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足るを知らない、欲
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通された和室は鮮やかな井草の香りがする。
掛け軸とその前に活けられた小さな花だけの、
シンプルな部屋だ。
その部屋の真ん中に六角垂の木箱が置かれている。
外側にも細かな螺鈿細工で華やかな四季の花々が描かれていて、鮮やかな朱色の紐で閉じられていた。
何が入っているのだろう?
不思議に思う侑梨だが、夫人の説明を待つ。
「これはわたくしの3歳の雛祭りに頂いたの。それ以来、わたくしのお気に入り」
紐をとき、蓋を開ける。
夫人が取り出したものは、ハマグリサイズの二枚貝が一枚ずつに分かれている貝殻だ。
貝の内側には金箔が貼られ華麗な絵巻が描かれている。平安時代の貴族絵巻の様だ。
「綺麗」
自然と言葉がでた。夫人は満足そうに続ける。
「貝は対にのみ合う」
「貝合わせは、その対を探す遊び」
神経衰弱みたいな感じだなと、侑梨は思う。
「真珠にも『完成』という意味があるの」
貝は不思議ねと夫人は微笑む。
「わたくし、この遊びが好きすぎて、どの貝が対なのか一目見たら分かるようになってしまったの」
純粋にすごいと思う。
真剣に貝殻を見つめるが、分からない。
と、夫人の声が途絶えた。
不思議に思い顔を向けると夫人は微笑んだままだ。
「?」
「お抹茶が飲みたくなったわ。しばらくお待ちになって」
夫人は立ち上がり侑梨を見下ろした。
「対の貝と合わせたら、もうその組み合わせしか考えられなくなる。それほど、しっくりくるの。貴方も分かるわ」
いつもの微笑みを浮かべ夫人は和室を後にした。
夫人が帰ってくるまでに多少、練習していた方がいいかな。貝殻を手に取り眺める。
「⁈」
誰かが部屋に近づく音がする。夫人ではない。
夫人はもう少し緩やかであまり音がない。
こっちに来るのかな?
もしかして旦那様?
ご挨拶もしていないので、姿勢を正し襖の方に座り直す。
襖が開き、侑梨は驚愕した。
向こうも一瞬、驚いている様に思った。
「本当に…バカな子だね」
ため息をつき、こちらを見るのはジーノだった。
掛け軸とその前に活けられた小さな花だけの、
シンプルな部屋だ。
その部屋の真ん中に六角垂の木箱が置かれている。
外側にも細かな螺鈿細工で華やかな四季の花々が描かれていて、鮮やかな朱色の紐で閉じられていた。
何が入っているのだろう?
不思議に思う侑梨だが、夫人の説明を待つ。
「これはわたくしの3歳の雛祭りに頂いたの。それ以来、わたくしのお気に入り」
紐をとき、蓋を開ける。
夫人が取り出したものは、ハマグリサイズの二枚貝が一枚ずつに分かれている貝殻だ。
貝の内側には金箔が貼られ華麗な絵巻が描かれている。平安時代の貴族絵巻の様だ。
「綺麗」
自然と言葉がでた。夫人は満足そうに続ける。
「貝は対にのみ合う」
「貝合わせは、その対を探す遊び」
神経衰弱みたいな感じだなと、侑梨は思う。
「真珠にも『完成』という意味があるの」
貝は不思議ねと夫人は微笑む。
「わたくし、この遊びが好きすぎて、どの貝が対なのか一目見たら分かるようになってしまったの」
純粋にすごいと思う。
真剣に貝殻を見つめるが、分からない。
と、夫人の声が途絶えた。
不思議に思い顔を向けると夫人は微笑んだままだ。
「?」
「お抹茶が飲みたくなったわ。しばらくお待ちになって」
夫人は立ち上がり侑梨を見下ろした。
「対の貝と合わせたら、もうその組み合わせしか考えられなくなる。それほど、しっくりくるの。貴方も分かるわ」
いつもの微笑みを浮かべ夫人は和室を後にした。
夫人が帰ってくるまでに多少、練習していた方がいいかな。貝殻を手に取り眺める。
「⁈」
誰かが部屋に近づく音がする。夫人ではない。
夫人はもう少し緩やかであまり音がない。
こっちに来るのかな?
もしかして旦那様?
ご挨拶もしていないので、姿勢を正し襖の方に座り直す。
襖が開き、侑梨は驚愕した。
向こうも一瞬、驚いている様に思った。
「本当に…バカな子だね」
ため息をつき、こちらを見るのはジーノだった。
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