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第四章 ウイスキーと異世界飛行機の開発
第63話 収穫爆上げ
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じいの報告の翌日。
今度はじいの護衛で同行して来た四人の冒険者から話を聞く事になった。
何でもこの四人の冒険者の実家は農家で、帰省した時に畑仕事を手伝っていると言うのだ。
メロビクス王大国で行われている輪栽式農業の大まかな方法はわかった。
だが、実地の細かい所は不明だ。
この四人は輪栽式農業に切り替わってから、実家の農作業を手伝った経験があるらしい。
ならば何かヒント位はつかめるかもしれない。
今回は農業の現場レベルの話になるので、森の近くの村の村長さんと若い農夫、ベルントから買った農民奴隷夫婦にも参加して貰った。
かなりの大人数なので、会議の場所は食堂にした。
冒険者四人には、事前にじいから話を通していたけれど緊張しまくっている。
俺は彼らの緊張をほぐす為に優しい口調で語りかけた。
「まずメロビクス王大国から来ていただいた冒険者の皆さんにお礼を申し上げます。じいを守ってくれた事、調査に協力してくれた事、そしてこんな遠い所まで来てくれた事に感謝します」
四人の冒険者は椅子に座ったまま頭を下げた。
赤い髪の毛の盗賊風の男、オレンジの髪の毛の顔の似た二人の男は戦士かな。
そして黒髪の魔法使いの服装をした女性。
冒険者パーティーとしてのバランスは良さそうだ。人柄も実直そう。
じいは、良い人選をした。
「それで教えて欲しい事があるのですが、王領になる農場から持って来た作物がありますよね。これは、もうメロビクス王大国の他のエリアでも栽培しているのですか?」
四人は顔を見合わせた後、リーダーらしい男性が代表して話し始めた。
「いえ。私たちも初めて見る作物でした。たぶん、王領の農場以外では作っていないと思います」
そうか……。この辺の回答は予想通り。
じゃあ、昨晩、気が付いたことを質問してみよう。
「メロビクス王大国で新しい大陸を発見したとか、新しい国と交易が始まったとか、そんな噂を聞いた事がありますか?」
これは、昨晩、気が付いたのだが、じいが持ち帰った作物は全部地球世界の新大陸の物だ。
大航海時代にアメリカ大陸からヨーロッパに持ち込まれたジャガイモやトマトなどの作物たちだ。だからこの異世界でも新しい大陸の発見があり、そこから持ち込まれたのかもしれない。
「いえ。そういう話は聞きませんね。俺たちは王都メロウリンクの冒険者ギルド所属ですが、ギルドでそういう話は聞いた事がありません。もし、そんな事があれば、護衛依頼とか仕事が増えるはずです」
違うのか?
新大陸発見や新しい取引国が増えたのではないのか?
そこからジャガイモ等が、輸入されたのではないのか?
「じいは、どう思う?」
「私もそういう噂は聞きませんでした。メロビクス王大国では隠居した商人と言う事にしていましたので、もし、商売に関わりそうな話があれば、耳に入ったはずです」
「そうか。わかった」
どうやら違うらしい。
そうすると昨日の会議で出た予測『松林という転生者が、地球世界から作物を取り寄せた』可能性が濃厚だな。
「わかった。ありがとう。後は自由に話してくれ」
そこからは自由に話してもらった。
やはり実地で作業した経験は大きいようで、村長さんたちや農民奴隷夫婦の質問にもかなり具体的に答えられている。
興味深かったのは、彼らの村の近くに水車が新設され小麦の粉ひきが楽になったそうだ。
俺はホレックのおっちゃんに相談してみた。
「おっちゃんは、水車を作れる?」
「いや、無理だな。水車ってのは聞いた事があるが、見た事が無え。キューに頼んじゃどうだ?」
「なるほど。リス族のキューか! 作れるかな?」
「キュー以外のリス族も手先が器用で木工になれているヤツが多いらしいぞ。助っ人を呼んで作らせれば、行けるんじゃねえか」
自由に話は進んでいる。
どうやらメロビクス王大国でも千歯こきは導入済みの様だ。
L字型のクワが使われ始めているそうだし、こりゃ確実にいるね。日本からの転生者。
それに農作業が結構大変らしく、村の奴隷の数が増えた。
牛や作業馬に取り付ける農具が、領主から貸し与えられたらしい。
輪栽式農業も案外大変みたいだ。
