追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第八章 メロビクス戦争2

第144話 ザムザ防衛戦1

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 ミオが放った魔法は、ルーナ・ブラケットから教えをうけた火属性中級の爆裂魔法バーストであった。

 突撃する青狼族の鼻先に火球が着弾する。
 同時に火球は爆発四散し、周囲の青狼族十人以上にダメージを与えた。

 ポニャトフスキ騎士爵が、すかさずミオを称える。

「お見事です! ミオさん!」

「倒しきれませんでした。やはり私の魔力では、威力が限定的ですね……」

「いえ、いえ! 獣人の足が鈍っています! 続けて願います!」

「承知しました。バースト!」

 魔法の威力に不満を感じるミオだが、事前の打ち合わせ通りに突撃してくる獣人の前列に魔法を打ち込む。
 第二騎士団のあちらこちらから、魔法使いが攻撃魔法を撃ち込み、獣人の突撃を鈍らせる。

 戦場では、様々な属性魔法が入り乱れ、遠くから見れば、それは美しい魔法の花が咲いたようにみえる。
 しかし、その中は魔力が荒れ狂う嵐そのものだ。

 魔力の嵐の中を、身体能力に秀でた獣人たちは、抜群の反射神経で魔法の直撃を回避し、少なくとも致命傷は受けないでいる。

 進撃の速度と勢いは落ちたが、着実に間合いを詰め、第二騎士団前衛と獣人の――。

「接敵! 間もなく!」
「落ち着いて盾で防げ!」
「踏ん張れ! ケツに力を入れろ!」

 第二騎士団の前衛各所で指揮官の声が響く。
 魔法の嵐をかいくぐった獣人――赤獅子族と青狼族は、第二騎士団の前衛に無造作に襲いかかった。

 戦場全体に重金属がぶつかり合う音が響き、血しぶきと悲鳴が上がる。

「シールドでカチ上げろ!」
「頭出すな! アホウ!」
「後衛! 弓隊撃ち方始め!」

 嵐の中心は、第二騎士団前衛に移った。


 *


 赤獅子族の族長ヴィスは、後方から戦場全体を眺めていた。
 隣にはメロビクス王大国からの軍監と応援の回復術士が三人控えていた。

「おい、おい……。メロのおっさん! 話が違うじゃねえかよ……」

 赤獅子族のヴィスがぼやくと、メロのおっさんと呼ばれたメロビクス王大国の軍監は、カイゼル髭を指で弾きながら言い返した。

「敵の数がやや多いが、問題なかろう? その方ら赤獅子族は強いと聞くぞ?」

「食えねえおっさんだな……。いくら強くたって数が多い相手は、嫌いなんだよ」

 戦場全体の数の比較では、フリージア王国第二騎士団が有利だった。

 ・赤獅子族:約百人
 ・青狼族:約二百人

 獣人は、合計すると約三百人の軍勢である。

 対するフリージア王国の第二騎士団は、全騎士団千五百人の内、約五百人を商業都市ザムザの守りにつけ、約千人を戦場に投入している。

 三百人対千人。
 一見するとフリージア王国が非常に有利に見えるが、細かく見ると互角の戦力である。

 まず、獣人は一人一人の戦闘力が高い。
 赤獅子族一人で、人族三人分。
 青狼族一人で、人族二人分。

 ゆえに獣人側の戦力を人族に換算すれば、約七百人になる。

 フリージア王国第二騎士団の千人には、魔法使いや弓使いなどの後衛も含まれる
 千人全員が前衛で戦うわけではない。

 メロビクス王大国の軍監は、双方の戦力比較を冷静に行っていた。

「互角か……。ううむ……」

「おい! メロメロのおっさん! そこの回復術士を前に出せよ。戦力が互角なら回復力でカバーするしかねえだろう」

「わかっとる。オイ! 前線近くで怪我人を手当てしてこい!」

「「「ハッ!」」」

 メロビクス王大国の軍監の指示を受けて、回復術士三人が馬に乗り前線に向かった。

