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三章
一の二
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鳥が潮風に靡く朝、漁から戻った漁船が休み、朝市も終えた港は、朝の一仕事を終えて随分と静かだ。
ラヒはイヨーリカを連れ出し、デン国の領事館へ来た。今は閉じた、ラスワタからの移民を受ける窓口では、担当の者が二人を出迎え、ラヒが頼む資料を出してくれた。
一枚に一家族、それが、卓上からイヨーリカの目の高さまで積まれて七列もある移民手続き書。わずか一年でここまでの移民を受けたサンソペ。ならば、デン国全体では相当な人数である。
ラスワタにはもう国民が数えるほどしかいないのでは、と、イヨーリカは数枚に目を通しただけで書類を戻した。
「デン国も移民を歓迎しないわけではありません。優秀な働き手として当初は受け入れに国力を添いできました。しかし、財産までは与えられませんからな。当然、住まいを貸与しても無一文に近い。低賃金で雇われ、子の識字率たるや将来を悲観するに足ります」
館員が渋い顔で一枚の書面に目を通した。思い入れがあるかの様に眺め、書面を戻し、二人を向いた。
「苦境を逃れてきた、実はそれだけで十分幸せなのでしょうが、夢見た転地で豊かな生活が約束されてはなかった。絶望感に捕らわれ、交流を絶ち、隔絶した生活に篭るようになっております。彼らは、幸福ではないのですよ。それでは良き働き手とならない」
館員が話す間、ラヒが始終、彼に軽く頭を垂れている、と気づくイヨーリカだが、礼を言うべきなのか、移民を受けた恩に感謝すべきは自分であるのか、違和感漂うばかりで心定まらない。
「移民に定住する権利はお与えになったと伺っておりますが」
「税金を八年納めれば、ですよ。しかし、既に大半は諦めたようです。今ある格差は、当然なのですがね。デン国人だとて国に仕えてきての今だ。自国を捨ててきた移民を優遇するわけもなかろう。それが妬ましいと言われれば、なら来るな、と、上は考えたのでしょう。サンソペは交易で成り立っているが、国境を閉じれば、衰退は更に加速します。移民を飼う余力はない」
「では、やはり、移民の帰国を推したいと仰せなのですか?」
「ヒューロイ領事は、そう陳情されるでしょう。ラヒ殿、せめて不定労働者と移民区域に立て篭もる者たちが帰る国はあるのか、兆しでもお示しにならねば、ここの国境を越える承認は、得るに困難でしょう」
「が、私が戻らねば、ヒルダ王妃が帰国を要求してまいります。それでは、王妃の手の者に監視されながらの帰国となり、ヨーマ国での工作も徒労に終わります」
内情を話すのかとラヒに不安を覚えて垣間見るが、ラヒと顔見知りの館員にしてみれば、イヨーリカの在席が疑わしいらしい。
イヨーリカが片言のデン語を話すと知り、デン語の会話をとうに切り上げ、ラスワタ語でラヒと話し込んでいる。イヨーリカに聞き取れはするものの、逐一、ヨーマ語に直しては伝えるラヒを腹立たしく思ったのか、館員が何事かラスワタ語を口走り、ラヒがそれに顔をしかめた。
「そのような私情で連れて行くのではない」
「では、何故帰国に拘る? 即位だろうがさせておけ。そのうちアレは自滅するさ」
「それでは、国が滅びる。ここで王妃が倒れれば、各国が攻め入って自国領と旗を立てるのだ。あなたの故郷だろう!」
館員の滑らかな話しぶりに、もしやとは感じていたが、幾つかの単語から、この男もラスワタの生まれであると、イヨーリカは悟った。
自分もそうであったかもしれない、生まれ故郷。この男は、ラスワタ語を話すまでには幾年か過ごし、そして、国を出た。
イヨーリカに望郷の念はないが、この男にはあるはずだ。移民の者達にも。
でも、捨てた。築いた物を捨てて。
新天地で住み始めるもどかしさは、イヨーリカにも身に覚えはある。住民との温度差に虚しさを覚えもした。
だが、『帰りたい』とは思わなかった。何処へかの答えは、イヨーリカには幾つもあるが、記憶に古い町にとも、長く過ごした町にとも思わない。転居は、願おうとも、止められることではなかったから。住む度、ここが当分住む町になるのか、と嘆息をつくぐらいだった。
今、ドムトルは尚更、戻りたいとは思わない。
居場所は、既に旅の道中にあるのだと、苦々しく思う。
であれば、移民も同じだろう。幼い子であるなら余計に、故郷がここになりつつある。
決意と共に、そこで暮らす想いも置いてきたなら、帰れると分かってそれを望む者がどれだけいるのか。
イヨーリカは、館員と話すラヒを遠目に眺めた。
私が向かう意味はあるの? そこに、暮らしたいと願う民は、戻りたいと沸き返る民はいるの? ラスワタの存続を誰が望むのか、ラヒ、あなたは答えられるの?
