5 / 160
知ることを始めたい
xx4
しおりを挟む
両親の死から7年が経った。
私は今22歳になった。
高校は無事卒業できた。途中からの転校や両親の死、親戚の豹変や生活スタイルの変貌に親の愛が足りないと嘆きながらも、自分がどれだけ甘えさせてもらっていたか実感した。でも一番苦しかったのは櫂さんに会えないことだった。これから先もう会うことがないと思うと胸が痛んだ。暫くは家に居られると勝手に思い込み彼が来てくれると思っていた。葬儀の中、ケータイ番号やライン交換なんて流石にマナー違反だし、そこまでの考えもなかった。
父の携帯は父と共に粉々になっていたし、日が募るにつれ彼を繋ぎとめようとする自分の罪悪感も付いて回った。彼の人生があるのに、若い時の就職先の社長娘に未だに固執されるなんて迷惑な話しだ。
それに社長の娘ならまだしも、今はただの何も持たないただの小娘だ。
高校生活の間、どうしても父の死の理由を考えていた。
知り得た情報では父の会社は順風満帆までとはいかないが軌道に乗り成長していたそう。だがしかし父の自殺数ヶ月前から異変が起き、たった数ヶ月でイタリアの不動産王と言われるマウロ社に乗っ取られる。せめて買われたのならそれなりにお金はあるはずだ。そこは叔母たちにとられたのだろうか?わからないことだらけだ。
けれどあの時、泥酔した父が発したジーノ・マウロなる人物が父を悩ませていた元凶だろう。マウロ社について調べたらイタリアの不動産から財をなし多角的な経営をしている。トップを一族で固めファミリーのようだ。
その中にジーノ・マウロの名前もあった。
現在37歳になる彼は日本支部を任されているようだった。といっても殆どはイタリアが生活圏内なのだろう。
彼に本当のことを聞いてみたい。あの時何があったのか。憎いとか復讐とか今はそんな感情を持ち出せるだけの情報さえ私は知らないのだ。
彼がよく使うホテルを調べた。都内でも有数の高級ホテルだのスイートルームを使用している。私は今そこのレストランホールスタッフとして働いている。
働いて3年目になるが彼との接触はなかなか難しい。
ただの下っ端スタッフでは近づくことも無理だった。
ただ、この3年で私も少しずつ信頼と実績を得てきたと思う。
そんな中、ジーノ・マウロも訪れるだろうパーティのホール仕事が舞い込んできたのだ。
あの日から7年…もういい加減、前に進みたかった。
忘れることも出来ず、消化できず鬱鬱とした毎日と決別したかった。
ジーノ・マウロは父のことを覚えてないかもしれない。
それさえも真実ならば受け入れよう。
数日後、私はきっと今までの自分と決別し前を向いて生きていける。きっと。
私は今22歳になった。
高校は無事卒業できた。途中からの転校や両親の死、親戚の豹変や生活スタイルの変貌に親の愛が足りないと嘆きながらも、自分がどれだけ甘えさせてもらっていたか実感した。でも一番苦しかったのは櫂さんに会えないことだった。これから先もう会うことがないと思うと胸が痛んだ。暫くは家に居られると勝手に思い込み彼が来てくれると思っていた。葬儀の中、ケータイ番号やライン交換なんて流石にマナー違反だし、そこまでの考えもなかった。
父の携帯は父と共に粉々になっていたし、日が募るにつれ彼を繋ぎとめようとする自分の罪悪感も付いて回った。彼の人生があるのに、若い時の就職先の社長娘に未だに固執されるなんて迷惑な話しだ。
それに社長の娘ならまだしも、今はただの何も持たないただの小娘だ。
高校生活の間、どうしても父の死の理由を考えていた。
知り得た情報では父の会社は順風満帆までとはいかないが軌道に乗り成長していたそう。だがしかし父の自殺数ヶ月前から異変が起き、たった数ヶ月でイタリアの不動産王と言われるマウロ社に乗っ取られる。せめて買われたのならそれなりにお金はあるはずだ。そこは叔母たちにとられたのだろうか?わからないことだらけだ。
けれどあの時、泥酔した父が発したジーノ・マウロなる人物が父を悩ませていた元凶だろう。マウロ社について調べたらイタリアの不動産から財をなし多角的な経営をしている。トップを一族で固めファミリーのようだ。
その中にジーノ・マウロの名前もあった。
現在37歳になる彼は日本支部を任されているようだった。といっても殆どはイタリアが生活圏内なのだろう。
彼に本当のことを聞いてみたい。あの時何があったのか。憎いとか復讐とか今はそんな感情を持ち出せるだけの情報さえ私は知らないのだ。
彼がよく使うホテルを調べた。都内でも有数の高級ホテルだのスイートルームを使用している。私は今そこのレストランホールスタッフとして働いている。
働いて3年目になるが彼との接触はなかなか難しい。
ただの下っ端スタッフでは近づくことも無理だった。
ただ、この3年で私も少しずつ信頼と実績を得てきたと思う。
そんな中、ジーノ・マウロも訪れるだろうパーティのホール仕事が舞い込んできたのだ。
あの日から7年…もういい加減、前に進みたかった。
忘れることも出来ず、消化できず鬱鬱とした毎日と決別したかった。
ジーノ・マウロは父のことを覚えてないかもしれない。
それさえも真実ならば受け入れよう。
数日後、私はきっと今までの自分と決別し前を向いて生きていける。きっと。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる