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わたしだって恋をする。
玖
「まあそうなんだけどねぇ……っていうか、清香のことはどうとでもなるんだから、この際どうでもいいわ。それよりも大事なのはあんたでしょ!」
「へ? わたし?」
「当然でしょう? あんたが男と同棲してるなんて、一大事! 大事件じゃない!」
「大事件、って……」
——酷い言われようだ。そりゃあ確かにちんくしゃ眼鏡ブスの喪女——卒業済みですが、だからって……。
「生まれてこの方、幾人もの男の子に好意を向けられ告白されても毛の一本ほども興味を示さないで一切合切無視を決め込んできたあんたが、男と同棲してるのよ? これを大事件って言わないで何を大事件って言うってのよ?」
身を乗り出してわたしの両肩をガタガタ揺すって捲し立てる姉の言葉の意味が、いまひとつ飲み込めない。
男の子がわたしに好意を向けた?
告白……されたことなんてあったっけ?
「あのね? わたし告白されたことなんて一度も……お姉ちゃん、なんか、勘違いしてるんじゃ……」
「勘違い? 冗談! 私があんたに振られた男の子を何人面倒看てきたと思ってるの? こいつだってそうよ? こいつの初恋の相手はあんただったんだから! まさか、知らなかったなんて言わせないわよ」
「そ、そんなことあるわけが……」
ケンちゃんが姉の言葉を肯定するように頷いている。けれども。
そんなバカなことがあるわけないじゃないか!
これまで姉が交際した数多の男の子たちの殆どは、元から姉の取り巻きだった。彼らが姉に恋する気持ちは、わたしに伝わってきていた。姉だって相手の気持ちが恋愛感情なのをわたしから知らされて後に交際を始めたはず。その彼らの中に、わたしに気持ちを向けていた子がいたなんて——。
「いや、やっぱりありえないよ。だって……」
「ここに生き証人がいるのに?」
ケンちゃんが嘘や冗談を言っているとは到底思えないけれど、だったら今までわたしが感じ、してきたことはいったいなんだったというのだ。
「優はさ、他人の恋愛感情がわかるんだったよな? 誰が誰を好きかはっきりとわかるんだよな?」
「そうだよ……頭の中に聞こえてくるの」
このことは、古くから付き合いの深いケンちゃんも、もちろん知っている。
「そうだったな。俺も……優のその能力は子どもの頃から実際に何度も体験しているし、まったく疑ってない。ただ……」
「うん」
「もしかしたらだけど、それって全部が全部わかるわけじゃないってこと、あるんじゃないのかな?」
「どういうこと?」
「俺が思うには、だけど……優はさ、他人のことはわかっても、自分に向けられた恋愛感情はわからないんじゃないのかな? その証拠に優は、俺が優を好きなのわからなかったんだろ? じつは俺さ、優と付き合いたいってヤツから相談受けたこともあるんだよね。優は覚えてない? 俺の高二の時の同級生でいつもつるんでた浅川ってヤツ。何度か一緒に遊んだだろ?」
ケンちゃんの同級生の浅川くんといえば……。
「ああ、覚えてる。なんか、やたらと人に絡んできてたノリの軽い人よね?」
浅川くんとはケンちゃんと姉と四人で何度か遊びに出かけたことがあった。見た目はまあまあよかったんだけれど軽薄そうなところがあるし、会う度にわたしの頭を撫でたり無理やり腕を組んだりベタベタ触るしで、鬱陶しかった印象しか残っていない。
「軽いって言われたら否定できないけど、あいつ、本気で優に惚れてたんだぞ」
「うっそだぁ! ぜんぜんそんなじゃなかったよ?」
二言目にはわたしが好きだの何だの言っていたような気はするけれど、そんなのは口先だけ。心からのものではなかったと断言できる。
「私もケンに賛成。ねえ優香、つまりはそういうことなんじゃないの? あんたはさ、自分じゃ男にまったく相手にされないって思ってるみたいだけど、そんなことまったくないんだからね」
ダメ押しとばかりに、鼻先にビシッと指を指された。
「そう……なのかな」
他人の他人へ向けられた恋愛感情はわかるけれど、自分に向けられたそれはわからない。
本当にそうなのかな?
