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七章
裏切られた!
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しばらくしてひとりの男がやってきた。
――この人が……!
真梨子の心臓がどくんと鳴った。
そこにいたのは隙のないスーツ姿に身を固めた長身の美丈夫だった。
スカイ・グレーのスーツにシルバー・スカイのシャツ。淡いブラウンのネクタイに茶色の靴。男にしては長めの髪は一分の隙もなくかっきりとセットされ、ひげも神経質なぐらいきれいにそってある。いかにも威圧的な角張ったフレームのメガネをしているせいもあって、何だか、映画に出てくる『有能だが無礼で冷酷な、きらわれ者の教授』を思わせる風情。
身長は一八〇センチ以上はありそうだ。均整のとれた体型、顔立ちも端正で、おとなの渋さを感じさせる。二枚目俳優としても充分、通用するだろう。女にだってモテるだろう。こんな人物が一〇何年も引きこもり生活をしていたなんてとても信じられないほど。
見るものが見ればそのスーツ姿がきわめて金のかかったものであることがわかる。スーツはエルネメジルド・ゼニア、シャツはタイ・ユア・タイ、ネクタイはメローラ、靴はタニノ・クリスチー。いずれもファッション大国イタリアが世界に誇る最高級ブランド。まずは世界的な作家にふさわしい銘柄だといえる。ブランド品に弱い女たちをしびれさせ、競争意識の強い男たちを恐れ入らせるには充分な格好だ。もっとも、ブランド品になど何の興味もない真梨子にはそんなことはわからない。真梨子にわかったのは『何だかすごくお金がかかっていそう』という漠然とした印象だけ。そして、その全身を包む異様なまでの冷たさ。
青みを帯びた灰色のスーツとシャツを着ているだけで充分にクールになる。その上、わずかに加えられたネクタイの茶色味がそのクールさをさらに引き立て、冷たい印象にしている。かっきりとセットされた髪に神経質なまでにそられたひげ。そして、メガネの奥の瞳は冷酷というのさえ越えて、あらゆる感情を持たない無機的な感じさえ抱かせる。
真梨子はその姿にぞくりとした。ひどく居心地の悪いものを感じた。はじめて見る森山鴻志の姿は何だかひどく人工的で人間味が感じられなかった。人間というよりまるでSF映画に出てくるアンドロイドのよう。一切の自然を拒否した、『つくられしもの』を感じさせるのだ。
真梨子の抱いていたイメージではなかった。
『ヒト物語』を書いた森山鴻志。
『はじめてのバラード』を作った森山鴻志。
真梨子のイメージのなかの森山鴻志はもっとナチュラルで、暖かみがあって、繊細で、そして、傷つきやすい。そんな人物像だった。目の前にいる人間はまるでちがう。人工的で、冷淡で、無機的で、自分以外の何もかもを拒否しているような、そんな存在。そんなはずはないとわかっていても、ついついロボットか何かではないかと疑ってしまう。そんな人物だった。
ナチスの高官に関するユダヤ人の小話がある。
『本官の目のどちらが偽眼かいいあてることができたら今日のところは見逃してやろう』
「左目です』
『なぜ、わかった!』
『左目のほうが人間らしく見えるもので』
真梨子はその小話を聞いて笑ったが、同時に『それはない!』とも思った。いくら何でも、どんなに残酷で冷酷な人間であっても、作りものの目より人間らしくない目をしているなんて、そんなことがあるわけない……。
だが、いま、真梨子は自分がまちがっていたことを知った。人間が、正真正銘の生身の人間が、ときには作りものよりも非人間的に見えることもあるのだということを教えられた。
いま、目の前にいる男こそまさに、その典型だった。腕のいい人形作家なら彼よりも人間らしく見える人形を作ることなど簡単だろう。それほどに、森山鴻志という人間は無機的で、機械的だった。
ショックだった。
あの『ヒト物語』の、人類に対する限りない思いやりと未来に対するはるかな希望に満ちた『ヒト物語』の作者がこんな人間だったなんて……思いやりと愛情に満ちたやさしい人間だけに書ける世界だと思っていたのに、単に創作テクニックの問題なの? 人を感動させる作品を生み出せることと人格とは無関係なの?
――で、でも、それってつまり、『ずば抜けて知的』ってことよね?
真梨子はあわててそう思いなおした。ずっと憧れてきた人物を悪く思うことを心が拒否したのだ。
――そ、そうよ。きっと、そうよ。知的すぎて冷淡に見えるだけなんだわ。『見た目は不愛想でも話してみればけっこういい人』っていうのはありがちなパターンじゃない。この人もそうよ。話してみればきっと、思っていた通りのいい人にちがいないわ……。
真梨子はぎこちない笑みを浮かべた。いつもの営業用スマイルではない、心からの微笑みを持って迎えるつもりだったのに、あまりのイメージのギャップが自然な笑みを奪いとってしまった。おかげで、普段の営業用スマイルにも及ばない引きつった笑顔になってしまった。
――よりによって森山鴻志の前で……。
ぎこちない笑みをデスマスクのように顔に張りつけたまま、真梨子はどっぷりと落ち込んだ。
ふいに、鴻志が頭を軽く下げた。
「森山鴻志です」
見た目通りの、礼儀正しいが無機的で冷淡な声。礼儀を守っている分、逆にすべてを拒絶しているのような印象を受ける。
言われて真梨子は、自分が『依頼人に先に頭を下げさせる』という大失態をしでかしてしまったことに気がついた。
『依頼人は現金だ! 媚びて、媚びて、媚びまくれ! それが明日の繁栄につながる。まちがっても現金……じゃなかった。依頼人を不愉快にさせるような真似はするなよ』
と言うのは金の亡者な島村が口を酸っぱくして言っていること。そのため、『島村武雄弁護士事務所』は礼儀作法に関してはことのほかうるさい。依頼人に先に頭を下げさせるなんてもってのほか。危険度4クラスの大失態。島村に知られたら『事務所の評判を落とす!』の一言でクビにされかねない。
いや、いやいや、そんなことより何よりも、敬愛する森山鴻志に対して礼を欠いたことが恥ずかしい。何とかとりつくろわなくては……。
「あっ、ご、ごていねいに……。小山内真理子です。私が担当をさせていただきます……」
あわてて型通りの口上を口にする。その一方で頭のなかはフル回転。どうやってとりつくろおう? 失態をカバーするには、自分が彼をどう思っているか伝えるには、どうすれば……。
そうだ、いいことがある!
