追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第十章 レッドアラート!

第309話 スターリン逃亡

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「スターリンがいない!?」

「王宮の中を、しらみつぶしに探したのである。だが、スターリンはいないのである。恐らく逃げたのである!」

「スターリンが逃げた!?」

 俺は黒丸師匠の報告に愕然とした。

 スターリンは、俺と同じ地球からの転生者だ。
 この異世界で共産主義革命を起こし、権力を掌握し、人質を取ってまで人々を自分に従わせた。

 そこまでして作り上げたのに、共産主義の象徴でもある首都モスクワから、あっさり逃げるのか……。

 黒丸師匠が報告を続ける。

「王宮の奥に隠し通路を見つけたのである。来るのである!」

 俺たちは、黒丸師匠の案内で隠し通路へ向かう。
 王宮の奥にある何の変哲もない部屋に隠し通路はあった。

 部屋に入ると白狼族のサラが、悔しそうな顔をして俺に詫びた。

「アンジェロ! ごめん……、しくじった……」

「スターリンが逃げたのは、サラのせいじゃないよ。王宮制圧で十分な働きをしてくれた。ありがとう」

 サラをギュッと抱きしめて頭を撫でてやると、サラの気持ちが落ち着いたようだ。
 シュンとしていた尻尾に力が戻ってきた。

 さて、隠し通路だ。

「報告を!」

 隠し通路を調査した白狼族の特殊部隊員から報告を受ける。
 部屋の床にある穴から階段が地下へと続いているそうだ。

「では、隠し通路をつたっていけば、スターリンに追いつけるか?」

「いえ、ダメです。隠し通路から追跡は出来ませんでした。途中で隠し通路が崩れているのです。おそらく火薬で吹っ飛ばしたのだと思います」

「用意周到だな……」

 ここは元々ミスル王国の王都レーベ王宮だ。
 王族用の隠し通路があったのだろう。

 俺たちがモスクワを襲撃した時間から考えると、既にスターリンはこの隠し通路を使って王宮の外に脱出し、どこかへ逃亡している……。

 どこへ逃げた?
 モスクワ以外の大きな街だろうか?
 それとも農村?

 俺が考え込んでいると、白狼族の特殊部隊員たちが捕虜を連れて来た。
 赤軍の政治将校や共産党の幹部たちだ。

 サラが激しく尋問する。

「言え! オマエたちの親玉は、どこへ逃げた!」

「知らん! 知っていても言うものか! インターナショナル万歳!」

「なら痛い目にあわせる! オイ! やれ!」

 サラが白狼族の特殊部隊員に命令する。

 この異世界で拷問は過酷だ。
 拷問は肉体への痛みに特化していて、その残酷さは地球世界の比じゃない。

 ――なぜなら回復魔法やポーションがあるから。

 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。
 痛めつけて、回復。

 ※拷問シーンについては、自主規制し『キンキンキン方式』で表現をいたしました。あしからず。

「ぐあー! 知らない! 我々も同志スターリンが逃げるとは、知らなかったのだ!」

「ウソをつくな! どこへ逃げたか言え! もっと痛めつけるぞ!」

「やめてくれ! 本当に知らないんだ!」

 俺たちは、目を背けた。
 ルーナ先生が、珍しく眉毛をハの字にして愚痴をこぼす。

「獣人の少女に痛めつけられるハゲおっさん。見ていて辛い」

 痛めつけている獣人の少女は、俺の婚約者なのだが……。
 俺も将来の夫婦生活を想像すると、なかなか辛い。

 捕虜数人を尋問したが、全員が口を揃えて言う。

『どこへ逃げたか知らない。逃げたことすら知らなかった』

 俺と黒丸師匠は、呆れて声を上げた。

「仲間にも知らせずに逃げたのか……」

「すがすがしいほどのクズである!」

 黒丸師匠や白狼族の特殊部隊員が、どこへ逃げたか色々と意見を言うが決め手に欠ける。
 空から探させるにしても、旧ミスル王国は国土が広い。

 ルーナ先生が、口を開いた。

「赤獅子族のヴィスは?」

「ヴィスですか? ヴィスなら作戦に参加していますが?」

「心当たりがないか聞いてみよう」

「なるほど!」

 赤獅子族のヴィスは、スターリンの共産主義革命組織に初期の頃から参加していた。
 逃亡先に心当たりがあるかもしれない。

 早速ヴィスを呼び出して、話を聞く。

「鉱山に戻ったんじゃねえかな……」

「鉱山?」

「ミスリル鉱山だよ。あいつは、ミスリル鉱山で組織を作って革命をおっぱじめたんだ。他に行くところもないだろう」

「なるほど! ミスリル鉱山に向かっていそうだな!」

 ミスリル鉱山は、モスクワの西にある。
 砂漠を横断した先だ。

 俺は、モスクワの西側を中心にスターリン捜索を命じた。
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