追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第八章 メロビクス戦争2

第177話 王都メロウリンクの混乱

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 ――メロビクス王大国の王都メロウリンク。

 メロビクス王大国の王宮は、混乱していた。

 フリージア王国軍の進撃は止まらず、王都まで馬で二日の地点まで来ている。
 かろうじてかき集めた兵二千を出し、にらみ合いに持ち込む事に成功したが、形勢不利である。

『このまま何とか粘り、各地から兵を集めて……』

 王宮の軍人たちは、そんな事を考えていた。

 しかし、ホッとしたのもつかの間、メロビクス王宮に衝撃が走る。

『ギュイーズ侯爵が謀反! フリージア王国軍別働隊と共に、王都へ進撃中!』

『フォーワ辺境伯が謀反! 王都へ進撃中!』

『なっ!?』

 メロビクス王宮は、混乱した。

 三方向からの攻撃に対処するには、兵力が足らない。
 王都へ兵力を送るように各地に早馬を出したが、いつ、どれくらいの兵力が到着するかわからない。

 そこで、王都でも緊急の兵士採用を行う事になった。

 採用担当の騎士たちは、まず、従軍経験のある元兵士から、あたってみる事にした。
 つまり即戦力から採用しようという作戦だ。

 軍部で作成したリストを元に、採用担当の騎士たちは王都内を訪ね歩いた。

 騎士ジャンも、そんな採用担当者の一人である。

 騎士ジャンは、下町に建つ一軒の家を訪問した。
 ここには、つい最近まで軍にいた兵士が住んでいるという。

「喜べ! 軍は君を必要としている!」

 騎士ジャンが、元兵士の青年に声をかけると、青年はすげなく答えた。

「俺は必要ないね……。軍には行かないよ」

 眉根を寄せ、不機嫌になる騎士ジャン。
 だが、グッと堪えて青年を説得しようと試みる。

「なあ、今は国の危機だ! フリージア王国が王都へ攻め込んでくるのだ! 共に戦おう!」

「嫌だね」

 青年の態度に騎士ジャンもさすがに我慢が出来なくなった。
 青年をにらみつけ、強い言葉を投げかける。

「おい! 国を守るのは、男の義務だ!」

 すると青年は騎士ジャンをにらみ返した。
 そして、語気荒く反論する。

「俺はもう義務を果たした! フリージア王国の王都まで行って、ボロ負けして来たんだ! 帰る時は、下半身丸出しだったぞ! あんな思いは二度とゴメンだ!」

「あの……」

「チクショウ! みんなで笑いものにしやがって! ウウウ……」

 泣き崩れる青年を見て、騎士ジャンは物凄く悪い事をしてしまった気がした。

「なんか……スマン……」

 騎士ジャンは、撤退した。

 次は、下町の小さな商店に訪問した。
 この商店の三男坊が、つい最近まで軍にいたのだ。

 騎士ジャンは、三男坊に優しく声をかけた。

「どうだ? 軍に戻らないか?」

 だが、三男坊は、苦笑いだ。

「いや、騎士様……。あの……、私はフリージア王国王都から、脱出作戦に参加しました」

「それは大変だったな……」

「ええ。大変でした。敵の魔法使いが、化け物みたいなヤツで、こう……石壁を作られて……。宰相ミトラル様もお亡くなりになりましたしね……」

「う、うむ……大変な戦いだったと聞いている」

 騎士ジャンは、王宮勤めの騎士なので、戦いに参加した事がない。
 実戦経験者を前に、ちょっと居心地の悪い思いをしていた。

「騎士様。幸い私は無事に帰れました。この拾った命を大切にして、これからの人生は家業を手伝って参ります」

「そ……そうか……」

 三男坊は、非常に晴れやかな顔で答えた。
 騎士ジャンは、スカウトをあきらめた。

 その日の午後。
 採用担当の騎士たちは、集まって情報交換をした。

「ダメだ……。みんな軍に戻ってくれない」
「うむ。こちらも断られてしまった」
「まったく同じだ。軍に戻るくらいなら、国を出るとまで言われてしまった」
「一体どうすれば……」