頭のなかで卵が割れて朝の日ざしが満ちみちた。真梨子はおおげさな笑顔になっていった。
「あ、あの、あたし、あなたの大ファンなんです! 『ヒト物語』は全巻、読みました。本棚に大切においてあります」
「それはどうも」
興奮する真梨子とは対照的に鴻志の態度はあくまでもそっけない。ファンを前にしているというのにうれしいどころか、感情ひとつ感じさせない。相変わらず無機的な目に無機的な表情を湛えて立っているだけ。『ファンサービス』などと言う言葉は、そもそも存在すら知らないとしか思えない態度だった。
真梨子は拍子抜けした。ファンを前にしているんだし、少しはうれしそうにしてくれてもよさうなものだけど。たとえ、営業用の演技だとしても……。
――でも、仕方ないか。駆け出しの作家じゃなし。森山鴻志ほどの声価があればファンに囲まれることもしょっちゅうだろうし、いまさらひとりぐらいのファンを前にしたって気にするはずもないわよね。まして、三〇過ぎのおばさんじゃあ……。
真梨子はこっそり、ため息をついた。
鴻志の機械的な表情に似つかわしい、機械的な声がした。
「依頼の話に入りたいのですが。よろしいですか?」
「えっ? あっ、はい、もちろん……!」
またやってしまった。依頼人を放っておいて自分ひとりの世界に入ってしまうなんて。これじゃあ本当に弁護士失格。真梨子は自分の情けなさに頭を小突きたくなった。ひとりきりならやっていたろう。
真梨子は鴻志に椅子をすすめると、自分もデスクの椅子についた。
「え、ええと、それでは……ご依頼の話を……」
真梨子が言うが早いか、鴻志は封筒をデスクの上に置いた。
「これは……?」
いぶかしむ視線で鴻志を見る。
鴻志は例によってあくまでも機械的な声で告げた。
「死刑にしたい人間のリストです」
「死刑⁉」
真梨子は仰天した。叫んだ。思考が停止した。見開いた目で鴻志を見た。封筒に目を落とした。それからまた鴻志を見た。鴻志は視線で封筒のなかを見るよう促した。真梨子はようやく我に返った。あわてた手付きで封筒を取りあげ、なかの紙を取り出す。
驚いたことに、封筒のなかには何枚もの紙があり、そのすべてにびっしりと氏名が印字されていた。ざっと見ただけで三〇〇名はありそうだ。
――し、死刑って……これ全部ぅ~?
『死刑にしたい』と言うだけでも穏やかではないのに、しかも、この人数。いったい、この男は何を考えているのだろう。正気なのだろうか?
真梨子は理解不能になった。
改めてリストの名前を見てみた。そこにあるのは有名人の名前ばかりだった。政治家、知識人、評論家、作家、マンガ家、芸能人等々……。いくつもの業界にまたがっている。ここに記された人々の間にどんな共通点があるのか、真梨子にはまるで見当もつかなかった。
「あ、あの……」
真梨子はようやくリストから顔を上げた。ためらいがちに尋ねる。
「死刑にしたいって……これ、全部?」
鴻志は静かにうなずいた。
真梨子はいよいよ目の前の男の正気を疑った。
「で、でも、何で……?」
ようやく、それだけを尋ねる。
鴻志はゆっくりと口を開いた。
「殺人者たちだからです」
「殺人者って……」
真梨子はもう一度リストに目を落とした。目を凝らしてよおく見る。そこに記されているのは有名人の名前ばかり。もちろん、そのなかの誰ひとりとして人を殺したなんて聞いたこともない。もし、そんなことがあれば大さわぎになっているはずだ。
鴻志は真梨子のとまどいを正確に見抜いたようだ。かわることのない無機的な視線を真梨子に向けて、静かにいった。
「説明しましょう」
口調はあくまで礼儀正しく、穏やかだが、まさにそれだからこそ、氷のような冷たさに満ちていた。礼儀作法とは本来、人と人の関わりをなめらかにするためのもののはずなのに、鴻志に限ってはまるで逆。人をよせつけないバリアとして使っているように思える。慇懃無礼という言葉はあるが、これはさしずめ『慇懃冷徹』とでも言うべきか。真梨子は、『人を不快な気分にさせる礼儀正しさ』というものが存在することをはじめて知った。
鴻志は真梨子の気持ちなどおかまいなしに、慇懃冷徹な口調のままつづけた。
「『ヒト物語』を読んでいるというなら、私の境遇はご存じでしょう?」
「え、ええ……」
「それなら話は早い。ご存じの通り、私は『学校に行かない』という理由で幾度となく殺されかけた。それはつまり、この社会そのものが私を殺そうとしたということ。私は犯罪被害者ならぬ社会被害者だと言っていい」
「社会……被害者」
「そう。社会被害者です。私は子供の頃、親の暴力によって毎日のように死ぬ思いを味わった。そして、それは暴力ではなく、正当な行為として容認されていた。そして、現在。親の暴力によって殺される子供の数はうなぎ登りだ。にもかかわらず……」
鴻志の目に稲妻が走った。そのときはじめて、鴻志の無機的な印象が破れ、その奥から人間味がかいま見えた。それはやさしさでも、思いやりでも、愛情でもなく、怒りと憎悪という名の人間味であったけれど。
機械的な仮面を破って現れたそれはわずかではあったけれど、真梨子が思わず息を呑み、のけ反るほど、激しかった。
「世の中の正義の味方たちは相も変わらず体罰を支持し、その必要性を主張しています。それが殺人行為でなくて何だと言うのです?」
鴻志は一瞬で無機的な印象を取り戻し、静かに告げた。メガネの奥の両目は、のぞき込んでいると魂まで引きこまれそうなほど、虚無的で奥深かった。真梨子は怖気を感じた。
「で、でも、彼らが殺しているわけじゃ……」
熱病にかかったときのような体の震えを感じながら、真梨子はようやくそれだけを言った。
「殺しているんです」
鴻志はきっぱりと言い切った。
「第一に、正義の味方たちは『厳しくしつけなければろくな人間にならないぞ』、『痛い目にあわせて思い知らせなければ犯罪者になるぞ、人を殺すようになるぞ』と叫ぶことで、親の育児不安を助長し、体罰へ駆り立てています。
第二に、それらの主張があることによって無責任な親たちは『しつけ』と称して殴りつけることができるようになる。子供を殴り殺して捕まった親が『しつけのつもりだった』というのはいつものこと。この言い訳を許しているのが正義の味方たちです。
そして第三に……」
そこまで言って、鴻志はいったん言葉を切り、目を閉じた。一呼吸いれてから目を開けた。そのとき目に浮かんだ憎悪の炎は真梨子を窒息させるほどに濃密なものだった。
「正義の味方たちは心を傷つけられた人間たちを自殺へと追いやっています。心を傷つけられた人間は罪悪感と劣等感の固まりになっているもの。そこへ、『体罰は正しい』だの、『愛しているからこそ殴るのだ』などと吹き込まれたらどうなると思います?
