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未知と既知の其間
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ここにはもういられないと思った。
夫人はやっぱり夫人だった。
残酷な遊びで玩具を壊して遊ぶように、
侑梨を支配する。
──もし、あの映像を櫂が見たら──
それは侑梨にとっては死ぬより辛い。
櫂とは会えない。
絶対に会えない。
隠さず話そうと思っていた。
けれど、映像を見られるのは死んでも嫌だ。
自分の打算的な心に気付く。
もしかしたら──櫂は侑梨が懺悔をし、悔い改めたら
赦してくれるのではないかと一縷の希望を持っていた。
『愛してる』
まだそう返してくれる彼に
──あの動画を見られたら──
櫂を騙したい訳ではない。
そう思っていたけれど、自分の本当の願いは
無かったことには出来ないけれど、
曖昧にしておきたかった。
言葉なら濁せた。
けれど画像は──
一刻も早く処分したい。
侑梨は携帯の電源を再び落とした。
伝えられた場所は都内のマンションの最上階だった。
マンションとはいえ、ここでもコンシェルジュがいる。
父と義兄が不正問題で大変だったと言っていたが、
やはりマウロ家はマウロ家だ。
購入したのか賃貸なのかは分からないけれど、それでも
都内でこれだけのマンションで暮らすのは相当のセレブだ。
開いた扉に立つ彼は首までの薄めのセーターと黒いパンツで少しラフな格好だ。
彼が少し戸惑っている。
「君が来てくれるのは嬉しいけれど……どうしたの?」
そう言われても、言いにくい。
「──夫人に渡されたモノを返して欲しいの」
黙る彼との間に沈黙が広がる。
『彼も1人でする時に必要かと思って』
夫人の言葉を思い出す。
侑梨の身体に疼くような感覚があるが無視をする。
入ってと促される。
ここで受け取りたいが、この雰囲気はすぐには出してくれそうにない。
部屋はイタリアテイストのモダンな感じに統一されていた。ローソファにクッションが多くて意外と寛げるような部屋だった。
「夫人から預かったモノってなんのことだい?」
コーヒーを入れながらで彼の表情は見えない。
「……お願いだから……返して」
素知らぬ顔でとぼける。
「あの時のデータよ」
「あの時?」
コーヒーを飲みながら鸚鵡返しのように尋ねてくる。
侑梨に言わせて何が楽しいのか。
「──クリスマスの日の夫人のスィートでのデータよ……夫人から渡されたのでしょう?お願い、返して」
コピーされていたらどうしよう?
全部回収できるのだろうか?
不安が募る。
「それを君に譲る僕のメリットはなんだい?」
「メリットなんて……夫人にあの夜のことを隠しカメラで撮られていたなんて貴方はなんともないの⁈」
「そもそも、君はそのデータがあると思っているけど、本当にあるのかい?夫人に騙されたと思わないの?」
「いいえ‼︎ 夫人はあの夜の……行為の内容を知っていたわ……動画がないと分からないような詳細さだったわ」
それなのにデータはない様な雰囲気を出すジーノに苛立つ。
「詳細に?どんな内容?」
ジーノが侑梨の真横に座り見つめてくる。
言えるわけがない。あんなことを口に出せない。
「ユーリ」
促されるが言えない。
涙目になるが必死にお願いする。
「ジーノ……お願いよ」
ジーノのため息が聞こえる。
「君は本当にバカな子だね」
夫人はやっぱり夫人だった。
残酷な遊びで玩具を壊して遊ぶように、
侑梨を支配する。
──もし、あの映像を櫂が見たら──
それは侑梨にとっては死ぬより辛い。
櫂とは会えない。
絶対に会えない。
隠さず話そうと思っていた。
けれど、映像を見られるのは死んでも嫌だ。
自分の打算的な心に気付く。
もしかしたら──櫂は侑梨が懺悔をし、悔い改めたら
赦してくれるのではないかと一縷の希望を持っていた。
『愛してる』
まだそう返してくれる彼に
──あの動画を見られたら──
櫂を騙したい訳ではない。
そう思っていたけれど、自分の本当の願いは
無かったことには出来ないけれど、
曖昧にしておきたかった。
言葉なら濁せた。
けれど画像は──
一刻も早く処分したい。
侑梨は携帯の電源を再び落とした。
伝えられた場所は都内のマンションの最上階だった。
マンションとはいえ、ここでもコンシェルジュがいる。
父と義兄が不正問題で大変だったと言っていたが、
やはりマウロ家はマウロ家だ。
購入したのか賃貸なのかは分からないけれど、それでも
都内でこれだけのマンションで暮らすのは相当のセレブだ。
開いた扉に立つ彼は首までの薄めのセーターと黒いパンツで少しラフな格好だ。
彼が少し戸惑っている。
「君が来てくれるのは嬉しいけれど……どうしたの?」
そう言われても、言いにくい。
「──夫人に渡されたモノを返して欲しいの」
黙る彼との間に沈黙が広がる。
『彼も1人でする時に必要かと思って』
夫人の言葉を思い出す。
侑梨の身体に疼くような感覚があるが無視をする。
入ってと促される。
ここで受け取りたいが、この雰囲気はすぐには出してくれそうにない。
部屋はイタリアテイストのモダンな感じに統一されていた。ローソファにクッションが多くて意外と寛げるような部屋だった。
「夫人から預かったモノってなんのことだい?」
コーヒーを入れながらで彼の表情は見えない。
「……お願いだから……返して」
素知らぬ顔でとぼける。
「あの時のデータよ」
「あの時?」
コーヒーを飲みながら鸚鵡返しのように尋ねてくる。
侑梨に言わせて何が楽しいのか。
「──クリスマスの日の夫人のスィートでのデータよ……夫人から渡されたのでしょう?お願い、返して」
コピーされていたらどうしよう?
全部回収できるのだろうか?
不安が募る。
「それを君に譲る僕のメリットはなんだい?」
「メリットなんて……夫人にあの夜のことを隠しカメラで撮られていたなんて貴方はなんともないの⁈」
「そもそも、君はそのデータがあると思っているけど、本当にあるのかい?夫人に騙されたと思わないの?」
「いいえ‼︎ 夫人はあの夜の……行為の内容を知っていたわ……動画がないと分からないような詳細さだったわ」
それなのにデータはない様な雰囲気を出すジーノに苛立つ。
「詳細に?どんな内容?」
ジーノが侑梨の真横に座り見つめてくる。
言えるわけがない。あんなことを口に出せない。
「ユーリ」
促されるが言えない。
涙目になるが必死にお願いする。
「ジーノ……お願いよ」
ジーノのため息が聞こえる。
「君は本当にバカな子だね」
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