【完結】星に焦がれて

白(しろ)

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終章 星に焦がれて

※とある夜

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「ぁあうっ!」
「アル、声、抑えて…」
「むり、むり、ぃ…ッ、ぁんっ! あ、ぁっ」

 まるで駄々を捏ねる子供みたいに首を横に振る。その度に上質な絹糸みたいな髪がサラサラと揺れて、たまに見える薄赤く染まったうなじが凶悪的な程に色っぽい。
 否、赤くなっているのはうなじだけじゃない。皮膚が薄い部分はどこもかしこも艶めいた赤に染まっていて、すごく美味そうだと思う。実際とんでもなく美味いのを俺はもう知っている。

「んんんッ! っ、ゃ、そこやだっ、ぁ、~~っ」

 柔らかくて温かい場所に埋めた楔で弱い場所を擦り上げるとアルは上手に快感を全部拾ってイってしまう。それに合わせて隘路が不規則に締め付けるみたいに蠢くから喉の奥から動物みたいな唸り声が出た。
 でもまだイってない。まだ終わらせてやらない。

「…アル」
「⁉︎ ──ッ、ひ、う」

 イったばっかりでまだまだ敏感なのを知ってて楔を更に奥まで捩じ込む。とろとろになっているアルの中が堪らないって言うみたいに吸い付いてくるし、細い悲鳴みたいな声も可愛くて仕方がない。バックからしているせいで顔が見えなくて残念だけど、いつもは澄ましている顔が今は快感で蕩けているのを俺は知っている。

 閉じ切らない口から溢れた唾液が果物みたいに赤い唇をいやらしく濡らしているのも、澄んだ青空みたいな目が甘くてドロドロになっているのも知っている。
 そんな顔を想像しただけで狭くて温かな場所に突き入れている楔に熱が集まってずくりと疼く。少しキツくなったからきっと質量が増してしまったのだろう。

「? ふ、ぁ、何、なんでおおきく…っ」
「アルが可愛いから…っ」
「んぁあっ、ぁ、あっ、…っ、ふ、ぁ、今やだ…ん、んんっ」

 月明かりが照らす部屋にベッドの軋む音とアルのかわいい声が響く。
 誰にも聞かせたくないけど見せびらかしたい、そんな矛盾を抱えているけど見せたくない、が俺の中で圧勝して背中側から覆い被さって手のひらでアルの口を塞ぐ。
 ああ、また深く挿入ってしまった。体の下でアルの体が魚みたいに何回も跳ねているし、とろりとした青い匂いが鼻腔に届いてまた達してくれたことを知って口角が上がる。

 かわいい、かわいい。世界で一番かわいい。

 押し潰した体は硬いし柔らかさなんて全然ない。強いて上げるとすれば尻と太ももは柔らかいけれど、アルだって兵士だ。それ以外は筋肉だし、そもそも男なんだから柔らかな場所なんて無い。

 それでも俺にはこの体こそが至高だった。この体にしか欲情なんかしない。だってこの体はアルデバラン・スタクのものだ。

 恋人関係になってから、いいや、なる前からもう何回も肌を合わせているのに未だにアルを抱いているのだと思うと堪らなくなる。理性なんてすぐに切れるしそもそも俺は手加減なんて出来ない。多分今日もアルを抱き潰してしまう。今だってもうアルの声に湿り気が乗っているから多分気持ち良すぎて泣いてる。

「アルぅ?」
「っ、ふ、ぅ…」

 口から手を離しても、もう普通に喋るのも難しいのか吐息みたいな声が聞こえるだけ。でも顎に手をやって振り向かせると綺麗な青い目を潤ませて泣いているアルがいて、わかっていたこととはいえ毎回破壊力がすごくて後頭部にカッと弾ける寸前みたいな熱が集まる。