『殴られたのはすべて自分が悪いせいだ、自分には何の価値もないのだ、殺されても仕方がない存在なのだ』という気になってしまう。その思いが積み重なり、生きる意欲がそがれ、やがては自殺へと追い込まれる。この世に自殺する人間などいません。自殺させられているんです」
「な、何でそんなことが言えるのよ……」
真梨子はようやくそれだけを言った。あまりの衝撃に弁護士としての口調を取り繕う余裕さえなくしていた。完全に素の口調になってしまっている。
鴻志はかまわずに言い切った。
「私自身がそうだからです」
「あなたが……?」
「そうです。正義の味方たちの声にふれるつど、私は打ちのめされました。世の中の誰も私たちのことなど考えていない、私たちが生きることなど望んではいないのだと思い知らされました。そのたびに『死ぬんだ、死ぬんだ』と思いながら町をさ迷った。突然、車が突っ込んできてケリをつけてくれることを祈りつづけた。彼らは銃もナイフも使わない。ですが、その言葉でたしかに大勢の人間を殺しているんです」
「でも、それはあなたひとりの経験で……」
「ひとりではたりませんか? では、何人いればいいんです? 一〇人ですか? 一〇〇人? 一〇〇〇人? それとも、四〇〇万人がガス室に送られるようになるまで無視しつづけますか?」
「な、なにも、そんな……」
「たしかに、私は普通の人間ではない。実際に死んでもいない。すべての自殺者が私と同じ思いであるなどと思うのは馬鹿げている。ですが、私とて大マゼラン星雲からやってきた異星人ではない。同じ地球に生まれた同じ人間です。である以上、他の人間とまったく共通点がないと考えるのはさらに馬鹿げている。
現代日本の自殺者数は年間数万人以上。そのうちの一パーセントが私と同じ思いで死んでいるとしても数百人。一年間に数百人です。これが大量殺戮でなくて何なのです? そうである以上、正義の味方たちは殺人犯として裁かれ、その罪を償わなくてはならない。これは非難でも抗議でもない。正式な告訴です。この世のすべての正義の味方には死刑になることで私たちを殺している罪を償う義務がある。本来ならば……」
鴻志はそう言っていったん、言葉を切った。小さく息を吸うと、再び話しはじめた。
「本来であれば、わざわざ私たちが死刑にする必要もない。自分の言っていることが正しいと思うならこの告訴を受けた時点で自ら死ぬはずです。そうでなければ『自分たちの殺しているのは人間ではない』と言っているのと同じ。傲慢で鼻持ちならない邪悪な差別主義者と言うことになる。
もちろん、高潔で勇敢な正義の味方たちがそんな邪悪な卑怯者であるはずもない。すぐにも死を決意するに決まっています。ですが、死ぬのは誰しも怖いもの。自分では死ねないかも知れない。だが、生きていては本人の名誉が汚れる。そこで我々が手伝う。死刑にすることで名誉を保ってやることこそ親切と言うものです。
逆に、もしこの告訴を受けても死ぬ気にならないとすればそれは、『自分が殺しているのは人間ではない』と、本気で思っていることを意味します。そんな腐りきった差別主義者たちを生かしておけばどうなるかは……ホロ・コーストが証明している。そんな人間たちはひとり残らず滅ぼすことこそ、人類全体の利益と言うものです」
『そうでしょう?』と言いたげな視線で鴻志は真梨子を見た。真梨子は一瞬の淀みすらなく垂れ流されつづける腐敗の論理に圧倒されていた。陸に上げられた魚のように口をぱくぱくさせるのがやっとだった。
「で、でも、何も殺さなくても……」
ようやく、それだけを言った。
鴻志は静かに答えた。
「死刑を要求しているのは私ではありません」
その言葉に真理子は混乱した。『死刑にしたい』と言いながら、今度は『死刑を要求してはいない』と言う。どういう意味? 彼は自分の言っていることがわかっているの?
真梨子はいよいよ鴻志の正気を疑った。
もちろん、鴻志は自分の言っていることを完全に理解していた。説明することもできた。静かに、ゆっくりと、赤ん坊に言い聞かせるように説明した。
「死刑を要求しているのは私ではありません。彼ら自身です。そのリストにあるのは全員、死刑支持者です。死刑制度そのものに議論の余地はあろうともただ一点、『人を殺したら死んで償え』と要求する人間が人を殺したなら自ら死ぬ義務を負う、という点に議論の余地はない。だから、彼らは死ななくてはならない。生きているかぎり、私たちを人間と認めたことにならない。それでは、罪を償うことにはならない。『人を殺したら死んで償え』というかぎり。『自分の罪を許してくれ、自分も他人の罪を許すようつとめるから』と言わないかぎり。彼らには死刑になる義務がある」
延々と語られる腐敗の論理に、真梨子は窒息しそうになった。それでも必死に頭を働かせ、反論を捜し求めた。このまま黙って聞いていれば、森山鴻志の言い分こそが正しいのだと思ってしまいそうだ。いや、すでに思わされはじめている。だからこそ、『何としても反論しなくてはならない』というあせりを感じているのだ。
たしかに。鴻志の境遇には同情する。憎みたくなる気持ちもわかる。だからと言って、そんな皆殺しが認められるわけがない。どんな理由があれ、『人を殺す』ことが正しい解決方法であるはずがないのだから。
だから、必死になって反論の根拠を捜した。頭をフル回転させた。しかし、考えても、考えても、有効な反論は思いつかない。すでに脳細胞の隅々まで腐敗の論理に影響されてしまっている。ともすれば『それが正しいかも……』という思いが浮かび上がる。その誘惑を押しとどめ、真梨子は反論を捜しつづけた。その挙句に言った言葉はしかし、腐敗の論理の前ではあまりにも貧相で微弱、そして、無力なものだった。
「で、でも、これは民事で……民事では体刑は要求できないわ。賠償金しか……」
そのあまりにも貧弱な反論は予想通り、あっけなく葬り去られた。
「では、法律を変えればいい」
その一言だった。
「法律は人間のためにあるもの。法律によって人間か苦しめられることはあってはならない。いまの法では死刑にできないと言うなら変えればいい。いくらでも死刑にできるように」
「……そんなに殺したいの?」
真梨子はうめいた。『生命の尊厳』などという概念すらかけらも感じさせない鴻志の言葉に、頭のなかでふつふつと怒りが沸き起こった。
「もちろん」
鴻志はうなずいた。
「ですが、勝手に殺そうと言うのではない。堂々と、正当な方法で死刑にしようと言うんです」
鴻志は言葉を切った。そのとき、再び、無機的で機械的な印象が破れ、人間味が姿を見せた。『嘲り』という名の人間味が。
メガネの奥の目に皮肉な光を宿し、唇を薄く笑う形にねじ曲げて、鴻志はその一言を口にした。
「死刑にするなら、いいんだろう?」