「へ? わたし?」
「当然でしょう? あんたが男と同棲してるなんて、一大事! 大事件じゃない!」
「大事件、って……」
——酷い言われようだ。そりゃあ確かにちんくしゃ眼鏡ブスの喪女——卒業済みですが、だからって……。
「生まれてこの方、幾人もの男の子に好意を向けられ告白されても毛の一本ほども興味を示さないで一切合切無視を決め込んできたあんたが、男と同棲してるのよ? これを大事件って言わないで何を大事件って言うってのよ?」
身を乗り出してわたしの両肩をガタガタ揺すって捲し立てる姉の言葉の意味が、いまひとつ飲み込めない。
男の子がわたしに好意を向けた?
告白……されたことなんてあったっけ?
「あのね? わたし告白されたことなんて一度も……お姉ちゃん、なんか、勘違いしてるんじゃ……」
「勘違い? 冗談! 私があんたに振られた男の子を何人面倒看てきたと思ってるの? こいつだってそうよ? こいつの初恋の相手はあんただったんだから! まさか、知らなかったなんて言わせないわよ」
「そ、そんなことあるわけが……」
ケンちゃんが姉の言葉を肯定するように頷いている。けれども。
そんなバカなことがあるわけないじゃないか!
これまで姉が交際した数多の男の子たちの殆どは、元から姉の取り巻きだった。彼らが姉に恋する気持ちは、わたしに伝わってきていた。姉だって相手の気持ちが恋愛感情なのをわたしから知らされて後に交際を始めたはず。その彼らの中に、わたしに気持ちを向けていた子がいたなんて——。
「いや、やっぱりありえないよ。だって……」
「ここに生き証人がいるのに?」
ケンちゃんが嘘や冗談を言っているとは到底思えないけれど、だったら今までわたしが感じ、してきたことはいったいなんだったというのだ。
「優はさ、他人の恋愛感情がわかるんだったよな? 誰が誰を好きかはっきりとわかるんだよな?」
「そうだよ……頭の中に聞こえてくるの」
このことは、古くから付き合いの深いケンちゃんも、もちろん知っている。
「そうだったな。俺も……優のその能力は子どもの頃から実際に何度も体験しているし、まったく疑ってない。ただ……」
「うん」
「もしかしたらだけど、それって全部が全部わかるわけじゃないってこと、あるんじゃないのかな?」
「どういうこと?」
「俺が思うには、だけど……優はさ、他人のことはわかっても、自分に向けられた恋愛感情はわからないんじゃないのかな? その証拠に優は、俺が優を好きなのわからなかったんだろ? じつは俺さ、優と付き合いたいってヤツから相談受けたこともあるんだよね。優は覚えてない? 俺の高二の時の同級生でいつもつるんでた浅川ってヤツ。何度か一緒に遊んだだろ?」
ケンちゃんの同級生の浅川くんといえば……。
「ああ、覚えてる。なんか、やたらと人に絡んできてたノリの軽い人よね?」
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「軽いって言われたら否定できないけど、あいつ、本気で優に惚れてたんだぞ」
「うっそだぁ! ぜんぜんそんなじゃなかったよ?」
二言目にはわたしが好きだの何だの言っていたような気はするけれど、そんなのは口先だけ。心からのものではなかったと断言できる。
「私もケンに賛成。ねえ優香、つまりはそういうことなんじゃないの? あんたはさ、自分じゃ男にまったく相手にされないって思ってるみたいだけど、そんなことまったくないんだからね」
ダメ押しとばかりに、鼻先にビシッと指を指された。
「そう……なのかな」
他人の他人へ向けられた恋愛感情はわかるけれど、自分に向けられたそれはわからない。
本当にそうなのかな?
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