「時のフィリョンカ古女王でさえ見放した国だ。誰も責めないさ、ラヒ殿。指を加えて眺めていたとしてもね。そう言えば、見つかったのか、亡命した女王は? 悪いことは言わない。お探ししても、お戻りいただく王宮はないのだ。戻れば、苦難を凌いだ国民から唾を吐かれるだけだろうよ」
「それでもお戻りいただく。我らの国を支えてもらうため」
饐えた笑いを口元に帯びた館員だが、ラヒの心痛な声にやや目線を下げて唇を噛んだ。
「領事に話してみるさ」
ラヒが静かに頭を下げる。
見守るばかりのイヨーリカも、軽く礼を返した。
移民の居住区は、港から一つ湾を越えた先にあった。サンソペが漁師町以上に賑わいをみせている理由の一つに、港の周辺に荘園が散らばっているからであろう。農産物の市もたち、労働者が集いにサンソペまで降りてくるのだ。
荘園がある丘陵地帯は、畝の向きも様々に畑が敷き詰められている。やや平らな所では穀物の穂がゆれ、緩やかな斜面には果樹園が広がる。
転々と荘園の館が聳え立つを他所に、海岸縁に凝縮した共同住まいの建物が移民の居住区だ。
母屋を中心に広がる畑を思えば、海岸から丘を見上げて働き口に出る心地は、随分としんどいのかもしれない。
港での館は小ぶりで、共同で住まうデン人だとていた。
が、ここでは、土地を所有する如何で暮らしぶりの差が歴然としている。夜は静かに眠りにつくこの湾では、息を吐く場も、人と集う場もなさそうだった。
僅かな波止場は、潮に時化たらしく、手入れも継ぎはぎに真新しい。海岸線に積み上げられた砦も、移民が請け負った仕事の成果だそう。
山に住み慣れた者が、潮にあたる日々に鬱屈した想いを抱くのも解せる。
丘からのそのそと降りてくる移民を日の暮れた畑に見止め、夕焼けの朱色い気の中でも潮に赤らんだ頬を照らす住民を目の当たりにし、苦労を厭う声さえ憚られる。
それでも、ラヒの姿に、夕食を作る手を止め、家より走り出てくる者もいる。前掛けで目頭を押さえる婦女や、ラヒの服装を眩しそうに眺める子どもらも、ラスワタ語を口にしては高揚とした顔で現況を述べる。
過去を語る者がいない。
訊けば口を開くのだろうが、口々に零すのは、帰るラヒへの憐れみだった。
その憐憫の目で見つめられるラヒだが、どこか朗らかに接している。
人は、自ら陥った状況に他人を巻き込むものであろうが、周囲に集まってきた者たちは、ラヒを抱き込むというより、心底ラヒの行く末を案じている親族のようでもある。
「皆、欠けることなく、生きて会えたと、父に嬉しい報告ができましょう。父も私も不甲斐なく、皆をここに追い出してしまった」
「ラヒ様は、帰るんかいね。わしらは諦めとる。ほな、もうええて。守らんこて、誰も攻める者はおらん」
「あん人らは、うちらの様には、いかんのよ。ここに来れるとええに。頼めんかね?」
「母上様の国には住まわれんね?」
大人に混じり、無邪気な問いでラヒを案じる、少女。ラヒに遠慮がちな大人と違い、ラヒへ逃亡を訊ねる辺り、自身に悔いの一滴もないのだろう。
「すまない。父がデン国へ下って領地を譲れば、皆に少しは行き渡るのだろうが、父も私も国を売ることだけは避けたいと」
「ええて。わしらこそ、大事な土地を放り出してきよった。その報いじゃて」
「何れ戻る時が来るよう、私だけでも待つ。それまでは土地でも耕しておくかな、皆に倣って」
乾いた笑いが人だかりに走る。そこへ、先ほどの少女がラヒを覗き込んだ。
「戻れるの?」
一様に瞬時ラヒへ探る目を寄越す大人たちも、直ぐに少女を引き、引き攣った笑みでラヒにとりなした。
「ここで暮らすと決めたんよ。未練はない。来とうても間に合わんかったもんもおるしの。残っとるなら、そいつらに何も渡してくれや。辛いのは、逃げんかったもんやけに」
これにはラヒは頷かなかった。大人の影に隠された少女の方を一時見つめると、深く息を吸い込んでから弱々しい笑みで応えた。