激しい音が鳴り響いた。真梨子はついに爆発した。デスクを両手で勢いよく叩き、立ち上がった。声のかぎりに叫んだ。
「ふざけないで! 自分は人を殺していいだなんて本気で思ってるの!」
その叫びは空気を伝わり、ドアを飛び越え、事務所全体に響き渡った。何事かと事務所の人間すべてが真梨子の部屋に視線を向けたほどだった。
それほどの叫びを間近で上げられながらも、鴻志はその無機的な印象を崩すことはいささかもなかった。むしろ、真梨子が興奮すればするほど、その無機的で機械的な印象はいやますようにさえ見えた。
鴻志はゆっくりとうなずいた。
「もちろん。私には正当な権利があります」
「どんな権利よ!」
「被害者の権利です」
その一言に真梨子は絶句した。背筋を冷たいものが昇っていった。まるで、背骨が徐々に氷にかわっていったよう。のけ反り、大きく見開いた目で鴻志を見ていた。
鴻志はつづけた。
「私は社会被害者です。である以上、社会の側には私の訴えを受けて罪を償う義務がある。そして、『人を殺したら死んで償え』というかぎり、『自分の罪を許してくれ、自分も他人の罪を許すようつとめるから』と言わないかぎり、我々を殺している罪の償いは死刑以外にない。つまり、社会は私が『死刑にしろ』と言ったならそれが誰であれ、死刑にしなくてはならないということです」
「……ずいぶんと傲慢なことね。他人の生き死にはすべて、あなたが決めるって言うわけ?」
「その通り」
鴻志はあくまでも静かにうなずいた。
「私は被害者だ。『被害者の権利』を主張する限り、私に従わなくてはならない。私に従わないならそれは、被害者よりも加害者を大切にし、被害者の生命をゴミクズ扱いすると言うこと。それとも、あなたも『殺した側の気持ちを理解してやらなくてはならない』などという信じられない偽善者ですか? 幼い頃の私が受けた仕打ちが正当だったと、私は殺されても文句の言えない存在だと、そう言うわけですか?」
「そ、そうじゃない……そうじゃないけど」
真梨子は口ごもった。いくらいまの鴻志の言うことが許せないと言っても、彼が受けてきた仕打ちが正当だったなどと言う気はない。まして、『殺されても文句の言えない存在』だなどとは思わない。でも……だからって……。
鴻志はうなずいた。
「では、私に協力してもらおう。『人を殺したら死んで償え』という人間たちを皆殺しにするために」
「でも、彼らにだって生きる権利は……」
「では、彼らを生かしておいて将来、自分の子供が自殺に追い込まれたとしても文句は言わないのですね? あなたの子供には『脅かされることなく生きる権利』はないと言うわけだ。実の親に生きる権利を否定された子供の意見をぜひ、聞きたいものですね」
最後の言葉に真梨子の頭のなかで稲妻がはじけた。唇をかんでうつむき、身を震わせる怒りを必死にこらえる。なんと卑劣で残酷な言葉だろう。こんな言い方をされては誰も反論などできるはずもない。まっとうに議論するのではなく、相手に『悪』のレッテルを張りつけることで断ち切り、自分の主張を押し通そうとする鴻志のやり方を真梨子は本気で憎んだ。
鴻志は怒りに耐えてうつむく真梨子をじっと見ていた。やがて、小さく息をつき、肩をすくめた。
「どうも、あなたは勘違いしているようだ。私が怒りや憎しみで行なっていると思っているらしい」
「……ちがうっていうの?」
「もちろん、ちがいます」
「じゃあ、なんなの?」
「愛です」
「愛!」
あまりにも似つかわしくない言葉に真梨子は狂躁的に笑い出した。
「よくいうものね、愛だなんて! 人を殺して何が愛よ!」
狂ったように叫ぶ真梨子に対し、鴻志は優雅なほど無機的な仕種で人差し指を振って見せた。
「『理由さえあれば人を殺していい』と考える人間がいなくなれば、戦争も、弾圧も、迫害も、町中の殺人も、確実になくなる。彼らを皆殺しにすることで人類は恒久平和を得ることができる。つまり、私の行いは人類を、人類の未来を愛するがゆえの行為。これこそ、真の人類愛というものです。なるほど。たしかに、殺しはじめのときは悲しい思いをする人も大勢いるでしょう。しかし、案ずるには及びません。これはすべて愛ゆえの行為なのですから」
鴻志はいったん言葉を切ると先ほどと同じ、皮肉を込めた薄い笑いを浮かべた。そして、その一言を口にした。真梨子の生涯のなかで『愛』という言葉をもっとも汚す一言を。
「愛をもって行なえば必ず伝わる」
――な、なんてことを……。
真梨子は心でうめいた。脳が毒蛾の鱗粉をふりかけられたようにぴりぴりする。どんな理由であれ、たとえ本物の愛情があってのことだとしても、殺された側がそれを理解するなんてあるはずがない。なのに、こんなことを言うなんて。手前勝手な理屈をこねて人を殺すことを正当化するような底無しの卑怯者だったなんて。森山鴻志という人間を偶像視していたからこそ、それを破壊された衝撃は大きく、怒りがつのった。
――そりゃあ、あんな生い立ちなら憎みたくなるのもわかるわよ。同情ならいくらでもする。でも、だからって殺すなんて……それじゃ非難してる相手と同じじゃないの! それに……それに……!
「もういいかげんにして!」
真梨子は怒りを爆発させた。手にしたリスト入りの封筒を思いきり床にたたきつけた。怒りを込めた目で鴻志を見た。鴻志はいささかも動じることなく無機的で機械的な視線で真梨子をじっと見ていた。
真梨子は鴻志をにらみながら叫んだ。
「あなたがそんな人だとは思わなかったわ! がっかりよ。『ヒト物語』はあんなに素敵な物語だから、あなたもきっとそうなんだと思ってた。それなのに……自分に従わないやつは悪魔だなんてよくそんな傲慢なことが言えるわね! そんな思い上がったやつの弁護なんてごめんだわ! さっさと帰って!」
真梨子の怒りに対して鴻志は静かに床にたたきつけられた封筒をひろい上げた。それから真梨子を見た。その視線が真梨子を怖じけづかせたが、彼女はあらん限りの勇気を振り絞ってにらみ返した。
鴻志は静かに言った。
「では、失礼します。気がかわったら連絡してください」
「気がかわったりしないわよ」
真梨子は頬をふくらませながら言った。
すると鴻志はかすかに微笑んだように見えた。やけに好意的に思える笑みだった。見間違いかと思うぐらい、ほんの一瞬だけの表情だったけど。でも、もし、その微笑みが本当なら……まちがいなくこの人に好きになれる。そう思う笑みだった。
鴻志は部屋を出ていこうとした。ドアのノブに手をかけた。真梨子はふと気になって声をかけた。
「……大した演説だったわね。学校にも行ってないくせに何であそこまでいえるの?」
「師匠がいいもので」
「師匠って?」
ふっ、鴻志は笑いながら答えた。
「世間さまですよ」
――この人が……!
