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第六章 二人の王子
第97話 新年を言祝ぐ宴
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――一月末日。フリージア王国王宮。
「これより『メロビクス戦役祝勝会』と『新年を言祝ぐ宴』を始める!」
国王である父上の発声で宴が始まった。
会場の大広間には、フリージア王国中の貴族が一堂に会し華やかな雰囲気だ。
立食形式のパーティーで、参加者は酒と料理をつまみながら社交に花を咲かせる。
あちこちで喜びの声が聞こえる。
「勝利に!」
「新しい年に!」
俺は成人前なので、本来宴には参加出来ないのだが、『アンジェロ領の領主』として成人前ながら参加を許されている。
昨年末から今年初めまで続いたメロビクス王大国軍との戦争の余波は続いている。
後始末にも時間がかかり、毎年一月初旬に開催される『新年を言祝ぐ宴』は今日まで延期されていたのだ。
あの戦争は、『メロビクス戦役』と呼ばれ、輝かしい勝利と忌まわしい裏切りが、メロビクス戦役に対する貴族たちの心を複雑な物にした。
「いや、しかし! 二カ国を相手に完勝ですからな!」
「まことに! 我がフリージア王国軍の強さよ!」
「諸外国は、震えておりましょうぞ! ハハハハ!」
勝利を喜ぶ貴族たちの声が聞こえる。
これがメロビクス戦役の光の部分だ。
二カ国の軍を全滅させたのだ。
貴族たちが怪気炎を上げるのも無理はない。
一方で憂鬱な声も聞こえてくる。
「ポポ王子が裏切るとは……」
「エノー宰相が、ニアランド王国の間諜だったと言うではないか!」
「ニアランドとの同盟は、なんだったのだ? 戦場で背中から刺されるとは……」
第一王子ポポ兄上の裏切り。
第二王子アルドギスル兄上と第三王子の俺、アンジェロへの暗殺事件。
宰相エノー伯爵のスパイ行為。
ニアランド王国の裏切り。
戦争に派手に勝ったから、なんとかなっているが、貴族たちが受けた衝撃は大きかった。
これだけ事が起きれば、フリージア王国内、特に王宮の中はガタガタだ。
誰を信じれば良いのか?
どこの国が信用できるのか?
疑心暗鬼に陥った人は多い。
『アルドギスル、アンジェロ。その方たちは、明るく振る舞うのだ。二人の王子が、皆の希望なのだ』
戦場から引き上げる時に、父上が俺とアルドギスル兄上にかけた言葉だ。
俺は眉間にしわを寄せて考え込んでしまったが、アルドギスル兄上は切り替えが早かった。
『お任せあれ~父上! 王都に帰ったらみんなを誘ってガンガン飲みに行くよ! あ、支払いは、王宮につけておきますねえ』
『ほどほどにいたせよ……』
いや、ちょっとは悩めよ!
俺たちは、危うく暗殺される所だった!
兄弟で殺し合ったのだぞ!
ホント……単純なアルドギスル兄上が羨ましい。
いや、それとも、大人物なのだろうか?
