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第十章 レッドアラート!
第274話 カールおじさんの祝勝会
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――翌日。
ベロイア王宮では、祝勝会が開かれた。
俺の本音としては、戦時中なので早くキャランフィールドに帰りたい。
だが、社交も外交のうちだ。
今後、ベロイアとは対ソ連で共同戦線を張ることになるだろう。
異世界飛行機グースとブラックホークは、キャランフィールドへ帰し、俺、ルーナ先生、黒丸師匠の三人で祝勝会に出席することにした。
ベロイア王宮の広間には、テーブルが並べられ、国王カール三世の隣に主賓である俺たち三人が座った。
ワインと食事が振る舞われ、元気な乾杯と賑やかな会話が続く。
ベロイア貴族が詰めかけ賑やかだ。
ただ、まあ、ベロイア王国は農業国で、どちらかというと田舎の国だ。
貴族のレベルもお察しで、あまりテーブルマナーはよろしくない。
そこかしこで大声が聞こえ、歌を歌い出す貴族もいる。
出てくる料理は素朴だが美味しい。
俺が今食べているラザニアっぽい料理は、焼けたチーズにブラウンソース。肉、野菜、米が入って、なかなか美味しい。
「アンジェロ陛下。この度の軍事支援、まことにありがとうございました!」
おや?
ベロイア国王カール三世は、俺を『陛下』と呼んだ。
俺とカール三世殿は、対等な関係なのだが、俺の方を目上として立てようとしているのかな?
「さすがは強国としてしられるグンマー連合王国ですな! 少数で多数の敵を追い払うとは……感服いたしました!」
「恐れいります。策が上手くはまりました。ただ、ソビエト軍は、一般人の兵士が多かったので、そこは割り引いてお考えいただかないと」
今回は、簡単に勝てた。
だが、強い敵を叩いて撤退に追い込んだのではない。
一般人の多いソ連軍を混乱させて、撤退させたに過ぎない。
今回の勝利で、ベロイア王国側が変に味をしめるとやっかいだ。
『アンジェロ陛下が駆けつけてくれるなら、赤軍など恐るるに足りず!』
みたいな考えは危険だ。
烏合の衆に近いとはいえ、十万の軍勢が国境を突破してきたのは事実で、数の驚異は恐ろしい。
それに、毎回俺たちが駆けつけられるとは限らないのだ。
ここはきっちりと釘を刺しておこう。
「毎回、こんな上手く行くとは限りません。今回は、相手にまとまりがなく、運が良かったとご理解ください」
「ご謙遜ですな! いやあ、アンジェロ陛下は、奥ゆかしくていらっしゃる!」
「いえいえ。本当のことです。繰り返しになりますが、敵は一般人も多くまとまりを欠いておりましたので、つけいる隙があったのです」
ベロイア国王カール三世は、首をひねった。
そして、本当にわからないとばかりに両手を広げた。
「我らと、どう違うのでしょうか? 我がベロイアも兵士のほとんどが農民兵、つまり一般人です。他国も徴兵を行いますので、軍が一般人の集まりであることは、当たり前だと思いますが?」
なるほど。
カール三世殿のいうことは、間違っていない。
俺の隣に座る黒丸師匠が、説明役を買って出た。
「どこの国でも徴兵は行われているのである。国王のいう通り、どこの国の軍でも一般人は多数混じっているのである」
「ですな!」
「しかし、ソビエト軍、我らは赤軍と呼んでいるのであるが……。赤軍の場合は、ほとんど全部が一般人だったのである。ベテランの農民兵もいなかったようである」
「なるほど……。では、農民兵を指揮する将校は?」
「恐らくいなかったのである。彼らの国は、王や貴族を否定しているので、将校になる下級貴族がいないのである」
「それは……」
ベロイア国王カール三世は、途中で考え込んでしまった。
人の集団を軍として機能させるには、命令系統が必要だ。
ざっくりだが――。
将軍
↓
将校
↓
兵士
の順番で、命令が下りてくる。
また、この異世界には無線がないので、現場の判断で動かなければいけないことも多い。
その場合は、将校が判断を下し兵士に命令する。
この将校をやってくれるのが、下級貴族である騎士爵だ。
彼らが素人の一般人に、指示をするから軍として機能する。
王と貴族を否定し、処刑してしまうソ連には、彼ら下級貴族の居場所がない。
では、旧ミスル王国の下級貴族たちは、どこにいるのか?
はい!
グンマー連合王国に亡命してきましたー!
サイターマ領や南メロビクス王国にいまーす!