「国境が開放されれば、遊びに来ればいい。待っている」
ラヒがイヨーリカへ問いたげに首を傾げる。『訊ねないのか』と、顔に書いてあるようだ。
イヨーリカは、しかし、皆を見回し、その勇気が出ない。忘れよう、悔いぬよう、新天地で馴染もうとしている皆に、国を棄てた理由を振り返って思い出せとは言えない。
暮らせる国ではなくなった、それを知れば、私はそれを正すしかない。知って、放置するなら、鼻から聴くような酷は与えられない。
そして、聴いて確かめたなら、是正するに鼓舞して、苦を解き放つに過去の辛酸を拭えるのか?
帰れと、説くつもりなのか?
私には、知る権利もない。救う気もないのに真偽を訊ねる権利はない。
状況がどうのという話ではなかった。全ては、私が、どうするかだ。それが先だ。
この皆を見れば、理由はどうあれ、移民するまでの尋常ならざる事態が起きたからだ。
ラスワタが荒れている、それは事実だった。
「イヨーリカ様、よろしければ、村の長を一人、連れてあちらへ行かれては」
やはりラヒも心労を配慮して、問い詰められる状況を大っぴらにはしたくないようだ。
イヨーリカは頭を振った。ラヒの機嫌に触ったらしいが、イヨーリカは歩き出すことで、円陣からラヒを連れ出した。
「もう分かりました」
「どの様な理由で分かったと仰せになられるのか。まだ何一つ、ラスワタの現状を確かめてはおられますまい」
早足で立ち去ろうとするイヨーリカを、ラヒが前方に立ち塞いで留まらせようとする。
イヨーリカは、ラヒの手を引いた。
仕草に動揺するラヒだが、察して、乗馬に手を貸し、共に道に並んだ。
「住民が住むことを放棄した。理由はそれで十分だわ。ラスワタ語の理解も乏しくて、何が悪政か判断もできぬ私が訊く事はないようよ」
「国にお戻り頂けますか?」
「説得してとお願いしたけれど、説き伏せられて戻って敵うようなヒルダ王妃ではなさそう。行く気があるのか、自分に訊くとするわ。王女云々でないとしてもね。私が共に暮らしてきたお祖母様の母国だから」
隣の馬上で黙りこくるラヒ。
峠は越えて、サンソペの港が視界に捉えられる頃までになると、馬の足並みが響くだんまりに痺れを切らし、イヨーリカは早足でラヒを超えた。
港町に沈み行く陽がねっとりとした黄金色に輝く中、対して黒々とした背を見せ付けていたラヒだが、追い越して振り返れば、やや赤みを交えた夕陽に朗らかな顔を照らしていた。
「政治に疎い娘では、担ぐ気も失せたのではないの?」
「いえ。少々安堵いたしました。頑ななお方だと焦りもしましたが、仰せの通り、生半可な覚悟は確かに無用です。それに、私の話を信じて頂けるのでしょうから」
「まあ、そうね。内情はあなたから聞くわ」
ラヒは微かに笑んだようで、足並みが規則正しく流れる中、ぽつりぽつりと語っていく。どこか気負いが抜けた話し振りは、イヨーリカを萎縮もさせず、耳に染み入るよう記憶に留まっていった。
王妃の死後、一年も待たずして国王に召されたヒルダ王妃は、王宮に入るやその個人主義ぶりを開花させたと言う。側近は実家の出で固め、王妃や親族に位を持たせては、より良き掌握を求めて法を濫布した。国王に私欲で諌言し、王妃に擦り寄る家臣と反発する臣下とで、政情は二分したのだそう。
靡かない臣下と王家の者たちは、徐々に政治の場から排除され、追われるだけでなく、陥れられ、処刑も辞さなくなった頃には、王妃は血に飢えた狂人の如く、自らの剣で首を絶つ狂乱振りを発揮し、転がるように恐怖政治へと突入した。
法は王妃であり、近年では政治ですらなくなった。
鉱石や石を産出するラスワタだが、山から切り出す徒人を纏める組合は解散し、国の管轄下になった。
その労働条件の悪化を辿る様は目を覆うほど。管理が凄然となるに従い、徒人は生物ではないかのような扱いに。それも、効率や国益を求めての、何らかの試算があっての管理でさえなく、徒人の締め上げに然したる根拠がない。