 でもなんとか理性を千切らせずに堪えて、吸い過ぎて赤くなった唇にキスを贈るとアルの方からもっとというように舌を伸ばしてくる。

「ぁー…、もう本当にアルがえっちで最高すぎる…」

 一度楔を抜くと中から前に出した白濁がとろりと垂れて来た。あんまりに破壊力があり過ぎて血管が千切れるかと思ったけどなんとか耐えてもう体に力が入らないアルを支えて仰向けにする。

「……」
「? シリウス…?」

 月明かりと頼りない夜光灯で浮かび上がるアルの体はやっぱり何度見ても同じ男の身体だ。くびれのない腰回りも、浮かび上がった筋肉も、平な胸やもう蜜を吐き出し過ぎて半分萎れてしまった中心の兆しまで、全てが自分と同じ。
 それなのに、この世のどんなものよりも俺の理性を食い散らかす。

 そもそも俺はそんなに理性的じゃない。ほとんど本能で生きてる。その俺がなけなしの理性をかき集めてアルのことを大事に抱いているのを褒めて欲しいけれど、こんな可愛くてえっちなアルのことは俺しか知らなくて良いからやっぱり誰も褒めてくれなくていい。

「あっ、ぁ、んんぅ…っ!」

 腹に当たるくらい勃起した楔の根本を指で持ちながらまたアルのとろとろになった中に埋めていく。途端にバチバチと火花みたいな快感が襲って来て歯を食い縛るけど、アルは綺麗な顔を快感に歪めて悶えていた。
 きれいでかわいい俺だけの恋人の表情に何度でも幸せが胸を満たす。

「アル、アル、気持ちいいな?」

 とん、と最奥に入る前の壁を軽く押し上げると背筋が震えるような甘い声がアルの濡れた唇からこぼれた。

「アール」

 とちゅ、とちゅ、細い腰を出来るだけ優しく掴んで柔らかく律動を繰り返すと両手で口を押さえているアルの濡れた瞳が俺を見た。髪の毛と同じ白い睫毛が涙で濡れている。頼りない灯りしかこの部屋には存在しないのに、それでも俺の目ははっきりとアルのことを捉えられる。

 アルは俺の目が大好きらしい。言葉にされたことはないけど、見てたらわかる。
 俺がじっと見つめるとアルはおずおずと口から手を離して、両手はそのまま乱れたシーツを握る。
 快感に歪んだ顔で俺を見つめるアルがあまりに扇情的で今すぐにめちゃくちゃに抱いてしまいたくなるけど耐える。でも興奮から俺も息が上がってしまって、激情を落ち着けるために最奥の壁をごり、と押し上げると浮いている白いつま先がきゅうっと丸まった。

「んうぅっ! っ、ふ、ぁ…きも、ちぃ…」

 ぞくりと鳥肌が立つ。

「きもちぃ、しりうす」

 ぶつんと糸が切れる音がした。

「あああっ⁉︎  ぁ、あっ! はげし…っ、ん、あ、ああんっ」

 ばつばつと激しく肌のぶつかり合う音がする。ベッドが軋んで、俺の乱れた呼吸とアルの感じ入っている嬌声が部屋に響く。
 中が熱い。俺が出した白濁と今出てる先走りのせいでとろとろでただでさえ気持ち良いのに、良いところを突き上げる度に媚肉がうねるからすぐにでも中に出してしまいたくなる。でも、そんなの勿体無い。

「ゃだ、やだ、これすぐイくからぁっ」

 アルの口からイくなんて言葉が出ている。教えたのは俺なのに、それを素直に口にするアルが可愛くて仕方がない。
 可愛い、可愛い、大好き。そんなチープな言葉がずっと頭の中を占領する。
 何にも知らない、真っ白なアル。欲しくて欲しくてしょうがなくて、尽くせる手は全て尽くしてやっと手に入れた俺の宝物。

「イっていいよ。何回でもイっていいから、いっぱい俺に見せて…っ」

 なるべく優しくと思っていたのにいつの間にか俺の手は強くアルの細い腰を掴んでいた。快感が強過ぎて上へ逃げようとするのを力で押さえ付けて、何度も腰をぶつける。先端の膨らみを一等狭くてとびきり敏感な場所へ捩じ込もうとすると、白いシーツを逆手に掴んだアルが細い喉を反らしながら蕩け切った甘い声をあげる。