「黒丸殿。ベテラン兵士は、いなかったのでしょうか? 将校がいなくても、ベテランがおれば、少しはマシだと思いますが?」
「確認したわけではないが、恐らくいなかったのである。それがしたちが、策を用いて混乱させた時に、混乱を鎮めようとする声があがらなかったのである」
「それはおかしいですな……」
現場においては、ベテラン兵士が下士官の役割を担うことが多い。
将校がいない時に指示をだしたり、兵士をまとめたり、新人兵士の面倒を見たりするのだ。
特に領地貴族配下の部隊は、近隣の村単位で一つの隊を形成していることが多い。
顔見知りのベテラン兵士は、新人にとって頼りになる存在なのだ。
だが、黒丸師匠の話す通りで、昨晩の戦闘では、『落ち着け!』といった声は聞こえなかった。
理由はわからないが……ソ連の連中は、ベテラン兵士を配置していなかったようだ。
「いや、よくわかりました。どうやら、数は多いが、正規軍並の戦力ではなかったということですな?」
「その理解で良いのである。次も同じとは限らないのである」
黒丸師匠の説明を聞いて、ベロイア国王カール三世は、昨晩の戦闘を理解してくれた。
最後に俺からゴンゴンと釘を刺しておこう。
「ご油断なさらないようにお願いします。彼らは共産主義という考え方をする集団です。王や貴族を目の敵にしていますので、また、攻撃してくる可能性は大いにあります」
「いつでも軍を動員できるように、警戒しておきましょう」
ベロイア国王カール三世は、真剣な表情でうなずいた。
まあ、大丈夫だろう。
カール三世殿から、今回の軍事支援の礼の話をしてきたが、先送りすることにした。
「家臣と相談して、また、後日連絡いたします」
外交・情報担当のじいと、商業担当のジョバンニの意見を聞いてからだ。
俺としては、戦場に落ちていた棒型の鉄砲を多数鹵獲出来たので、それだけでも十分な成果だ。
赤軍が逃げる時に手放した物なので、壊れていないと思う。
ホレックのおっちゃんに見てもらえば、量産や改良の可否がわかるだろう。
このまま和やかに祝勝会が終わるかと思ったが、銀杯を持った赤ら顔の貴族が俺に近づいてきた。
イイ感じで酔っ払っているな。
俺と乾杯したいのかな?
赤ら顔の貴族は、俺のそばまで来ると大声を上げた。
「アンジェロ陛下は、甘い!」
いきなりダメだしですか!?
ベロイア王宮では、祝勝会が開かれた。
俺の本音としては、戦時中なので早くキャランフィールドに帰りたい。
だが、社交も外交のうちだ。
今後、ベロイアとは対ソ連で共同戦線を張ることになるだろう。
異世界飛行機グースとブラックホークは、キャランフィールドへ帰し、俺、ルーナ先生、黒丸師匠の三人で祝勝会に出席することにした。
ベロイア王宮の広間には、テーブルが並べられ、国王カール三世の隣に主賓である俺たち三人が座った。
ワインと食事が振る舞われ、元気な乾杯と賑やかな会話が続く。
ベロイア貴族が詰めかけ賑やかだ。
ただ、まあ、ベロイア王国は農業国で、どちらかというと田舎の国だ。
貴族のレベルもお察しで、あまりテーブルマナーはよろしくない。
そこかしこで大声が聞こえ、歌を歌い出す貴族もいる。
出てくる料理は素朴だが美味しい。
俺が今食べているラザニアっぽい料理は、焼けたチーズにブラウンソース。肉、野菜、米が入って、なかなか美味しい。
「アンジェロ陛下。この度の軍事支援、まことにありがとうございました!」
おや?
ベロイア国王カール三世は、俺を『陛下』と呼んだ。
俺とカール三世殿は、対等な関係なのだが、俺の方を目上として立てようとしているのかな?
