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ミドルノート
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舞踏会一夜目。
緊張する。
役割もなく、ただ会場に入るだけなのにこんなにも緊張するのは多くの人のいる場所に顔を出すのはどれくらい振りだろう。
話せる知り合いはいない。けれど多くの人がジョエスタ様の懐妊を喜び祝福する。
この空気だけでもオリヴィアを幸せにするだろう。
髪を三つ編みに束ねそれを纏めてアップにしてくれる。
それを留める櫛のモチーフも鈴蘭だ。
部屋を出ると、ギルフォードが立っていた。
「ギルフォード。迎えに来てくれたの?少し……一人で行くのは緊張するから貴方がいてくれて嬉しい」
けれど、ギルフォードはなんだか動かない。
まるで時が止まったかのように、固まっている。
その固まったギルフォードを見ると彼も正装で普段よりも数段素敵だ。
「素敵ね。ギルフォード」
そう声を掛けるとやっと意識を取り戻したように、此方をもう一度見る。
「オリヴィア。貴方はダメだ。これはダメだ」
そんなにダメだしをされると思っていなかったので反抗したくなる。
「ジョエスタ様が私にと用意してくださったドレスよ」
これ以上のオリヴィアのとって得意気な言葉はない。
「──こんなに美しい貴方を会場に連れて行きたくない」
ギルフォードが本気で言っているのが分かり、恥ずかしくなる。
「顔も隠れているし、美醜なんて分からないわ……」
「──ではお願いです。私から絶対に離れないでください。どんなに魅力的な食事があっても……です」
「そんなに頬張ってて食べたりしないよ?」
「寧ろ、そうしてくれた方がいい」
オリヴィア達が会場に入った頃はもう陛下の挨拶も終了し、皆が楽しくしている頃合いだった。
その方が良いとジョエスタ様が計らってくださった。
けれどオリヴィア達が会場に入った瞬間、一瞬会場の空気が変わった気がした。
なに──?
「──やっぱりダメだ。オリヴィア申し訳ないが、もう少し庭を散歩しないか?」
ギルフォードの提案に微笑む。
今は何をしても楽しい。
散歩も夢のようだ。
「行きたいわ」
そう会場を後にし庭へと歩く。
──月が光り輝く。
下弦の月なのに異様に明るい。
一瞬、ゾクリとする。
見られているような気分になる。
「オリヴィア。君は自分の美しさをあまり理解していない」
そう言われても前の国は階級の世界。
美醜は関係ないし、力の強い者はまた美しい人が多い。
オリヴィアは本当にギルフォードが言うほどではない。
「前の世界では私より美しく強い人が殆どだったからギルフォードは…その、褒めすぎよ」
嬉しくない訳ではないが褒めすぎだと思う。
「その世界で貴方を見ても他の誰よりも美しいと思うよ」
そう指を絡めて握られる。
「ギルフォード……」
「オリヴィアは私が嫌いかい?」
「好きよ──けれど」
「けれど?」
「私にも分からない、この気持ち。あの方に憧れた。だから──幽閉されても構わなかった」
「──オリヴィアの想う相手は貴方を幽閉した人?」
「だけど──閉じ込められているうちに分からなくなった。自分の気持ちがもう──分からない」
「私ではダメかい?」
「──もし、あの方がまだ私に気持ちがあるのなら、貴方に厄災が訪れるかもしれない。だから──私はもう恋はしないと決めているの」
「そんなの──貴方が手に入るのであれば構わないよ」
絡んだ指がさらに強く握る。
──振り解けない。
「……雨の魔法使いのシィ様……シルド様より上位の方なの。ギルフォード、手を離して」
「私が嫌いだから手を離して欲しい訳ではないんだよね?」
「──そうだけれど──」
絡めた指を離してくれる。
けれど──少し寂しく思ってしまった。
「んっ──」
離した指はオリヴィアの頬に添えられてオリヴィアは今、唇を塞がれている。
ゆっくりと離した唇がまだ熱い。
「これで私はその魔法使いから逃げられないよ。貴方の唇を奪ったんだから。私なら──絶対に許さないよ」
「まだ──その人が好きなの?」
分からない。
本当に分からない。
もう──囚われていた時が長すぎて分からない。
「オリヴィアを娘だと可愛がるシルド様が貴方をその場所から逃した。貴方が幸せならきっとその場から逃しはしなかった。それが答えだよ」
〈オリヴィア、健やか生きよ〉
シィ様の言葉が身体を駆け巡る。
「──もう一人で塔にいなくていいのかな?」
「離したくない」
「死ぬまでずっと一緒にいてくれる?」
「私がお願いしたい」
思わず微笑む。
「私に──触れるのは怖くない?貴方に厄災が降りかかるかもしれないのに」
ギルフォードは何も言わず、オリヴィアの唇を塞ぐ。
優しくて熱いキス。
「──明日も一緒にパーティに出てくれる?」
ギルフォードの返事を待つ。
「君を私の婚約者だと紹介していいのなら──」
なんだか涙が出てしまう。
