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第四章 西の国の救国の聖女編
信じられない祭り
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ステラたちは現在ウエレスト大陸の小さな港町にいた。
アズマヒの国を十分に堪能した三人は次の国に行こうとその地で仲良くなった人たちに別れを告げた。だがしかし三人の旅はあてのない旅だ。なんとなく乗った船の船室で地図を広げ、なんとなくてぷが投げたコインが落ちた国に行こうと決めて、そうして落ちた場所がウエレスト大陸の首都、リュミールだった。
ステラの育った街でもあるが既に聖女が死んだとされてそろそろ一年が経過しようという時期だ。キースの件があったにせよ、あれは異例中の異例だと判断し、まあ概ね問題は無いだろうとそのまま次の行き先をそこに決めた。
船の関係でリュミールから少し距離のある港町に到着したがそれもまた旅の醍醐味だなと三人は特に気にする様子もなく、むしろここにも何か名物料理はあるのだろうかと内心うきうきしながら船を降り、町を散策していた。
けれどもなんだか町全体がとても忙しない。賑やかではなく忙しないのだ。まるで今から祭りでも始まるのかというような忙しなさだが、町のどこかに装飾がされているわけでもなければそんな雰囲気も無い。
けれども住人の、特に商売をしている人たちの顔が明るいのを見ててぷが声を掛けた。
『祭りでもあるんだぞ?』
「ああようこそ旅の方! そうだよ祭りがあるんだ。といってもうちじゃなくてリュミールであるんだけどね」
「リュミールですか? この時期にお祭りは無かったと思うんですが」
ステラは首を傾げた。リュミールには年に数回祭りが開催されるが、今のこの時期はそのどれとも重ならない。自分がいなくなった間にそういう変化も起きたのだなと他人事のように訊いたステラだが、次に飛び出した言葉に目を剥くことになる。
「救国の聖女様を祀るお祭りさ! 本当は魔王討伐から一年の祝いのはずなんだけどね、みんな聖女様に感謝を捧げる祭りだって大盛り上がりで」
ステラは機械仕掛けの人形のようにギギギっとリヴィウスたちを見上げた。二人は特に驚いた様子もなく、住人が去ったのを見てからステラの方に顔を向けてこう言った。
『なんでそんなに驚いてるんだぞ?』
「だ、だって」
思わずステラはリヴィウスの手を引っ張って建物の間に身を隠す。
「だって自分のお祭りが開かれるって、驚くでしょう…⁉︎」
『全然不思議なことじゃないんだぞ。ボクのお祭りだってあるんだぞ』
「魔王と差し違えた聖女だしな、神格化されても別段おかしくない」
あまりにも平然とした様子の二人にステラは口をあんぐりと開けた。それほどに衝撃だったのだ。けれども住人が言っていた後半の言葉を思い出す。
「あ、でも魔王討伐のお祝いでもあるんですよね? どうしましょう、行き先を変えますか?」
いくら過去のこととはいえ、殺された日を祝う祭りに当人を連れて行くことには気が引ける。そう思っての問いだったがリヴィウスは不思議そうに首を傾げた。
「どうしてだ、行けばいいだろう」
「で、でもこのお祭りはリヴィが」
どこに人の目があるかわからずコソコソと話していれば何かおかしかったのかリヴィウスが僅かに口角を上げた。
「特に何も思わない。むしろ俺はお前が育った場所を見たい」
柔らかい声と表情で告げられた言葉にステラは一瞬何を言われたのか理解が出来なかった。けれど理解が追い付いた瞬間、ぽんと音が出そうな程一瞬で顔に熱が集中する。今回は顔を見合わせていたからかリヴィウスが変化に気付き、片手がステラの頬に触れる。
ひんやりとした手が心地良いと思えるほど顔が熱いのが恥ずかしいし、けれどなんと言ったらいいか分からずそのまま見つめ合っていたらふとリヴィウスの顔が近付いて──
『ゲホンゴホンなんだぞ!』
はっとして一歩距離を取るとリヴィウスはあからさまに不満そうな顔をして、てぷは呆れたように息を吐いた。
『リヴィ、そういうのは人がいないとこでやらないとダメなんだぞ』
「そういうものなのか」
『そうだぞ。そうじゃないと恥ずかしくてステラが逃げちゃうんだぞ』