「あー…やば、その声だけでイきそ」

 真っ白な体が熱を持ち、しっとりと汗に濡れている。
 快感を上手に拾い上げてぐずぐずになった顔で何回も「やだ」と「気持ち良い」を繰り返す可愛い姿に自分の口角が上がっていくのがわかった。

「アル」

 じっと恋人を見つめる。
 今楔の先端は最奥へと続く扉の前で止まっている。でもジリジリと焦らすように押し上げていけば、駄々を捏ねる子供のような言葉でアルが啼く。

「おく、この奥やだ…っ、こわ、い、~~~ッ!」

 どちゅんっ、と一際強く腰を押し付けると先端が肉の輪に締め付けられる。

「っ、は…っ! ぁー…やべえ、きもちいー」

 俺でさえ目の前に火花が散るような鮮烈な快感を感じているのだから、きっとアルはその比ではない。今だって声もなく達してしまっているし、腰がガクガクと震えている。陸に打ち上げられた魚みたいに白い腹がビクビクと跳ねているのがあんまりいやらしくて、それがもっと見たくて奥を捏ねるみたいに腰を揺らす。

「ひぅっ! ああッ、ぁ、やだ、やだぁっ」
「ごめ、アル、ごめん。全然腰止まんないっ」

 中の締め付けが気持ち良い、アルの全部が可愛くてえろくて、絶対に俺しか見ることが出来ない顔をもっと見たくて目が顔から逸せない。
 口からは謝罪の言葉が出るけど本当はそんなこと一ミリだって思ってない。むしろもっとぐずぐずになったら良いのにって思ってる。するけど。

 高くはないけど特別低い訳でもない、でも落ち着いていて凪いだ水面を思わせるアルの声が砂糖を煮詰めたみたいな重たいくらい甘いものになっている。泣きながら喘いでいるせいで若干声が上擦っているのもきっとその原因の一つだ。

 いつも俺を叱ってくれる声がこんな風になるのは何回聞いたって足りないくらい俺の劣情を煽ってくる。ずっと聞いていたいけど、本当はそう無理もさせられない。

「なんで、休みって一日しかねえんだろ…っ」

 明日は非番だ。非番の前の晩は決まって身体を重ねる。アルは嫌がるけどようやく手に入れたご馳走を前に我慢出来る程俺は理性的じゃないから、アルには悪いけどほぼ毎回こうやって抱いてる。
 本当は毎日だってしたいけど、それは無理だって流石の俺にもわかるからそこは我慢。
 でも我慢嫌いの俺が我慢してるんだからこれくらいの我儘はきっと許してくれる。だって、

「──き」

 嗚呼、来た。
 悦びで背筋が震える。アルがこんなふうになってくれるなんて、嬉し過ぎる誤算だった。

「すき、好き…っ、シリウス、ぁ、シリウス…ッ」
「ああ、もう…っ」
「あああッ! ぁんっ、あ、イくっ」

 かわいすぎて大好きすぎて苛立つことがあるというのを、俺はアルを抱くようになって知った。
 アルは理性が溶けてぐずぐずになるとこうやって俺に好きだって言ってくれる。こうなるまでは頑なに見せようとしない顔も晒して、とろとろになった顔と声で俺のことを好きだって言う。

 これに興奮しない男っているの?

