追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第一章 王子への転生と冒険者修行

第10話 魔法の先生は、ハイエルフ

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 季節は春だ。
 俺は病気もせずに元気に成長している。
 この春で五才になった。

 今は後宮の自分の部屋で書き物をしている。
 二才から続けている日本の技術や文化をメモる作業だ。
 三年間でかなりの分量になったので、最近はメモの整理作業をしている。

 王宮に呼び出されていた『じい』が帰ってきた。
 面倒な王宮とのやり取りは、じいに一任している。
 結構ありがたい。じいはアタリの人材だった。

「アンジェロ様、明日新しい魔法の先生がいらっしゃるそうです」

「お! やっと新しい先生が決まったか!」

 ありがたいな!
 この三年間は魔法の先生なしで自習をしていた。
 だが、新しい魔法はマスター出来ていない。

 フリージア王国に王宮魔導士はいるのだけれど……。

『アンジェロ様の魔法教師だけはご勘弁を……』

 ――と逃げられている。

 なんでも魔法関係者の間で俺は『ヤバい魔法をブッ放す破壊王子』と噂されているらしい。
 まさか自分が、ヤバいヤツ認定されるとは思わなかった。

 世の中は理不尽だ。
 ちょっと大きめの雷魔法を使って池の魚を大量に持ち帰ったり、赤ん坊の頃から飛行魔法で飛び回ったりしているだけなのに。

「それでどんな人が来るの?」

「エルフの女性だそうです」

「エルフか! エルフ族は魔法が得意なんだよね?」

「左様でございます。我々人族とは魔力の分量が天と地ほども違うとか……。魔法の扱いにも非常にけていると聞きます」

「じゃあ、新しい先生も魔法が上手いのかな?」

「大魔導士クラスと聞いております」

 レベルの高い魔法使いは魔導士と呼ばれ、さらにレベルの高い魔法使いは尊敬と恐れを込めて大魔導士と呼ばれるらしい。
 自称じゃなければ、相当の腕前だろう。

「それで具体的には、どんな魔法が使える人だ?」

「全ての魔法を使える……と承っております」

 全ての魔法……?
 それって凄いのか?

 俺でも基本四属性魔法の火・水・土・風と高度属性魔法の雷が使える。
 教えてもらえれば、他の魔法も使えるような気がする。

 世間の基準では、どうなんだろ?
 じいに教えてもらうか……。

「じい! 魔法が全部使えるって凄いのか?」

「凄いです! 普通の魔法使いは、基本の四属性魔法を一属性か二属性使える程度です。風魔法だけとか、火魔法と土魔法とか。それでも魔法が使えるだけで、重宝されます」

 この異世界だと魔法が使える人間は、十人に一人くらいの割合らしい。
 そう考えれば、魔法が使えるだけで貴重な人材なのだろう。
 しかしな……。

「俺は四属性魔法の全属性が使えるぞ」

「それもあるから魔法の先生が決まらなかったのですよ。生徒の方が自分より魔法が多彩に使えるなんて嫌ですから……」

「……すまなかった」

「普通は適性のない魔法は使えないと聞くのですが……。アンジェロ様の場合は、人族の規格から大きく外れているのです」

「じい……、主を人外認定するなよ……」

「いえ、私は気にしておりません」

 俺が気にするんだよ。
 この三年間でじいも俺の事が良く分かって来たのか、この扱いである。

 まあ、女神ミネルヴァ様仕込みだから、魔法に関して規格外なのは仕方がない。
 ありがたいと思っておく。

 それよりもだ!
 大切な事が一つある!

「じい。新しい先生は美人か?」

「そこ重要でしょうか?」

「他に重要な事があるのか?」

「大切なのは魔法の実力だと愚考いたしますが……」

「愚考も結構だが、より大切なのは美しさだろ」

「……明日を期待して待ちましょう」




 翌日、新しい魔法の先生は朝一番にやって来た。
 猫耳侍女のフランは結婚退職した為、人族のイロイロ普通の侍女が案内して来た。

 新しい魔法の先生が部屋に入ってきた瞬間、俺は恋に落ちるかと思った!

 それ位、可愛い! さすがエルフに外れ無し!
 俺はかなりだらしない顔で、先生を見ていると思う。

 だが、先生はちょっと不愛想な人みたいだ。
 ニコリともせずボソボソと名前を告げた。

「ルーナ・ブラケットだ」

 社交辞令も初めましてもなしの挨拶に、俺の隣に控えるじいが渋い顔をした。
 まあ、俺はあまりその辺は気にしないけど、王族相手に良い態度じゃないよな。

 ルーナ先生は、今まで会った魔法の先生や魔法使いとは随分雰囲気が違う。
 みんなローブを着て、女性は大きな魔女帽子をかぶっていたのだが、ルーナ先生はかなり服装が個性的だ。

 黒いダボダボの長いコートを羽織っている。
 長く太い袖のせいで、手が見えない。

 コートのふちは、金色の糸で見慣れぬ模様が刺繍されている。
 ひょっとしたらあの黒いコートは、魔道具なのかもしれない。

 先生の髪型が金髪ツインテールなので、黒いコートは似合っているけどね。

「どうも! 初めましてアンジェロです! ルーナ先生よろしくお願いします!」

 俺は張り切って精一杯さわやかに挨拶をしてみたよ。
 だが先生は俺の事をジト目で観察するだけで返事はない。
 な……、なんか、変な性癖に目覚めてしまいそうだ……。

 しばらくして、ルーナ先生がボソボソっと誰ともなくつぶやいた。

「ふむ……。噂通りとんでもない魔力量だな……」

 俺の魔力量を計っていたのか……。
 見ただけでわかるのか?
 それとも何か魔法か?

