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本編
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しおりを挟む時は少しだけ遡り、宏臣がクラブの前に数人を見かけ叶真に伝えた頃、重東のいる『クラブサレン』は少し騒がしくなっていた。
最初の異変は重東に気付いたそこそこの役職者から少し離れた席にいた一人が何処かに連絡した後から。
重東から見える範囲外がどうにもきな臭い動きをし始めたこと。
空気感が変われば重東も警戒度合いを高める。
そんな中で叶真から連絡が入れば、状況の納得と把握は完璧になる。
元いた場所に戻り、何も気付いていない三枝月に対し少し沸き上がる苛立ちを隠そうともせずに重東は告げた。
「……ねぇママ、いつからこの店は厳道会の居座る店にったの?」
重東の言葉に三枝月は心臓が大きく跳ね、脂汗がどっと溢れた。
そんなはずは無い。という過信があったから。
この辺りは星奥会が舵を取り榊組がシマと名を揚げている地域の中。
敵対する厳道会など、くれば榊組に一報を入れ対処するのが一連の流れ。
それに星奥会ならびに厳道会のような組織には自分達はこの組に身を置いていることを証明するためにピンバッジを胸元につけているはず。
例え知らなかったにせよ、厳道会をもてなしたとなれば事は大きすぎるほどになる。
「そのようなことはッ、厳道会さんたちには一杯は許しても店内でもてなすなんて、それに今日は来る人をリストにまとめて厳道会さんの組員さんの名前はありませんでした。一見さんはもとより今日は入れないはずです」
慌ただしく弁明をする三枝月の慌てようから重東は三枝月の関与が薄いことを確認し、今日のリストの作成者を問えば、誕生日イベントでは来客リストを予め誕生日の当人が記載すると返答を受けた。
マオが厳道会と繋がりがある、という嫌な現実を知った辺りで重東の携帯が通知音を鳴らし、通知から見える内容が叶真からのイレギュラーな問題が発生したときに送られる絵文字であったことから、きな臭い動きはこういうことか。と合点が全て合った。
この連絡が来た瞬間からこの場所における自分が危うい立ち位置にいることだけは確実となった。
けれど、叶真の連絡の直後鳴る着信音は事務所からのもので出れば、嫌な声が『まだ生きてんのか』と重東を煽る。
三枝月も声で誰だとわかってしまった為に、その場で見えないにせよ数回頭を下げた。この行為が厳道会を店に入れてもてなしていたという事実を謝罪するとも、恩赦を受けようとする自己防衛とも捉えられ、横目で重東は『惨め』だと感じはしたが声には出すことはなかった。
「…組長、叶真から連絡が行ったということで相違ないですか?」
『あぁ、数人の団体客がそろそろ挨拶しに行くだろうから、対処を。活きの良いのを何人か送ってる。数分も経ちゃぁ応援は行くだろうさ』
はぁと小さくため息を重東がついたタイミングと共に店内の黒服と女の子達が騒ぎ始める。
要は開戦の狼煙が上がったと言える。
額に青筋が浮かぶほど面倒くさい状況に腹を立てた重東は、電話越しの豪我に『息の根は止めるな、更に火種になる。全員回収後、事務所で対応を考える』と言われたことだけは守りつつ、半殺し程度なら許されるかと腹を決め、喧騒の渦中へと身を投じた。
鉄パイプやナイフ、明らかな殺意を前にすると人間というのは心の何処かで恐怖心を感じ足がすくむのを止められないが、元より死への恐怖が薄い重東は真っ先に武器持ちを標的にし一直線で向かった。
刃物持ちの厳道会組員はまさか自分に一直線に来るとは思っていなかったのか、目が合う重東に怯んでしまった。
怯みは重東からしたら勝利の確定。
重心がズレた刃先を目視で判断し上から振り落とすように掌で叩き落とし、持っていた人間の顎に殴りかかる。
脳震盪さえ起こせば、応援が来るまでの時間稼ぎになる。
一人をあっさりやられた側からすれば呆気にとられる数秒が生まれる。
その数秒をも重東は有効に活用した。
女の子達の悲鳴に混じりながら、チラッと横目で見えたマオだけは危険による恐怖ではない別のなにかを恐れた表情をしていた。
…
「………若頭ァ!応援に来ましたァ……ってなにもう終わらせてんですかァ……久々にやれると思ったのに」
十分ほどがたった頃、豪我のいう『活きの良いの』が何人か心踊るのを声に乗せ勢い良く店内に入ってきたが、既にほぼ制圧済みの店内に即座に声のトーンを落とす。
敵側の返り血で汚れた重東を見るなり、なんで全部やっちゃうんですかぁとショボショボした声を出す。
制圧完了の旨を伝えるために携帯のもとへと向かえば丁度、瀬戸瀬が事務所に到着し豪我に戻ったこと、そして宏臣が共にいることを報告していた。
『………した。若の最愛も無事こちらに』
その言葉の瞬間、この日一番の殺意を重東は出したといえよう。
宏臣が瀬戸瀬といる、ということは叶真は重東の命令を無視したということ。警護を反古するとは何事か。
宏臣も聞いている可能性があることを念頭に出来る限りの我慢をした上で「は?なんでヒロが組事務所にいるの?」と声を絞り出せば、豪我はクツクツと笑い声を抑えられずに笑いだしながらも『俺の指示だ、叶真を責めんなよ』と愉しげに言って、声のトーンを変え『制圧完了したのならこれからの動きを指示する、やりきれよ』と組長の威厳を出した。
重東は大きめに舌打ちをした上で「わかってます」と改めて仕事モードへと切り替えた。
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