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墓場まで持っていく。
弐 :要
姉たちの玩具として生きた幼少期。純粋な少年の心を踏み躙られ、自暴自棄に陥った少年期を乗り越えた俺に残されたのは、諦め。
陥れ、縋り付き、肉食獣の如く襲い来る女たちから逃れるその戦いそれが、相沢と出会うまでの俺の、男としての人生だった。
だがしかし、いまは違う。
逃げ回り、残酷な現実から目を逸らすだけの日々は、相沢によって救われ、薔薇色に輝いている。
これがどれだけ幸せなことなのか語り尽くせるだけの言葉を俺は知らない。
その替わりと言ってはなんだけれど、つい、覚えたての初心な男子のように、相沢を求めてしまう。
いや、けっしてしたいだけではないのだ。そりゃあ、できるんだからしたいのもそうだけれど。
こうして繋がっていれば、相沢の心の声が聞こえる。
恥ずかしがり屋な相沢が、実際には絶対に口にしてくれない甘い愛の言葉だって、聞き放題だ。これほど心安らぐ幸せが、他にあるものか。
「愛してるよ。相沢」
「はい」
『わたしも、愛しています』
ほら、こんなふうに。
「幸せにするから」
「……はい」
『ありがとうございます、専務。いまだって十分、わたしは幸せですよ』
幸せだと言ってくれる。
「うん。相沢、俺も。幸せだよ」
『え? なに? いまの……』
俺はいま、なにを言ったのだろうか。
無意識のうちにゆらゆらと揺れていた腰が、はた、と、止まった。
「……専務?」
『まさか……ね? ありえない? いや、でも……ありえる?』
俺の顔を訝しそうに覗き込む相沢の脳みそが、心の声すら聞き取り不可のスピードで回転している。
まずい。
俺の背筋にヒヤリと冷たい電流が走った。
「抜いてください」
「はっ? えっ?」
「抜いてください。何度も言わせないで」
「はいっ! ただいまっ!」
幸せな温もりからするりとソレを抜き去り、マットレスを蹴るが如く弾みを付けて身体を起こした俺は、その場で反射的に正座する。
我が世の春とばかりに反り返っていたぞうさんも、相沢の睨みに恐れをなしたのだろう、あっという間にしおしおと萎れ、最早威勢の欠片もないが、いまは非常時。恥も外聞もなく相沢の求めのままに身を任せるしかない。
「ねえ専務、もしかして……わたしに隠していることがあるんじゃないですか?」
「……いいえそんな滅相もない、です」
「では、いまのお言葉はいったい……」
「え、あ? 俺、なにか言ったっけ?」
「惚けないでください」
相沢の声音が低く平坦になっていく。
「あ、いやべつに惚けてなんて、夢中だったし、無意識だったし……」
「……専務?」
「あ、ああそうか、思い出したよ。えっと……俺も、俺も、あ、そうだ、俺も幸せになるよって……そうそう、そう言ったんだ。アハハ……ハァ」
顔から首筋から汗を噴き出しながら言い訳に終始する。
必死だった。生まれてこの方、ここまで必死になったのは、後にも先にもこれがはじめてかも知れないくらい。
身体を繋げたその真っ最中に相手の思考を読み取れる。
超能力と言っても過言では無いだろうこの異能の存在を、相沢に知られてはならない。
通常であれば、こんな超常現象に等しい能力を持つ人間が現実にいるなんて、正直に告白したところで一笑に付されるのがオチだろうとは思う。けれども。
まさか、とは思うが、万が一、ということもある。
もしも、その万が一が起きてしまったら。相沢のことだ。俺のぞうさんは拒絶され、二度と×××——そんなの絶対に嫌だから。泣くから。だからこれはこれだけは。
俺が命懸けで墓場まで持っていかなければならない重大な秘密なのだ。
「本当に?」
「本当です。もちろん」
嘘偽りも隠し事もなにひとつございません、と、俺はぴんっと背筋を伸ばし、相沢の目を真っ直ぐに見据えた。
「……そうですか。わかりました」
どうやらとりあえずの危機は去ったらしい。
ほぅ、と、息をつき気を緩めた俺を尻目に、相沢はベッドサイドテーブルの小引き出しへと手を伸ばした。
引き出しを開けて取り出されたのは、見慣れた極太フェルトペンで。
「後ろを向いてください」
「……それは……」
「今日の幸せを絵に描いてみたくなりましたので」
指先でくるくると弄ばれる極太フェルトペンを見つめ、俺はごくりと息を呑み込んだ。
相沢の指示に従い、膝立ちで背を向ける。
「伏せて。そうです。お尻は高く上げましょう。いい眺めですね」
相沢が愉しげに笑っているのが、目に見えずともわかる。視線にじりじりと焼かれる尻が熱い。
「ヒぅッ!?」
つ、つ、つ、と、尻の間を伝った極太フェルトペンの先に、大事な膨らみをちょいと突かれ、飛び上がった。
勇姿を誇ったぞうさんは見る影もなく。しおしおを通り過ぎて親指ほどに縮み上がっている。
「さて、なにを描きますかね? フフフ」
きゅぽっ。
「お手柔らかにお願いします……」
女神との営みは、想像を絶するほどに幸せで、甘くない。
実に恐ろしきは女なり。
