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第九章 グンマー連合王国
第243話 大義名分
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――翌日。
俺はじいを伴って、フォーワ辺境伯の所へ転移した。
フォーワ辺境伯の屋敷で打ち合わせを行う。
議題は、昨日サーベルタイガー・テイマーのイネスから希望があった『カタロニア地方独立の件』だ。
フォーワ辺境伯の屋敷は、森と池に囲まれた上品な館だった。
この森と池は、人工の池と森、つまりフォーワ辺境伯の庭なのだ。
金が、かかってるな~。
さすがメロビクス王大国南部の雄と呼ばれただけのことはある。
応接室に通され、俺、じい、フォーワ辺境伯で話を始めた。
俺は昨日イネスから聞いたことをフォーワ辺境伯に説明する。
「――という申し出があった」
「なるほど……。カタロニア公国の忘れ形見ですか……」
フォーワ辺境伯の反応は、あまり良くない。
この話に乗り気じゃないか?
俺はフォーワ辺境伯に率直な意見を求めた。
「フォーワ辺境伯は、この件をどう思いますか? 何せお隣のことですから、率直な意見が聞きたいです」
「うーん……。あまり乗り気になれませんな。確かにグンマー連合王国の勢力拡大の機会ではあります。しかし、カタロニアの独立を我が国が後押しすれば、マドロス王国とこじれます」
それは、そうだろう。
俺がよその国の領土に手を突っ込むのだ。
「うん、続けて」
「マドロス王国は三つの王国を吸収したのです。マドロス人による支配は、かなり穏やかで、政情は安定しています」
「じゃあ、独立運動というのは……」
「まあ、感情的なモノです。カタロニア人が独立して、自分たちの国を持ちたい気持ちはわからないでもないですが……」
「やはり感情の問題か……」
「カタロニア地方は、経済的に豊かなのです。メロビクスやミスル王国との交易で潤っています。その金が中央――つまりマドロス人に流れるのが面白くないのです」
なるほど。
自分たちで稼いだ金が、マドロスに流れてしまう。
自分たちで稼いだ金は、自分たちで使いたい。
そんなところか。
「税率は? 高いのか?」
「うーん……安くはないが、高くはないです」
「じゃあ、重税に苦しんでいる訳ではないのか?」
「税金は、普通ですよ。まあ、私としては、カタロニア地方が独立して、マドロスとの緩衝地帯になるのは、良いと思います。マドロスとの交易がストップすることはないと思いますが、高い関税をかけられるとか、何らかの報復はあるでしょう。それが困ります」
「うーん……」
そうなると、イネスの希望を聞くのは、どうなのだろう?
あまりメリットがないな。
次に、俺はじいに意見を求めた。
「じいは、どう思う?」
「カタロニア地方を取り込みたいですじゃ」
じいは、積極派か?
慎重論をとなえると思ったが意外だな。
「理由は?」
「ミスル王国が不安定です。その影響はミスルと戦争中のギガランドにも及びましょう。我が国の南部国境が不安定化しますじゃ。そして東部国境のブルムント地方……ここは小国が多いので常に不安定ですじゃ」
「カタロニアを取り込めば、マドロス王国が怒るだろう? 西部国境も不安定化しないか?」
「マドロスは三つの王国を取り込んだ国ですじゃ。それぞれの国で独立の機運が高まれば、マドロスを抑えやすくなりましょう」
驚いた!
じいは、謀将気質があったのか!
「それは……、現状では無理がないか?」
「そうですな……。残念ながら、マドロス王国内で工作する人員が必要ですじゃ。それに、我が国が、カタロニア独立を後押しする大義名分がありません」
「大義名分か……」
確かに、そうだ。
マドロス王国が、カタロニア人をひどく扱っているとか、メチャクチャ重税であるとか……。
我が国が、カタロニア人を助ける理由、大義名分がない。
理由をこじつけることは出来るが……。
周辺国が納得しないだろう。
我が国が好戦的な覇権国家だと、周辺国に思われるのは良くない。
俺は決断を下した。
「この件は、却下だな。西部国境は現状維持。マドロス王国とは、友好的に振る舞うことで、西部国境を安定化しよう」
そうすれば、南部国境――荒れているミスル王国の悪影響に対応出来る。
東部のブルムント地方は、交易ルートが確保されている間は、なるたけ干渉しない。
フォーワ辺境伯も、じいも同意してくれた。
俺はキャランフィールドに戻るとイネスに、『希望を受け入れられない。独立の後押しは出来ない』と返事をした。
「そう……残念だわ……」
「自分たちの国を持ちたい気持ちはわからないでもない。ただ、我が国が、カタロニア独立を後押しする理由がない」
「……」
イネスは、ひどくがっかりしていた。
この異世界では、『民族自決の権利』はない。
一度支配されれば、支配を跳ね返し独立するのは、困難なのだ。
*
――翌日。
イネスは、キャランフィールドからいなくなった。
黒丸師匠とルーナ先生も一緒だ。
一月ほどで帰る。
ブンゴ隊長の所へ助っ人に向かう。
――と、ルーナ先生の置き手紙があった。
ブンゴ隊長は、南メロビクス王国へ出張っている。
ミスル王国との国境地帯に、奴隷狩りをしている連中がいるので、警戒と討伐だ。
なんだかな……。
もめ事を起こさないでくれよ……。
俺はじいを伴って、フォーワ辺境伯の所へ転移した。
フォーワ辺境伯の屋敷で打ち合わせを行う。
議題は、昨日サーベルタイガー・テイマーのイネスから希望があった『カタロニア地方独立の件』だ。
フォーワ辺境伯の屋敷は、森と池に囲まれた上品な館だった。
この森と池は、人工の池と森、つまりフォーワ辺境伯の庭なのだ。
金が、かかってるな~。
さすがメロビクス王大国南部の雄と呼ばれただけのことはある。
応接室に通され、俺、じい、フォーワ辺境伯で話を始めた。
俺は昨日イネスから聞いたことをフォーワ辺境伯に説明する。
「――という申し出があった」
「なるほど……。カタロニア公国の忘れ形見ですか……」
フォーワ辺境伯の反応は、あまり良くない。
この話に乗り気じゃないか?