 騎士たちは、採用活動があまりにも不調なので、頭を抱えてしまった。
 しかし、フリージア王国軍は、すぐそこまで来ている。

 謀反を起こしたギュイーズ侯爵とフォーワ辺境伯も、やがて王都に攻め上がってくる。
 兵力が必要なのだ。

 やがて一人の騎士がアイデアを出した。

「広場で民衆に呼びかけてみては、どうだろうか?」

「なるほど!」
「うむ! 国の危機を訴えれば、立ち上がる者もいよう!」
「そうだ! 広く呼びかけてみよう!」
「演説なら任せておけ! 私がやろう!」

 騎士たちは、早速、王都の広場で演説を始めた。

「――というわけで、現在我が国は危機に瀕している! 立て! 我がメロビクスの人々よ! 今こそ、祖国を救うのだ! 共に戦おう!」

 騎士の熱い演説が終わったが、民衆の反応が悪い。

 ザワザワと小声で話しているだけで、『俺も戦うぞ!』といった、騎士たちが期待していた声は上がらない。

 やがて、一人の中年男性が手を上げた。

「騎士様。一つ質問をよろしいでしょうか?」

「うむ! 何なりと聞くが良い!」

「その……敵国のフリージア王国ですが……。何度も和平を申し込んで来ていたそうじゃないですか! どうして和平を結んでおかなかったのですか!」

「うっ……それは……」

 騎士は答えに詰まった。

 てっきり『給料はいくらか?』とか、『装備は支給されるのか?』とか、待遇面の質問をされると思っていたのだ。

 予想外の質問……というより非難の声に、上手い返しが出来なかった。

 なにより、フリージア王国が、何度も使節を派遣してきたのは事実なのだ。

 質問した男の近くにいた、別の男が声をあげた。

「そりゃ本当かい? だったら、今、苦境にあるのは、王宮が悪いんじゃないのか?」

 また、別の男が声をあげた。

「その話は、本当だぞ! 俺は宿屋で働いているが、フリージアの使用人たちが何度も泊まっていたぞ!」

 こうなると民衆たちは、止まらない。
 口々に王宮を非難し始めた。

「何だよ! 悪いのは、王宮じゃねえか!」
「そうだ! そうだ! 今になって、戦え! とか言うなよ!」
「おい! 重い税を払っているんだぞ!」
「偉そうにしやがって! ふざけるな!」

 騎士たちが民衆をなだめようとするが、エキサイトした一人が騎士に殴りかかった。
 殴りかかられた騎士は、やむなく男を蹴り飛ばし、地面に抑え付けた。

「「「「「「やっちまえ!」」」」」」

 民衆は騎士たちに襲いかかり、暴動が発生した。

 王宮が騒ぎを聞きつけ、騎士の増援を送り込んで鎮圧したが、民衆と王宮の間にヒビが入ったのは間違いない。

 広場の隅で、一人の男がニヤリと笑った。
 隠居した商人に変装した『じい』ことコーゼン男爵である。

 コーゼン男爵の元に、先ほど騎士に質問した男や騒ぎ立てた男たちが集まってきた。
 彼らは、フリージア王国情報部の現地工作員――エルキュール族である。

 そして、『広場で演説をしよう』とアイデアを出した騎士まで、コーゼン男爵の元にやって来た。

「ご苦労じゃったのう。これは、当座の礼じゃ」

 コーゼン男爵は、騎士に金貨を握らせた。

「ありがたく……。それで……仕官の件は?」

「安心せい! 戦が終われば、お主を採用しよう。死なないように、上手く立ち回るのじゃぞ」

「はっ!」

 騎士は、人目を気にしながら王宮へ戻っていった。
 立ち去る騎士を見送るとコーゼン男爵は立ち上がり、王都メロウリンクの雑踏に消えた。
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