ふたりとも秘密がある〜御曹司はS系秘書に首ったけ〜

樹沙都

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いくらわたしだって、そんなに容易くはない。

 さまざまな書物や映像で何度も見ているモノではあるが、ナマは初見。酒精に負け少々のことでは目を覚ます様子のないこの希少な機会に、観察させていただくのは、やぶさかではない。

 寝ている相手に対してなんて、恥じらいも罪悪感も必要ない。好奇に疼く心を止める理性なんて文字は、そもそもわたしの辞書には無いし。

 それに、わたしの服を隠してあんなスケスケを着せた挙げ句、酔わせてヤル気だったのは、こいつなのだから、あとでバレたからって苦情を言われる筋合いも、無い。

「ふふふ」

 まずは観察。思わず口元が緩む。

 なるほど男性とはこんなモノを服の下に隠し持ち、隙あらば、あわよくばと、常に獲物を探している生き物なわけだ。

「あ」

 うっかりと、好奇心に負けた人差し指が、その先っぽを突いてしまった。突かれたそれが、まるで意思を持つが如くピクリと身動ぎする。

 触っちゃったよ……。

 まあ、いいか。あとで手を洗えばそれで。

 そうと決まれば……。

 へぇ……ふにゃふにゃ。

 未経験のわたしには、形、色合い、大きさ等々を、他の男のモノと比べる術はなく。その上、平常時の柔らかい其れとなれば、それこそハツモノだ。

 思いがけず滑らかな先端の指触りを堪能した指を、下の方の柔らかい膨らみへと下降させる。指先で撫でるとザラッとしたそれは、ウニウニと動きだした。

 ふむ。全自動。

 意識の有無にかかわらず、大きさと姿形を変えている。なるほどこれは、人の意思と肉体の本能が別物であるとの証明に他ならない。

 撫で突き握り滑らかな手触りを楽しみつつ、変わっていく有様をも具に観察する。ふにゃシワだったそれは、握り締め伸ばし縮めと手慰みにしているうちに少しずつ大きく膨らみ堅さを増していく。

 おもしろい。

 自分にはないモノを知り、知的好奇心を満たす作業は、とっても楽しい。だが、あまり長い間無遠慮に弄くり回して目覚められても困るので、この辺りで終わりにしたほうがいいだろう。

 こんなチャンスは二度とないかも知れないと思えば、非常に名残惜しいのだけれど。

 そうそう。

 やっぱりお仕置きは、必要よね?


 スリッパを脱ぎ、足音を立てないように摺り足で走る。ベッドの脇に置いたバッグを漁り、貴重品の段ボール箱に文字を書いた極太フェルトペンを取り出した。

「油性だけど……黒だし、問題ないよね?」

 尤も、誰かに見られたとしてもわたしには無関係。細かいことは気にしない。

 じっとりと観察されようが、念入りに弄くり回されようが、専務は相も変わらずよく眠っている。この分なら、明日の朝までぐっすりだろう。

 広げた両足の間にそっと腰をおろし、はだけているバスローブをさらに左右に開いて下腹部まで露出させた。

 白鳥・・も面白いけれど、やはり、基本はゾウさん・・・・よね。

 極太フェルトペンの蓋が、キュッと小さな音を鳴らす。と、同時に、わたしはゴクリと息を飲んだ。

 耳が大きいのはアフリカのほうだったか——それとも、インド?

 


「ふーふふん、ふーふふん、ふーふふふふふふふふ、ふーふ、ふふふ、ふ、ふーふふふふー」




 よし。描けた。

 カチッと、フェルトペンの蓋を閉めて立ち上がり、我ながらなかなかのでき、と、自画自賛しつつ、カンバスとなった裸体を見下ろす。

「さて。やることは全部やったし、寝るかな……さすがに今日は疲れたわ」

 欠伸をしながらそういえば、と、思う。

 寒くもなく暑くもないちょうどよい季節ではあるが、風呂上がりに裸のまま朝までソファに放置して、風邪を引かせてしまったらさすがに気の毒だ。

 ちょうどよくベッドに二枚重ねてあったうちの一枚のブランケットと、わたし愛用の抱き枕を持ちリビングへ戻る。ソファの背もたれと専務の隙間に抱き枕を押し込みブランケットを掛けた。

 ……実に間抜けな寝姿だ。

 明日、描かれた大作に気づいたあなたは、どんな反応を示すのだろう。

「おやすみなさい、専務。いい夢を」
 ——貴重なモノを……ありがとうございました。合掌。

 わたしの囁きが聞こえたのだろうか。寝息を立てていた専務が、目を閉じたままぎゅーっと枕を抱き締め、幸せそうに微笑んだ。

 そうだ。寝る前に手を洗わなくっちゃだった。

 *



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