53 / 160
知らず絡繰る
x51
しおりを挟む
?
侑梨と林檎に接点はない。
ただの知識自慢だろうか?
夫人の名前は菖子だ。
夫人はジーノと同じでいつも何か
謎掛けのように侑梨を惑わす。
答えを見つけられないまま、夫人が次の衝撃を侑梨に
投げつける。
「ジーノは今、奥様との2人目の子どもが産まれたのよ」
「結婚されているんですか⁈」
6年前らしい。
それなのに夫人とも愛人関係を続け他にも女性がいる。私にも躊躇いなく触れてきた。
──気持ち悪い──気持ち悪くなってきた。
「顔色が良くないわ?大丈夫侑梨さん」
この人は正気だろうか。見入ってしまう。
「大丈夫よ。彼は奥様を愛していないわ」
侑梨の心配事を理解しているかのような口ぶりだ。
「…なぜ愛していないと?」
現に2人の子供を授かっている。仮に政略結婚だとしても、愛情が芽生えていることもある。
夫婦のことはきっと周りにはわからない。
「彼とネリーナを結婚させたのはわたくしよ」
怒りより拒絶が支配する。
「彼ね。当時好きな人がいたの。本人も気付かない些細な恋心。けれどわたくしは気がついたわ。だから惹き合わせて溺れさせ──そして引き裂いた」
カップの紅茶の温度が下がる様に、侑梨の心も冷たくなる。
「ネリーナとの結婚を勧めた時、
彼はva dene tuttoと答えたわ」
…きっとあの微笑みで応えたのだろう。
「でもネリーナとの縁談を持ってきたのはマウロ家よ。
わたくしはそれを承諾させただけ。
当時マウロ家のイタリアでの業績は落ち、ジーノの日本業績は拡大していたの。それに危惧したジーノの兄セルジョが付けた御目付役がネリーナ。簡単に言えばセルジョのお古を下賜された様なものね…可哀想なジーノ。好きでもない女性との婚姻、それも世界一嫌いな兄のお手付きなんて汚らわしくて、愛せるわけがない」
それを知っていながら結婚させたのね…。どうしよう夫人と顔も合わせたくない。夫人の瞳が見れない。
どんな思惑が2人にあるのかは知らないけれど…酷い。
「お父様の愛人であるお母様を早くに亡くされた彼が、
普通の家庭なんて知らないわ。お母様が早くに亡くなられたのもセルジョが要因の一つ。それを見ぬフリをした父にも彼は失望した。この世に愛なんて存在しないと思ってる──可哀想なジーノ」
知りたくもない‼︎
本当にこの人たちはは異常だ。関わらない方がいい。
本能が警告音を頭の中で発している。
「私はジーノとは金輪際会わない。悲しい過去を聞かされても夫人の望む関係にはならないわ!」
侑梨は立ち上がり夫人へと叫ぶ。
「合わない貝を無理に合わせれば理りが乱れるわ」
…どう話せば夫人は理解してくれるのだろう。
「貴方の番は三島櫂ではないわ」
残念ね。と労りの声で呟く。
櫂の名前がここで出た。
今日の目的はそれを聞く為だった。
けれどもし、夫人が櫂の存在を知らないのであれば
余計な火種を撒きたくなかった。
そんな考えの甘さを笑うかのように
あっさりと夫人は口にする。
「彼に…何かした?」
言葉が雑になる。そんなこと気にしていられない。
「ちょっとした余興よ。でも貴方には内緒。貴方が知ればこの余興は終了。彼にとっても悪い話ではないわ」
さて、今日はここまでにしましょうか。
夫人は静かに席を立ち侑梨に小さくバイバイと手を振り「またね」と立ち去った。
侑梨と林檎に接点はない。
ただの知識自慢だろうか?
夫人の名前は菖子だ。
夫人はジーノと同じでいつも何か
謎掛けのように侑梨を惑わす。
答えを見つけられないまま、夫人が次の衝撃を侑梨に
投げつける。
「ジーノは今、奥様との2人目の子どもが産まれたのよ」
「結婚されているんですか⁈」
6年前らしい。
それなのに夫人とも愛人関係を続け他にも女性がいる。私にも躊躇いなく触れてきた。
──気持ち悪い──気持ち悪くなってきた。
「顔色が良くないわ?大丈夫侑梨さん」
この人は正気だろうか。見入ってしまう。
「大丈夫よ。彼は奥様を愛していないわ」
侑梨の心配事を理解しているかのような口ぶりだ。
「…なぜ愛していないと?」
現に2人の子供を授かっている。仮に政略結婚だとしても、愛情が芽生えていることもある。
夫婦のことはきっと周りにはわからない。
「彼とネリーナを結婚させたのはわたくしよ」
怒りより拒絶が支配する。
「彼ね。当時好きな人がいたの。本人も気付かない些細な恋心。けれどわたくしは気がついたわ。だから惹き合わせて溺れさせ──そして引き裂いた」
カップの紅茶の温度が下がる様に、侑梨の心も冷たくなる。
「ネリーナとの結婚を勧めた時、
彼はva dene tuttoと答えたわ」
…きっとあの微笑みで応えたのだろう。
「でもネリーナとの縁談を持ってきたのはマウロ家よ。
わたくしはそれを承諾させただけ。
当時マウロ家のイタリアでの業績は落ち、ジーノの日本業績は拡大していたの。それに危惧したジーノの兄セルジョが付けた御目付役がネリーナ。簡単に言えばセルジョのお古を下賜された様なものね…可哀想なジーノ。好きでもない女性との婚姻、それも世界一嫌いな兄のお手付きなんて汚らわしくて、愛せるわけがない」
それを知っていながら結婚させたのね…。どうしよう夫人と顔も合わせたくない。夫人の瞳が見れない。
どんな思惑が2人にあるのかは知らないけれど…酷い。
「お父様の愛人であるお母様を早くに亡くされた彼が、
普通の家庭なんて知らないわ。お母様が早くに亡くなられたのもセルジョが要因の一つ。それを見ぬフリをした父にも彼は失望した。この世に愛なんて存在しないと思ってる──可哀想なジーノ」
知りたくもない‼︎
本当にこの人たちはは異常だ。関わらない方がいい。
本能が警告音を頭の中で発している。
「私はジーノとは金輪際会わない。悲しい過去を聞かされても夫人の望む関係にはならないわ!」
侑梨は立ち上がり夫人へと叫ぶ。
「合わない貝を無理に合わせれば理りが乱れるわ」
…どう話せば夫人は理解してくれるのだろう。
「貴方の番は三島櫂ではないわ」
残念ね。と労りの声で呟く。
櫂の名前がここで出た。
今日の目的はそれを聞く為だった。
けれどもし、夫人が櫂の存在を知らないのであれば
余計な火種を撒きたくなかった。
そんな考えの甘さを笑うかのように
あっさりと夫人は口にする。
「彼に…何かした?」
言葉が雑になる。そんなこと気にしていられない。
「ちょっとした余興よ。でも貴方には内緒。貴方が知ればこの余興は終了。彼にとっても悪い話ではないわ」
さて、今日はここまでにしましょうか。
夫人は静かに席を立ち侑梨に小さくバイバイと手を振り「またね」と立ち去った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる