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本編
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しおりを挟むバースデーの為に施されたきらびやかな装飾に包まれた店内は少し薄暗く設定された照明も相まって、視界には豪華絢爛な世界だけが映し出される。
三枝月は未だ来ぬマオを待ちながら、同じ様にマオを待つためだけに呼ばれ座らされている重東に申し訳なさを強く感じていた。
店内に入り扉が閉まるまでは隠すようにしていた重東の圧を強く身をもって理解した三枝月は敵に回してはいけない人間の存在を肌で感じ、女性をつけると提案すれば要らないのでお気になさらずに。と冷たく突き放すように表面上のお客に見えない位置に店員用の椅子を置いて座って店内を品定めするように見回す重東の姿になにも言えずにいた。
「……ねぇママ、ママはさマオの自由をなぜ赦してたの?なぜ今更になってウチに依頼なんてしたの?」
重東の後ろで、行動を起こせず悩み始めていた三枝月に重東は話題を振るように質問をしたが、三枝月からしたらその質問は地雷でもあった。
豪我には緊急事態故に言えたが、その話題を豪我が重東にしていないのだとしたら。話題をあえて広げる必要性はないといえる。
「榊組の組長さんにお伝えした通りです。お恥ずかしい限りですが、私たちにもどうしようにも」
三枝月の言葉は遠回しに組長に聞け、と言っているのだと重東はすぐに理解したが理解した上で更に「マオって子は今日から人間では無くなるわけだけど、ママはさ救える間に救ってあげなかったってことだよね」と言葉を三枝月に投げ掛けた。
「重さんのいう通りです、私の未熟さが招いたことでもあります。止められると踏んで掛けてきた言葉が、無意味だったとわかった時の私の失望が重さんに伝わらないように、私の、その」
三枝月は言葉に詰まった。今までマオのことを責め立て人間性を問うものはいてもママである三枝月を責め立てるものはいなかった。
「ママは散々言ってきたじゃない」「ママのせいではないよ」
多くの優しくも甘えたくなる言葉の数々に溺れ、罪から目をそらしてきたのは事実だった。
重東は三枝月の中でもなにかが整理されたことを表情から確認すると、少し優しい声色で告げた。
「多分、組長から後々連絡がいくだろうけれど、三枝月は今回の一件で降格は免れないだろうね。組長が用意した新たな人材の下で学ぶことをオススメするよ」
三枝月との会話に区切りがついた直後、勢いよく開いた店の扉と、店内中に響く大きな声で主役がやってきたことを嫌でも確認する。
分が悪そうに三枝月が小走りで扉の方まで行き、入り方やら礼儀やらの話をする間も店内にいる男の客から大きな苦情が入っている様子はない。
常習化し、呆れを顔に出すキャストはいても声に出すことはない。
「随分と腐っちゃってたみたいだ。燃やした方が良いかな」
更に入ってきたマオがママの制止を振り切って大きな声で重の名前を呼び始めたことで事態は大騒ぎになりつつあった。
夜の街で呑み歩く、女の子と遊ぶ行為に及んだことがある人間ならば榊組の若頭の名前を知らないはずがない。
同名の人間がたまたま、同じ店内で酒を飲んでいることもあるが、マオの騒ぎ方とママの制止の仕方で並大抵の人間ではないことが推測できる。
こうなると店内にいたそこそこの役職に就く人間は落ち着いていられない。
天下の奥星会榊組に挨拶も無しに騒いでいたとなれば、どうなるか想像もつかない。
次々にキャストに「榊組の若頭さんはどちらに」と問い詰める人間が騒ぎだし、誕生日パーティーとは思えない騒ぎように、重東は不快感と滑稽さの間で乾いた笑いを落とすことしか出来なかった。
わざわざ出向く必要もない場面ではあったが、騒ぎの渦中に巻き込まれた以上は沈静化させる義務が生まれる。
ゆっくりと立ち上がり表の方へと向かえば、重東の存在に気がついたそこそこの役職の人間がマオのことなどそっちのけでじゅうとに頭を下げて挨拶に群がる。
「なんとか建設の」「なんとか企業の」「なんとか株式会社の」と同時進行でペラペラと落ちる言葉を全て拾う程、重東の気は向いていない。
「…一旦、みなさん落ち着いて欲しいですね。此方から挨拶がなかったこともあり、お騒がせ致しました、野暮用で寄っただけなのでお気になさらないでいただけると嬉しいです」
重東の遠回しの牽制は効く。
敵には回したくない連中ばかりであったために、重東の言葉には素直に従う。静かになったところで、予定には無かった動きではあったが、重東はマオに近付いて「改めて、挨拶を」と言葉を始め重東の顔の良さに恍惚の表情を向けるマオの目を見ながら自己紹介を終え最後に「お誕生日、おめでとう」と言えば、マオの喜びは頂点に達したと言える。
更に重東は、マオの耳元でマオにしか聞こえない声量で「誕生日パーティーを楽しんでおいで、後で二人でお祝いしよう。用意しているから」と耳打ちすれば、従順なマオは嬉しいと喜び、重東が裏に回ることや表で一緒にパーティーに参加しないことなどを嬉々として許した。
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