四人に対する質問が出尽くしたみたいなので、俺がリーダーのオレンジ髪の男性に質問した。
「肥料は使っていますか?」
「ヒリョウ? それは何でしょうか?」
「畑にまいて土の力を回復させる。畑の薬みたいな物です」
「いえ。少なくとも俺は見てないですね」
そうか。肥料は使ってないのか……。
転生者がいるなら肥料を使っていると思ったのだが。
「肥料なしで、輪栽式農業だけで、そんなに生産力が上がる物かな……」
俺がボソリと呟くとエルハムさんが手を上げて発言した。
「その件ですが、時系列がおかしくないでしょうか?」
「時系列?」
「はい。メロビクス王大国で小麦や農作物の収穫が増えたのは、具体的にいつからですか?」
どうもエルハムさんは、何かが引っかかっているらしい。
じいとリーダーがエルハムさんの質問に答えた。
「王家の直轄地では、去年からと聞いてますじゃ」
「実家では、今年からです」
「やっぱりおかしいですよ!」
エルハムさんは、何かを確信したようだ。
俺は農業に詳しくないせいか、さっぱり分からない。
「アンジェロ様。そのヒリョウというのを使うと、小麦の栽培期間が短くなるのでしょうか?」
「え?」
エルハムさんの言っている意味がわからず聞き返してしまった。
「小麦は秋の終わりから冬場に種をまいて、翌年の夏に刈り取るのです」
「結構、時間がかかるな」
「ええ。それでその輪栽式農業ですが、一時的には小麦の収穫は減りますよね? 畑を四分割して四種類の作物を作りますでしょう?」
「うん。小麦、大麦、カブ、クローバーだね」
「すると小麦を作るのは、畑全体の四分の一になります。しかし、この短期間で小麦相場の値段が下がるほど、収穫量が増えているのは不自然じゃありませんか?」
「……確かにそうだな」
「それにその神童と言われる子は五才ですよね? 仮にですよ。輪栽式農業を二才や三才で発明したとしても、導入して二年か三年です。輪栽式農業の四年サイクルは、まだ経過していません」
「なのに収穫量が増えて小麦相場が下がるか……。確かにおかしいね。輪栽式農業の成果が出るのが早すぎる」
メロビクス王大国にいる神童は転生者だろう。
なら俺と同じで赤ん坊の頃から日本の記憶を持っていて、大人と同じように物を考えられたと見て良いだろう。
だが、他人と話が出来るようになり、自分で歩けるようになり、王家に輪栽式農業を提案し、そして輪栽式農業の成果が出る。
確かに五年じゃ短すぎる。
「そこで、アンジェロ様がおっしゃったヒリョウですよ! それは植物の生育を早める物なのでしょうか?」
どうだろう?
正直俺も良く分からない。
「正直な話し、おれも農業に詳しくないのでよく分からない。ただ、一年かけて育てる植物を半年で育てるとか、そういう事はない。肥料は土の力を回復させる物だから、カブが大きく育つとかその程度の影響だと思う」
「なら、ますますおかしいですよ。輪栽式農業はメロビクス王大国の王領や仲の良い貴族家の領地でしか、まだ実施されてないのですよね? メロビクス王大国全体の小麦収穫量から見たら、数割だと思います。なのに、メロビクス王大国の小麦相場が値下がりするなんて不自然ですよ」
「うーん……」
エルハムさんはさすがクイック生産計画を立てただけある。
だが、冒険者四人や他のメンバーの中には、話が見えない者もいる。
噛み砕いて質問するか。
「あの……。小麦の成長が早くなったとか、収穫までの期間が短くなったとか、実家の方で話は出なかったですか?」
リーダーが答えてくれた。
「それ言っていましたよ! 何でも最初は小麦もカブも三か月で収穫できたそうですよ。それで、すぐに次の作物を植えて、それも三か月で!」
「なに!?」
あり得ない話が出た。
日本の化学肥料を使っても、そんなことは起こり得ない。
「メロビクス王大国で何が起こっているんだ……」
すると魔法使いの女性冒険者が手を上げた。
「何かご存知ですか?」
「何でもエルフが来て、小麦やカブが成長する魔法をかけていったそうですよ」
「魔法を?」
「はい。三か月に一度畑に来るそうです。すごい美人なのでお父とお兄が覚えていて、もう鼻の下を伸ばしてデレデレでしたよ」
「エルフが協力しているのか……」
俺が、エルフの里が一枚噛んでいるのかと勘ぐった時、女魔法使いが爆弾発言をした。
「奴隷らしいですよ」
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