山肌に畑の開墾を進ませたが、土が違うと進言したところで、水流豊富な畑と同様の苗を強要し、同量の穀物の収穫を求めた。土地の差異、環境条件、人口の程度を考慮にいれない、一辺倒の治世。かといえば、気候による年度の出来高の変化へは寛容だった。
それも、土地の平方による統治を進めたからだ、という。
側近から示されたこの政策に心酔し、ヒルダ王妃は強制でこれを布いた。
国土を平方で分割し、産業別にそこから上がる税を決め、乗算して納税額を算出した。
そこへ気候や震災での増減は加えたが、平方毎に協議はせず、国土全体の納税総額に対して行い、増減分を分割して、やはり平方へ割合を一様に落とすだけだった。
つまりは、見込んだ納税額が守られればよし、それ以上にあれば、寄与した領主に褒美が渡るだけ。結果だけを見る統治だった。
当然、秤に合わない領土は多く出る。
そこで領主達は、辻褄が合うよう互いの増減を埋め合う手に出た。
が、補え合える領土間であればいいが、割に合わない歩合を課された領土には誰も救いの手を伸ばさず、他がきっちりと納税する中、死守しない領主は際立った。
その処罰たるや、凄惨と混乱を極めた。翌年に持ち越される未納額は、翌々年には帳消しにされる代わりに、領主は処刑。納税率が良いと寵した領主へ、褒美と称して、この領土を与える。
救いの手を伸ばさなかった後悔に苛まれるも、時既に遅し。一時を横臥できたかつては夢に消え、搾取に明け暮れる日々となる。
隣国からの非難に耳を閉じ、外交を事実上閉じていたラスワタは、領民が逃げ出そうが身柄を戻せと要求する術を持たなかった。その意思も薄かったろう。要は、領主が予定額を納税しさえすれば良かったのだから。
デン国は、これに乗じ移民を募った。領民が減り、国境付近の領土から国土は廃れ、領主とて逃亡するか命を絶つか、処刑に甘んじる。
人の住まない土地は荒れ、国費は痩せた。残るは外貨と石の輸出に精を出すも、最大の交易国であったデン国は、移民を受けた分の領土をラスワタに要求し、これを断ってから、デン国は国境を閉じた。
移民は領土拡大の人質と扱われた。ラスワタも国民が減っては立ち行かぬ事態に漸く目を留め、移民の引取りを申し出た。デン国はこれを受け、代償として、王妃の退位と国政への参与を要求。ラスワタは抗い、現況の睨み合いが続いている。
ラスワタが産出する石は、床や壁面を覆う石材として美麗で頑丈であり、デン国が移民と期待したは、石工であろう、と、ラヒが述べる。
石工を絡め取れれば、産出地の情報や石工の技術が齎されると踏んだのだと。
しかし、既に徒弟制度や組合が崩壊した中、ただの労働者と化した徒人からは、仕事の誇りも矜持も失せており、日の出と共に借り出され、疲労で身を横たえるだけの生活を過ごした石工の末路は、切り出し場で培われた技術も、埋没量も、記憶に留めるだけの価値を持たずに、デン国の期待に応える引き出しを持たない、瞳にの火が消え失せた抜け殻であった。
あれほど警戒して来た道のりに比べ、ここサンソペではイヨーリカも自在に出かけている。
危機感に研ぎ澄まされ高揚感に晒され続けてきた全身は、穏やかに過ごす日常に自然と馴染まず、不可解な心持ちであったが、ラスワタと膠着している最中のサンソペでは、ラスワタの間者も縦横無尽に暗躍もできないのだろう、と納得していった。
ラヒはイヨーリカを連れ出し、デン国の領事館へ来た。今は閉じた、ラスワタからの移民を受ける窓口では、担当の者が二人を出迎え、ラヒが頼む資料を出してくれた。
一枚に一家族、それが、卓上からイヨーリカの目の高さまで積まれて七列もある移民手続き書。わずか一年でここまでの移民を受けたサンソペ。ならば、デン国全体では相当な人数である。
ラスワタにはもう国民が数えるほどしかいないのでは、と、イヨーリカは数枚に目を通しただけで書類を戻した。
