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本編
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しおりを挟む『順調。宏臣を家に無事に帰し、護衛に周辺警護を』
重東からの淡々とした連絡が叶真の携帯に届き、叶真にとって少し気疲れする子守りに終了の合図が鳴った。
宏臣に「若は時間がかかりそうなんで、一旦家に戻りましょうか」と声をかけ車のエンジンに手をかける。
宏臣はこのまま帰るのか、少し寂しいなと車内から外を名残惜しそうに見回す。
車のエンジンがかかった直後、重東の入っていったお店の近くに数人単位のグループが点々と集まり始めるのを宏臣は目視で確認が出来た。それが重東にとって味方なのか、はたまた敵なのか面識がない人間だからこそ判断できない宏臣は、叶真に「知らない人がお店の回りに…」と伝えれば、叶真は眉間に皺を寄せ直ぐに重東に連絡をし『順調』は作られたものだとため息を吐く。
重東の指示通りに宏臣を家に送り届け戻るまでに最低でも三十分はかかる。
判断に悩む時間は残されていないことだけは、宏臣からの情報で理解している叶真は躊躇うことなく榊組の事務所へ電話を掛け『若が危険に晒されている』『若の最愛を一時保護してほしい』『動員できる組員を借りたい』と手短に伝える。
豪我が電話に近い位置に居たのだろう、返事を待つ時間を最小限に「もう出した、瀬戸瀬に最愛を預けろ」と返答が来る。
叶真は即座に了解の旨を伝えて、宏臣に少し予定を変更します。これから会う方と共に一旦組の事務所に向かうことを話し、宏臣もまたこれを承諾した。
人通りの多い道で車を走らせること十分弱、対向車に見知った顔を見つけた叶真は少しだけ安堵の息を漏らした。
宏臣からすれば初めて会う豪我直属の部下。
少しだけ白髪の混じった黒髪を七三に分けワックスで固められ、宏臣を見定めるような狐によく似た薄めの眼にはしっかりと宏臣が映っている。
百八十を超える高身長が比較的小さめの宏臣を見下ろす様は、大人と子供のような雰囲気にも見える。
「……初めまして、若の最愛。私、組長…若のお父上の部下をしております瀬戸瀬と申します。端的ですがこれより共に榊組組員と若のお父上のいる事務所へ一緒に行きましょうか」
見定めの数秒後スッと眼は更に細められ、優しい言葉遣い、声色で宏臣に話しかける。
それが『子供扱い』だとわかる話し方でも、宏臣は決して瀬戸瀬の言い方を悪意があるとは思わなかった。
実際に瀬戸瀬の方が幾つか上であることは容姿や叶真との話し方で把握できた。故に瀬戸瀬にとって慣れていないイレギュラーへの対応がうまく出来ない為に子供扱いのような、言い聞かせる言い方になったのだと思う方が悪意よりよっぽど合点がいく。
瀬戸瀬と合流し、叶真は宏臣に申し訳なさそうな顔をして深々と頭を下げた後再度車に乗って片道を戻っていった。
車の姿が見えなくなるまで、見送りも兼ねて見つめていた宏臣を瀬戸瀬は決して面倒くさがらず共に見送った。
「……車の姿も無くなりましたし、ゆっくり事務所に向かいましょうか。散歩にもなりますし歩いて行きましょう」
宏臣から見て瀬戸瀬は優しい人であった。
重東で感覚が麻痺しているのかもしれないが、瀬戸瀬の周りにはどうしてか人は集まらず、避けて歩いているようで一般から見た瀬戸瀬は怖い部類に入るのだと認識する。
高身長かつ細目はこわいのかな、などと呑気に考えながら隣を歩く宏臣と瀬戸瀬には会話がなかった。
瀬戸瀬の内心からすれば、なにか話題があればいいのにと辺りを見渡せど榊組事務所から現在地に至るまでの中で一番にホテルやそういった店が軒並みを揃える区画であり話題が作れなかった。
歩き始めて五分も経たない程度、話題が尽きれば共にただ歩くだけ。事務所までのたった数分が長くてどうにももどかしい。
けれどやはり、話題は見つからなかった。
『奥星会直系榊組事務所』という名前の大きさで一度来たことがある場所なのにもっと大きくて格式高いところかと思っていた。
映画や漫画の見すぎなのかもしれない。
改めて事務所にしっかりとした意識で自分の意思で来た宏臣は過去の記憶と場所が違うことに大層違和感を覚えた。
こんなにビルは古かっただろうか。こんなにもエレベーターはガタガタと音が鳴っていただろうか。こんなにも、質素な空間だっただろうか?
榊組の事務所として入った場所は、普通の会社に似て事務の仕事用の机がいくつかとローラーが付いた椅子、事務の棚にはファイルがたくさん入っていて、実はここは普段はオフィスなんだと言われれば信じてしまうほど会社感はあれど組の事務所感は薄かった。
「……組長、戻りました。若の最愛も無事こちらに」
入ってすぐ瀬戸瀬はフロア内に響く声で挨拶をした。いつものことなのか、事務所の中で驚く人間は誰一人として居なかった。
ただ機械越しの少し解像度の低いザラザラとした音で聴こえてきた『は?なんでヒロが組事務所にいるの?』と怒りの感情をを隠すことなく声に出しながら話す電話越しの重東だけは、違っていた。
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