俺はフォーワ辺境伯に率直な意見を求めた。
「フォーワ辺境伯は、この件をどう思いますか? 何せお隣のことですから、率直な意見が聞きたいです」
「うーん……。あまり乗り気になれませんな。確かにグンマー連合王国の勢力拡大の機会ではあります。しかし、カタロニアの独立を我が国が後押しすれば、マドロス王国とこじれます」
それは、そうだろう。
俺がよその国の領土に手を突っ込むのだ。
「うん、続けて」
「マドロス王国は三つの王国を吸収したのです。マドロス人による支配は、かなり穏やかで、政情は安定しています」
「じゃあ、独立運動というのは……」
「まあ、感情的なモノです。カタロニア人が独立して、自分たちの国を持ちたい気持ちはわからないでもないですが……」
「やはり感情の問題か……」
「カタロニア地方は、経済的に豊かなのです。メロビクスやミスル王国との交易で潤っています。その金が中央――つまりマドロス人に流れるのが面白くないのです」
なるほど。
自分たちで稼いだ金が、マドロスに流れてしまう。
自分たちで稼いだ金は、自分たちで使いたい。
そんなところか。
「税率は? 高いのか?」
「うーん……安くはないが、高くはないです」
「じゃあ、重税に苦しんでいる訳ではないのか?」
「税金は、普通ですよ。まあ、私としては、カタロニア地方が独立して、マドロスとの緩衝地帯になるのは、良いと思います。マドロスとの交易がストップすることはないと思いますが、高い関税をかけられるとか、何らかの報復はあるでしょう。それが困ります」
「うーん……」
そうなると、イネスの希望を聞くのは、どうなのだろう?
あまりメリットがないな。
次に、俺はじいに意見を求めた。
「じいは、どう思う?」
「カタロニア地方を取り込みたいですじゃ」
じいは、積極派か?
慎重論をとなえると思ったが意外だな。
「理由は?」
「ミスル王国が不安定です。その影響はミスルと戦争中のギガランドにも及びましょう。我が国の南部国境が不安定化しますじゃ。そして東部国境のブルムント地方……ここは小国が多いので常に不安定ですじゃ」
「カタロニアを取り込めば、マドロス王国が怒るだろう? 西部国境も不安定化しないか?」
「マドロスは三つの王国を取り込んだ国ですじゃ。それぞれの国で独立の機運が高まれば、マドロスを抑えやすくなりましょう」
驚いた!
じいは、謀将気質があったのか!
「それは……、現状では無理がないか?」
「そうですな……。残念ながら、マドロス王国内で工作する人員が必要ですじゃ。それに、我が国が、カタロニア独立を後押しする大義名分がありません」
「大義名分か……」
確かに、そうだ。
マドロス王国が、カタロニア人をひどく扱っているとか、メチャクチャ重税であるとか……。
我が国が、カタロニア人を助ける理由、大義名分がない。
理由をこじつけることは出来るが……。
周辺国が納得しないだろう。
我が国が好戦的な覇権国家だと、周辺国に思われるのは良くない。
俺は決断を下した。
「この件は、却下だな。西部国境は現状維持。マドロス王国とは、友好的に振る舞うことで、西部国境を安定化しよう」
そうすれば、南部国境――荒れているミスル王国の悪影響に対応出来る。
東部のブルムント地方は、交易ルートが確保されている間は、なるたけ干渉しない。
フォーワ辺境伯も、じいも同意してくれた。
俺はキャランフィールドに戻るとイネスに、『希望を受け入れられない。独立の後押しは出来ない』と返事をした。
「そう……残念だわ……」
「自分たちの国を持ちたい気持ちはわからないでもない。ただ、我が国が、カタロニア独立を後押しする理由がない」
「……」
イネスは、ひどくがっかりしていた。
この異世界では、『民族自決の権利』はない。
一度支配されれば、支配を跳ね返し独立するのは、困難なのだ。
*
――翌日。
イネスは、キャランフィールドからいなくなった。
黒丸師匠とルーナ先生も一緒だ。
一月ほどで帰る。
ブンゴ隊長の所へ助っ人に向かう。
――と、ルーナ先生の置き手紙があった。
ブンゴ隊長は、南メロビクス王国へ出張っている。
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なんだかな……。
もめ事を起こさないでくれよ……。
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