王都に帰ると、アルドギスル兄上は平民の兵士に交ざって、あちこち飲み歩いたらしい。
『アルドギスル様……こんな所で何をしていらっしゃるのですか?』
『ゲッ! ヒューガルデン!』
毎晩、お目付役のヒューガルデン伯爵が、アルドギスル兄上の首根っこをつかんで店から連れ帰るのが大変だったとか。
愛すべき男だな、アルドギスル兄上。
俺の方は、王都とアンジェロ領の往復で大変だった。
王都での打ち合わせや交渉が多く、アンジェロ領に転移魔法で戻ってはエルハムさんやジョバンニの報告を聞く。
ルーナ先生と黒丸師匠は、俺が暗殺されかけたことに責任を感じ、ずっと護衛をしてくれている。
『黒丸! あいつが怪しい!』
『捕まえるのである!』
二人は俺の安全しか考えておらず、怪しい人物を見つけ次第、無慈悲な拘束と取り調べを、身分に関係なく行った。
お陰で王宮と王都の治安は、大幅に上昇したのだ。
二人が護衛してくれるお陰で、俺は初対面の貴族や商人とも安心して会うことが出来た。
俺は面会を希望する貴族たちと片端から会い、コネクション作りに励んだ。
なぜなら……ポポ兄上と宰相エノー伯爵が亡くなったことで、貴族の勢力図は大きく変わったからだ。
最大派閥は、第二王子アルドギスル兄上の派閥だ。
メロビクス戦役前からの派閥を維持している。
有力な領地貴族と内政派の貴族からの支持がある。
第二の大派閥は、国王派だ。
数的にはアルドギスル派の半分程度だが、亡くなったポポ兄上派閥の貴族が一程度支持に回った。
それまで権力を握っていた宰相エノー伯爵が亡くなったので、国王である父上に権力が戻ると彼らは読んだのだ。
父上への忠誠心は、疑わしいが……。
それでも、国王が政治を行うには手足が必要だ。
父上としては、数が集まっただけでヨシとするそうだ。
そして、第三勢力が、俺のアンジェロ派。
メロビクス戦役後に大きく伸びた。
第二騎士団をはじめとする軍関係と国境沿いの領主貴族からの支持がある。
『よその国ともめたら、アンジェロ様が助けに来てくれる。魔法でドンだ!』
――という期待を、俺を支持する貴族たちは持っているのだ。
いいの?
極大魔法メテオストリームで、領地がボコボコになっちゃうかもしれないのに。
数的には、アルドギスル兄上の四分の一と言ったところだが、約一年前に北部王領に追い出されたことを考えると上出来だろう。
残りの貴族は日和見や中立だ。
宴も一時間が過ぎ、あちこちで盛り上がっている。
「オイ! アンジェロ! 飲んでいるか!」
白狼族のサラが顔を真っ赤にして、俺に寄りかかってきた。
今回は、祝勝会を兼ねているので、俺の与力として参戦したサラ、ボイチェフ、キューも招待している。
「成人前だから、飲んでいないよ」
「そうか。まだ、子供だから仕方ないな」
アンジェロ領の隣に住む獣人三族は、十才や八才で成人だそうだ。
獣人は、成長が早いのかもしれない。
ボイチェフなんて、大人の熊獣人と変わらない体格だ。
サラは、まだ成長期かな。
白狼族は、かなり人化している獣人だから、成長も人族に近いのだろう。
成長中の体を、犬みたいにこすりつけてくる。
「アンジェロ! 早く大人になれ! 結婚して子供を作ろう!」
「そうだな。その時は、よろしく頼むよ」
「任せろ!」
何をよろしくして、何を任せろと言うのか。
成長促進の魔法はないのだろうか?
今度ルーナ先生に聞いてみよう。
ボイチェフは、ひたすら料理を食べ満足そうだ。
キューは、会場の一角に設けられたグースの展示場所で、貴族相手に説明をしている。
頼りになるな。
今回は、大広間の一角にグース一機の展示とクイックの試飲コーナーを設けた。
グースのブースには、開発者の一人であるリス族のキューと魔導エンジンを開発したルーナ先生の妹ファー・ブラケットを配置している。
そして、クイックの試飲コーナーには、エルハムさんに入ってもらった。
ファーとエルハムさんに、ハイレグ水着を推奨したのだが、『意味不明』と却下された。
エルフのコンパニ嬢なんて、ロマンがあると思うのだが……。
結婚したらルーナ先生に着てもらおう。
グース展示とクイック試飲コーナーは、大人気で三人は大忙しだ。
ちなみにホレックのおっちゃんは、不参加。
『王宮? そんな肩のこりそうな所へ連れて行くな!』
――だってさ。
「皆様! ご注目ください! お静かにお願いいたします! これよりメロビクス戦役の論功行賞を行います!」
儀典長が大声で呼びかけた。
大広間の一番奥、一段高くなった国王席に視線が集まる。
さあ! ご褒美タイムだ!