「デン国も移民を歓迎しないわけではありません。優秀な働き手として当初は受け入れに国力を添いできました。しかし、財産までは与えられませんからな。当然、住まいを貸与しても無一文に近い。低賃金で雇われ、子の識字率たるや将来を悲観するに足ります」
館員が渋い顔で一枚の書面に目を通した。思い入れがあるかの様に眺め、書面を戻し、二人を向いた。
「苦境を逃れてきた、実はそれだけで十分幸せなのでしょうが、夢見た転地で豊かな生活が約束されてはなかった。絶望感に捕らわれ、交流を絶ち、隔絶した生活に篭るようになっております。彼らは、幸福ではないのですよ。それでは良き働き手とならない」
館員が話す間、ラヒが始終、彼に軽く頭を垂れている、と気づくイヨーリカだが、礼を言うべきなのか、移民を受けた恩に感謝すべきは自分であるのか、違和感漂うばかりで心定まらない。
「移民に定住する権利はお与えになったと伺っておりますが」
「税金を八年納めれば、ですよ。しかし、既に大半は諦めたようです。今ある格差は、当然なのですがね。デン国人だとて国に仕えてきての今だ。自国を捨ててきた移民を優遇するわけもなかろう。それが妬ましいと言われれば、なら来るな、と、上は考えたのでしょう。サンソペは交易で成り立っているが、国境を閉じれば、衰退は更に加速します。移民を飼う余力はない」
「では、やはり、移民の帰国を推したいと仰せなのですか?」
「ヒューロイ領事は、そう陳情されるでしょう。ラヒ殿、せめて不定労働者と移民区域に立て篭もる者たちが帰る国はあるのか、兆しでもお示しにならねば、ここの国境を越える承認は、得るに困難でしょう」
「が、私が戻らねば、ヒルダ王妃が帰国を要求してまいります。それでは、王妃の手の者に監視されながらの帰国となり、ヨーマ国での工作も徒労に終わります」
内情を話すのかとラヒに不安を覚えて垣間見るが、ラヒと顔見知りの館員にしてみれば、イヨーリカの在席が疑わしいらしい。
イヨーリカが片言のデン語を話すと知り、デン語の会話をとうに切り上げ、ラスワタ語でラヒと話し込んでいる。イヨーリカに聞き取れはするものの、逐一、ヨーマ語に直しては伝えるラヒを腹立たしく思ったのか、館員が何事かラスワタ語を口走り、ラヒがそれに顔をしかめた。
「そのような私情で連れて行くのではない」
「では、何故帰国に拘る? 即位だろうがさせておけ。そのうちアレは自滅するさ」
「それでは、国が滅びる。ここで王妃が倒れれば、各国が攻め入って自国領と旗を立てるのだ。あなたの故郷だろう!」
館員の滑らかな話しぶりに、もしやとは感じていたが、幾つかの単語から、この男もラスワタの生まれであると、イヨーリカは悟った。
自分もそうであったかもしれない、生まれ故郷。この男は、ラスワタ語を話すまでには幾年か過ごし、そして、国を出た。
イヨーリカに望郷の念はないが、この男にはあるはずだ。移民の者達にも。
でも、捨てた。築いた物を捨てて。
新天地で住み始めるもどかしさは、イヨーリカにも身に覚えはある。住民との温度差に虚しさを覚えもした。
だが、『帰りたい』とは思わなかった。何処へかの答えは、イヨーリカには幾つもあるが、記憶に古い町にとも、長く過ごした町にとも思わない。転居は、願おうとも、止められることではなかったから。住む度、ここが当分住む町になるのか、と嘆息をつくぐらいだった。
今、ドムトルは尚更、戻りたいとは思わない。
居場所は、既に旅の道中にあるのだと、苦々しく思う。
であれば、移民も同じだろう。幼い子であるなら余計に、故郷がここになりつつある。
決意と共に、そこで暮らす想いも置いてきたなら、帰れると分かってそれを望む者がどれだけいるのか。
イヨーリカは、館員と話すラヒを遠目に眺めた。
私が向かう意味はあるの? そこに、暮らしたいと願う民は、戻りたいと沸き返る民はいるの? ラスワタの存続を誰が望むのか、ラヒ、あなたは答えられるの?
