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§ 墨に近づけば黒くなる。
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ついさっきまでの眠気はどこへやら。さっさとケリをつけないとまた朝までコースになってしまう。
そう、そんなふうにとの尊の指示どおりに、ポチポチとポインタを動かしキーボードを叩く。画面を見つめ手を動かしながら、ふと、ひとつの疑問が浮かんだ。
「ねえ、訊いていい?」
「うん? なに?」
「尊はさ、どうして離婚しなかったの?」
「知ってたのか?」
「うん。佳恵に聞いた」
一回訊いてみたかった、最大の疑問。こいつは、ラスベガスでは結婚も離婚も簡単にできることを知っていたはずだ。もし知らなかったとしても、その気があれば調べてどうにかしただろうに、なぜ、ずっとこの婚姻関係を放置し続けていたのだろう。
「うーん、なんでかな?」
「なによ? 他人事みたいに」
「いや、考えたこと無かったからさ」
「そのままで困るって思わなかったの?」
「べつに? だって、おまえ以外の女と再婚するなんて、一度も思ったことないからさぁ……」
「なんで?」
「だって、おまえほど一緒にいておもしろい女、他にいないから」
これは、褒め言葉なのだろうか。それとも。だが、わかる。私にとっても、尊ほどおもしろい男は、いない。
「うん。そうだね」
「だろう? だから、いままたこうして一緒に居るんだよ」
これを不可抗力と言わずしてなんと言うのか。
何の因果か再会し、こうしてまた、ごく自然にふたりの時間を過ごしている。
縁とは摩訶不思議なものだ。
再び尊と出会うことができなかったら、私は、間違いなく生涯独身。それこそ法的に既婚者である事実にすら気づかず、一生を終えていただろう。
いま、私は幸せなのかも知れない、と、ちょっと思う。
「できた! これでどう?」
「OK! じゃ、これで明日午後一にミーティングだからな」
それまでに企画書と一緒に纏めろと言われ、タイトなスケジュールにムッとしつつラップトップをパタンと閉じた。
斜め下にある尊の顔が私を見上げて結果オーライだな、と、黒い笑みを浮かべる。その唇を発作的に抓った。
「★#$%?☆彡*@&!」
そう、そんなふうにとの尊の指示どおりに、ポチポチとポインタを動かしキーボードを叩く。画面を見つめ手を動かしながら、ふと、ひとつの疑問が浮かんだ。
「ねえ、訊いていい?」
「うん? なに?」
「尊はさ、どうして離婚しなかったの?」
「知ってたのか?」
「うん。佳恵に聞いた」
一回訊いてみたかった、最大の疑問。こいつは、ラスベガスでは結婚も離婚も簡単にできることを知っていたはずだ。もし知らなかったとしても、その気があれば調べてどうにかしただろうに、なぜ、ずっとこの婚姻関係を放置し続けていたのだろう。
「うーん、なんでかな?」
「なによ? 他人事みたいに」
「いや、考えたこと無かったからさ」
「そのままで困るって思わなかったの?」
「べつに? だって、おまえ以外の女と再婚するなんて、一度も思ったことないからさぁ……」
「なんで?」
「だって、おまえほど一緒にいておもしろい女、他にいないから」
これは、褒め言葉なのだろうか。それとも。だが、わかる。私にとっても、尊ほどおもしろい男は、いない。
「うん。そうだね」
「だろう? だから、いままたこうして一緒に居るんだよ」
これを不可抗力と言わずしてなんと言うのか。
何の因果か再会し、こうしてまた、ごく自然にふたりの時間を過ごしている。
縁とは摩訶不思議なものだ。
再び尊と出会うことができなかったら、私は、間違いなく生涯独身。それこそ法的に既婚者である事実にすら気づかず、一生を終えていただろう。
いま、私は幸せなのかも知れない、と、ちょっと思う。
「できた! これでどう?」
「OK! じゃ、これで明日午後一にミーティングだからな」
それまでに企画書と一緒に纏めろと言われ、タイトなスケジュールにムッとしつつラップトップをパタンと閉じた。
斜め下にある尊の顔が私を見上げて結果オーライだな、と、黒い笑みを浮かべる。その唇を発作的に抓った。
「★#$%?☆彡*@&!」
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