「これより『メロビクス戦役祝勝会』と『新年を言祝ぐ宴』を始める!」
国王である父上の発声で宴が始まった。
会場の大広間には、フリージア王国中の貴族が一堂に会し華やかな雰囲気だ。
立食形式のパーティーで、参加者は酒と料理をつまみながら社交に花を咲かせる。
あちこちで喜びの声が聞こえる。
「勝利に!」
「新しい年に!」
俺は成人前なので、本来宴には参加出来ないのだが、『アンジェロ領の領主』として成人前ながら参加を許されている。
昨年末から今年初めまで続いたメロビクス王大国軍との戦争の余波は続いている。
後始末にも時間がかかり、毎年一月初旬に開催される『新年を言祝ぐ宴』は今日まで延期されていたのだ。
あの戦争は、『メロビクス戦役』と呼ばれ、輝かしい勝利と忌まわしい裏切りが、メロビクス戦役に対する貴族たちの心を複雑な物にした。
「いや、しかし! 二カ国を相手に完勝ですからな!」
「まことに! 我がフリージア王国軍の強さよ!」
「諸外国は、震えておりましょうぞ! ハハハハ!」
勝利を喜ぶ貴族たちの声が聞こえる。
これがメロビクス戦役の光の部分だ。
二カ国の軍を全滅させたのだ。
貴族たちが怪気炎を上げるのも無理はない。
一方で憂鬱な声も聞こえてくる。
「ポポ王子が裏切るとは……」
「エノー宰相が、ニアランド王国の間諜だったと言うではないか!」
「ニアランドとの同盟は、なんだったのだ? 戦場で背中から刺されるとは……」
第一王子ポポ兄上の裏切り。
第二王子アルドギスル兄上と第三王子の俺、アンジェロへの暗殺事件。
宰相エノー伯爵のスパイ行為。
ニアランド王国の裏切り。
戦争に派手に勝ったから、なんとかなっているが、貴族たちが受けた衝撃は大きかった。
これだけ事が起きれば、フリージア王国内、特に王宮の中はガタガタだ。
誰を信じれば良いのか?
どこの国が信用できるのか?
疑心暗鬼に陥った人は多い。
『アルドギスル、アンジェロ。その方たちは、明るく振る舞うのだ。二人の王子が、皆の希望なのだ』
戦場から引き上げる時に、父上が俺とアルドギスル兄上にかけた言葉だ。
俺は眉間にしわを寄せて考え込んでしまったが、アルドギスル兄上は切り替えが早かった。
『お任せあれ~父上! 王都に帰ったらみんなを誘ってガンガン飲みに行くよ! あ、支払いは、王宮につけておきますねえ』
『ほどほどにいたせよ……』
いや、ちょっとは悩めよ!
俺たちは、危うく暗殺される所だった!
兄弟で殺し合ったのだぞ!
ホント……単純なアルドギスル兄上が羨ましい。
いや、それとも、大人物なのだろうか?