俺の宿命は過酷らしい。
おしまい☆彡
陥れ、縋り付き、肉食獣の如く襲い来る女たちから逃れるその戦いそれが、相沢と出会うまでの俺の、男としての人生だった。
だがしかし、いまは違う。
逃げ回り、残酷な現実から目を逸らすだけの日々は、相沢によって救われ、薔薇色に輝いている。
これがどれだけ幸せなことなのか語り尽くせるだけの言葉を俺は知らない。
その替わりと言ってはなんだけれど、つい、覚えたての初心な男子のように、相沢を求めてしまう。
いや、けっしてしたいだけではないのだ。そりゃあ、できるんだからしたいのもそうだけれど。
こうして繋がっていれば、相沢の心の声が聞こえる。
恥ずかしがり屋な相沢が、実際には絶対に口にしてくれない甘い愛の言葉だって、聞き放題だ。これほど心安らぐ幸せが、他にあるものか。
「愛してるよ。相沢」
「はい」
『わたしも、愛しています』
ほら、こんなふうに。
「幸せにするから」
「……はい」
『ありがとうございます、専務。いまだって十分、わたしは幸せですよ』
幸せだと言ってくれる。
「うん。相沢、俺も。幸せだよ」
『え? なに? いまの……』
俺はいま、なにを言ったのだろうか。
無意識のうちにゆらゆらと揺れていた腰が、はた、と、止まった。
「……専務?」
『まさか……ね? ありえない? いや、でも……ありえる?』
俺の顔を訝しそうに覗き込む相沢の脳みそが、心の声すら聞き取り不可のスピードで回転している。
まずい。
俺の背筋にヒヤリと冷たい電流が走った。
「抜いてください」
「はっ? えっ?」
「抜いてください。何度も言わせないで」
「はいっ! ただいまっ!」
幸せな温もりからするりとソレを抜き去り、マットレスを蹴るが如く弾みを付けて身体を起こした俺は、その場で反射的に正座する。
我が世の春とばかりに反り返っていたぞうさんも、相沢の睨みに恐れをなしたのだろう、あっという間にしおしおと萎れ、最早威勢の欠片もないが、いまは非常時。恥も外聞もなく相沢の求めのままに身を任せるしかない。
「ねえ専務、もしかして……わたしに隠していることがあるんじゃないですか?」
「……いいえそんな滅相もない、です」
「では、いまのお言葉はいったい……」
「え、あ? 俺、なにか言ったっけ?」
「惚けないでください」
相沢の声音が低く平坦になっていく。
「あ、いやべつに惚けてなんて、夢中だったし、無意識だったし……」
「……専務?」
「あ、ああそうか、思い出したよ。えっと……俺も、俺も、あ、そうだ、俺も幸せになるよって……そうそう、そう言ったんだ。アハハ……ハァ」
顔から首筋から汗を噴き出しながら言い訳に終始する。
必死だった。生まれてこの方、ここまで必死になったのは、後にも先にもこれがはじめてかも知れないくらい。
身体を繋げたその真っ最中に相手の思考を読み取れる。
超能力と言っても過言では無いだろうこの異能の存在を、相沢に知られてはならない。
通常であれば、こんな超常現象に等しい能力を持つ人間が現実にいるなんて、正直に告白したところで一笑に付されるのがオチだろうとは思う。けれども。
まさか、とは思うが、万が一、ということもある。
もしも、その万が一が起きてしまったら。相沢のことだ。俺のぞうさんは拒絶され、二度と×××——そんなの絶対に嫌だから。泣くから。だからこれはこれだけは。
俺が命懸けで墓場まで持っていかなければならない重大な秘密なのだ。
「本当に?」
「本当です。もちろん」
嘘偽りも隠し事もなにひとつございません、と、俺はぴんっと背筋を伸ばし、相沢の目を真っ直ぐに見据えた。
「……そうですか。わかりました」
どうやらとりあえずの危機は去ったらしい。
ほぅ、と、息をつき気を緩めた俺を尻目に、相沢はベッドサイドテーブルの小引き出しへと手を伸ばした。
引き出しを開けて取り出されたのは、見慣れた極太フェルトペンで。
「後ろを向いてください」
「……それは……」
「今日の幸せを絵に描いてみたくなりましたので」
指先でくるくると弄ばれる極太フェルトペンを見つめ、俺はごくりと息を呑み込んだ。
相沢の指示に従い、膝立ちで背を向ける。
「伏せて。そうです。お尻は高く上げましょう。いい眺めですね」
相沢が愉しげに笑っているのが、目に見えずともわかる。視線にじりじりと焼かれる尻が熱い。
「ヒぅッ!?」
つ、つ、つ、と、尻の間を伝った極太フェルトペンの先に、大事な膨らみをちょいと突かれ、飛び上がった。
勇姿を誇ったぞうさんは見る影もなく。しおしおを通り過ぎて親指ほどに縮み上がっている。
「さて、なにを描きますかね? フフフ」
きゅぽっ。
「お手柔らかにお願いします……」
女神との営みは、想像を絶するほどに幸せで、甘くない。
実に恐ろしきは女なり。
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ありがとうございます。
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