幸福奇譚

安馬川 隠

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本編

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 首輪は鎖で手首に付けられた手錠と繋がっている。手は首の辺りから下げることも出来なければ顔より上には上がらない。
 足は足首と太股を固定され、目隠しをされてはもう宏臣に逃げる、動くといった行動の手段は封じられたと言っても過言ではない。

 ごめんなさい、誰にも言いません、助けてください

 宏臣は自分がこれからどうなるのかわからないままに溢れる涙を抑えることも出来ず仰向けで涙は耳の上を通って後頭部を濡らす。
 重東は拘束を終えてすぐ扉から何処かへ移動して、居ないのか静かな寝室で宏臣一人。泣き声だけが響き渡る。
もしかしたら、近くで聞いているかも知れないという希望を打ち消すことは出来なくて宏臣は必死に懇願した。


 キューブラー・ロスの死の受容課程でいえば、現段階は三段階目。『取引』の段階。
一段階目の『否認』二段階目の『怒り』は既に宏臣は薬を打たれる前に終えている。
一旦は薬で朦朧とした世界が宏臣としても重東としても『幸せな話』であったことなど明白。


 重東はアダルトグッズの入ったケースを手に持ち、寝室に戻ってきたが目隠しをされたことで見えていないに加え自分の声で音に気付いていない宏臣は必死に命乞いを泣きながらしていた。
「殺したりはしない」と言った重東を全くと言って良いほどに信用していないと悲しい気持ちにはなったものの、重東が宏臣の立場なら同じかと自問自答し完結した。


「…ヒロが不安になってるの気付いてあげられなくてごめんね。殺さないって俺が言ったからって信用出来ないよね……ただね、信用しきれないのは俺も一緒。ヒロが俺を置いて逃げちゃうかもって。
わかってるんだけどね、ヒロを無理矢理連れてきたこと、薬を打ったという前科があること。でも俺はヒロをこの世の誰よりも愛しているという事実は疑われたくないんだ。ヒロの為ならここで死ぬことも厭わない」


 重東の言葉を聞いていても宏臣から恐怖が抜けることは無かった。寧ろ拒絶すれば宏臣と共に心中できると脅されてさえいるような気持ちになって更に萎縮する。
 重東は更に力が入った宏臣を見て、ほんの少し心のモヤつきを感じたが気を取り直して宏臣の頬に優しく触れた。
触れた頬がビクッと震えたが、前日の優しく抱かれた記憶が残っているのだろうか怖いだけではないようだった。

 頬から顎、親指で唇を撫で、首筋まで指を進め鎖骨を外側から内側へと這わせる。そこからは服越しに胸骨へと向かい、怖がっているはずなのにツンとたって主張する胸には触れずに下へと向かう。お腹に向かえば擽ったさと似た感覚に身悶えてしまう。


 宏臣の身体はたった一回の強烈な快感で、男として興奮を覚えた時に反応する部分だけでなく、お尻の奥が物欲しげに反応する。

 宏臣も重東も想定していなかった。


「…ッッ……はぁッ………じ、じゅとさ、ん………きす…ッ」


 泣きながら先程まで命乞いをしていた宏臣が求めた。
宏臣としても口が滑った感覚で、羞恥にじわじわと顔が真っ赤に染まっていく。
い、今のは違います。と訂正しても重東の感じた嬉しさは取り消されることはなかった。


「ふッ…ふふッ……俺もヒロにちゅーしたい。一緒の気持ちで嬉しいなぁ。だけど、違うって言われたからしたくなくなっちゃったんだろうなぁ……ねぇヒロ、ちゅーしたくなったら、口を開けてベロ出して。そしたら沢山俺のベロで甘やかしてあげる、ちゅーたくさんしたいね」


 重東は声をかけながらも手を止めることはせず、お腹からゆっくりと太股に向かい身悶え動く宏臣の様子を見ていた。
喘がないように小さく吐息を漏らし身体をもじもじと動かす可愛い生物を目に焼き付けるように。

 宏臣は小さな快楽が積み重なるがイける程の快感ではない。その絶妙な状況で、先程の羞恥。
薬の影響でまだ正気ではないと偽れば今感じている快楽に溺れる理由にはなるだろうか。
逃げ道を作ってしまうと人は堕落し、都合のよい世界へと引きずり込まれるなんて幼稚な子供でもわかる話だというのに。宏臣は目先の餌に手を伸ばす。


 震える口をゆっくりと開け、舌をゆっくり前に出す。
舌の後ろを下唇に付けちょろっと出す程度でも、猛烈に恥ずかしくなる。
重東は全てを見た上で、ベロが出てないなぁ…ちゅーしたくないのかぁと残念そうな声を出す。
終わってしまうかもと羞恥を押し殺し、必死に出せる範囲で宏臣が出した舌を重東は良い子だねと優しく声をかけ、舌先に舌先を合わせ唾液を宏臣に流し込むように垂らしながら舌を食む。


 喜びと突然の快楽に宏臣は腰を浮かせ絶頂した。
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