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墓場まで持っていく。
壱 :優香
伝説のサークル『美研』の創始者である、綾乃お義姉さまと佳乃お義姉さまが居て、神にも等しく尊い『しず先生』が居て——。
本邸図書室に居並ぶ、しず先生の全作品を含む美的コレクションは腐女子垂涎の的。いつでもどうぞ、とお許しを得たわたしは、それらコレクションを年中いつでも出入り自由の読み放題見放題なのだ。なんて素晴らしい。
まあ、専務はちょっとアレだし面倒ごとは数多あるけれど、総合的に見れば、西園寺家は、天国だ、と、結論づけていいと思う。けれども。
「結婚かぁ……結婚するんだ? わたし……」
ほんとうに現実なのだろうか。
身体の向きを変え、専務の顔を至近距離から眺めた。専務は、夢の中でなにかおいしいものでも食べているのか、口をむにむにと動かしながら幸せそうに眠っている。
わたしと専務はすでに、同居生活を営んでいる。
わたしの帰郷メッセージを誤解して実家に押しかけてきた専務は謀略を巡らし、両親から結婚の許可を取り付けてしまった。
西園寺家のみなさまには、でかした、ようやくとっ捕まえられたな、と、たくさんの祝福と応援を受けた。
さらには、衆人環視の中、プロポーズの実演までされて。
ここまで来たら後は、具体的に動き出すだけなのだろうけれど、式や披露宴に口も手も出す余地は無さそうで、わたしのやることといったらせいぜい、婚姻届に署名するくらいだ、たぶん。
『ところで、優香ちゃんはいつお嫁に来るの? 待ち遠しいんだけど?』
『今日でも明日でもいつでも準備万端おっけーです』
なんて返事をしてはみたものの、いまひとつ実感が湧かない。
「……睫毛、長いな」
人差し指の先でちょいっ、と、睫毛の先を撫でてみても、ぴくっと瞼を震わせるだけ。
「かわいい寝顔して……」
相変わらずむにゅむにゅしている唇に、唇をふわりと押し当てた。
抱きつくようにそっと腕を回し、裸の胸板に頬を預けて瞼を閉じれば、高めの体温と規則正しい鼓動に、ゆるい眠りを誘われる。
「ふぁ……」と、欠伸がひとつ漏れた。
結婚とは、生涯を共にするパートナーを決定づける一大イベント。
先のことはわからないけれど、離婚を前提に結婚する人なんていないだろうから、現時点では一生もののつもりのはず。
それでもふと、考えてしまう。
ずっと以前から、それこそもう閉店間際の決算大セールのように好きだ愛してると連呼され続けているけれど、この人は、ほんとうに心の底からわたしを愛しているのだろうか。
こうして間近で見つめていても、専務の気持ちはやはり見えなくて。
他人の恋はわかっても、自分に向けられる恋心はわからない。きっとそれは正解だろうけれども、確かめる術は無し。
「だめだわ……」
ヘタレな思考が行ったり来たりで、考えがまとまらない。
とにかく大事なのは、わたし自身の気持ち。それと。
ヘンテコなこの特技の秘密を、絶対に知られないこと。それに尽きる。
尤も、言ったところで信じるとは思えないのだけれど——。
「んぐっ……」
小さく身動ぎをした専務の両腕が巻き付いて、わたしの身体を締め上げた。
「専務?」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「いいえ。大丈夫……ん……寝てたんじゃないんですか?」
双丘を弄んでいた専務の細く長い指が谷間を這い、蜜口を探りはじめた。擦りつけられる下半身は、物欲しげに硬く膨らんでいる。
「うん。目が覚めた。なあ、入れてもいいか?」
「……さっきまでしてたのにまたするんですか?」
なし崩し的にプロポーズ(のようなもの)を受け入れて以来、専務は毎晩のように繋がりたがる。
以前のように前段階で体力を消耗し尽くし燃えかすになるほど身体を酷使されるほどではないので、いまのところ苦にはなっていないが、週末ともなれば、一晩に何度も何度も繋がる羽目に。
女嫌いどころか女性恐怖症の片鱗さえ見せる専務から求められるのは、嬉しくはあるのだけれど——その反面、何か理由があるのではないだろうか、と、つい勘ぐってしまうのは、やはりわたしの悪い癖だろう。けれども。
明確になにかがある、との確証はないのだが、なにかがあるような気がしてならないのも正直なところなのだ。
「なんにもしないから。いれるだけだから。ね?」
なんにも! って。
入れるだけでじゅうぶんなんでもしていると思いますが。
「ん……ちょっ、まって! 専務っ」
「待てない」
秘所を弄ぶ手を滑らせてわたしの太腿を抱えた専務は、足を開かせるように持ち上げ自分の腰へと巻き付けた。
「はっ、あうっ」
営みの名残で滑る秘所は、敵のぞうさんをいとも容易く受け入れてしまう。
「ん。こうすると気持ちいい?」
「は……ぁん」
ぬめぬめと行き来する柔らかい刺激を受け、素直な身体は追加で蜜を溢れさせた。
「ほら、いっぱい濡れてくるし大丈夫だって、あっ、入っちゃった」
自分で入れたくせに。
ゆるゆると侵入してきたソレは、最奥へ到達するとピタリと動きを止めた。みっちりと埋まった熱で、身体の奥が痺れてくる。
わたしではない何者かの欲望が、きゅうきゅうとソレを締め付けた。
「うっ。そんなに絞めたら……」
追い詰められる熱を逃がすように「ふぅ」と息を吐く専務を見上げれば、わたしを見つめるその顔には、蕩けそうな笑みが浮かんでいる。
「愛してるよ。相沢」
「はい」
わたしも。愛しています。
「幸せにするから」