「時のフィリョンカ古女王でさえ見放した国だ。誰も責めないさ、ラヒ殿。指を加えて眺めていたとしてもね。そう言えば、見つかったのか、亡命した女王は? 悪いことは言わない。お探ししても、お戻りいただく王宮はないのだ。戻れば、苦難を凌いだ国民から唾を吐かれるだけだろうよ」
「それでもお戻りいただく。我らの国を支えてもらうため」
饐えた笑いを口元に帯びた館員だが、ラヒの心痛な声にやや目線を下げて唇を噛んだ。
「領事に話してみるさ」
ラヒが静かに頭を下げる。
見守るばかりのイヨーリカも、軽く礼を返した。
移民の居住区は、港から一つ湾を越えた先にあった。サンソペが漁師町以上に賑わいをみせている理由の一つに、港の周辺に荘園が散らばっているからであろう。農産物の市もたち、労働者が集いにサンソペまで降りてくるのだ。
荘園がある丘陵地帯は、畝の向きも様々に畑が敷き詰められている。やや平らな所では穀物の穂がゆれ、緩やかな斜面には果樹園が広がる。
転々と荘園の館が聳え立つを他所に、海岸縁に凝縮した共同住まいの建物が移民の居住区だ。
母屋を中心に広がる畑を思えば、海岸から丘を見上げて働き口に出る心地は、随分としんどいのかもしれない。
港での館は小ぶりで、共同で住まうデン人だとていた。
が、ここでは、土地を所有する如何で暮らしぶりの差が歴然としている。夜は静かに眠りにつくこの湾では、息を吐く場も、人と集う場もなさそうだった。
僅かな波止場は、潮に時化たらしく、手入れも継ぎはぎに真新しい。海岸線に積み上げられた砦も、移民が請け負った仕事の成果だそう。
山に住み慣れた者が、潮にあたる日々に鬱屈した想いを抱くのも解せる。
丘からのそのそと降りてくる移民を日の暮れた畑に見止め、夕焼けの朱色い気の中でも潮に赤らんだ頬を照らす住民を目の当たりにし、苦労を厭う声さえ憚られる。
それでも、ラヒの姿に、夕食を作る手を止め、家より走り出てくる者もいる。前掛けで目頭を押さえる婦女や、ラヒの服装を眩しそうに眺める子どもらも、ラスワタ語を口にしては高揚とした顔で現況を述べる。
過去を語る者がいない。
訊けば口を開くのだろうが、口々に零すのは、帰るラヒへの憐れみだった。
その憐憫の目で見つめられるラヒだが、どこか朗らかに接している。
人は、自ら陥った状況に他人を巻き込むものであろうが、周囲に集まってきた者たちは、ラヒを抱き込むというより、心底ラヒの行く末を案じている親族のようでもある。
「皆、欠けることなく、生きて会えたと、父に嬉しい報告ができましょう。父も私も不甲斐なく、皆をここに追い出してしまった」
「ラヒ様は、帰るんかいね。わしらは諦めとる。ほな、もうええて。守らんこて、誰も攻める者はおらん」
「あん人らは、うちらの様には、いかんのよ。ここに来れるとええに。頼めんかね?」
「母上様の国には住まわれんね?」
大人に混じり、無邪気な問いでラヒを案じる、少女。ラヒに遠慮がちな大人と違い、ラヒへ逃亡を訊ねる辺り、自身に悔いの一滴もないのだろう。
「すまない。父がデン国へ下って領地を譲れば、皆に少しは行き渡るのだろうが、父も私も国を売ることだけは避けたいと」
「ええて。わしらこそ、大事な土地を放り出してきよった。その報いじゃて」
「何れ戻る時が来るよう、私だけでも待つ。それまでは土地でも耕しておくかな、皆に倣って」
乾いた笑いが人だかりに走る。そこへ、先ほどの少女がラヒを覗き込んだ。
「戻れるの?」
一様に瞬時ラヒへ探る目を寄越す大人たちも、直ぐに少女を引き、引き攣った笑みでラヒにとりなした。
「ここで暮らすと決めたんよ。未練はない。来とうても間に合わんかったもんもおるしの。残っとるなら、そいつらに何も渡してくれや。辛いのは、逃げんかったもんやけに」
