そんなの、知らない 【夫人叢書①】

六菖十菊

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あえかなる夜の知覚

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なんだか体が酷く怠い。
意識が回らない。
白檀と伽羅の香りに、あの人の香りが混ざる。
「ん…っ」
誰かが侑梨の頭を撫でる。誰?
櫂?
瞬間、一気に意識が覚醒する。
けれど身体が重く瞳だけ開いた。
「おはよう。侑梨さん」
その声に鳥肌が立つ。
この部屋の香りに、身体の怠さに身体が凍って身動きが取れない。
夫人が再び頭を撫でる。
シーツを被り夫人に背を向けるが、なんの役に立つだろう。
「お風呂入ったらお食事しましょう?貴方、まる1日お食事してないのよ」
ジーノは?
「彼はいないわ」
侑梨の心を読むように夫人が答える。
「イタリアよ。当分帰ってこれないわ。だからそれまでわたくしの側にいて良いのよ?」
「貴方の側にいたい訳ないわ‼︎」
上半身をお越し叫ぶと身体のあちこちが筋肉痛のように痛む。
「ゆっくり起きなきゃダメよ。まだ身体中痛いのでしょう?」
シーツに隠した侑梨の身体を見通す。
シーツを引っ張れば切れた真珠がパラパラと溢れ落ちた。
「身体を洗うの手伝ってあげましょうか?」
「やめて!放っておいて‼︎」
叫ぶ侑梨に更に夫人は微笑む。
「けれど……一日中彼に愛撫され、一日中彼と繋がって、何度も、何度も中で出されて…流石にお風呂に入りたいでしょう?」
「やめて…お願い…」
「早く流してしまわないと妊娠するかもしれなくてよ?」
シーツに包まり重い身体をシャワー室へと運ぶ。
シーツの剥がれたベットの赤い染みに夫人は手を這わし微笑む。
「ベットは綺麗にしておくから、ゆっくり入って暖まってね」
パウダールームに逃げ込む侑梨を映す鏡は
侑梨の身体中のキスマークを見せつける。
「‼︎」
股から精液が垂れ太ももへと伝う。
シャワーを下腹部へと浴びせながら侑梨はひたすら
櫂への謝罪を呟いた。
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