「……はい」
ありがとうございます専務。
いまだって十分、わたしは幸せですよ。
本邸図書室に居並ぶ、しず先生の全作品を含む美的コレクションは腐女子垂涎の的。いつでもどうぞ、とお許しを得たわたしは、それらコレクションを年中いつでも出入り自由の読み放題見放題なのだ。なんて素晴らしい。
まあ、専務はちょっとアレだし面倒ごとは数多あるけれど、総合的に見れば、西園寺家は、天国だ、と、結論づけていいと思う。けれども。
「結婚かぁ……結婚するんだ? わたし……」
ほんとうに現実なのだろうか。
身体の向きを変え、専務の顔を至近距離から眺めた。専務は、夢の中でなにかおいしいものでも食べているのか、口をむにむにと動かしながら幸せそうに眠っている。
わたしと専務はすでに、同居生活を営んでいる。
わたしの帰郷メッセージを誤解して実家に押しかけてきた専務は謀略を巡らし、両親から結婚の許可を取り付けてしまった。
西園寺家のみなさまには、でかした、ようやくとっ捕まえられたな、と、たくさんの祝福と応援を受けた。
さらには、衆人環視の中、プロポーズの実演までされて。
ここまで来たら後は、具体的に動き出すだけなのだろうけれど、式や披露宴に口も手も出す余地は無さそうで、わたしのやることといったらせいぜい、婚姻届に署名するくらいだ、たぶん。
『ところで、優香ちゃんはいつお嫁に来るの? 待ち遠しいんだけど?』
『今日でも明日でもいつでも準備万端おっけーです』
なんて返事をしてはみたものの、いまひとつ実感が湧かない。
「……睫毛、長いな」
人差し指の先でちょいっ、と、睫毛の先を撫でてみても、ぴくっと瞼を震わせるだけ。
「かわいい寝顔して……」
相変わらずむにゅむにゅしている唇に、唇をふわりと押し当てた。
抱きつくようにそっと腕を回し、裸の胸板に頬を預けて瞼を閉じれば、高めの体温と規則正しい鼓動に、ゆるい眠りを誘われる。
「ふぁ……」と、欠伸がひとつ漏れた。
結婚とは、生涯を共にするパートナーを決定づける一大イベント。
先のことはわからないけれど、離婚を前提に結婚する人なんていないだろうから、現時点では一生もののつもりのはず。
それでもふと、考えてしまう。
ずっと以前から、それこそもう閉店間際の決算大セールのように好きだ愛してると連呼され続けているけれど、この人は、ほんとうに心の底からわたしを愛しているのだろうか。
こうして間近で見つめていても、専務の気持ちはやはり見えなくて。
他人の恋はわかっても、自分に向けられる恋心はわからない。きっとそれは正解だろうけれども、確かめる術は無し。
「だめだわ……」
ヘタレな思考が行ったり来たりで、考えがまとまらない。
とにかく大事なのは、わたし自身の気持ち。それと。
ヘンテコなこの特技の秘密を、絶対に知られないこと。それに尽きる。
尤も、言ったところで信じるとは思えないのだけれど——。
「んぐっ……」
小さく身動ぎをした専務の両腕が巻き付いて、わたしの身体を締め上げた。
「専務?」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「いいえ。大丈夫……ん……寝てたんじゃないんですか?」
双丘を弄んでいた専務の細く長い指が谷間を這い、蜜口を探りはじめた。擦りつけられる下半身は、物欲しげに硬く膨らんでいる。
「うん。目が覚めた。なあ、入れてもいいか?」
「……さっきまでしてたのにまたするんですか?」
なし崩し的にプロポーズ(のようなもの)を受け入れて以来、専務は毎晩のように繋がりたがる。
以前のように前段階で体力を消耗し尽くし燃えかすになるほど身体を酷使されるほどではないので、いまのところ苦にはなっていないが、週末ともなれば、一晩に何度も何度も繋がる羽目に。
女嫌いどころか女性恐怖症の片鱗さえ見せる専務から求められるのは、嬉しくはあるのだけれど——その反面、何か理由があるのではないだろうか、と、つい勘ぐってしまうのは、やはりわたしの悪い癖だろう。けれども。
明確になにかがある、との確証はないのだが、なにかがあるような気がしてならないのも正直なところなのだ。
「なんにもしないから。いれるだけだから。ね?」
なんにも! って。
入れるだけでじゅうぶんなんでもしていると思いますが。
「ん……ちょっ、まって! 専務っ」
「待てない」
秘所を弄ぶ手を滑らせてわたしの太腿を抱えた専務は、足を開かせるように持ち上げ自分の腰へと巻き付けた。
「はっ、あうっ」
営みの名残で滑る秘所は、敵のぞうさんをいとも容易く受け入れてしまう。
「ん。こうすると気持ちいい?」
「は……ぁん」
ぬめぬめと行き来する柔らかい刺激を受け、素直な身体は追加で蜜を溢れさせた。
「ほら、いっぱい濡れてくるし大丈夫だって、あっ、入っちゃった」
自分で入れたくせに。
ゆるゆると侵入してきたソレは、最奥へ到達するとピタリと動きを止めた。みっちりと埋まった熱で、身体の奥が痺れてくる。
わたしではない何者かの欲望が、きゅうきゅうとソレを締め付けた。
「うっ。そんなに絞めたら……」
追い詰められる熱を逃がすように「ふぅ」と息を吐く専務を見上げれば、わたしを見つめるその顔には、蕩けそうな笑みが浮かんでいる。
「愛してるよ。相沢」
「はい」
わたしも。愛しています。
「幸せにするから」
「……はい」
ありがとうございます専務。
いまだって十分、わたしは幸せですよ。
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