 無言で時間だけが過ぎて行く。
 耐えかねたじいがルーナ先生に話しかけた。

「あーエルフ殿……」

「エルフではない。ハイエルフだ」

「ハイエルフ?」

「数百年に一度、エルフの中から生まれる神に愛されし者がハイエルフだ。魔力が高く、寿命は千年を超える」

 それ本で読んだことがある。

 ハイエルフは、エルフ族の中から突然生まれるらしい。
 生まれた瞬間、赤ん坊の体が光に包まれるとか。

 普通のエルフは寿命が三百年から五百年位らしいから、千年を超える寿命は、長寿なエルフの中にあっても規格外だ。
 あ、そうか。俺も規格外らしいから、良い師弟コンビになるかもしれない。

 俺は椅子から立ち上がって、丁寧にお辞儀をした。

「ルーナ先生! 今日からよろしくお願します!」

「まだ、お前を弟子にするかどうか決めていない」

 えっ? そうなの?
 じいが眉根を寄せて控えめに抗議する。

「ハイエルフ殿。それはあまりにも失礼ではございませんか?」

「問題ない。そなたらの国王に了解を取ってある。アンジェロに会ってから決めると言ったら、それで良いと」

「うーん、報酬は十分に用意いたしますが……」

「金はもう十分に持っている」

「宮廷魔導士をご希望でしたら改めて王に話しを通しますが……」

「宮廷魔導士など人付き合いが面倒なだけだ。地位に興味はない」

「では、ハイエルフ殿は何をお望みでしょう?」

「面白い事だ」

「えっ!?」
「えっ!?」

 面白い……事……?
 意外な答えに俺もじいも固まってしまった。

「私はハイエルフで千年を超える寿命を持つ。既に三百年生きているが、ここ五十年程は何をしてもつまらん」

 見た目こんな可愛いのに三百才かよ!
 そうか、それだけ長く生きていると退屈してくるのか……。

「はあ、成程……。それで長生きで退屈しているから、何か面白い事はないかと?」

「そうだ。アンジェロ王子という子供なのに目茶苦茶な魔法使いがいると噂を聞いたのだ。面白そうだと思って顔を見に来た」

 俺は珍獣か何かかよ!
 ルーナ先生は相変わらずのジト目で俺を見ながら話を続けた。

「魔法を教えて欲しくば、何か面白い事を提供しろ。それが私にとって何よりの報酬だ」

「面白い事ですか……」

 スゲー無茶ぶりだな。
 面白い事って言われてもなあ。

 それも三百年生きて来た人に『面白い!』と言わせるにはどうしたら良い?
 難問だな……。

 俺はルーナ先生に魔法の師匠になって欲しい。
 ハイエルフで魔力が強いなら、魔力量の多い俺向きの魔法を教えてくれじゃないか?

 それに何より可愛いし!
 うん。ルーナ先生しかいない!

 俺が考え込んでいると、じいがコソコソっと耳打ちして来た。

「(コソコソ)アンジェロ様のいつものアレをお話してみては?」

「(コソコソ)いつものアレ?」

「(コソコソ)アレですよ! 違う世界から転生して来た話です!」

 あー成程! 転生話は完全に俺のオリジナルストーリーだからな。
 ハイエルフといえども今まで聞いたことのない話だろう。

「何をコソコソ内緒で話している」

「ルーナ先生! 俺の身の上話は面白いですよ!」

「ふむ。聞こう」

 俺はルーナ先生に地球から転生した事を話した。
 日本での仕事がブラックで過労死した事や女神ズやニート神メリクリウス様の事も包み隠さず全部話した。

 ルーナ先生はかなり興味を持ったようで、前のめりになって俺の話を聞いていた。

「ふーむ。信じられない話ではあるが……、話の筋は通っている。アンジェロが人族なのに魔力が高いのも説明がつく……」

「全部本当の事ですよ。これから師匠になって貰う人にウソはつきません」

「何か証拠はあるのか?」

 証拠……か……。無いな……。
 どうしたら信じてもらえるか……。

 あ! そうだ!

「お見せしたい物があります。隣の部屋に来て下さい」

 隣の部屋は俺の書斎だ。
 俺とじいしかカギを持っていない。
 他の人が出入り出来ない部屋だ。

「ここは俺の書斎です。お見せしたいのは、これです!」

「これは……」

 ルーナ先生は、驚いて書斎の壁を見ている。

「これはテクノロジーツリーです!」
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