「ジョエスタ様に相談してみるね」
──月が透き通るほどに輝いていた──
緊張する。
役割もなく、ただ会場に入るだけなのにこんなにも緊張するのは多くの人のいる場所に顔を出すのはどれくらい振りだろう。
話せる知り合いはいない。けれど多くの人がジョエスタ様の懐妊を喜び祝福する。
この空気だけでもオリヴィアを幸せにするだろう。
髪を三つ編みに束ねそれを纏めてアップにしてくれる。
それを留める櫛のモチーフも鈴蘭だ。
部屋を出ると、ギルフォードが立っていた。
「ギルフォード。迎えに来てくれたの?少し……一人で行くのは緊張するから貴方がいてくれて嬉しい」
けれど、ギルフォードはなんだか動かない。
まるで時が止まったかのように、固まっている。
その固まったギルフォードを見ると彼も正装で普段よりも数段素敵だ。
「素敵ね。ギルフォード」
そう声を掛けるとやっと意識を取り戻したように、此方をもう一度見る。
「オリヴィア。貴方はダメだ。これはダメだ」
そんなにダメだしをされると思っていなかったので反抗したくなる。
「ジョエスタ様が私にと用意してくださったドレスよ」
これ以上のオリヴィアのとって得意気な言葉はない。
「──こんなに美しい貴方を会場に連れて行きたくない」
ギルフォードが本気で言っているのが分かり、恥ずかしくなる。
「顔も隠れているし、美醜なんて分からないわ……」
「──ではお願いです。私から絶対に離れないでください。どんなに魅力的な食事があっても……です」
「そんなに頬張ってて食べたりしないよ?」
「寧ろ、そうしてくれた方がいい」
オリヴィア達が会場に入った頃はもう陛下の挨拶も終了し、皆が楽しくしている頃合いだった。
その方が良いとジョエスタ様が計らってくださった。
けれどオリヴィア達が会場に入った瞬間、一瞬会場の空気が変わった気がした。
なに──?
「──やっぱりダメだ。オリヴィア申し訳ないが、もう少し庭を散歩しないか?」
ギルフォードの提案に微笑む。
今は何をしても楽しい。
散歩も夢のようだ。
「行きたいわ」
そう会場を後にし庭へと歩く。
──月が光り輝く。
下弦の月なのに異様に明るい。
一瞬、ゾクリとする。
見られているような気分になる。
「オリヴィア。君は自分の美しさをあまり理解していない」
そう言われても前の国は階級の世界。
美醜は関係ないし、力の強い者はまた美しい人が多い。
オリヴィアは本当にギルフォードが言うほどではない。
「前の世界では私より美しく強い人が殆どだったからギルフォードは…その、褒めすぎよ」
嬉しくない訳ではないが褒めすぎだと思う。
「その世界で貴方を見ても他の誰よりも美しいと思うよ」
そう指を絡めて握られる。
「ギルフォード……」
「オリヴィアは私が嫌いかい?」
「好きよ──けれど」
「けれど?」
「私にも分からない、この気持ち。あの方に憧れた。だから──幽閉されても構わなかった」
「──オリヴィアの想う相手は貴方を幽閉した人?」
「だけど──閉じ込められているうちに分からなくなった。自分の気持ちがもう──分からない」
「私ではダメかい?」
「──もし、あの方がまだ私に気持ちがあるのなら、貴方に厄災が訪れるかもしれない。だから──私はもう恋はしないと決めているの」
「そんなの──貴方が手に入るのであれば構わないよ」
絡んだ指がさらに強く握る。
──振り解けない。
「……雨の魔法使いのシィ様……シルド様より上位の方なの。ギルフォード、手を離して」
「私が嫌いだから手を離して欲しい訳ではないんだよね?」
「──そうだけれど──」
絡めた指を離してくれる。
けれど──少し寂しく思ってしまった。
「んっ──」
離した指はオリヴィアの頬に添えられてオリヴィアは今、唇を塞がれている。
ゆっくりと離した唇がまだ熱い。
「これで私はその魔法使いから逃げられないよ。貴方の唇を奪ったんだから。私なら──絶対に許さないよ」
「まだ──その人が好きなの?」
分からない。
本当に分からない。
もう──囚われていた時が長すぎて分からない。
「オリヴィアを娘だと可愛がるシルド様が貴方をその場所から逃した。貴方が幸せならきっとその場から逃しはしなかった。それが答えだよ」
〈オリヴィア、健やか生きよ〉
シィ様の言葉が身体を駆け巡る。
「──もう一人で塔にいなくていいのかな?」
「離したくない」
「死ぬまでずっと一緒にいてくれる?」
「私がお願いしたい」
思わず微笑む。
「私に──触れるのは怖くない?貴方に厄災が降りかかるかもしれないのに」
ギルフォードは何も言わず、オリヴィアの唇を塞ぐ。
優しくて熱いキス。
「──明日も一緒にパーティに出てくれる?」
ギルフォードの返事を待つ。
「君を私の婚約者だと紹介していいのなら──」
なんだか涙が出てしまう。
「ジョエスタ様に相談してみるね」
──月が透き通るほどに輝いていた──
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