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わたしにはわたしの考えがある。
拾弐
「ねえ、なによそれ?」
「見てわからない? オムライスよ」
つるつる滑るダイヤモンド加工のフライパンは、食洗機の中。ピカピカステンレスのフライパンで、卵を焼きご飯を包むなんて高度なテクニックがわたしにあるわけがない。焦げ付かせたら目も当てられないから試したくもないし。
見た目の違いはあれど、食べてしまえば同じもの、というわけで。
レンジでチンした残り物のチキンライスの上に、スクランブルエッグを乗せ、ケチャップを絞れば、立派なオムライスの完成だ。
「こんなしょぼいもんあたしに食べさせようだなんてさ、嫌がらせのつもり?」
「嫌なら無理に食べなくていいよ」
こっちはごちそうしたいわけでもなし。
そっちが勝手に押しかけて食事を集っているくせに、なにを贅沢言っているのやら。
「……食べるわよ。食べればいいんでしょう」
ブツブツ文句を言いつつも空腹には逆らえない清香は、カウンターのスツールに座り、オムライスを突きだした。
「ねえ、やっぱり嫌がらせでしょう? ホントはもっといいもの隠してるんじゃないの?」
「ないわよ。夕飯の残りはこれだけなの」
「夕飯ってあんたまさか、あのひとにこんなもん食べさせたわけ?」
こんなもんをリクエストしたのは、あちらさまですから。
「だからなに? あんたに関係無いでしょう? 黙って食べなさい」
「あんた、性格悪くなったよね? 昔はもっとかわいげがあったと思ったのにさ。都会のひとり人暮らしで荒んだんじゃない?」
「余計なお世話」
「なによ。心配してあげてるんじゃないの」
嘘ばっかり。
清香とわたしは、二歳違いの姉妹ではあるけれど、じつはさほど交流はない。
物心ついてからというもの、清香はいつも両親にべったり張り付き、わたしは家の手伝いをする以外の時間、ほぼひとりで読書か勉強の日々。
清香がわたしの物を横取りする。それが、ほぼ唯一といっていい接点で、清香に目を付けられたが最後、私物はまたたく間に父母に取り上げられ、姉の立場を諭され、抵抗すれば叱られた。大切な物をどれだけ奪われたかなんて、もう思い出したくもない。
「ねえ、優香。あんたさ、あのひとと付き合ってるって、やっぱり嘘でしょう?」
「なんで? 彼の口から聞いたでしょう? 婚約したって」
「聞いたけど……そんなの信じられるわけないでしょ? 婚約っていったら、その先は結婚だよ? ないない。絶対にないって。あんなに格好良くてこんな豪華マンションに住んでるお金持ちが、あたしみたいにかわいい女の子ならともかく、あんたみたいななんの取り柄もない不細工なちんくしゃとなんて有り得ないもん」
なんの取り柄もない不細工なちんくしゃとは姉に向かって言う言葉か。たしかに、三姉妹の中で比較すれば、あんたの容姿は一番優れているかも知れないけれど。少なくとも学業に関しては、あんたとは雲泥の差だ。
「有り得なくても事実だからしょうがないでしょう?」
「それ、ホントにホントなの? よさそうなひとだけど……あんたがいいなんて言う男の人がこの世にいるとは思えないもん。やっぱり騙されてるのよ。騙されて利用されるだけ利用されて遣られるだけ遣られて、最後はぽいっと捨てられてさ。もしかしたら、どこかへ売り飛ばされたりしちゃうかも知れないじゃない? そうよ! 絶対そうに決まってるって!」
「売り飛ばすって……さすがにそれはないわ」
——だってあいつ、うちの専務だよ?
あまりの物言いに開いた口が塞がらない。
「だったら……証明してよ! 絶対に騙されてないって証拠見せて!」
「…………」
——そんな証拠があるのなら、わたしが見たいわ。
「見てわからない? オムライスよ」
つるつる滑るダイヤモンド加工のフライパンは、食洗機の中。ピカピカステンレスのフライパンで、卵を焼きご飯を包むなんて高度なテクニックがわたしにあるわけがない。焦げ付かせたら目も当てられないから試したくもないし。
見た目の違いはあれど、食べてしまえば同じもの、というわけで。
レンジでチンした残り物のチキンライスの上に、スクランブルエッグを乗せ、ケチャップを絞れば、立派なオムライスの完成だ。
「こんなしょぼいもんあたしに食べさせようだなんてさ、嫌がらせのつもり?」
「嫌なら無理に食べなくていいよ」
こっちはごちそうしたいわけでもなし。
そっちが勝手に押しかけて食事を集っているくせに、なにを贅沢言っているのやら。
「……食べるわよ。食べればいいんでしょう」
ブツブツ文句を言いつつも空腹には逆らえない清香は、カウンターのスツールに座り、オムライスを突きだした。
「ねえ、やっぱり嫌がらせでしょう? ホントはもっといいもの隠してるんじゃないの?」
「ないわよ。夕飯の残りはこれだけなの」
「夕飯ってあんたまさか、あのひとにこんなもん食べさせたわけ?」
こんなもんをリクエストしたのは、あちらさまですから。
「だからなに? あんたに関係無いでしょう? 黙って食べなさい」
「あんた、性格悪くなったよね? 昔はもっとかわいげがあったと思ったのにさ。都会のひとり人暮らしで荒んだんじゃない?」
「余計なお世話」
「なによ。心配してあげてるんじゃないの」
嘘ばっかり。
清香とわたしは、二歳違いの姉妹ではあるけれど、じつはさほど交流はない。
物心ついてからというもの、清香はいつも両親にべったり張り付き、わたしは家の手伝いをする以外の時間、ほぼひとりで読書か勉強の日々。
清香がわたしの物を横取りする。それが、ほぼ唯一といっていい接点で、清香に目を付けられたが最後、私物はまたたく間に父母に取り上げられ、姉の立場を諭され、抵抗すれば叱られた。大切な物をどれだけ奪われたかなんて、もう思い出したくもない。
「ねえ、優香。あんたさ、あのひとと付き合ってるって、やっぱり嘘でしょう?」
「なんで? 彼の口から聞いたでしょう? 婚約したって」
「聞いたけど……そんなの信じられるわけないでしょ? 婚約っていったら、その先は結婚だよ? ないない。絶対にないって。あんなに格好良くてこんな豪華マンションに住んでるお金持ちが、あたしみたいにかわいい女の子ならともかく、あんたみたいななんの取り柄もない不細工なちんくしゃとなんて有り得ないもん」
なんの取り柄もない不細工なちんくしゃとは姉に向かって言う言葉か。たしかに、三姉妹の中で比較すれば、あんたの容姿は一番優れているかも知れないけれど。少なくとも学業に関しては、あんたとは雲泥の差だ。
「有り得なくても事実だからしょうがないでしょう?」
「それ、ホントにホントなの? よさそうなひとだけど……あんたがいいなんて言う男の人がこの世にいるとは思えないもん。やっぱり騙されてるのよ。騙されて利用されるだけ利用されて遣られるだけ遣られて、最後はぽいっと捨てられてさ。もしかしたら、どこかへ売り飛ばされたりしちゃうかも知れないじゃない? そうよ! 絶対そうに決まってるって!」
「売り飛ばすって……さすがにそれはないわ」
——だってあいつ、うちの専務だよ?
あまりの物言いに開いた口が塞がらない。
「だったら……証明してよ! 絶対に騙されてないって証拠見せて!」
「…………」
——そんな証拠があるのなら、わたしが見たいわ。
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