「善処する」
目の前でとんでもない会話が繰り広げられているのにステラは何も言えなかった。
アズマヒの国を十分に堪能した三人は次の国に行こうとその地で仲良くなった人たちに別れを告げた。だがしかし三人の旅はあてのない旅だ。なんとなく乗った船の船室で地図を広げ、なんとなくてぷが投げたコインが落ちた国に行こうと決めて、そうして落ちた場所がウエレスト大陸の首都、リュミールだった。
ステラの育った街でもあるが既に聖女が死んだとされてそろそろ一年が経過しようという時期だ。キースの件があったにせよ、あれは異例中の異例だと判断し、まあ概ね問題は無いだろうとそのまま次の行き先をそこに決めた。
船の関係でリュミールから少し距離のある港町に到着したがそれもまた旅の醍醐味だなと三人は特に気にする様子もなく、むしろここにも何か名物料理はあるのだろうかと内心うきうきしながら船を降り、町を散策していた。
けれどもなんだか町全体がとても忙しない。賑やかではなく忙しないのだ。まるで今から祭りでも始まるのかというような忙しなさだが、町のどこかに装飾がされているわけでもなければそんな雰囲気も無い。
けれども住人の、特に商売をしている人たちの顔が明るいのを見ててぷが声を掛けた。
『祭りでもあるんだぞ?』
「ああようこそ旅の方! そうだよ祭りがあるんだ。といってもうちじゃなくてリュミールであるんだけどね」
「リュミールですか? この時期にお祭りは無かったと思うんですが」
ステラは首を傾げた。リュミールには年に数回祭りが開催されるが、今のこの時期はそのどれとも重ならない。自分がいなくなった間にそういう変化も起きたのだなと他人事のように訊いたステラだが、次に飛び出した言葉に目を剥くことになる。
「救国の聖女様を祀るお祭りさ! 本当は魔王討伐から一年の祝いのはずなんだけどね、みんな聖女様に感謝を捧げる祭りだって大盛り上がりで」
ステラは機械仕掛けの人形のようにギギギっとリヴィウスたちを見上げた。二人は特に驚いた様子もなく、住人が去ったのを見てからステラの方に顔を向けてこう言った。
『なんでそんなに驚いてるんだぞ?』
「だ、だって」
思わずステラはリヴィウスの手を引っ張って建物の間に身を隠す。
「だって自分のお祭りが開かれるって、驚くでしょう…⁉︎」
『全然不思議なことじゃないんだぞ。ボクのお祭りだってあるんだぞ』
「魔王と差し違えた聖女だしな、神格化されても別段おかしくない」
あまりにも平然とした様子の二人にステラは口をあんぐりと開けた。それほどに衝撃だったのだ。けれども住人が言っていた後半の言葉を思い出す。
「あ、でも魔王討伐のお祝いでもあるんですよね? どうしましょう、行き先を変えますか?」
いくら過去のこととはいえ、殺された日を祝う祭りに当人を連れて行くことには気が引ける。そう思っての問いだったがリヴィウスは不思議そうに首を傾げた。
「どうしてだ、行けばいいだろう」
「で、でもこのお祭りはリヴィが」
どこに人の目があるかわからずコソコソと話していれば何かおかしかったのかリヴィウスが僅かに口角を上げた。
「特に何も思わない。むしろ俺はお前が育った場所を見たい」
柔らかい声と表情で告げられた言葉にステラは一瞬何を言われたのか理解が出来なかった。けれど理解が追い付いた瞬間、ぽんと音が出そうな程一瞬で顔に熱が集中する。今回は顔を見合わせていたからかリヴィウスが変化に気付き、片手がステラの頬に触れる。
ひんやりとした手が心地良いと思えるほど顔が熱いのが恥ずかしいし、けれどなんと言ったらいいか分からずそのまま見つめ合っていたらふとリヴィウスの顔が近付いて──
『ゲホンゴホンなんだぞ!』
はっとして一歩距離を取るとリヴィウスはあからさまに不満そうな顔をして、てぷは呆れたように息を吐いた。
『リヴィ、そういうのは人がいないとこでやらないとダメなんだぞ』
「そういうものなのか」
『そうだぞ。そうじゃないと恥ずかしくてステラが逃げちゃうんだぞ』
「善処する」
目の前でとんでもない会話が繰り広げられているのにステラは何も言えなかった。
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