王都に帰ると、アルドギスル兄上は平民の兵士に交ざって、あちこち飲み歩いたらしい。
『アルドギスル様……こんな所で何をしていらっしゃるのですか?』
『ゲッ! ヒューガルデン!』
毎晩、お目付役のヒューガルデン伯爵が、アルドギスル兄上の首根っこをつかんで店から連れ帰るのが大変だったとか。
愛すべき男だな、アルドギスル兄上。
俺の方は、王都とアンジェロ領の往復で大変だった。
王都での打ち合わせや交渉が多く、アンジェロ領に転移魔法で戻ってはエルハムさんやジョバンニの報告を聞く。
ルーナ先生と黒丸師匠は、俺が暗殺されかけたことに責任を感じ、ずっと護衛をしてくれている。
『黒丸! あいつが怪しい!』
『捕まえるのである!』
二人は俺の安全しか考えておらず、怪しい人物を見つけ次第、無慈悲な拘束と取り調べを、身分に関係なく行った。
お陰で王宮と王都の治安は、大幅に上昇したのだ。
二人が護衛してくれるお陰で、俺は初対面の貴族や商人とも安心して会うことが出来た。
俺は面会を希望する貴族たちと片端から会い、コネクション作りに励んだ。
なぜなら……ポポ兄上と宰相エノー伯爵が亡くなったことで、貴族の勢力図は大きく変わったからだ。
最大派閥は、第二王子アルドギスル兄上の派閥だ。
メロビクス戦役前からの派閥を維持している。
有力な領地貴族と内政派の貴族からの支持がある。
第二の大派閥は、国王派だ。
数的にはアルドギスル派の半分程度だが、亡くなったポポ兄上派閥の貴族が一程度支持に回った。
それまで権力を握っていた宰相エノー伯爵が亡くなったので、国王である父上に権力が戻ると彼らは読んだのだ。
父上への忠誠心は、疑わしいが……。
それでも、国王が政治を行うには手足が必要だ。
父上としては、数が集まっただけでヨシとするそうだ。
そして、第三勢力が、俺のアンジェロ派。
メロビクス戦役後に大きく伸びた。
第二騎士団をはじめとする軍関係と国境沿いの領主貴族からの支持がある。
『よその国ともめたら、アンジェロ様が助けに来てくれる。魔法でドンだ!』
――という期待を、俺を支持する貴族たちは持っているのだ。
いいの?
極大魔法メテオストリームで、領地がボコボコになっちゃうかもしれないのに。
数的には、アルドギスル兄上の四分の一と言ったところだが、約一年前に北部王領に追い出されたことを考えると上出来だろう。
残りの貴族は日和見や中立だ。
宴も一時間が過ぎ、あちこちで盛り上がっている。
「オイ! アンジェロ! 飲んでいるか!」
白狼族のサラが顔を真っ赤にして、俺に寄りかかってきた。
今回は、祝勝会を兼ねているので、俺の与力として参戦したサラ、ボイチェフ、キューも招待している。
「成人前だから、飲んでいないよ」
「そうか。まだ、子供だから仕方ないな」
アンジェロ領の隣に住む獣人三族は、十才や八才で成人だそうだ。
獣人は、成長が早いのかもしれない。
ボイチェフなんて、大人の熊獣人と変わらない体格だ。
サラは、まだ成長期かな。
白狼族は、かなり人化している獣人だから、成長も人族に近いのだろう。
成長中の体を、犬みたいにこすりつけてくる。
「アンジェロ! 早く大人になれ! 結婚して子供を作ろう!」
「そうだな。その時は、よろしく頼むよ」
「任せろ!」
何をよろしくして、何を任せろと言うのか。
成長促進の魔法はないのだろうか?
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ボイチェフは、ひたすら料理を食べ満足そうだ。
キューは、会場の一角に設けられたグースの展示場所で、貴族相手に説明をしている。
頼りになるな。
今回は、大広間の一角にグース一機の展示とクイックの試飲コーナーを設けた。
グースのブースには、開発者の一人であるリス族のキューと魔導エンジンを開発したルーナ先生の妹ファー・ブラケットを配置している。
そして、クイックの試飲コーナーには、エルハムさんに入ってもらった。
ファーとエルハムさんに、ハイレグ水着を推奨したのだが、『意味不明』と却下された。
エルフのコンパニ嬢なんて、ロマンがあると思うのだが……。
結婚したらルーナ先生に着てもらおう。
グース展示とクイック試飲コーナーは、大人気で三人は大忙しだ。
ちなみにホレックのおっちゃんは、不参加。
『王宮? そんな肩のこりそうな所へ連れて行くな!』
――だってさ。
「皆様! ご注目ください! お静かにお願いいたします! これよりメロビクス戦役の論功行賞を行います!」
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