真梨子の心臓がどくんと鳴った。
そこにいたのは隙のないスーツ姿に身を固めた長身の美丈夫だった。
スカイ・グレーのスーツにシルバー・スカイのシャツ。淡いブラウンのネクタイに茶色の靴。男にしては長めの髪は一分の隙もなくかっきりとセットされ、ひげも神経質なぐらいきれいにそってある。いかにも威圧的な角張ったフレームのメガネをしているせいもあって、何だか、映画に出てくる『有能だが無礼で冷酷な、きらわれ者の教授』を思わせる風情。
身長は一八〇センチ以上はありそうだ。均整のとれた体型、顔立ちも端正で、おとなの渋さを感じさせる。二枚目俳優としても充分、通用するだろう。女にだってモテるだろう。こんな人物が一〇何年も引きこもり生活をしていたなんてとても信じられないほど。
見るものが見ればそのスーツ姿がきわめて金のかかったものであることがわかる。スーツはエルネメジルド・ゼニア、シャツはタイ・ユア・タイ、ネクタイはメローラ、靴はタニノ・クリスチー。いずれもファッション大国イタリアが世界に誇る最高級ブランド。まずは世界的な作家にふさわしい銘柄だといえる。ブランド品に弱い女たちをしびれさせ、競争意識の強い男たちを恐れ入らせるには充分な格好だ。もっとも、ブランド品になど何の興味もない真梨子にはそんなことはわからない。真梨子にわかったのは『何だかすごくお金がかかっていそう』という漠然とした印象だけ。そして、その全身を包む異様なまでの冷たさ。
青みを帯びた灰色のスーツとシャツを着ているだけで充分にクールになる。その上、わずかに加えられたネクタイの茶色味がそのクールさをさらに引き立て、冷たい印象にしている。かっきりとセットされた髪に神経質なまでにそられたひげ。そして、メガネの奥の瞳は冷酷というのさえ越えて、あらゆる感情を持たない無機的な感じさえ抱かせる。
真梨子はその姿にぞくりとした。ひどく居心地の悪いものを感じた。はじめて見る森山鴻志の姿は何だかひどく人工的で人間味が感じられなかった。人間というよりまるでSF映画に出てくるアンドロイドのよう。一切の自然を拒否した、『つくられしもの』を感じさせるのだ。
真梨子の抱いていたイメージではなかった。
『ヒト物語』を書いた森山鴻志。
『はじめてのバラード』を作った森山鴻志。
真梨子のイメージのなかの森山鴻志はもっとナチュラルで、暖かみがあって、繊細で、そして、傷つきやすい。そんな人物像だった。目の前にいる人間はまるでちがう。人工的で、冷淡で、無機的で、自分以外の何もかもを拒否しているような、そんな存在。そんなはずはないとわかっていても、ついついロボットか何かではないかと疑ってしまう。そんな人物だった。
ナチスの高官に関するユダヤ人の小話がある。
『本官の目のどちらが偽眼かいいあてることができたら今日のところは見逃してやろう』
「左目です』
『なぜ、わかった!』
『左目のほうが人間らしく見えるもので』
真梨子はその小話を聞いて笑ったが、同時に『それはない!』とも思った。いくら何でも、どんなに残酷で冷酷な人間であっても、作りものの目より人間らしくない目をしているなんて、そんなことがあるわけない……。
だが、いま、真梨子は自分がまちがっていたことを知った。人間が、正真正銘の生身の人間が、ときには作りものよりも非人間的に見えることもあるのだということを教えられた。
いま、目の前にいる男こそまさに、その典型だった。腕のいい人形作家なら彼よりも人間らしく見える人形を作ることなど簡単だろう。それほどに、森山鴻志という人間は無機的で、機械的だった。
ショックだった。
あの『ヒト物語』の、人類に対する限りない思いやりと未来に対するはるかな希望に満ちた『ヒト物語』の作者がこんな人間だったなんて……思いやりと愛情に満ちたやさしい人間だけに書ける世界だと思っていたのに、単に創作テクニックの問題なの? 人を感動させる作品を生み出せることと人格とは無関係なの?
――で、でも、それってつまり、『ずば抜けて知的』ってことよね?
真梨子はあわててそう思いなおした。ずっと憧れてきた人物を悪く思うことを心が拒否したのだ。
――そ、そうよ。きっと、そうよ。知的すぎて冷淡に見えるだけなんだわ。『見た目は不愛想でも話してみればけっこういい人』っていうのはありがちなパターンじゃない。この人もそうよ。話してみればきっと、思っていた通りのいい人にちがいないわ……。
真梨子はぎこちない笑みを浮かべた。いつもの営業用スマイルではない、心からの微笑みを持って迎えるつもりだったのに、あまりのイメージのギャップが自然な笑みを奪いとってしまった。おかげで、普段の営業用スマイルにも及ばない引きつった笑顔になってしまった。
――よりによって森山鴻志の前で……。
ぎこちない笑みをデスマスクのように顔に張りつけたまま、真梨子はどっぷりと落ち込んだ。
ふいに、鴻志が頭を軽く下げた。
「森山鴻志です」
見た目通りの、礼儀正しいが無機的で冷淡な声。礼儀を守っている分、逆にすべてを拒絶しているのような印象を受ける。
言われて真梨子は、自分が『依頼人に先に頭を下げさせる』という大失態をしでかしてしまったことに気がついた。
『依頼人は現金だ! 媚びて、媚びて、媚びまくれ! それが明日の繁栄につながる。まちがっても現金……じゃなかった。依頼人を不愉快にさせるような真似はするなよ』
と言うのは金の亡者な島村が口を酸っぱくして言っていること。そのため、『島村武雄弁護士事務所』は礼儀作法に関してはことのほかうるさい。依頼人に先に頭を下げさせるなんてもってのほか。危険度4クラスの大失態。島村に知られたら『事務所の評判を落とす!』の一言でクビにされかねない。
いや、いやいや、そんなことより何よりも、敬愛する森山鴻志に対して礼を欠いたことが恥ずかしい。何とかとりつくろわなくては……。
「あっ、ご、ごていねいに……。小山内真理子です。私が担当をさせていただきます……」
あわてて型通りの口上を口にする。その一方で頭のなかはフル回転。どうやってとりつくろおう? 失態をカバーするには、自分が彼をどう思っているか伝えるには、どうすれば……。
そうだ、いいことがある!
