そんなの、知らない 【夫人叢書①】

六菖十菊

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知ることを始めたい

xx4

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両親の死から7年が経った。
私は今22歳になった。
高校は無事卒業できた。途中からの転校や両親の死、親戚の豹変や生活スタイルの変貌に親の愛が足りないと嘆きながらも、自分がどれだけ甘えさせてもらっていたか実感した。でも一番苦しかったのは櫂さんに会えないことだった。これから先もう会うことがないと思うと胸が痛んだ。暫くは家に居られると勝手に思い込み彼が来てくれると思っていた。葬儀の中、ケータイ番号やライン交換なんて流石にマナー違反だし、そこまでの考えもなかった。
父の携帯は父と共に粉々になっていたし、日が募るにつれ彼を繋ぎとめようとする自分の罪悪感も付いて回った。彼の人生があるのに、若い時の就職先の社長娘に未だに固執されるなんて迷惑な話しだ。
それに社長の娘ならまだしも、今はただの何も持たないただの小娘だ。

高校生活の間、どうしても父の死の理由を考えていた。
知り得た情報では父の会社は順風満帆までとはいかないが軌道に乗り成長していたそう。だがしかし父の自殺数ヶ月前から異変が起き、たった数ヶ月でイタリアの不動産王と言われるマウロ社に乗っ取られる。せめて買われたのならそれなりにお金はあるはずだ。そこは叔母たちにとられたのだろうか?わからないことだらけだ。
けれどあの時、泥酔した父が発したジーノ・マウロなる人物が父を悩ませていた元凶だろう。マウロ社について調べたらイタリアの不動産から財をなし多角的な経営をしている。トップを一族で固めファミリーのようだ。
その中にジーノ・マウロの名前もあった。
現在37歳になる彼は日本支部を任されているようだった。といっても殆どはイタリアが生活圏内なのだろう。
彼に本当のことを聞いてみたい。あの時何があったのか。憎いとか復讐とか今はそんな感情を持ち出せるだけの情報さえ私は知らないのだ。
彼がよく使うホテルを調べた。都内でも有数の高級ホテルだのスイートルームを使用している。私は今そこのレストランホールスタッフとして働いている。
働いて3年目になるが彼との接触はなかなか難しい。
ただの下っ端スタッフでは近づくことも無理だった。
ただ、この3年で私も少しずつ信頼と実績を得てきたと思う。
そんな中、ジーノ・マウロも訪れるだろうパーティのホール仕事が舞い込んできたのだ。
あの日から7年…もういい加減、前に進みたかった。
忘れることも出来ず、消化できず鬱鬱とした毎日と決別したかった。
ジーノ・マウロは父のことを覚えてないかもしれない。
それさえも真実ならば受け入れよう。
数日後、私はきっと今までの自分と決別し前を向いて生きていける。きっと。
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