「農業指導員って人が王領から来るらしいです。その人にお父とお兄が、『あの美人は誰だ?』って聞いたら『あれは奴隷のエルフだ』って答えたそうですよ」
背筋に冷たい汗が流れた。
ゆっくりとルーナ先生と四人のエルフの方を見ると、恐ろしい形相で殺気を発していた。
*
「どう? エルフの奴隷は追加できた?」
メロビクス王大国王領の屋敷で、ハジメ・マツバヤシはお付きの騎士に声を掛けた。
騎士は困惑していた。
目の前で行われている事が、全く理解出来ないでいた。
行われている事を言語化するなら、『ハジメ・マツバヤシが室内で乗馬をしている』だ。
しかし、その馬はエルフの女奴隷だ。
全裸ではないが、非常に際どい黒い革製の衣装を着せられ、四つん這いで室内を歩かされている。
ハジメ・マツバヤシは、彼女に跨り右手に持った乗馬鞭で馬になっているエルフの女奴隷の尻を思いついたように叩く。
彼女の尻は真っ赤に腫れ上がっている。
不思議なのは彼女の尻から馬の尻尾が生えている事だ。
はて、エルフに尻尾は無かったはずだが?
騎士はそんなピントのずれた事を考えていた。
騎士の様子をみてハジメ・マツバヤシが話を続けた。
「ああ! これが気になるの? この子はね。僕の言う事を聞かないんだよ。大人しく木魔法を使って、作物の『成長促進』をしてくれれば良いのだけれどね。僕への協力を拒否したんだ。それで調教中だよ。君もやりたいの?」
「いえ。そのような……。ご報告でございます。ハジメ様のご提案が王宮の会議で可決されまして、メロビクス王大国全土でエルフ狩りが行われる事になりました」
「来たー! 来たね! これで収穫量は、全土で爆上げ間違いなしだよ! 良かった、良かった! 話はそれだけ?」
「は、はい」
「じゃあ、下がって良いよ」
部屋を出る時に騎士が見た物は、力尽き横たわるエルフに容赦なく鞭を振り下ろすハジメ・マツバヤシの姿だった。
今度はじいの護衛で同行して来た四人の冒険者から話を聞く事になった。
何でもこの四人の冒険者の実家は農家で、帰省した時に畑仕事を手伝っていると言うのだ。
メロビクス王大国で行われている輪栽式農業の大まかな方法はわかった。
だが、実地の細かい所は不明だ。
この四人は輪栽式農業に切り替わってから、実家の農作業を手伝った経験があるらしい。
ならば何かヒント位はつかめるかもしれない。
今回は農業の現場レベルの話になるので、森の近くの村の村長さんと若い農夫、ベルントから買った農民奴隷夫婦にも参加して貰った。
かなりの大人数なので、会議の場所は食堂にした。
冒険者四人には、事前にじいから話を通していたけれど緊張しまくっている。
俺は彼らの緊張をほぐす為に優しい口調で語りかけた。
「まずメロビクス王大国から来ていただいた冒険者の皆さんにお礼を申し上げます。じいを守ってくれた事、調査に協力してくれた事、そしてこんな遠い所まで来てくれた事に感謝します」
四人の冒険者は椅子に座ったまま頭を下げた。
赤い髪の毛の盗賊風の男、オレンジの髪の毛の顔の似た二人の男は戦士かな。
そして黒髪の魔法使いの服装をした女性。
冒険者パーティーとしてのバランスは良さそうだ。人柄も実直そう。
じいは、良い人選をした。
「それで教えて欲しい事があるのですが、王領になる農場から持って来た作物がありますよね。これは、もうメロビクス王大国の他のエリアでも栽培しているのですか?」
四人は顔を見合わせた後、リーダーらしい男性が代表して話し始めた。
「いえ。私たちも初めて見る作物でした。たぶん、王領の農場以外では作っていないと思います」
そうか……。この辺の回答は予想通り。
じゃあ、昨晩、気が付いたことを質問してみよう。
「メロビクス王大国で新しい大陸を発見したとか、新しい国と交易が始まったとか、そんな噂を聞いた事がありますか?」
これは、昨晩、気が付いたのだが、じいが持ち帰った作物は全部地球世界の新大陸の物だ。
大航海時代にアメリカ大陸からヨーロッパに持ち込まれたジャガイモやトマトなどの作物たちだ。だからこの異世界でも新しい大陸の発見があり、そこから持ち込まれたのかもしれない。
「いえ。そういう話は聞きませんね。俺たちは王都メロウリンクの冒険者ギルド所属ですが、ギルドでそういう話は聞いた事がありません。もし、そんな事があれば、護衛依頼とか仕事が増えるはずです」
違うのか?