頭のなかで卵が割れて朝の日ざしが満ちみちた。真梨子はおおげさな笑顔になっていった。
「あ、あの、あたし、あなたの大ファンなんです! 『ヒト物語』は全巻、読みました。本棚に大切においてあります」
「それはどうも」
興奮する真梨子とは対照的に鴻志の態度はあくまでもそっけない。ファンを前にしているというのにうれしいどころか、感情ひとつ感じさせない。相変わらず無機的な目に無機的な表情を湛えて立っているだけ。『ファンサービス』などと言う言葉は、そもそも存在すら知らないとしか思えない態度だった。
真梨子は拍子抜けした。ファンを前にしているんだし、少しはうれしそうにしてくれてもよさうなものだけど。たとえ、営業用の演技だとしても……。
――でも、仕方ないか。駆け出しの作家じゃなし。森山鴻志ほどの声価があればファンに囲まれることもしょっちゅうだろうし、いまさらひとりぐらいのファンを前にしたって気にするはずもないわよね。まして、三〇過ぎのおばさんじゃあ……。
真梨子はこっそり、ため息をついた。
鴻志の機械的な表情に似つかわしい、機械的な声がした。
「依頼の話に入りたいのですが。よろしいですか?」
「えっ? あっ、はい、もちろん……!」
またやってしまった。依頼人を放っておいて自分ひとりの世界に入ってしまうなんて。これじゃあ本当に弁護士失格。真梨子は自分の情けなさに頭を小突きたくなった。ひとりきりならやっていたろう。
真梨子は鴻志に椅子をすすめると、自分もデスクの椅子についた。
「え、ええと、それでは……ご依頼の話を……」
真梨子が言うが早いか、鴻志は封筒をデスクの上に置いた。
「これは……?」
いぶかしむ視線で鴻志を見る。
鴻志は例によってあくまでも機械的な声で告げた。
「死刑にしたい人間のリストです」
「死刑⁉」
真梨子は仰天した。叫んだ。思考が停止した。見開いた目で鴻志を見た。封筒に目を落とした。それからまた鴻志を見た。鴻志は視線で封筒のなかを見るよう促した。真梨子はようやく我に返った。あわてた手付きで封筒を取りあげ、なかの紙を取り出す。
驚いたことに、封筒のなかには何枚もの紙があり、そのすべてにびっしりと氏名が印字されていた。ざっと見ただけで三〇〇名はありそうだ。
――し、死刑って……これ全部ぅ~?
『死刑にしたい』と言うだけでも穏やかではないのに、しかも、この人数。いったい、この男は何を考えているのだろう。正気なのだろうか?
真梨子は理解不能になった。
改めてリストの名前を見てみた。そこにあるのは有名人の名前ばかりだった。政治家、知識人、評論家、作家、マンガ家、芸能人等々……。いくつもの業界にまたがっている。ここに記された人々の間にどんな共通点があるのか、真梨子にはまるで見当もつかなかった。
「あ、あの……」
真梨子はようやくリストから顔を上げた。ためらいがちに尋ねる。
「死刑にしたいって……これ、全部?」
鴻志は静かにうなずいた。
真梨子はいよいよ目の前の男の正気を疑った。
「で、でも、何で……?」
ようやく、それだけを尋ねる。
鴻志はゆっくりと口を開いた。
「殺人者たちだからです」
「殺人者って……」
真梨子はもう一度リストに目を落とした。目を凝らしてよおく見る。そこに記されているのは有名人の名前ばかり。もちろん、そのなかの誰ひとりとして人を殺したなんて聞いたこともない。もし、そんなことがあれば大さわぎになっているはずだ。
鴻志は真梨子のとまどいを正確に見抜いたようだ。かわることのない無機的な視線を真梨子に向けて、静かにいった。
「説明しましょう」
口調はあくまで礼儀正しく、穏やかだが、まさにそれだからこそ、氷のような冷たさに満ちていた。礼儀作法とは本来、人と人の関わりをなめらかにするためのもののはずなのに、鴻志に限ってはまるで逆。人をよせつけないバリアとして使っているように思える。慇懃無礼という言葉はあるが、これはさしずめ『慇懃冷徹』とでも言うべきか。真梨子は、『人を不快な気分にさせる礼儀正しさ』というものが存在することをはじめて知った。
鴻志は真梨子の気持ちなどおかまいなしに、慇懃冷徹な口調のままつづけた。
「『ヒト物語』を読んでいるというなら、私の境遇はご存じでしょう?」
「え、ええ……」
「それなら話は早い。ご存じの通り、私は『学校に行かない』という理由で幾度となく殺されかけた。それはつまり、この社会そのものが私を殺そうとしたということ。私は犯罪被害者ならぬ社会被害者だと言っていい」
「社会……被害者」
「そう。社会被害者です。私は子供の頃、親の暴力によって毎日のように死ぬ思いを味わった。そして、それは暴力ではなく、正当な行為として容認されていた。そして、現在。親の暴力によって殺される子供の数はうなぎ登りだ。にもかかわらず……」
鴻志の目に稲妻が走った。そのときはじめて、鴻志の無機的な印象が破れ、その奥から人間味がかいま見えた。それはやさしさでも、思いやりでも、愛情でもなく、怒りと憎悪という名の人間味であったけれど。
機械的な仮面を破って現れたそれはわずかではあったけれど、真梨子が思わず息を呑み、のけ反るほど、激しかった。
「世の中の正義の味方たちは相も変わらず体罰を支持し、その必要性を主張しています。それが殺人行為でなくて何だと言うのです?」
鴻志は一瞬で無機的な印象を取り戻し、静かに告げた。メガネの奥の両目は、のぞき込んでいると魂まで引きこまれそうなほど、虚無的で奥深かった。真梨子は怖気を感じた。
「で、でも、彼らが殺しているわけじゃ……」
熱病にかかったときのような体の震えを感じながら、真梨子はようやくそれだけを言った。
「殺しているんです」
鴻志はきっぱりと言い切った。
「第一に、正義の味方たちは『厳しくしつけなければろくな人間にならないぞ』、『痛い目にあわせて思い知らせなければ犯罪者になるぞ、人を殺すようになるぞ』と叫ぶことで、親の育児不安を助長し、体罰へ駆り立てています。
第二に、それらの主張があることによって無責任な親たちは『しつけ』と称して殴りつけることができるようになる。子供を殴り殺して捕まった親が『しつけのつもりだった』というのはいつものこと。この言い訳を許しているのが正義の味方たちです。
そして第三に……」
そこまで言って、鴻志はいったん言葉を切り、目を閉じた。一呼吸いれてから目を開けた。そのとき目に浮かんだ憎悪の炎は真梨子を窒息させるほどに濃密なものだった。
「正義の味方たちは心を傷つけられた人間たちを自殺へと追いやっています。心を傷つけられた人間は罪悪感と劣等感の固まりになっているもの。そこへ、『体罰は正しい』だの、『愛しているからこそ殴るのだ』などと吹き込まれたらどうなると思います?
