88 / 105
第四章 西の国の救国の聖女編
聖女(男)にMAXの精神ダメージ!
しおりを挟む
リュミールに到着し、市民街の中心部にある広場に来た途端ステラは膝から崩れ落ちそうになった。それを気合で堪えるが顔面蒼白である。愕然とした顔でステラはある一点を穴が開くほど見つめていた。
『おお、なんか見たことあるんだぞ』
「既視感があるな」
リヴィウスとてぷが真面目な顔で見ているのは広場の中心に設置してある噴水だ。詳細に言えば噴水の上に設置してある像を見ている。膝を着き祈りのポーズを取った、真っ直ぐな長い髪をした女性の像がそこにあった。
その像の足元には「救国の聖女の像」と書かれてある。つまりこれはステラだ。
「ぐふぅ…!」
ステラは経験したことのないダメージを受けていた。恥ずかしくてしょうがない。どうしたってこんなことになっているのだと、霊山フェデルを睨むように見た。実際そこにいる訳ではないけれどそこから「だって作りたかったんじゃもん」と祖父(仮)のお茶目な声が聞こえてくるようでステラは頭を抱えた。
「……建てるなら勇者リヒトの像でしょう……!」
ステラは心から呟いた。ただし小声である。
『どう考えても聖女だぞ』
「ああ、そうだな」
「どうしてですか…! 倒したのは勇者です……!」
ステラは必死に訴えた。生きてきてここまで必死に何かを訴えるのは初めてかもしれない。魔王の前に飛び出したあの時よりも必死だった。
「人間は死して英雄になる、そんな悲劇的な筋書きの方が好きだろう」
『そうだぞ。ヒトの子はずーっと昔からそんな感じなんだぞ』
「そ、そうかも、しれませんが……!」
そう言われてしまうとステラは何も言えない。本当にその通りだからだ。けれど文献や人伝に知るものと、自身がその対象になった場合は話が別だ。ステラはこんなふうに祭り上げられたくて魔王の前に立った訳ではないのだ。
「これに本人の意思は関係無い」
「え」
余程顔に出ていたのかリヴィウスがステラを見たまま淡々と告げる。
「そこ、読んでみろ」
示されたのは像の足元に彫られた名称ではなく、さらにその下。小さいなんらかしらの文章が彫られているようでステラは目を凝らす。
「……世界が彼女を忘れないように、ここにこの像を建てる」
声に出して読んだ時、頭に浮かんだのは太陽のように輝いている勇者の姿だった。日の光を集めたような金色の髪に、どこまでも澄んだ青空の目。いつだって全てのことに対して全力で、正義と辞書で引いたら出てくるような青年の言葉だとステラは直感した。
そう理解してしまうと、ステラにはそれ以上何も言えなくなってしまった。
「……もっと欲深くても良いと思いませんか」
「欲深い人間ならあの場で聖女を殺せない」
「……それもそうですね」
ステラたちはそっと像から離れて木陰で街の賑わいを見る。大人はまだしも子供に至っては「聖女様だ!」と像を見上げて同じポーズを取っていた。その様子にやはり羞恥を感じるけれど、これが勇者の望んだ姿なのだと思うとステラは言葉を飲み込んで一つ息を吐いた。
「宿を取りに行きましょう。この賑わいだったら早く決めないと泊まるところがなくなってしまいます」
『それは困るんだぞ! 早くお風呂が大きな宿を探すんだぞ!』
「……てぷ様、非常に申し上げにくいのですがリュミールで大きなお風呂のある宿は相当高額なところでないとありません」
『⁉︎』
「金はそれなりにあるだろう」
「駄目です。そんな豪遊するような余裕はありません。旅の節約は絶対です」
明らかにショックを受けている二人の姿にステラは一切の同情をせずに「さあ行きますよ」と手を引いて歩き出す。てぷはわかるがリヴィウスまでショックを受けているのに首を傾げつつ、三人は賑わいから少し離れた通りで宿を探すことにした。
『おお、なんか見たことあるんだぞ』
「既視感があるな」
リヴィウスとてぷが真面目な顔で見ているのは広場の中心に設置してある噴水だ。詳細に言えば噴水の上に設置してある像を見ている。膝を着き祈りのポーズを取った、真っ直ぐな長い髪をした女性の像がそこにあった。
その像の足元には「救国の聖女の像」と書かれてある。つまりこれはステラだ。
「ぐふぅ…!」
ステラは経験したことのないダメージを受けていた。恥ずかしくてしょうがない。どうしたってこんなことになっているのだと、霊山フェデルを睨むように見た。実際そこにいる訳ではないけれどそこから「だって作りたかったんじゃもん」と祖父(仮)のお茶目な声が聞こえてくるようでステラは頭を抱えた。
「……建てるなら勇者リヒトの像でしょう……!」
ステラは心から呟いた。ただし小声である。
『どう考えても聖女だぞ』
「ああ、そうだな」
「どうしてですか…! 倒したのは勇者です……!」
ステラは必死に訴えた。生きてきてここまで必死に何かを訴えるのは初めてかもしれない。魔王の前に飛び出したあの時よりも必死だった。
「人間は死して英雄になる、そんな悲劇的な筋書きの方が好きだろう」
『そうだぞ。ヒトの子はずーっと昔からそんな感じなんだぞ』
「そ、そうかも、しれませんが……!」
そう言われてしまうとステラは何も言えない。本当にその通りだからだ。けれど文献や人伝に知るものと、自身がその対象になった場合は話が別だ。ステラはこんなふうに祭り上げられたくて魔王の前に立った訳ではないのだ。
「これに本人の意思は関係無い」
「え」
余程顔に出ていたのかリヴィウスがステラを見たまま淡々と告げる。
「そこ、読んでみろ」
示されたのは像の足元に彫られた名称ではなく、さらにその下。小さいなんらかしらの文章が彫られているようでステラは目を凝らす。
「……世界が彼女を忘れないように、ここにこの像を建てる」
声に出して読んだ時、頭に浮かんだのは太陽のように輝いている勇者の姿だった。日の光を集めたような金色の髪に、どこまでも澄んだ青空の目。いつだって全てのことに対して全力で、正義と辞書で引いたら出てくるような青年の言葉だとステラは直感した。
そう理解してしまうと、ステラにはそれ以上何も言えなくなってしまった。
「……もっと欲深くても良いと思いませんか」
「欲深い人間ならあの場で聖女を殺せない」
「……それもそうですね」
ステラたちはそっと像から離れて木陰で街の賑わいを見る。大人はまだしも子供に至っては「聖女様だ!」と像を見上げて同じポーズを取っていた。その様子にやはり羞恥を感じるけれど、これが勇者の望んだ姿なのだと思うとステラは言葉を飲み込んで一つ息を吐いた。
「宿を取りに行きましょう。この賑わいだったら早く決めないと泊まるところがなくなってしまいます」
『それは困るんだぞ! 早くお風呂が大きな宿を探すんだぞ!』
「……てぷ様、非常に申し上げにくいのですがリュミールで大きなお風呂のある宿は相当高額なところでないとありません」
『⁉︎』
「金はそれなりにあるだろう」
「駄目です。そんな豪遊するような余裕はありません。旅の節約は絶対です」
明らかにショックを受けている二人の姿にステラは一切の同情をせずに「さあ行きますよ」と手を引いて歩き出す。てぷはわかるがリヴィウスまでショックを受けているのに首を傾げつつ、三人は賑わいから少し離れた通りで宿を探すことにした。
131
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる