークも同じだったようで、二人で顔を見合わせて笑い合った。
「……リリアは?」
「逃した。それでも深傷を負っているからな、時間の問題だろう」
「そっか」
何かが爆発する音が聞こえた。それからすぐに屋根が崩れるような音も。
逃げなければいけないとわかっているけれど、そこを動く気にはなれなかった。
だってここで助かったとして外にはもう騎士団がいる。ノクトだけなら見逃してくれるかもしれないけれど、ルークの噂が出回っている以上それは望めない。
「リアス、お前だけでも」
「何言ってんだよ馬鹿」
オレの考えていることなんてルークにはお見通しらしい。
だからこそオレは笑って、絶対に離れてやらないと意思表示するようにルークに強く抱き着いた。
「もう離れないって言っただろ。約束は守るよ」
「……馬鹿だ、お前は」
紅い瞳に薄い膜が張ったのが見えた。けれどすぐにその顔は見れなくなる。
「しょうがねえよなぁ。ルークのこと愛してるもんで」
こんな状態から二人で無事に生き延びる方法なんてない。あるとすれば転移魔法くらいだが、それを使えるのは聖女だけだ。
せっかくネックレスを貰ったのにこれじゃあ本末転倒だなと思うけれど、自分でも驚くくらい気持ちが穏やかだ。
「来世があったらさ、今度は普通の人間がいいな」
「ああ、そうだな」
煙と炎が部屋を埋め尽くす。唯一の扉が崩れ、もう脱出は絶望的だ。
いい人生だった。そう思って目を閉じた瞬間、太陽が目の前にあるのかと思う程の光が上下から差し込んだ。
「!」
目を開けていられないくらいの眩しさの中によく知る人の気配があって、思わず唇を引き結ぶ。
「ありがとう、エスタ」
絶対に聞こえているはずがないのに、オレがそう言い終わった瞬間、視界が白に染め上げられた。
「どいて、どいてくれ!」
家が近付くと人は多くなり喧騒も大きくなった。夜だというのに辺りを明るくするオレンジ色が見えて、それと比例して熱を感じた。
人並みの最前線に到着した時、目の前に広がる景色に愕然とした。
家が燃えている。オレの店が、炎に包まれていた。
「リアスちゃん! よかったあんた無事だった、どうしたのその怪我」
「ルークは?」
「え」
「ルークは、どっかで見なかったか⁉︎」
「見てないけど」
マリリンがそう言い終わる直前で家の中から魔力が弾ける気配がした。
「リアスちゃんっ⁉︎」
悲鳴のような声も聞かずに燃え盛る炎の中に足を踏み入れた。
高温過ぎてまともに呼吸ができない。目を開けていたら網膜すら焼かれてしまうくらい熱い。それでもオレは止まらずに足を前に進めた。
「ルーク!」
声を張り上げても返事はない。どうやら一階にはいないのだと調合室の扉を蹴り開け、それから上を目指す。階段が燃え朽ちようとしている中なんとか昇りきり、そこでオレはもう一度声を張り上げた。
「ルーク‼︎」
ばちんと魔力が弾ける気配に寝室の方を見た。
もう辺りは炎に飲まれていて一刻も早く逃げなければならないとわかっているのに、オレの中にはルークを置いて逃げるなんて選択肢はなかった。
肺が燃えるように熱い。煙を吸い過ぎて息ができない。
それでも炎を掻き分けて寝室に向かうと、そこが発火の原因だと一目でわかるほど炎の勢いが強かった。熱風で目を開けていられない。
けれど炎の海の中に呆然と立ち尽くす人の姿を見て、オレは迷わず飛び込んだ。
「ルークっ」
「、……リアス……?」
必死に抱き着くと、今にも消えてしまいそうな程細い声でルークがオレを呼んだ。
「おう、オレだ」
「リアス……!」
力の限り抱き締められて正直めちゃくちゃ痛いし苦しい。
でも会えてよかったという安堵がそんなものを追い越して、オレもルークにしがみついた。
「無事か? リリアにやなことされてねえ?」
「それはお前だ。お前の方が」
「大丈夫。オレには聖女様のご加護があるんだぜ」
こんな状況なのに少しおかしくて笑えてしまう。それはルークも同じだったようで、二人で顔を見合わせて笑い合った。
「……リリアは?」
「逃した。それでも深傷を負っているからな、時間の問題だろう」
「そっか」
何かが爆発する音が聞こえた。それからすぐに屋根が崩れるような音も。
逃げなければいけないとわかっているけれど、そこを動く気にはなれなかった。
だってここで助かったとして外にはもう騎士団がいる。ノクトだけなら見逃してくれるかもしれないけれど、ルークの噂が出回っている以上それは望めない。
「リアス、お前だけでも」
「何言ってんだよ馬鹿」
オレの考えていることなんてルークにはお見通しらしい。
だからこそオレは笑って、絶対に離れてやらないと意思表示するようにルークに強く抱き着いた。
「もう離れないって言っただろ。約束は守るよ」
「……馬鹿だ、お前は」
紅い瞳に薄い膜が張ったのが見えた。けれどすぐにその顔は見れなくなる。
「しょうがねえよなぁ。ルークのこと愛してるもんで」
こんな状態から二人で無事に生き延びる方法なんてない。あるとすれば転移魔法くらいだが、それを使えるのは聖女だけだ。
せっかくネックレスを貰ったのにこれじゃあ本末転倒だなと思うけれど、自分でも驚くくらい気持ちが穏やかだ。
「来世があったらさ、今度は普通の人間がいいな」
「ああ、そうだな」
煙と炎が部屋を埋め尽くす。唯一の扉が崩れ、もう脱出は絶望的だ。
いい人生だった。そう思って目を閉じた瞬間、太陽が目の前にあるのかと思う程の光が上下から差し込んだ。
「!」
目を開けていられないくらいの眩しさの中によく知る人の気配があって、思わず唇を引き結ぶ。
「ありがとう、エスタ」
絶対に聞こえているはずがないのに、オレがそう言い終わった瞬間、視界が白に染め上げられた。
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