いきなり異世界って理不尽だ!

みーか

文字の大きさ
178 / 185

偶然

しおりを挟む
「ただいま~!」
「お帰り~。どうだった?」
「うん、やっぱり喉からの熱だったみたい。インフルエンザではなかったって。」
「そぅ、良かった。」
「あっ、改めてお礼に行くって言ってたよ。」
「そんなのいいのに……。礼儀正しい子だったわね。」
「本当に。何度もお礼言ってたよ。お父さんにも、服を貸してもらってありがとうって。」
「そうか。知ってる人だったのか?」
「知ってるというか、朝会社に行く時に乗るバスの運転手さん。顔は知ってたよ。倒れるまでわからなかったけど。」
「そうか……。」
「ご両親を早くに亡くして、一人暮らしだって言ってた。」
「そぅ……。」
「これも何かの縁だ。1人でどうにもならない事が起こった時は、相談しなさいと伝えてくれ。力になれるかもしれんからな。」
「わかった、ありがとう。」

 次の日バスに乗るともぅ山田さんが運転していた。大丈夫なのかなぁ?
 降りる時に、こっそり聞いてみたら、昨日薬飲んで昼からしっかり寝たら治ったって言ってた。

 木曜日が休みらしく、仕事から帰るとクッキーのセットが置いてあった。
「今日ね、流唯君が来たのよ。この前はお世話になりましたって。改めて見ると、すっごくカッコイイ子ね~。お母さん、ドキドキしちゃった。」
「あははは、わかる!!アイドルグループにいても違和感ないよね。」
「そうそう!目の保養~。」
「私も毎朝目の保養させてもらってる。」
 2人でキャッキャ言ってたらお父さんが帰って来た。
 クッキーを見せてお母さんが説明している。

 私は土日休みで、山田さんは木、日が休みらしい。
 金曜日バスから降りる時に、この前のお礼がしたいから日曜日、ランチを奢らせてほしいと言われた。
 そんなのいいのに……と断わろうとしてたけど、紙を渡され、山田さんも仕事中だから長話も無理で何も言えないままバスを降りた。
 最近、山田さんと話しているから女子高生の視線が痛い。時々、ババァのくせに!とか、釣り合うと思ってるの?とか聞こえてくる。
 そんな事、わかってるし!!余計なお世話だ!!

 会社の昼休みに紙を開いてみたら、待ち合わせ場所と時間が書かれていた。
 連絡先とか全く書いてないから、断るにしても行くしかない。
 なかなかやるな!!

 日曜日、約束の場所に11時に到着した。山田さんが先に来て待っててくれた。
「こんにちは。呼び出してごめんなさい。」
「こんにちは。特に用もなかったから……。でも、たいした事してないのに、かえって申し訳なくて。」
「知らない人を家まで連れて行って看病するなんて、たいした事です。俺、すごく嬉しかったんだ。」
「……そぅ?」
「うん。だから、せめて食事くらい奢らせてください。高級なものは無理だけど……。」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃいます。」
「はいっ!!」

 山田さんが連れて行ってくれたのは、ちょっとオシャレなイタリアンのお店だった。ランチのコースを予約してくれてたみたいで、美味しくいただいた。
「本当は、夜のディナーコースの方が豪華なんだけど……。安月給ですみません!」
「そんな!十分です。とっても美味しい!それにファミレスやハンバーガーとかでも十分ですよ!」
「あははは、じゃあ次は背伸びせずに、ファミレスにでも行きませんか?」
「えっ……。あっ、はい。楽しみにしてます。」
「やったー!じゃあ、連絡先教えてもらってもいいですか?」
「はい。」
 スマホを出して連絡先を交換し合う。
 その日は、ランチを食べ終わって少し公園で休憩してから家に帰った。
 改めて、名前も直接言ってなかった事にお互い気付いた。山田さんは、お父さん達が陽菜と呼んでいたから陽菜さんとしか呼べなかったのと、急に変えれないからそのまま呼んでいたようだ。確かに家の中にいたら表札も見えないしね。
 私は病院に付き添った時に山田流唯さーんと呼ばれたのを聞いて名前を知った。
 公園でベンチに座って、お互いの事を話した。
 山田流唯、23歳、バスの運転手。ご両親は、幼い時に亡くなり親戚の家に預けられたそうだ。これ以上迷惑かけられないからと高校卒業後一年だけ好きな車の免許を色々と取得して親戚の家を出て、一人暮らしをしているそうだ。
 親戚の家では、それは大切にされたようで、特におばさんと娘さんには良くしてもらったと言っていた。

 家に帰って、部屋でゴロゴロしながら山田さんの顔を心のシャッターで撮りまくったのを思い出しながら、ニヤニヤしていたら、スマホのメッセージアプリに山田さんからのメッセージが届いた。
『今日は、楽しかったです。今度はファミレスに行きましょう。』
『私も楽しかったです。ファミレス楽しみにしてます。』
 今日は、幸せな気分で布団に入って、ぐっすりと寝た。
 翌朝、また夢を見たようでにっこりと笑いながら「ルイ君!」と言う自分の声で目が覚めた。
 やっぱり内容は全く覚えてないけど、ルイ君と叫んだのは覚えてる……。山田さんの夢だったのかな?欲求不満なのかも……。でも、昨日目の保養は十分にさせていただいたはずなのに。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

処理中です...