「お主は行かぬのか?」

「一緒に行くか? メロおっさん?」

「ふん!」

 赤獅子族のヴィスは退屈していた。
 訳の分からぬまま、日本からこの異世界に転生させられ、とにかくやることがない。

 娯楽らしい娯楽がない。
 食べ物は、美味くない。
 周りにいる女は、赤獅子族なので獣クサイ。

 暇つぶしに隊商や旅人を襲ってみたが、すぐに飽きてしまった。

『似たようなリアクションばっかで、すぐ飽きんだよ』

 退屈していたところに、メロビクス王大国から共同戦線の誘いがあった。
 メロビクス王大国からの使者は言う。

『商業都市ザムザを守る兵数は多くない』
『道中の青狼族とイタロス都市には、メロビクス王大国から話をつける』

 ヴィスは暇つぶしくらいにはなるだろうと、この話にのった。

 だが、戦いの始まりは互角の展開。
 ヴィスは、面倒な気分になっていた。

 ヴィスの気分を察したメロビクス王大国の軍監が、ヴィスの尻を叩く。

「しっかりいたせ! その方が赤獅子族の族長であろう!」

「うるせえよ! ビクビクおっさん!」

「ビクビクなんてしとらんわ!」

 メロビクス王大国は、獣人を捨て駒と考えていた。
 人族至上主義のメロビクス王大国に、獣人を対等な同盟相手とみなす文化はない。

 赤獅子族と青狼族が、商業都市ザムザに攻撃を行う。
 その事によって、フリージア王国の戦力が分散されれば良かったのだ。

 ヴィスは、そのようなメロビクス王大国の事情を知らない。
 知らないというよりは、ヴィスは何も考えていなかった。

「チッ! しゃあねえ……。俺も行くか……。あー、めんどくせえ!」

 ヴィスは、メロビクス王大国から贈られた鋼の大剣を無造作に肩に担ぎ、前線へ向けて駆けだした。

 あっと言う間に前線のど真ん中に到着すると、鋼の大剣を左から右へ振った。
 ただ、それだけで第二騎士団の前衛が五人吹き飛んだ。

「おーい! ここに穴が空いたぞ!」

 赤獅子族の中でも突出した力を持つヴィスは、その気になれば人族十人分の戦働きが可能だ。
 やる気がなくても、破格の戦力と言えよう。

 メロビクス王大国の軍監は、ヴィスが戦列参加したのを見て、息を吐いた。

「それで良い。せいぜい派手に暴れてこい……」


 *


 第二騎士団長のローデンバッハ男爵は、前線近くで指揮を行っていた。

「ゆっくり斜め左に退きながら、敵の攻勢を受け流せ! 正面に立つな!」

 商業都市ザムザ近くの平原でぶつかった両者だったが、赤獅子族と青狼族が第二騎士団を押し込んでいた。

 ジリジリと後退する第二騎士団。
 左後方に九十度、ゆるやかに回りながらの後退で、その位置取りは、商業都市ザムザを右手に見る位置につけていた。

 獣人たちと商業都市ザムザの間に阻む物は何もない。
 その気になれば、商業都市ザムザに襲いかかる事も出来たが、獣人たちは戦に夢中になり、第二騎士団の位置取りに気が付かなかった。



 ----開戦時----

  獣人
 ▼▼▽▽▽
   ↓

 ■■■■■■
 第二騎士団

   ●
 商業都市ザムザ

 --------------

 ↓

 ---時間経過---

 ■  ▼
 ■  ▼
 ■ ←▽
 ■  ▽
 ■  ▽
 第二 獣人


   ●
 商業都市ザムザ

 --------------


 ポニャトフスキ騎士爵が、ローデンバッハ男爵に

「頃合いです!」

「よし! ミオ殿、合図だ!」

「はいっ!」

 ミオが右腕を真っ直ぐ上に伸ばし、魔法で火球を空に打ち上げる。
 それを合図に、フリージア王国軍の伏せ手が戦場に姿を現した。

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