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第二章 学園編

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「えっと、少々考え事をしていまして」
「考え事? もしかして、先日の魔獣侵入事件のことですか?」

 そうか、あの事件のことはアーサー様の耳にも入っているのね。

 まぁ、考えていたこととは違うけど、まさか乙女ゲームの話なんて出来ないし。
 とりあえず、アーサー様に話を合わせておこう。

「え、ええ」
「噂では魔獣に遭遇したのはイザベル嬢だと伺っていますが、やはり本当なのですか?」
「あ、はい。ですが、ヘンリー殿下や先生方が助けに来てくれたおかげで、この通り何事もなく過ごしておりますわ」
「イザベル嬢は強いお方ですね。普通の御令嬢であれば、恐怖で学園にも行けなくなりそうな出来事でしょう。にも関わらず、笑顔を絶やさずにいられるなんて」
「え? そ、そんな事ないですわ」

 予期せぬ場所から魔獣が出てきたことには驚いたが、遭遇した魔獣がやたらフレンドリーだったのであまり恐怖を感じなかった。
 そのため、学園に通うことにも何ら抵抗はなく、心配する周囲を他所に私は元気よく学園に通っている。

 あれか、普通の令嬢はこんなに神経図太くないのかしら。
 前世じゃ嫌な事があろうが仕事家事育児をしなきゃいけなかったから、学園を休むという発想すら浮かばなかったわ。
 って、私の話をしているとボロが出そうだからアーサー様に話を振ろう。

「それより、ヘンリー殿下に何か用事があったのではないのですか?」
「ああ、実はこの後ヘンリー殿下と鍛錬をする予定だったんです」
「まあ、そうだったのですね。鍛錬、ということは、もしかしてアーサー様は騎士を目指していらっしゃいますか?」
「ええ。マルク家は代々騎士を輩出していますから、俺……いや、私も見習いとして騎士団に所属しています」
「ふふっ、今は二人だけですし、無理して言葉遣いを直さなくても結構ですよ? 確か、お父様は騎士団長でいらっしゃいましたよね。アーサー様も騎士団長を目指すのですか?」
「では、お言葉に甘えて。そうですね、俺は騎士団長になって親父を超えるような存在になりたいと思っています」
「まあ、素晴らしい向上心ですね! アーサー様みたいな方が騎士団長になれば国も安泰ですわ。それに、厳しい鍛錬を積んでいらっしゃるアーサー様が学園にいてくれれば、私も安心して通学出来ます」
「そ、それはどうも」
「おいアーサー、そこで何をしている」

 聞き覚えのある男の声。
 はっと声の方を向くと、扉にもたれ掛かかるようにして、ヘンリー殿下が立っていた。
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