追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
353 / 358
第十一章 文明開化

第353話 海軍パイロット候補者教育課程

しおりを挟む
 俺と黒丸師匠は、ルーナ先生を放っておいて、海軍パイロット訓練校へ向かった。

 海軍パイロット訓練校では、海軍パイロット候補生が飛行機の操縦を学んでいる。
 入学の条件は、軍務経験があり、読み書きが出来る人族であることだ。

 水を怖がらなければ、人族以外でも良いのだけれど、現実的に人族しか入学希望者はいない。

 獣人は、水を怖がり。
 ドワーフは、鍛冶と酒にしか興味がない。
 エルフは、魔法使いや魔道具製作者になる。

 というわけで、海軍のパイロットになりたいのは、人族だけなのだ。

「おお! やってるのである!」

 王都キャランフィールドの外れにある飛行場で、飛行訓練が行われている。
 初心者訓練中を示すために翼を赤く塗ったグース五機が編隊を組み、空を駆けている。

 リス族の教官が異世界飛行機グースの前席に座り、後部座席に海軍パイロット候補生を乗せて実地で飛行機の操縦について教えているのだ。

 カリキュラムは、実地が中心だ。

 ・異世界飛行機グースの操作
 ・垂直離着陸機ブラックホークの操作
 ・長距離飛行訓練
 ・偵察飛行訓練
 ・戦闘飛行訓練
 ・飛行機の整備

 この飛行機関連のカリキュラムの後は、帆船での勤務がある。
 揺れる帆船で船酔いしたり、船員の邪魔になったりしないためだ。

 実際に帆船に乗り込み、帆柱に登り、ロープを引く。
 波に揺れる船上でもバランスを崩さないように、立って歩く。
 そんな基本的なことを学ぶ――いや、体に叩き込んでもらう。

 万一、帆船に馴染まない海軍パイロット候補生がいたら、通常のグース乗りになってもらえば良い。
 グースの販売を貴族たちに許可しているので、パイロットは引っ張りだこなのだ。

「アンジェロ少年。どのくらいの期間でパイロットを養成するのであるか?」

「目標は半年ですね」

「むむ……。長いのである」

 この異世界の感覚だと、長いのだろう。
 冒険者ギルドの研修なんて、数日だからな。

 ざっと教えて、『あとは実地で覚えろ!』というスタイルが、この世界では一般的だ。

 だが、海軍パイロットは、飛行機の操縦に加えて、船のこともわからなければならない。

 さらに、海上での航法も加わってくる。
 ラッキー・ギャンブルたちエルフがどういった魔道具を開発してくるかによるが、『目標のない海の上で、いかに飛行機を飛ばすか』を学ばなければ、海軍パイロットにはなれない。

 覚えなければならないことが多いのだ。

「半年でも短いと思いますよ」

「そうなのであるか? ふむ……」

 黒丸師匠は納得していないようだ。

 俺と黒丸師匠は、飛行場を後にして港へ向かった。


 港では、即戦力組が船に乗り込もうとしていた。
 即戦力組は五人だ。

 即戦力組は、グースのパイロット経験がある。
 全員貴族の息子で、自領でグースを操縦していた。

 ただし、技量はバラバラ。
 彼らが実戦で使い物になるかといえば、疑問符がつく。
 趣味的に遊覧飛行をしていた者もいれば、自領から王都へ、王都から自領へと長距離飛行の経験者もいる。

 それでも、五人全員が貴族子弟として高度な教育を受けているし、従軍経験があるのは、ありがたい。
 教育のための時間的コストと金銭的コストを大幅に節約できる。

 この五人が海軍パイロットの幹部候補だ!
 俺は五人に声を掛けて、船でしっかり学ぶようにと訓示を垂れた。

 今回の航海は、王都キャランフィールドの港をでて、いくつかの港を経由してギュイーズ侯爵の領都エトルタへ向かう。
 船は『愛しのマリールー号』、船長はウォーカー船長だ。

「や! アンジェロ陛下!」

「ウォーカー船長! 五人をよろしく頼みますね」

「ええ。船の流儀をバッチリ仕込みますよ。ただ、特別扱いは出来ませんけどね」

 ウォーカー船長には、船員の見習いとして扱って構わないと申し伝えてある。
 即戦力組の五人は貴族子弟だが、海の上ではちょっとしたことが原因で命を失いかねない。
 特別扱いはナシだ。

「その点は、五人によく言い聞かせてありますよ。蹴飛ばしても構いません。ただ、死なないようにして下さい」

 これから向かうのは、冬の海だ。
 落水したら低体温症で死にかねない。
 即戦力組五人をしごくのは歓迎だが、死んでしまっては元も子もない。

「任せて下さい!」

 ウォーカー船長は、自信満々で請け負ってくれた。

「ウォーカー船長。ギュイーズ侯爵の領都エトルタに着いたらどうする?」

「状況次第ですが、予定では西へ向かいます。戻りは冬の終わりか、春になるでしょう」

「わかった。よろしく!」

 冬の終わりから春……。
 それまでに新型機シーホークを開発して、帆船に搭載できるように船を改装しないと。
 かなりスケジュールが厳しい。

「アンジェロ少年は、忙しいであるな」

「ええ。それでも海軍パイロット訓練校が動き出したので、いくらか楽ですよ。それに海賊の被害も収まっていますし」

「ふむ。海賊も冬の海には勝てないのである」

 冬になり海が荒れている。
 海難事故を避けるため、交易船が減少する時期だ。

 その為だろうか、ここ一月、海賊の被害は報告されていない。

「海賊どもは、港に戻って、奪った金で一杯やっているのでしょう」

「けしからん連中である!」

 俺と黒丸師匠の声が苦い。

 海賊被害に対して、ギュイーズ侯爵は領地の船でパトロールを強化した。
 だが、海賊を捕まえることは出来なかった。

 海賊に逃げ切られてしまったのだ。

「まあ、春になって出てきたら絶対叩いてやりますよ!」

 俺は決意を強めた。

「さて、次は何であるか?」

「船を見に行きましょう! 旗艦ハルナの改装が進んでいるはずです」
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...