追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
15 / 358
第一章 王子への転生と冒険者修行

第15話 修行計画でなく、苦行計画じゃないですか!

しおりを挟む
 ウインドドラゴンは、俺の雷魔法特盛で地に沈んだ。
 黒丸さんとルーナ先生が、空に浮かびながら反省会を始めた。

「しかし……アンジェロ少年の雷魔法は凄まじかったのである」

「アンジェロ、良くやった。私もあれだけの威力の魔法を初めて見た」

「ウインドドラゴンを一撃で絶命せしむる……。むう……。今日の事を話しても誰も信じてくれないのである」

「そうなんですか? それほど珍しい事ですか?」

 俺はドラゴンについては、本で読んだ知識しかない。
 圧倒的に強い事は知っているが、雷魔法一発で倒したのがそれほど珍しいのかな?

「ドラゴンを倒すには何発も魔法を放つのである。一発で倒したアンジェロ少年は非常識が過ぎるのであるな。非常識王子なのである」

「ウインドドラゴンに同情する。五才の子供に魔法一発で仕留められるとは……。最期の瞬間、ヤツは理不尽な思いで一杯だったであろう」

「理不尽王子なのである!」

「変なあだ名を増やさないで下さいよ……」

 まあ、雷魔法は女神ミネルヴァ様直伝でちょっと自信がある。
 ドラゴンにも通用する事がわかって良かった。

「黒丸。それはそうとして、ウインドドラゴンとワイバーン十五匹をどうやって運ぶ?」

「うーん。それがしが背負って飛ぶしかないであるな……」

 黒丸さんは、あんなデカイのを背負って飛ぶつもりなのか……。
 そっちの方が非常識だろう。

「俺がアイテムボックスに入れて運びますよ」

「ほう! アンジェロ少年はアイテムボックス持ちであるか!」

「ええ。赤ん坊の頃に神様のメリクリウス様にギフトを貰いました」

「あの分量が入るのか?」

「多分いけます」

 ルーナ先生は俺のアイテムボックスの容量を心配しているけれど、多分大丈夫だと思う。
 ニート神メリクリウス様は、容量無制限って言っていたよな。

 地面に降りてウインドドラゴンの前に立つ。
 その巨躯は既に死んでいるとわかっていても身震いしそうだ。

 よくこんな化け物を倒せたよな……。
 我ながらあの雷魔法の威力に慄然とする。

 ウインドドラゴンは綺麗な緑色の鱗に全身覆われていた。
 右手でウインドドラゴンに触れ『アイテムボックス』とつぶやくと、ウインドドラゴンは右手に吸い込まれるようにしてアイテムボックスに収納された。

 同じ要領でワイバーン十五匹もアイテムボックスに収納し、俺達は商業都市ザムザへ引き上げた。

「アンジェロ少年はアイテムボックスの容量も非常識であるな……。馬車一台分でも十分に大きい方であるが……」

 いやいや、さっきウインドドラゴンを担ごうとしていた黒丸さんの方が非常識だろう。
 どっちが非常識だよ! と言いたい。

「ふむ。アイテムボックスが大きいなら食料を大量に持ち運べる。遠方への討伐も可能だ」

「ルーナ先生、俺が王子だという事を忘れていませんか? あまり無茶は……」

「これも修行だ。アンジェロの為だ」

 絶対遠征やるな。
 ウインドドラゴンとワイバーンの群れを討伐したにもかかわらず、先々の『修行』を想像すると素直に喜べないな。

 ルーナ先生、お手やわらかにお願いします……。



 商業都市ザムザに到着したのは、昼を少し過ぎた頃だった。
 冒険者ギルドで黒丸さんが部下に指示を出し、一旦昼食に出ることになった。

「獲物が大きい上に、数が多いであるからな。解体作業に商業ギルドや商人の応援を呼ぶのである」

「今日中に解体するのですか?」

「そうである。解体して売ってしまえば、後はそれぞれの商人が倉庫なりアイテムボックスなりに保管するのである」

 そう言えばニート神メリクリウス様が、アイテムボックス持ちは結構いると言っていたな。
 なるほど早いとこ解体して、小分けにした方が肉も傷まない訳か。

 俺達は外で昼飯を食べることにした。
 俺は街に出るのは初めてなのでワクワクする。
 この異世界に転生してから訓練場くらいしか行ったことがないからな。

 それもお忍びなので俺の横には、ルーナ先生と黒丸さんがいるだけだ。
 護衛もいないので、普通の街歩きが出来て大満足だ。

 商業都市ザムザは、なかなか活気のある街で人も多い。石畳の広い道路を様々な馬車が行きかう。

 あれは小麦の袋だろうか?
 屋根のないオープンタイプの荷台に麻袋を満載した荷馬車が通る。

 西部劇に出てきそうな二頭立ての幌馬車とすれ違う。
 振り返って荷台を見ると、行商人風の人が沢山乗っている。

 歩いている人も多種多様で、人族もいれば獣人もいる。
 獣人は猫耳侍女のフランのようにほとんど人と変わらない見た目の者もいれば、獣が二足歩行しているようなあまり人化していない者もいる。

