そんなの、知らない 【夫人叢書①】

六菖十菊

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知れば、戻れない

x23 _櫂_

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あのパーティで、侑梨とマウロが出会う前に
引き離したかった。
それなのに2人が男女の関係になっていたことに
櫂は頭を殴られた気分だった。
それだけはどうしても許せなかった。
マウロは勿論、侑梨に対しても嫌悪が勝った。
「最近の子は性に奔放ね」
沙織が嫌味まじりに吐き捨てる。
「まさか父親殺した相手とでもSEXできるなんて
さすが、あの…」
「やめてくれ」
櫂の冷ややかな拒絶が入る。
わからないことだらけだ。
まず、侑梨はマウロが何をしたか知っているのか?
それとも知らずに惹かれたのか?
どこで?侑梨の勤務先ホテルはマウロ御用達だ。
接点がない訳ではない。
カフェで幸せだと言った侑梨だが、
ロビーにいた侑梨はまた雰囲気が違っていた。
高崎夫人とマウロの関係は公然の秘密だ。
侑梨と高崎夫人に繋がりがあるの中、マウロとの関係も深いかもしれない。
パーティでマウロと侑梨を見つけた時は親密さと
嫌悪も見て取れた。

…なんなんだ…
2人の関係性が全く見えてこない。
櫂は侑梨のことを知らないとに愕然とする。
この7年、沢城さんの意思を継ごうと思った時、もう合わないほうがいいと思った。
澤村さんの娘を守りたかった。
その為には侑梨にマウロの存在を知られではダメだ。
俺が近くにいればいつか秘密が漏れてしまう。
そんな気がした。
クソッ!
もしかしたら侑梨は復讐の為に近づいたのかもしれない…それならどこまで知っている?

ウイスキーを飲み干しながら考える。

俺はどちらを望んでいるんだろう。
復讐の為にマウロと関係を結ぶ侑梨と、
ただ運命のようにマウロに恋した侑梨。

どちらも違うと思いたい。
昨日の俺を見て侑梨は幻滅しただろうか。
ただ、マウロのドレスを着て腰に手を回されている侑梨を見て血が煮えたぎりそうだった。

明日、侑梨の勤めるホテルに行ってみよう。
侑梨に会いたい…
侑梨を知りたい。
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