隠伏の魔法使い

六菖十菊

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ミドルノート

016 ロン

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その噂は一瞬のうちに王宮内を駆け巡った。

〈昨晩、第3近衛隊隊長が鈴蘭の女神を連れていた〉と。

あの女性は誰かと騒然とする中、俺にはもう誰だか分かった。
──オリヴィア。
彼女しかいない。

その日、王妃の背後にローブの魔女はいなかったと聞いている。
あれはオリヴィアだ。

──隊長は俺が必死に探している間もオリヴィアと逢瀬を重ねリヴィアも俺には何も言わず去ったのに隊長にはオリヴィアを預けて行った。
日々、感じていた劣等感が燻る。
それでも日々の気持ちは不貞腐れ酒でも飲みながら絡めばどうにかなるレベルの可愛いものだった。
今は──もう何も信じられない。
劣等感は持ちつつも敬愛していた隊長は最近は自分の隊よりもオリヴィアに会いに行っていたと言うことだし、リヴィアはオリヴィアは恋をしないと言っていたのに隊長を側に置いている。
──他の女を抱けばこの気持ちも紛れるのか?
無理だと瞬時に悟る。

──俺に王妃との謁見は許されていない。
申請を出しても懐妊の、この時期に無闇に近づけないだろう。
せめて自分の行ける最低ラインの場所まで行ってみよう。

──今回の警備は第二近衛隊がメインだ。
パーティで多くの人々が訪れる所為か抜け穴だらけだ。
見栄えだけを重視した警護だ。
こんなにボロボロな警備に流石は第二近衛隊だと感心する。

普段は通れない通路を行き──衣装を着替えてアイマスクをすればもう怪しまれない。
まだ2夜目のパーティまで時間がある。
人の行き交いが多く、雑踏としていて誰もが忙しそうで此方を気にするものはいない。
恐らくこの部屋だろうと目星をつけていた部屋のドアノブをゆっくりと回す。
──やはり鍵がかかっている。
当たりだと直感する。

コンコンと扉を叩く。

「──はい」

──その高く澄んだ声に血液が沸騰しそうになる。

「──どなた?」

「───」

黙り彼女が扉を開けるのを待つ。

「ギルフォード?」

その言葉に少しだけ残っていた理性が粉々に砕ける。
少し開いた扉に手をかけ、部屋に押し入った。
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