 商店の店先では壺に入れられた香辛料が売られている。
 店主はターバンを頭に巻き小麦色の肌をした異国人だ。
 毛皮の帽子をかぶった客、こちらも異国人風の男と激しく価格交渉をしている。

「すごい……、色々な国の人がいますね」

「アンジェロ少年は、ザムザは初めてであるな?」

「はい! 活気がありますね! 気に入りました!」

「それは良かったのである。ここ商業都市ザムザは大陸貿易の中継地点なのであるな。色々な国から人や物が集まっているのである」

「ほえ~」

「冒険者ギルドへの依頼も商隊の護衛や通商路近くの魔物討伐が多いのである」

「商業を中心に回っている都市なのですね」

「フリージア王国の金倉かねぐらであるな。しかし、王都から離れているので、放っておかれ気味なのである」

「……それはすいません」

「アンジェロ少年が大きくなったら、この街の面倒を見るのである」

 ああ、それは良い。
 出来ればこういう面白そうな街を領地で貰いたいな。
 俺はキョロキョロとお上りさん気分でザムザの街を歩いた。

 昼食はオーク肉のステーキ定食で、ポークステーキみたいな味だった。
 料金は一人銅貨十枚。

 近くの屋台で串焼き肉が銅貨一枚だったので、感覚的には銅貨一枚百円くらいかな?
 銅貨十枚なら千円くらいだろう。

 お金については、食後黒丸さんに教えてもらった。
 後宮では侍女に頼めば何でも用意して貰えるので、俺は金を見た事も使った事もない。

 通貨は、銅貨、銀貨、金貨の三種類だ。
 銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚のレート、という事は……。


 銅貨:百円

 銀貨:一万円

 金貨:百万円


 ……位の感覚だ。

「アンジェロは将来どうしたいのだ?」

 ルーナ先生が、食後のお茶、ハーブティーを飲みながら話題を振って来た。

 どうしたいかと言われてもな……。
 王族だと逆に自由がないからな。
 例えば鍛冶屋になりたいと言っても周りが許さないだろう。

「アンジェロは第三王子だ。上二人の兄を押しのけて王位に付くのか?」

「いや、王位に興味はありませんよ。どこかに領地を貰って、アンジェロ公爵になるのだと思います」

「ふむ。続けろ」

「それで領地を平和に治めて、なるたけ領民を幸せにして、女神ジュノー様から頼まれた文化文明を発達させるってヤツに取り組むつもりです」

「飛行機を作るのか?」

「そうですね。当面の目標は飛行機ですね」

 うん。そうだ。
 日本で平凡なサラリーマンをやっていた俺には王位継承争いなんてのは無理だ。
 それに王様になって貴族に囲まれるなんて考えただけで面倒臭い。
 面倒な事は第一王子のポポ兄上たちに任せて、ノンビリと技術開発でもした方が俺には合っている。

「一体何の事であるか? 飛行機とは何であるか?」

 ああ、黒丸さんはわからないよな。
 俺は黒丸さんにざっくりとこれまでの経緯を説明する。

「信じられないのであるな。しかし、女神ミネルヴァ様から魔力を贈られたのなら、アンジェロ少年の非常識な魔法にも納得なのである。しかし、その飛行機というのは作れるのであるか?」

「開発する人材とお金があれば出来ると思いますよ」

「なるほど! ならば、アンジェロ少年の為に報酬の高い依頼を探すのである! 報酬の高い依頼は危険度も高いのであるが、これも修行である!」

「え!? いや……、そこそこの依頼で十分……」

「うむ。黒丸頼む。フリージア王国内で無くても構わない。アンジェロのアイテムボックスがあるから、補給の心配もない。遠方でも問題ない」

「なら、やはりドラゴン狙いであるな。ドラゴンなら売却額が高いのである」

「サイクロプスは出ていないか? 人型とも戦わせたい」

「ふむ。では多種多様な難敵とアンジェロ少年を戦わせるのである!」

 二人は嬉々として俺の修行計画……、いや苦行計画を立てている。

 ちょ! ちょっと待って!
 俺は、まだ五才だよ!
 もしヒットポイントって概念があるなら一桁台の最弱だから、無茶させないでよ!

「あの~、俺はですね……。別に強い敵じゃなくても、魔法の勉強が出来れば良い訳でして……」

 だが、俺の希望はルーナ先生のジト目に粉砕された。

「これも修行だ。アンジェロ。やれ」

「……わかりました」

 こうして俺たち『王国の牙』の初陣は、ドラゴン撃破しワイバーンの群れを全滅という華々しい勝利に終わった。
 しかし、俺は今後修行というよりも苦行をする事になったのであった。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...