これにはラヒは頷かなかった。大人の影に隠された少女の方を一時見つめると、深く息を吸い込んでから弱々しい笑みで応えた。
「国境が開放されれば、遊びに来ればいい。待っている」
ラヒがイヨーリカへ問いたげに首を傾げる。『訊ねないのか』と、顔に書いてあるようだ。
イヨーリカは、しかし、皆を見回し、その勇気が出ない。忘れよう、悔いぬよう、新天地で馴染もうとしている皆に、国を棄てた理由を振り返って思い出せとは言えない。
暮らせる国ではなくなった、それを知れば、私はそれを正すしかない。知って、放置するなら、鼻から聴くような酷は与えられない。
そして、聴いて確かめたなら、是正するに鼓舞して、苦を解き放つに過去の辛酸を拭えるのか?
帰れと、説くつもりなのか?
私には、知る権利もない。救う気もないのに真偽を訊ねる権利はない。
状況がどうのという話ではなかった。全ては、私が、どうするかだ。それが先だ。
この皆を見れば、理由はどうあれ、移民するまでの尋常ならざる事態が起きたからだ。
ラスワタが荒れている、それは事実だった。
「イヨーリカ様、よろしければ、村の長を一人、連れてあちらへ行かれては」
やはりラヒも心労を配慮して、問い詰められる状況を大っぴらにはしたくないようだ。
イヨーリカは頭を振った。ラヒの機嫌に触ったらしいが、イヨーリカは歩き出すことで、円陣からラヒを連れ出した。
「もう分かりました」
「どの様な理由で分かったと仰せになられるのか。まだ何一つ、ラスワタの現状を確かめてはおられますまい」
早足で立ち去ろうとするイヨーリカを、ラヒが前方に立ち塞いで留まらせようとする。
イヨーリカは、ラヒの手を引いた。
仕草に動揺するラヒだが、察して、乗馬に手を貸し、共に道に並んだ。
「住民が住むことを放棄した。理由はそれで十分だわ。ラスワタ語の理解も乏しくて、何が悪政か判断もできぬ私が訊く事はないようよ」
「国にお戻り頂けますか?」
「説得してとお願いしたけれど、説き伏せられて戻って敵うようなヒルダ王妃ではなさそう。行く気があるのか、自分に訊くとするわ。王女云々でないとしてもね。私が共に暮らしてきたお祖母様の母国だから」
隣の馬上で黙りこくるラヒ。
峠は越えて、サンソペの港が視界に捉えられる頃までになると、馬の足並みが響くだんまりに痺れを切らし、イヨーリカは早足でラヒを超えた。
港町に沈み行く陽がねっとりとした黄金色に輝く中、対して黒々とした背を見せ付けていたラヒだが、追い越して振り返れば、やや赤みを交えた夕陽に朗らかな顔を照らしていた。
「政治に疎い娘では、担ぐ気も失せたのではないの?」
「いえ。少々安堵いたしました。頑ななお方だと焦りもしましたが、仰せの通り、生半可な覚悟は確かに無用です。それに、私の話を信じて頂けるのでしょうから」
「まあ、そうね。内情はあなたから聞くわ」
ラヒは微かに笑んだようで、足並みが規則正しく流れる中、ぽつりぽつりと語っていく。どこか気負いが抜けた話し振りは、イヨーリカを萎縮もさせず、耳に染み入るよう記憶に留まっていった。
王妃の死後、一年も待たずして国王に召されたヒルダ王妃は、王宮に入るやその個人主義ぶりを開花させたと言う。側近は実家の出で固め、王妃や親族に位を持たせては、より良き掌握を求めて法を濫布した。国王に私欲で諌言し、王妃に擦り寄る家臣と反発する臣下とで、政情は二分したのだそう。
靡かない臣下と王家の者たちは、徐々に政治の場から排除され、追われるだけでなく、陥れられ、処刑も辞さなくなった頃には、王妃は血に飢えた狂人の如く、自らの剣で首を絶つ狂乱振りを発揮し、転がるように恐怖政治へと突入した。
法は王妃であり、近年では政治ですらなくなった。
鉱石や石を産出するラスワタだが、山から切り出す徒人を纏める組合は解散し、国の管轄下になった。