新大陸発見や新しい取引国が増えたのではないのか?
そこからジャガイモ等が、輸入されたのではないのか?
「じいは、どう思う?」
「私もそういう噂は聞きませんでした。メロビクス王大国では隠居した商人と言う事にしていましたので、もし、商売に関わりそうな話があれば、耳に入ったはずです」
「そうか。わかった」
どうやら違うらしい。
そうすると昨日の会議で出た予測『松林という転生者が、地球世界から作物を取り寄せた』可能性が濃厚だな。
「わかった。ありがとう。後は自由に話してくれ」
そこからは自由に話してもらった。
やはり実地で作業した経験は大きいようで、村長さんたちや農民奴隷夫婦の質問にもかなり具体的に答えられている。
興味深かったのは、彼らの村の近くに水車が新設され小麦の粉ひきが楽になったそうだ。
俺はホレックのおっちゃんに相談してみた。
「おっちゃんは、水車を作れる?」
「いや、無理だな。水車ってのは聞いた事があるが、見た事が無え。キューに頼んじゃどうだ?」
「なるほど。リス族のキューか! 作れるかな?」
「キュー以外のリス族も手先が器用で木工になれているヤツが多いらしいぞ。助っ人を呼んで作らせれば、行けるんじゃねえか」
自由に話は進んでいる。
どうやらメロビクス王大国でも千歯こきは導入済みの様だ。
L字型のクワが使われ始めているそうだし、こりゃ確実にいるね。日本からの転生者。
それに農作業が結構大変らしく、村の奴隷の数が増えた。
牛や作業馬に取り付ける農具が、領主から貸し与えられたらしい。
輪栽式農業も案外大変みたいだ。
四人に対する質問が出尽くしたみたいなので、俺がリーダーのオレンジ髪の男性に質問した。
「肥料は使っていますか?」
「ヒリョウ? それは何でしょうか?」
「畑にまいて土の力を回復させる。畑の薬みたいな物です」
「いえ。少なくとも俺は見てないですね」
そうか。肥料は使ってないのか……。
転生者がいるなら肥料を使っていると思ったのだが。
「肥料なしで、輪栽式農業だけで、そんなに生産力が上がる物かな……」
俺がボソリと呟くとエルハムさんが手を上げて発言した。
「その件ですが、時系列がおかしくないでしょうか?」
「時系列?」
「はい。メロビクス王大国で小麦や農作物の収穫が増えたのは、具体的にいつからですか?」
どうもエルハムさんは、何かが引っかかっているらしい。
じいとリーダーがエルハムさんの質問に答えた。
「王家の直轄地では、去年からと聞いてますじゃ」
「実家では、今年からです」
「やっぱりおかしいですよ!」
エルハムさんは、何かを確信したようだ。
俺は農業に詳しくないせいか、さっぱり分からない。
「アンジェロ様。そのヒリョウというのを使うと、小麦の栽培期間が短くなるのでしょうか?」
「え?」
エルハムさんの言っている意味がわからず聞き返してしまった。
「小麦は秋の終わりから冬場に種をまいて、翌年の夏に刈り取るのです」
「結構、時間がかかるな」
「ええ。それでその輪栽式農業ですが、一時的には小麦の収穫は減りますよね? 畑を四分割して四種類の作物を作りますでしょう?」
「うん。小麦、大麦、カブ、クローバーだね」
「すると小麦を作るのは、畑全体の四分の一になります。しかし、この短期間で小麦相場の値段が下がるほど、収穫量が増えているのは不自然じゃありませんか?」
「……確かにそうだな」
「それにその神童と言われる子は五才ですよね? 仮にですよ。輪栽式農業を二才や三才で発明したとしても、導入して二年か三年です。輪栽式農業の四年サイクルは、まだ経過していません」
「なのに収穫量が増えて小麦相場が下がるか……。確かにおかしいね。輪栽式農業の成果が出るのが早すぎる」
メロビクス王大国にいる神童は転生者だろう。
なら俺と同じで赤ん坊の頃から日本の記憶を持っていて、大人と同じように物を考えられたと見て良いだろう。
だが、他人と話が出来るようになり、自分で歩けるようになり、王家に輪栽式農業を提案し、そして輪栽式農業の成果が出る。
確かに五年じゃ短すぎる。
「そこで、アンジェロ様がおっしゃったヒリョウですよ! それは植物の生育を早める物なのでしょうか?」
どうだろう?
