ふたりとも秘密がある〜御曹司はS系秘書に首ったけ〜

樹沙都

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わたしにはわたしの考えがある。

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「そんなこといまはどうでもいいです。それよりも、これですこれ!」

 指で指し示した赤い印を見つめる専務が首を傾げた。

「それ?」
「そう、これです! こんなところにこんなものが付いてたら世間様に丸見えでしょう? 一日や二日で消えるものじゃなし、どう責任取ってくれるんですか?」
「責任って……俺たちは婚約してるんだしべつに……」
「そういう問題じゃありません! 丸見えなのが困るって言ってるんですわかりませんか?」
「うん?」

 いかにもわからない、と、いうふうに専務が首を傾げる。

 ダメだこいつ。

 これ以上、なにを言っても時間の無駄と匙を投げたわたしは、専務に反省を促すべくお仕置きをしようと決めた。

「もういいですわかりました」

 その言葉にふっと頬が緩んだのを見逃すわたしではない。

「お使い立てして申し訳ありませんが、ベッドの脇に置いてあるわたしのバッグを持ってきていただけますか」
「了解! バッグね!」

 開放されたとばかりにすっ飛んでいく専務の背に笑う。

 お気の毒さま。お楽しみはまだこれからです。

 床に打ち棄てられていたバスタオルを拾いそそくさと身体に巻き付けたわたしに、どうぞ、と恭しく渡されたバッグから、まずは予備の眼鏡を取り出して装着。

 次に、ごそごそとバッグを漁り、極太のフェルトペンを見つけだす。今回は『赤』だ。

 一連の動作で次に行われる行為を察した専務が素早く身体を反転させ扉に手をかけた。

「専務?」
 ——誰が逃がすか。

 ギギギと効果音つきで、ゆっくりと専務が振り返った。怯えきったその目に愉悦を覚える。

「あ、い、ざわ……あの……」
「脱いでください」
「え? それは……」
「いいから脱いで!」

 説教時におけるわたしの命令は絶対。専務が躊躇いつつもガウンを脱ぎ床へ滑り落としたところへ、「それも」と、パンツを指差した。

「…………」
「脱がせて欲しいですか?」

 とんでもございませんと首を左右に振り、パンツのゴムに指を引っかけ膝下まで下ろし、足踏みして両足を抜き蹴散らす専務を鼻で笑う。

 そうです。人間、諦めが肝心です。

 一糸まとわぬ姿で姿勢を正す専務の正面で腰を落とし膝立ちになれば、目の前に少々掠れて薄くなったぞうさんと、その中心にはしょんぼりと鼻が項垂れている。

「ごめん、相沢。悪かった。もうしないから許してくださいお願いします」
「すぐ終わりますからじっとしていてくださいね」

 キュッと音を立ててキャップを開け、上目遣いで微笑んだ。

 さて。なにを描こうかなぁ。

「ふふ、ふんふんふん、ふふ、ふんふんふん、ふふ、ふんふーふんふーふんふんふん——」

 鼻歌交じりでサクサクと、ぞうさんの頭上に姿を現していくのはかわいいニャンコ。これもまた、なかなかの力作だと我ながら思う。

 ほんとうなら首元にでもお絵かきしてあげたいところだけれど、仕事に差し支えるのはさすがにマズいから、これで勘弁してあげるわたしはなんて心優しいのだろう。

 くすぐったいのか快感に悶えているのか、身を捩りそうになるのをピクピクと必死で堪えている専務がかわいい。

 ぞうさんも、しょぼくれから一転、元気に鼻を持ち上げかけている。

「勝手に大きくならないでください」
「そ、んなぁ……」

 耳に付けた大きなリボンは真っ赤に塗りつぶして——っと。

 遣られたらその場でやりかえす。これが、わたしの信条だ。



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