『殴られたのはすべて自分が悪いせいだ、自分には何の価値もないのだ、殺されても仕方がない存在なのだ』という気になってしまう。その思いが積み重なり、生きる意欲がそがれ、やがては自殺へと追い込まれる。この世に自殺する人間などいません。自殺させられているんです」
「な、何でそんなことが言えるのよ……」
真梨子はようやくそれだけを言った。あまりの衝撃に弁護士としての口調を取り繕う余裕さえなくしていた。完全に素の口調になってしまっている。
鴻志はかまわずに言い切った。
「私自身がそうだからです」
「あなたが……?」
「そうです。正義の味方たちの声にふれるつど、私は打ちのめされました。世の中の誰も私たちのことなど考えていない、私たちが生きることなど望んではいないのだと思い知らされました。そのたびに『死ぬんだ、死ぬんだ』と思いながら町をさ迷った。突然、車が突っ込んできてケリをつけてくれることを祈りつづけた。彼らは銃もナイフも使わない。ですが、その言葉でたしかに大勢の人間を殺しているんです」
「でも、それはあなたひとりの経験で……」
「ひとりではたりませんか? では、何人いればいいんです? 一〇人ですか? 一〇〇人? 一〇〇〇人? それとも、四〇〇万人がガス室に送られるようになるまで無視しつづけますか?」
「な、なにも、そんな……」
「たしかに、私は普通の人間ではない。実際に死んでもいない。すべての自殺者が私と同じ思いであるなどと思うのは馬鹿げている。ですが、私とて大マゼラン星雲からやってきた異星人ではない。同じ地球に生まれた同じ人間です。である以上、他の人間とまったく共通点がないと考えるのはさらに馬鹿げている。
現代日本の自殺者数は年間数万人以上。そのうちの一パーセントが私と同じ思いで死んでいるとしても数百人。一年間に数百人です。これが大量殺戮でなくて何なのです? そうである以上、正義の味方たちは殺人犯として裁かれ、その罪を償わなくてはならない。これは非難でも抗議でもない。正式な告訴です。この世のすべての正義の味方には死刑になることで私たちを殺している罪を償う義務がある。本来ならば……」
鴻志はそう言っていったん、言葉を切った。小さく息を吸うと、再び話しはじめた。
「本来であれば、わざわざ私たちが死刑にする必要もない。自分の言っていることが正しいと思うならこの告訴を受けた時点で自ら死ぬはずです。そうでなければ『自分たちの殺しているのは人間ではない』と言っているのと同じ。傲慢で鼻持ちならない邪悪な差別主義者と言うことになる。
もちろん、高潔で勇敢な正義の味方たちがそんな邪悪な卑怯者であるはずもない。すぐにも死を決意するに決まっています。ですが、死ぬのは誰しも怖いもの。自分では死ねないかも知れない。だが、生きていては本人の名誉が汚れる。そこで我々が手伝う。死刑にすることで名誉を保ってやることこそ親切と言うものです。
逆に、もしこの告訴を受けても死ぬ気にならないとすればそれは、『自分が殺しているのは人間ではない』と、本気で思っていることを意味します。そんな腐りきった差別主義者たちを生かしておけばどうなるかは……ホロ・コーストが証明している。そんな人間たちはひとり残らず滅ぼすことこそ、人類全体の利益と言うものです」
『そうでしょう?』と言いたげな視線で鴻志は真梨子を見た。真梨子は一瞬の淀みすらなく垂れ流されつづける腐敗の論理に圧倒されていた。陸に上げられた魚のように口をぱくぱくさせるのがやっとだった。
「で、でも、何も殺さなくても……」
ようやく、それだけを言った。
鴻志は静かに答えた。
「死刑を要求しているのは私ではありません」
その言葉に真理子は混乱した。『死刑にしたい』と言いながら、今度は『死刑を要求してはいない』と言う。どういう意味? 彼は自分の言っていることがわかっているの?
真梨子はいよいよ鴻志の正気を疑った。
もちろん、鴻志は自分の言っていることを完全に理解していた。説明することもできた。静かに、ゆっくりと、赤ん坊に言い聞かせるように説明した。
「死刑を要求しているのは私ではありません。彼ら自身です。そのリストにあるのは全員、死刑支持者です。死刑制度そのものに議論の余地はあろうともただ一点、『人を殺したら死んで償え』と要求する人間が人を殺したなら自ら死ぬ義務を負う、という点に議論の余地はない。だから、彼らは死ななくてはならない。生きているかぎり、私たちを人間と認めたことにならない。それでは、罪を償うことにはならない。『人を殺したら死んで償え』というかぎり。『自分の罪を許してくれ、自分も他人の罪を許すようつとめるから』と言わないかぎり。彼らには死刑になる義務がある」
延々と語られる腐敗の論理に、真梨子は窒息しそうになった。それでも必死に頭を働かせ、反論を捜し求めた。このまま黙って聞いていれば、森山鴻志の言い分こそが正しいのだと思ってしまいそうだ。いや、すでに思わされはじめている。だからこそ、『何としても反論しなくてはならない』というあせりを感じているのだ。
たしかに。鴻志の境遇には同情する。憎みたくなる気持ちもわかる。だからと言って、そんな皆殺しが認められるわけがない。どんな理由があれ、『人を殺す』ことが正しい解決方法であるはずがないのだから。
だから、必死になって反論の根拠を捜した。頭をフル回転させた。しかし、考えても、考えても、有効な反論は思いつかない。すでに脳細胞の隅々まで腐敗の論理に影響されてしまっている。ともすれば『それが正しいかも……』という思いが浮かび上がる。その誘惑を押しとどめ、真梨子は反論を捜しつづけた。その挙句に言った言葉はしかし、腐敗の論理の前ではあまりにも貧相で微弱、そして、無力なものだった。
「で、でも、これは民事で……民事では体刑は要求できないわ。賠償金しか……」
そのあまりにも貧弱な反論は予想通り、あっけなく葬り去られた。
「では、法律を変えればいい」
その一言だった。
「法律は人間のためにあるもの。法律によって人間か苦しめられることはあってはならない。いまの法では死刑にできないと言うなら変えればいい。いくらでも死刑にできるように」
「……そんなに殺したいの?」
真梨子はうめいた。『生命の尊厳』などという概念すらかけらも感じさせない鴻志の言葉に、頭のなかでふつふつと怒りが沸き起こった。
「もちろん」
鴻志はうなずいた。
「ですが、勝手に殺そうと言うのではない。堂々と、正当な方法で死刑にしようと言うんです」
鴻志は言葉を切った。そのとき、再び、無機的で機械的な印象が破れ、人間味が姿を見せた。『嘲り』という名の人間味が。
メガネの奥の目に皮肉な光を宿し、唇を薄く笑う形にねじ曲げて、鴻志はその一言を口にした。
「死刑にするなら、いいんだろう?」