「さすがは強国としてしられるグンマー連合王国ですな! 少数で多数の敵を追い払うとは……感服いたしました!」
「恐れいります。策が上手くはまりました。ただ、ソビエト軍は、一般人の兵士が多かったので、そこは割り引いてお考えいただかないと」
今回は、簡単に勝てた。
だが、強い敵を叩いて撤退に追い込んだのではない。
一般人の多いソ連軍を混乱させて、撤退させたに過ぎない。
今回の勝利で、ベロイア王国側が変に味をしめるとやっかいだ。
『アンジェロ陛下が駆けつけてくれるなら、赤軍など恐るるに足りず!』
みたいな考えは危険だ。
烏合の衆に近いとはいえ、十万の軍勢が国境を突破してきたのは事実で、数の驚異は恐ろしい。
それに、毎回俺たちが駆けつけられるとは限らないのだ。
ここはきっちりと釘を刺しておこう。
「毎回、こんな上手く行くとは限りません。今回は、相手にまとまりがなく、運が良かったとご理解ください」
「ご謙遜ですな! いやあ、アンジェロ陛下は、奥ゆかしくていらっしゃる!」
「いえいえ。本当のことです。繰り返しになりますが、敵は一般人も多くまとまりを欠いておりましたので、つけいる隙があったのです」
ベロイア国王カール三世は、首をひねった。
そして、本当にわからないとばかりに両手を広げた。
「我らと、どう違うのでしょうか? 我がベロイアも兵士のほとんどが農民兵、つまり一般人です。他国も徴兵を行いますので、軍が一般人の集まりであることは、当たり前だと思いますが?」
なるほど。
カール三世殿のいうことは、間違っていない。
俺の隣に座る黒丸師匠が、説明役を買って出た。
「どこの国でも徴兵は行われているのである。国王のいう通り、どこの国の軍でも一般人は多数混じっているのである」
「ですな!」
「しかし、ソビエト軍、我らは赤軍と呼んでいるのであるが……。赤軍の場合は、ほとんど全部が一般人だったのである。ベテランの農民兵もいなかったようである」
「なるほど……。では、農民兵を指揮する将校は?」
「恐らくいなかったのである。彼らの国は、王や貴族を否定しているので、将校になる下級貴族がいないのである」
「それは……」
ベロイア国王カール三世は、途中で考え込んでしまった。
人の集団を軍として機能させるには、命令系統が必要だ。
ざっくりだが――。
将軍
↓
将校
↓
兵士
の順番で、命令が下りてくる。
また、この異世界には無線がないので、現場の判断で動かなければいけないことも多い。
その場合は、将校が判断を下し兵士に命令する。
この将校をやってくれるのが、下級貴族である騎士爵だ。
彼らが素人の一般人に、指示をするから軍として機能する。
王と貴族を否定し、処刑してしまうソ連には、彼ら下級貴族の居場所がない。
では、旧ミスル王国の下級貴族たちは、どこにいるのか?
はい!
グンマー連合王国に亡命してきましたー!
サイターマ領や南メロビクス王国にいまーす!
「黒丸殿。ベテラン兵士は、いなかったのでしょうか? 将校がいなくても、ベテランがおれば、少しはマシだと思いますが?」
「確認したわけではないが、恐らくいなかったのである。それがしたちが、策を用いて混乱させた時に、混乱を鎮めようとする声があがらなかったのである」
「それはおかしいですな……」
現場においては、ベテラン兵士が下士官の役割を担うことが多い。
将校がいない時に指示をだしたり、兵士をまとめたり、新人兵士の面倒を見たりするのだ。
特に領地貴族配下の部隊は、近隣の村単位で一つの隊を形成していることが多い。
顔見知りのベテラン兵士は、新人にとって頼りになる存在なのだ。
だが、黒丸師匠の話す通りで、昨晩の戦闘では、『落ち着け!』といった声は聞こえなかった。
理由はわからないが……ソ連の連中は、ベテラン兵士を配置していなかったようだ。
「いや、よくわかりました。どうやら、数は多いが、正規軍並の戦力ではなかったということですな?」
「その理解で良いのである。次も同じとは限らないのである」
黒丸師匠の説明を聞いて、ベロイア国王カール三世は、昨晩の戦闘を理解してくれた。
最後に俺からゴンゴンと釘を刺しておこう。
「ご油断なさらないようにお願いします。彼らは共産主義という考え方をする集団です。王や貴族を目の敵にしていますので、また、攻撃してくる可能性は大いにあります」
「いつでも軍を動員できるように、警戒しておきましょう」
ベロイア国王カール三世は、真剣な表情でうなずいた。
まあ、大丈夫だろう。
カール三世殿から、今回の軍事支援の礼の話をしてきたが、先送りすることにした。
「家臣と相談して、また、後日連絡いたします」
外交・情報担当のじいと、商業担当のジョバンニの意見を聞いてからだ。
俺としては、戦場に落ちていた棒型の鉄砲を多数鹵獲出来たので、それだけでも十分な成果だ。
赤軍が逃げる時に手放した物なので、壊れていないと思う。
ホレックのおっちゃんに見てもらえば、量産や改良の可否がわかるだろう。
このまま和やかに祝勝会が終わるかと思ったが、銀杯を持った赤ら顔の貴族が俺に近づいてきた。
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