その労働条件の悪化を辿る様は目を覆うほど。管理が凄然となるに従い、徒人は生物ではないかのような扱いに。それも、効率や国益を求めての、何らかの試算があっての管理でさえなく、徒人の締め上げに然したる根拠がない。
山肌に畑の開墾を進ませたが、土が違うと進言したところで、水流豊富な畑と同様の苗を強要し、同量の穀物の収穫を求めた。土地の差異、環境条件、人口の程度を考慮にいれない、一辺倒の治世。かといえば、気候による年度の出来高の変化へは寛容だった。
それも、土地の平方による統治を進めたからだ、という。
側近から示されたこの政策に心酔し、ヒルダ王妃は強制でこれを布いた。
国土を平方で分割し、産業別にそこから上がる税を決め、乗算して納税額を算出した。
そこへ気候や震災での増減は加えたが、平方毎に協議はせず、国土全体の納税総額に対して行い、増減分を分割して、やはり平方へ割合を一様に落とすだけだった。
つまりは、見込んだ納税額が守られればよし、それ以上にあれば、寄与した領主に褒美が渡るだけ。結果だけを見る統治だった。
当然、秤に合わない領土は多く出る。
そこで領主達は、辻褄が合うよう互いの増減を埋め合う手に出た。
が、補え合える領土間であればいいが、割に合わない歩合を課された領土には誰も救いの手を伸ばさず、他がきっちりと納税する中、死守しない領主は際立った。
その処罰たるや、凄惨と混乱を極めた。翌年に持ち越される未納額は、翌々年には帳消しにされる代わりに、領主は処刑。納税率が良いと寵した領主へ、褒美と称して、この領土を与える。
救いの手を伸ばさなかった後悔に苛まれるも、時既に遅し。一時を横臥できたかつては夢に消え、搾取に明け暮れる日々となる。
隣国からの非難に耳を閉じ、外交を事実上閉じていたラスワタは、領民が逃げ出そうが身柄を戻せと要求する術を持たなかった。その意思も薄かったろう。要は、領主が予定額を納税しさえすれば良かったのだから。
デン国は、これに乗じ移民を募った。領民が減り、国境付近の領土から国土は廃れ、領主とて逃亡するか命を絶つか、処刑に甘んじる。
人の住まない土地は荒れ、国費は痩せた。残るは外貨と石の輸出に精を出すも、最大の交易国であったデン国は、移民を受けた分の領土をラスワタに要求し、これを断ってから、デン国は国境を閉じた。
移民は領土拡大の人質と扱われた。ラスワタも国民が減っては立ち行かぬ事態に漸く目を留め、移民の引取りを申し出た。デン国はこれを受け、代償として、王妃の退位と国政への参与を要求。ラスワタは抗い、現況の睨み合いが続いている。
ラスワタが産出する石は、床や壁面を覆う石材として美麗で頑丈であり、デン国が移民と期待したは、石工であろう、と、ラヒが述べる。
石工を絡め取れれば、産出地の情報や石工の技術が齎されると踏んだのだと。
しかし、既に徒弟制度や組合が崩壊した中、ただの労働者と化した徒人からは、仕事の誇りも矜持も失せており、日の出と共に借り出され、疲労で身を横たえるだけの生活を過ごした石工の末路は、切り出し場で培われた技術も、埋没量も、記憶に留めるだけの価値を持たずに、デン国の期待に応える引き出しを持たない、瞳にの火が消え失せた抜け殻であった。
あれほど警戒して来た道のりに比べ、ここサンソペではイヨーリカも自在に出かけている。
危機感に研ぎ澄まされ高揚感に晒され続けてきた全身は、穏やかに過ごす日常に自然と馴染まず、不可解な心持ちであったが、ラスワタと膠着している最中のサンソペでは、ラスワタの間者も縦横無尽に暗躍もできないのだろう、と納得していった。
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