激しい音が鳴り響いた。真梨子はついに爆発した。デスクを両手で勢いよく叩き、立ち上がった。声のかぎりに叫んだ。
「ふざけないで! 自分は人を殺していいだなんて本気で思ってるの!」
その叫びは空気を伝わり、ドアを飛び越え、事務所全体に響き渡った。何事かと事務所の人間すべてが真梨子の部屋に視線を向けたほどだった。
それほどの叫びを間近で上げられながらも、鴻志はその無機的な印象を崩すことはいささかもなかった。むしろ、真梨子が興奮すればするほど、その無機的で機械的な印象はいやますようにさえ見えた。
鴻志はゆっくりとうなずいた。
「もちろん。私には正当な権利があります」
「どんな権利よ!」
「被害者の権利です」
その一言に真梨子は絶句した。背筋を冷たいものが昇っていった。まるで、背骨が徐々に氷にかわっていったよう。のけ反り、大きく見開いた目で鴻志を見ていた。
鴻志はつづけた。
「私は社会被害者です。である以上、社会の側には私の訴えを受けて罪を償う義務がある。そして、『人を殺したら死んで償え』というかぎり、『自分の罪を許してくれ、自分も他人の罪を許すようつとめるから』と言わないかぎり、我々を殺している罪の償いは死刑以外にない。つまり、社会は私が『死刑にしろ』と言ったならそれが誰であれ、死刑にしなくてはならないということです」
「……ずいぶんと傲慢なことね。他人の生き死にはすべて、あなたが決めるって言うわけ?」
「その通り」
鴻志はあくまでも静かにうなずいた。
「私は被害者だ。『被害者の権利』を主張する限り、私に従わなくてはならない。私に従わないならそれは、被害者よりも加害者を大切にし、被害者の生命をゴミクズ扱いすると言うこと。それとも、あなたも『殺した側の気持ちを理解してやらなくてはならない』などという信じられない偽善者ですか? 幼い頃の私が受けた仕打ちが正当だったと、私は殺されても文句の言えない存在だと、そう言うわけですか?」
「そ、そうじゃない……そうじゃないけど」
真梨子は口ごもった。いくらいまの鴻志の言うことが許せないと言っても、彼が受けてきた仕打ちが正当だったなどと言う気はない。まして、『殺されても文句の言えない存在』だなどとは思わない。でも……だからって……。
鴻志はうなずいた。
「では、私に協力してもらおう。『人を殺したら死んで償え』という人間たちを皆殺しにするために」
「でも、彼らにだって生きる権利は……」
「では、彼らを生かしておいて将来、自分の子供が自殺に追い込まれたとしても文句は言わないのですね? あなたの子供には『脅かされることなく生きる権利』はないと言うわけだ。実の親に生きる権利を否定された子供の意見をぜひ、聞きたいものですね」
最後の言葉に真梨子の頭のなかで稲妻がはじけた。唇をかんでうつむき、身を震わせる怒りを必死にこらえる。なんと卑劣で残酷な言葉だろう。こんな言い方をされては誰も反論などできるはずもない。まっとうに議論するのではなく、相手に『悪』のレッテルを張りつけることで断ち切り、自分の主張を押し通そうとする鴻志のやり方を真梨子は本気で憎んだ。
鴻志は怒りに耐えてうつむく真梨子をじっと見ていた。やがて、小さく息をつき、肩をすくめた。
「どうも、あなたは勘違いしているようだ。私が怒りや憎しみで行なっていると思っているらしい」
「……ちがうっていうの?」
「もちろん、ちがいます」
「じゃあ、なんなの?」
「愛です」
「愛!」
あまりにも似つかわしくない言葉に真梨子は狂躁的に笑い出した。
「よくいうものね、愛だなんて! 人を殺して何が愛よ!」
狂ったように叫ぶ真梨子に対し、鴻志は優雅なほど無機的な仕種で人差し指を振って見せた。
「『理由さえあれば人を殺していい』と考える人間がいなくなれば、戦争も、弾圧も、迫害も、町中の殺人も、確実になくなる。彼らを皆殺しにすることで人類は恒久平和を得ることができる。つまり、私の行いは人類を、人類の未来を愛するがゆえの行為。これこそ、真の人類愛というものです。なるほど。たしかに、殺しはじめのときは悲しい思いをする人も大勢いるでしょう。しかし、案ずるには及びません。これはすべて愛ゆえの行為なのですから」
鴻志はいったん言葉を切ると先ほどと同じ、皮肉を込めた薄い笑いを浮かべた。そして、その一言を口にした。真梨子の生涯のなかで『愛』という言葉をもっとも汚す一言を。
「愛をもって行なえば必ず伝わる」
――な、なんてことを……。
真梨子は心でうめいた。脳が毒蛾の鱗粉をふりかけられたようにぴりぴりする。どんな理由であれ、たとえ本物の愛情があってのことだとしても、殺された側がそれを理解するなんてあるはずがない。なのに、こんなことを言うなんて。手前勝手な理屈をこねて人を殺すことを正当化するような底無しの卑怯者だったなんて。森山鴻志という人間を偶像視していたからこそ、それを破壊された衝撃は大きく、怒りがつのった。
――そりゃあ、あんな生い立ちなら憎みたくなるのもわかるわよ。同情ならいくらでもする。でも、だからって殺すなんて……それじゃ非難してる相手と同じじゃないの! それに……それに……!
「もういいかげんにして!」
真梨子は怒りを爆発させた。手にしたリスト入りの封筒を思いきり床にたたきつけた。怒りを込めた目で鴻志を見た。鴻志はいささかも動じることなく無機的で機械的な視線で真梨子をじっと見ていた。
真梨子は鴻志をにらみながら叫んだ。
「あなたがそんな人だとは思わなかったわ! がっかりよ。『ヒト物語』はあんなに素敵な物語だから、あなたもきっとそうなんだと思ってた。それなのに……自分に従わないやつは悪魔だなんてよくそんな傲慢なことが言えるわね! そんな思い上がったやつの弁護なんてごめんだわ! さっさと帰って!」
真梨子の怒りに対して鴻志は静かに床にたたきつけられた封筒をひろい上げた。それから真梨子を見た。その視線が真梨子を怖じけづかせたが、彼女はあらん限りの勇気を振り絞ってにらみ返した。
鴻志は静かに言った。
「では、失礼します。気がかわったら連絡してください」
「気がかわったりしないわよ」
真梨子は頬をふくらませながら言った。
すると鴻志はかすかに微笑んだように見えた。やけに好意的に思える笑みだった。見間違いかと思うぐらい、ほんの一瞬だけの表情だったけど。でも、もし、その微笑みが本当なら……まちがいなくこの人に好きになれる。そう思う笑みだった。
鴻志は部屋を出ていこうとした。ドアのノブに手をかけた。真梨子はふと気になって声をかけた。
「……大した演説だったわね。学校にも行ってないくせに何であそこまでいえるの?」
「師匠がいいもので」
「師匠って?」
ふっ、鴻志は笑いながら答えた。
「世間さまですよ」
0
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