追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
253 / 358
第十章 レッドアラート!

第253話 チェリー

しおりを挟む
 ――八月。

 北にあるキャランフィールドだが、八月は暑い。
 執務室で仕事をしていると、じいが入ってきた。

「アンジェロ様……。共産主義革命組織への潜入に失敗しました……」

「潜入に失敗した!?」

「はい。申し訳ございません」

 じいが俺に頭を下げる。

 珍しい……。
 エルキュール族がこの手の仕事で失敗をしたのは、これが初めてじゃないか?

 じいが報告を続けた。
 どうやら連中は、ミスリル鉱山のアジトを放棄したらしい。
 エルキュール族の情報部員が到着した時は、もぬけの殻だったそうだ。

「現在、ミスル国内の情報部員に探させておりますが、痕跡はつかめておりません」

「連中、上手く隠れているってことか……」

「左様でございます。それから、他にも悪い情報が……」

 ミスリル鉱山に到着した情報部員は、人がいないミスリル鉱山を調べたらしい。
 すると、かなり深い所まで鉱山は掘られていた。

 あくまで情報部員の推測だが、『ミスル王に献上するミスリル鉱石とは別に、自分たちの活動資金にする為にミスリル鉱山を採掘したのではないか?』とのことだ。

「すると連中は、軍資金が意外に豊富かもしれないな」

「はい。もし、武器工房にツテがあれば、掘り出したミスリル鉱石で剣なり、槍なり作らせることも可能ですじゃ」

 ミスリル製の武器を装備した革命軍か!

 豊富な活動資金を持ち、強力な武器を持っていたら、革命の成功確率はグッと上がるだろう。
 ゾッとするな……。

「じい、引き続きミスル王国を調べて。可能なら増員を! 予算は追加で出す!」

「はっ! かしこまりました!」


 *


 赤獅子族のヴィスは、最近、機嫌が良い。
 そうかと思うと、一人思い悩むことも多い。

 ――そう、恋をしているのだ。

 赤獅子族のヴィスは、一人心の中でもだえていた。

(ヤベエ……ドストライク!)

 ドストライクとは、サーベルタイガーテイマーのイネスのことである。

 色気ムンムンのお姉様に、思春期の男子は弱い。
 ヴィスは典型的な、チェリーボーイ嗜好だった。
 ついでにいうと、頭が弱い。

 ミスリル鉱山に訪れたイネスに、ヴィスは一目惚れした。
 早速、イネスにモーションをかけるヴィス。

「イネスさん。砂漠の夕日を、二人で見ませんか?」

「旅で疲れているから休ませて……」
「ぐるるるる!」

 ヴィスは、秒で撃沈した。
 ついでに、サーベルタイガーのラモンにも警戒された。

「おっかしいな……女はロマンチックなの好きだろ……」

 自室でブツクサとつぶやくヴィスに近づく黒い影。
 影の正体は地球神の使いである。

「ほれ……焼きそばパン……」

 地球神の使いは、ヴィスからのリクエスト『焼きそばパン』を届けに来たのだ。

「チッ! もうちょっと、女が喜びそうなモノを持ってこいヤ!」

「なぜ、キレる!?」

 事情を知らない地球神の使いは困惑した。
 そして、次回はプリンを届けることになった。

 革命予備軍は、ミスリル鉱山を放棄し、ザギの街へ移動した。
 移動中もヴィスはイネスにモーションをかけたが、イネスにかわされ、従魔のラモンに唸られ散々であった。

 そんな様子を、同じ転生者にして革命予備軍リーダーのサロットは、生暖かく見守っていた。

 八月になり、ミスルは夏の暑さが厳しい。
 夜になり涼しくなってから、サロットたち革命予備軍の幹部たちは集合した。

 場所は、賑わった繁華街の中にある居酒屋二階の個室だ。

 人混みに紛れた方が、目立たない。
 サロットたちは、上手く行動していた。

 幹部たちが、料理と酒を一通り楽しんだところで、リーダーのサロットが話を切り出した。

「さて、同志諸君。我々の革命闘争は、新たな段階に突入した。同志イネスが、故郷カタロニアに帰り共産主義革命運動を展開する! 我々の革命は、国を超え、世界規模で行われるのだ。インターナショナル万歳!」

「「「「おお! インターナショナル万歳!」」」」

 幹部たちが、興奮しながら酒をあおる。

 サロットは、言葉を続けた。

「そこで、カタロニア革命運動を支援すべく、同志イネスに何人か同行してもらいたい」

「「「「……」」」」

 幹部たちは、押し黙った。
 革命予備軍は、ミスル人と戦争捕虜のギガランド人が多い。

 彼らの中の優先順位は、ミスルとギガランドなのだ。
 カタロニアには、何の思い入れもない。

 それに、革命運動の最中に捕まれば、処刑される。
 いまだミスルの共産主義革命が成功していない段階で、よその国で命を落としたくはないのだ。

 サロットの問いかけに、誰も返事をしない。

 すると赤獅子族のヴィスが、手を上げた。

「俺でよければ、行くぞ!」

「ヴィスか……」

 サロットのヴィスへの評価は微妙だ。

 個の戦闘力は非常に高い。
 しかし、人を指揮、指導するのは苦手だ。

 あまり頭の良い方ではないので、共産主義思想を植え付けることが出来なかった。
 共産主義が何であるか、理解が出来ないのだ。

 同じ転生者なので、ボディーガードとして自分のそばに置いているが、使いどころが限られるカードだった。

(このあたりで厄介ばらいか? ヴィスはイネスが好きなようだし……。まあ、何らかの役に立つだろう)

 サロットは、ヴィスの派遣を決めた。

 翌日、ヴィスは、イネスの宿を訪ねた。

「イネスさん! 俺もカタロニアに行くことになりました! がんばりますよ!」

「そう……よろしく……」
「ぐるるるる……」

「イネスさん! 晩飯一緒にどうですか――」

 バタン!

 ヴィスの目の前で扉は閉じられた。

 扉の向こうでサーベルタイガーのラモンが唸った。

「ぐるるるる……」

 ラモンのうなり声は『ドンマイ』だったかもしれない。
 ヴィスの幸せな日々は、これからも続くのであった。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...