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§ あなたが好き。
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俊輔が予約していたのはテーブルだけではなく料理もだった。フレンチのフルコース。こんな豪華なものを口にするのは、生まれて初めてかも知れない。
食前酒、突き出しに始まり、前菜、スープ、魚料理と、ゆっくりと堪能する時間を置いてコースが進んでいく。優雅に配膳される料理に、味はもちろんのこと、その芸術作品のような皿に目を見張った。
「ねえ、コースって……すっごくお高い……」
「無粋なこと言ってねえで、黙って食え」
ご尤も。いくら俊輔だからって、勝手に連れてきておいて、いざお会計の段になって割り勘とはさすがに言わないだろう。いや、たとえ言われたって、誰が払ってやるものか。
滅多に無いチャンスなのだから、楽しまなければ損。俊輔への疑問他あれこれを頭からとりあえず追い払い、特にこれといった会話も無く、窓の外、夕闇が色を変え夜の帳の下りた下界に、星屑の如く輝く夜景を堪能しながら、美しく盛り付けられた繊細な料理とワインをゆっくりと楽しんだ。
そして食事が終わり、運ばれてきたデザートに度肝を抜かれた。
バースデーケーキ。
小さいが、蝋燭も立てられ、チョコレートのプレートには名前まで入っている。
「誕生日おめでとう、波瑠」
今日は私の誕生日だったのか。そんなものすっかり忘れていた。
ここ数年は仕事に忙殺され、気づけばひとつ歳を取っているその繰り返し。もう誕生日が嬉しい年齢でもないし、祝ってくれるとしてもそれは両親だけ。だが、今はその実家にも寄り付かないわけだから、当然、今日はおまえの誕生日だと知らせてくれる人もいなければ、祝ってくれる人ももちろんいない。
まさか、三十路三十路と人を揶揄うばかりの俊輔が、誕生日を祝ってくれるとは。
呆けた私の目の前で微笑む俊輔が、ブルーのリボンがかけらた長方形の小箱を差しだした。
「な、なに?」
「いいから、開けてみろ」
そっとリボンを解き箱の蓋を開くと、繊細なプラチナのチェーンの先に極小さな多分ダイヤモンドのペンダントトップがキラキラと光るネックレスが。
「これ?」
「誕生日プレゼント」
「俊輔……」
「俺、女にプレゼントなんて買ったことねえだろ? で、姉ちゃんにそれとなく訊いてみたのよ。そしたらアクセサリーなんかが良いだろうって言うからさ。でも、そもそも、そんなもん俺は興味ねえし、おまえが着けてるとこも見たことねえしさぁ、だから店に行っても何を選べばいいかさっぱりで、苦労したんだぞ」
口を尖らせて不満気な言葉を並べながらも、私を見るその瞳は楽しそうに輝いている。
サプライズプレゼントなんて、ドラマや小説の世界だけの話だと思っていた。私のような現実主義実利主義の人間が、こんなことで感動するなんてあり得ないと思っていた。
本当に思っていたのだ。今の今までは。
こんなに嬉しいものだなんて、知らなかった。嬉しい気持ちを表現する上手い言葉すら思いつかないほど驚いて感動するものだなんて。
「どうだ? 感動しただろ?」
「……馬鹿」
胸の奥から何かがこみ上げてきそうで、どんな顔をしていいのかわからず、ただ小さく頷くことしかできなかった。
デートだった。正に、夢のようなデート。俊輔がこんな素敵なサプライズをしてくれるなんて、まったく想像の上を行っている。
食前酒、突き出しに始まり、前菜、スープ、魚料理と、ゆっくりと堪能する時間を置いてコースが進んでいく。優雅に配膳される料理に、味はもちろんのこと、その芸術作品のような皿に目を見張った。
「ねえ、コースって……すっごくお高い……」
「無粋なこと言ってねえで、黙って食え」
ご尤も。いくら俊輔だからって、勝手に連れてきておいて、いざお会計の段になって割り勘とはさすがに言わないだろう。いや、たとえ言われたって、誰が払ってやるものか。
滅多に無いチャンスなのだから、楽しまなければ損。俊輔への疑問他あれこれを頭からとりあえず追い払い、特にこれといった会話も無く、窓の外、夕闇が色を変え夜の帳の下りた下界に、星屑の如く輝く夜景を堪能しながら、美しく盛り付けられた繊細な料理とワインをゆっくりと楽しんだ。
そして食事が終わり、運ばれてきたデザートに度肝を抜かれた。
バースデーケーキ。
小さいが、蝋燭も立てられ、チョコレートのプレートには名前まで入っている。
「誕生日おめでとう、波瑠」
今日は私の誕生日だったのか。そんなものすっかり忘れていた。
ここ数年は仕事に忙殺され、気づけばひとつ歳を取っているその繰り返し。もう誕生日が嬉しい年齢でもないし、祝ってくれるとしてもそれは両親だけ。だが、今はその実家にも寄り付かないわけだから、当然、今日はおまえの誕生日だと知らせてくれる人もいなければ、祝ってくれる人ももちろんいない。
まさか、三十路三十路と人を揶揄うばかりの俊輔が、誕生日を祝ってくれるとは。
呆けた私の目の前で微笑む俊輔が、ブルーのリボンがかけらた長方形の小箱を差しだした。
「な、なに?」
「いいから、開けてみろ」
そっとリボンを解き箱の蓋を開くと、繊細なプラチナのチェーンの先に極小さな多分ダイヤモンドのペンダントトップがキラキラと光るネックレスが。
「これ?」
「誕生日プレゼント」
「俊輔……」
「俺、女にプレゼントなんて買ったことねえだろ? で、姉ちゃんにそれとなく訊いてみたのよ。そしたらアクセサリーなんかが良いだろうって言うからさ。でも、そもそも、そんなもん俺は興味ねえし、おまえが着けてるとこも見たことねえしさぁ、だから店に行っても何を選べばいいかさっぱりで、苦労したんだぞ」
口を尖らせて不満気な言葉を並べながらも、私を見るその瞳は楽しそうに輝いている。
サプライズプレゼントなんて、ドラマや小説の世界だけの話だと思っていた。私のような現実主義実利主義の人間が、こんなことで感動するなんてあり得ないと思っていた。
本当に思っていたのだ。今の今までは。
こんなに嬉しいものだなんて、知らなかった。嬉しい気持ちを表現する上手い言葉すら思いつかないほど驚いて感動するものだなんて。
「どうだ? 感動しただろ?」
「……馬鹿」
胸の奥から何かがこみ上げてきそうで、どんな顔をしていいのかわからず、ただ小さく頷くことしかできなかった。
デートだった。正に、夢のようなデート。俊輔がこんな素敵なサプライズをしてくれるなんて、まったく想像の上を行っている。
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