正直俺も良く分からない。
「正直な話し、おれも農業に詳しくないのでよく分からない。ただ、一年かけて育てる植物を半年で育てるとか、そういう事はない。肥料は土の力を回復させる物だから、カブが大きく育つとかその程度の影響だと思う」
「なら、ますますおかしいですよ。輪栽式農業はメロビクス王大国の王領や仲の良い貴族家の領地でしか、まだ実施されてないのですよね? メロビクス王大国全体の小麦収穫量から見たら、数割だと思います。なのに、メロビクス王大国の小麦相場が値下がりするなんて不自然ですよ」
「うーん……」
エルハムさんはさすがクイック生産計画を立てただけある。
だが、冒険者四人や他のメンバーの中には、話が見えない者もいる。
噛み砕いて質問するか。
「あの……。小麦の成長が早くなったとか、収穫までの期間が短くなったとか、実家の方で話は出なかったですか?」
リーダーが答えてくれた。
「それ言っていましたよ! 何でも最初は小麦もカブも三か月で収穫できたそうですよ。それで、すぐに次の作物を植えて、それも三か月で!」
「なに!?」
あり得ない話が出た。
日本の化学肥料を使っても、そんなことは起こり得ない。
「メロビクス王大国で何が起こっているんだ……」
すると魔法使いの女性冒険者が手を上げた。
「何かご存知ですか?」
「何でもエルフが来て、小麦やカブが成長する魔法をかけていったそうですよ」
「魔法を?」
「はい。三か月に一度畑に来るそうです。すごい美人なのでお父とお兄が覚えていて、もう鼻の下を伸ばしてデレデレでしたよ」
「エルフが協力しているのか……」
俺が、エルフの里が一枚噛んでいるのかと勘ぐった時、女魔法使いが爆弾発言をした。
「奴隷らしいですよ」
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
「農業指導員って人が王領から来るらしいです。その人にお父とお兄が、『あの美人は誰だ?』って聞いたら『あれは奴隷のエルフだ』って答えたそうですよ」
背筋に冷たい汗が流れた。
ゆっくりとルーナ先生と四人のエルフの方を見ると、恐ろしい形相で殺気を発していた。
*
「どう? エルフの奴隷は追加できた?」
メロビクス王大国王領の屋敷で、ハジメ・マツバヤシはお付きの騎士に声を掛けた。
騎士は困惑していた。
目の前で行われている事が、全く理解出来ないでいた。
行われている事を言語化するなら、『ハジメ・マツバヤシが室内で乗馬をしている』だ。
しかし、その馬はエルフの女奴隷だ。
全裸ではないが、非常に際どい黒い革製の衣装を着せられ、四つん這いで室内を歩かされている。
ハジメ・マツバヤシは、彼女に跨り右手に持った乗馬鞭で馬になっているエルフの女奴隷の尻を思いついたように叩く。
彼女の尻は真っ赤に腫れ上がっている。
不思議なのは彼女の尻から馬の尻尾が生えている事だ。
はて、エルフに尻尾は無かったはずだが?
騎士はそんなピントのずれた事を考えていた。
騎士の様子をみてハジメ・マツバヤシが話を続けた。
「ああ! これが気になるの? この子はね。僕の言う事を聞かないんだよ。大人しく木魔法を使って、作物の『成長促進』をしてくれれば良いのだけれどね。僕への協力を拒否したんだ。それで調教中だよ。君もやりたいの?」
「いえ。そのような……。ご報告でございます。ハジメ様のご提案が王宮の会議で可決されまして、メロビクス王大国全土でエルフ狩りが行われる事になりました」
「来たー! 来たね! これで収穫量は、全土で爆上げ間違いなしだよ! 良かった、良かった! 話はそれだけ?」
「は、はい」
「じゃあ、下がって良いよ」
部屋を出る時に騎士が見た物は、力尽き横たわるエルフに容赦なく鞭を振り下ろすハジメ・マツバヤシの姿だった。
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