 だってアルは自分がこんなことを口走っているのを明日には忘れてる。つまり、これはシンソーシンリってやつで、つまり本音。
 あの冷静で恥ずかしがり屋のアルが、普段俺がおねだりしないと絶対に好きだなんて言ってくれないアルが、心の奥底では俺のことを好きでいてくれている。こんなに嬉しくて幸せで、興奮することはない。

「ぅ、うぅーっ、ぁ、は…っ、~~~っ」

 もう手加減なんて忘れてアルを貪ってどれくらいの時間が経っただろうか。
 ベッドは俺たちの汗とアルの出した体液で濡れているし、シーツなんてぐちゃぐちゃ。月の位置も移動しているし、アルはもう言葉にならない声しか出せなくなっている。こうなると好きって言って貰えなくなるから少し残念だけど、どろどろぐちゃぐちゃになったアルもかわいいから全然問題ない。

「あー、だめだ…イきそう…」

 何回アルの中に出したんだっけ。忘れちゃった。
 でも俺とアルが繋がってる場所からどろどろになった白濁が溢れているから二回や三回じゃないのはわかってる。

 数回出したくらいじゃ全然足りない。でもそろそろ終わりにしないと明日口をきいて貰えなくなる。俺は知ってるんだ、朝までやっちゃうと氷の女王様みたいになったアルが笑顔のままその日一日怒るっていうのを。あれは嫌だ、だって口も聞いてくれなくなるし週に一回しかない休みの日なのに触らせても貰えなくなるから。

 だから本当は、ほんっっっっっっとうは嫌だけど。今日はこれでおしまいにする。

「アル、アル、大好き。 これでおしまいだから、頑張って…っ!」

 もう俺の声だって上手く聞こえてないし見えてない。目の焦点だって合ってないし返事だって出来ないのに、アルの両腕が俺の体に触れようと伸ばされているのを見て、それがあんまりにも嬉しくて笑ってしまう。
 初めてした時もそうだった。

 アルはどうしようもなくなった時俺に触れて欲しくなるらしい。理性も何もない、本能だけになったこんな状態で伸ばされるその腕に俺は愛を感じずにはいられない。
 細い体を掻き抱いて最後だから許してと胸中で呟きながら容赦無く腰を打ち付ける。
 アルの口からはもうほとんど声が出ない。泣いてるみたいな呼吸の荒さが耳のすぐ側で聞こえるけど俺の背中に回された手と、どこよりもアルが気持ち良くなってくれていると教えてくれる熱く潤んだ泥濘ぬかるみが俺の楔を咥え込んで離さないから動きは止めない。

 射精する為だけの乱暴な動きだけど、アルはこうされるのも嫌いじゃないって俺は知ってる。俺も、こういうの好き。
 優越感と、あのアルデバラン・スタクを好きにしているというこの状態があまりにも倒錯的で堪らない。その背徳感が最高に興奮する。

「好き、好きだよアル」

 目の裏側がチカチカして後頭部の血管が破裂しそうなくらい熱を持っている。ああもう限界だと悟ったと同時にアルの後頭部を力任せに掴んで唇を重ねた。
 呼吸も鼓動も全部重ねて、このまま溶け合って一つになるんじゃってくらい熱が最高潮に達した瞬間、一番深くにまで腰を押し付けて中に熱を放つ。何度経験してもこの瞬間の快感はすごくて全身が震えて、じわりと汗が流れた。

 身震いする程の快感の後、ゆっくりと唇を離して恋人の顔を見る。そこにはもう完全に意識を飛ばしてしまった愛しい人の姿があって一瞬やり過ぎたと思うけれど、後悔なんて微塵も無い。
 「好きだよ」もう一度囁くような声で愛を伝えて唇を重ねる。これ以上ない程の満ち足りた時間だった。

 
 自分もアルの体も綺麗にして清潔なベッドに寝転んだ頃、既にアルは深い眠りへと落ちていた。これはもう何をしても起きないなとその寝顔を見ながら思う。
 逃げられない快楽によって溢れた涙のせいで目元が赤く腫れているのが可哀想だけど、そんな痛ましい姿まで可愛いと思うのだから仕方がない。

「…へへ」

 一般的に言えば鍛えられている、でも俺から言えば細い体を抱き締めて目を閉じる。
 初めて出会った日から今日まで、永かったけれど充実していた日々を思い出しながら俺は眠りについた。
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