散る花火と現れた星

くるみ

文字の大きさ
8 / 11

15日 覚悟

しおりを挟む
 陽奈は、風馬の家に向かっていた。そして、四年前の夏祭りの事を思い返していた。

 「あああ~!空さんの事思い出したのはいいけど、どんな顔して会えばいいんだろう⁈恥ずかし過ぎて、おじさんの顔すら見れないよ!ああ~!ここまで来たけど、どうしよう!」

 陽奈は、頭を抱えて唸った。

 「でも、今日もいるかな?風馬のお父さん」

 
 風馬の家の前に着くと、車庫の前を掃き掃除をしている風馬の父がいた。
 
 「あれ?陽奈ちゃん。今日もどうしたんだい?」

 立っていた陽奈に、風馬の父が気づいた。
 陽奈は、頭が真っ白になった。おじさん=空と捉え、何から話したら良いかパニックになった。

 「風馬はまだ寝てるよ。何時に帰って来たんだか、夜中騒がしかったなぁ。」

 二人の間に沈黙が流れた。陽奈は、風馬の父と空が入れ替わらない事に焦った。

 「風馬呼んで来ようか?」

 陽奈は首を振った。なかなか、空に切り替わらない。
 陽奈は、頭を下げ、帰ろうとした。

 「陽奈ちゃん!」

 陽奈は振り返り、安堵した。

 「空、さん?」
 「ごめんね。なかなか、切り替えられなくて」
 
 陽奈は、首を横に振った。

 「今日はどうしたの?」
 「あ、あの。私、空さん、の事。思い、出せ、ました」
 「えっ⁈本当に?いつ、思い出したの?」
 「一昨日、風馬と、花火を、見た時。役場裏の」
 「あぁ、そうだね。あそこで一緒に花火を見たね」

 空が恥ずかしいそうに、頭をかいて、視線を外した。陽奈も、恥ずかしくなり下を向いた。
 気温が上がり始め、ジリジリと蒸し暑くなって来ていた。しかし、穏やかで、昔懐かしい雰囲気をお互いに感じていた。

 「あ、あの。昨日、気になる、事を、聞いて」
 「昨日?あ、昨日、成人式だったね!おめでとう。大人の仲間入りだね」

 陽奈は、小さく頭を下げた。

 「それで、気になる事って何?」
 「野中、涼介、って知って、ますか?」
 「知っているよ。涼介は、同級生だから」
 「その、人が、事件の、犯人、じゃないか、って。その人の、妹が風馬に、振られて。逆恨みで、私を、殺したって」
 
 空の表情から笑みが消え、曇り出した。

 「残念だけど、その情報は嘘だ」
 「え?」
 「俺と涼介は同じ高校に通っていて。事件があった日、俺と涼介は課外授業があって、一緒にいたんだ。だから、涼介はシロだ」
 「じゃあ、誰が?」
 「俺も、告白の話を涼介から聞いていたよ。かなり、憤慨していたけど、人を殺す程自制心がない奴ではないよ」
 
 二人の間に、重い沈黙が流れた。

 「陽奈ちゃん。話変わっちゃうんだけど…俺、そろそろダメかもしれない」
 「え?」
 「今日、なかなか父さんから切り替われなくて。もしかしたら、俺の体が限界に近いのかもしれない。最期に、陽奈ちゃんと話せて嬉しかったよ。しかも、俺の事思い出してくれた。ありがとう、もう思い残す事はないよ」

 空の目には、涙が滲んでいた。いつ来るか分からない、死を覚悟していた。

 「風馬の事、許してほしい」
 「だめ。私、本当の、空さんに、会いたい」
 「風馬は、ノリは軽いけど、本当は一途なんだ。負けず嫌いだけど、物事をポジティブに捉えて…」
 「風馬の、事は、知ってる。空さん」
 「…陽奈ちゃん」

 陽奈は、自宅に急いで帰った。散らかしていた荷物を大急ぎでまとめた。

 「やっと、空さんの事思い出したのに。空さんと少しだけど、話せるようになったのに。こんなタイミングで居なくならないでよ!」
 急に携帯が鳴り出した。風馬からの着信だった。

 「この、忙しい時に!間が悪いんだから!もしもし!」
 「もしもし、陽奈?俺んち来たの?」
 「別に大した用じゃないから戻ったの。あ!私、明日帰るね。」
 「え⁈もう帰るの?」
 「用事が出来てね。じゃあ、また連絡…あっ!待って。成人式の時、私、大樹と話してたじゃん。その時、事件の犯人が恵の兄貴じゃないかって聞いたんだけど」
 「ああ、俺もそう思う」
 「でも、恵の兄貴じゃないと思うんだ」
 「どうして?」

 陽奈は、一瞬止まった。今、空は風馬の父の中に憑依している状態。説明しても信じてもらえないし。信じても、死にかけてるとは言えない。
 
 「友達のお兄さんが、恵のお兄さんと一緒にいたんだって」
 「友達って誰⁈」
 「それは言えない。言わないでって言われたから」
 「そっか。そうだ。明日、帰るなら、駅まで送ってくよ」
 「いいの⁈ありがとう!時間分かったら、連絡する」
 
 電話を切り、再び作業に戻った。30分位で荷物をまとめ終えると、また携帯が鳴った。

 「もしもし?」
 「もしもし。陽奈。俺、大樹だけど」
 
 陽奈は、驚いて声が出なかった。いつもは、風馬や夏美、家族以外の着信は出ないようにしていた。しかし、30分前に風馬と電話をしていた為、また風馬だと勘違いし、電話に出てしまった。

 「話したい事があるから、今陽奈の家に行くから」
 
 電話はすぐに切れた。

 「え?何何⁈どうゆう事?話したい事って何⁈うちに来るって、どうしよう!」

 5分後再び電話がかかって来た。

 「もしもし、今家に着いたけど来れる?」
 「…うん」

 間髪入れずに状況が進み、陽奈の頭はついて行けない。何を言われるのか、何をされるのか検討もつかない。諦めの境地の中、力無く返事をした。
 外に出ると黒の軽自動車が止まっていた。
 運転席の窓が空いた。

 「乗って」

 大樹が助手席を指した。何をされるか分からない、陽奈の手は震えていた。助手席に乗り込むと車が動き出した。
 見覚えのある道を進む。そして、陽奈達が通っていた中学校に着いた。
 大樹が車から降りた為、陽奈も車を降りた。

 「風馬から聞いたけど、あの証言って、本当なの?」
 
 陽奈は、あの証言と聞いてすぐにピンと来て頷いた。
 
 「そうか。仮説を立てて、涼介を犯人に仕立ててたんだけど。アリバイがあったんだ」
 
 陽奈は眉をひそめた。

 「別に、あいつに恨みはないけど。犯人に仕立てるには丁度良かったんだ」

 陽奈の心臓が、バクバクと力強くなった。

 「何言ってるんだって思うだろ?四年前、陽奈を殺そうとしたのは、俺だよ」

 陽奈の顔から血の気が引いた。目の前にいる同級生が本当の犯人だったから。

 「俺、中2の時、カバンやジャージを隠された事があったんだ。女子から、キモオタとかガリ勉とかキモがられたし。物を隠す陰湿な事って、女子の十八番だろ?」

 「当時女子のリーダーは陽奈だったろ?あれ、陽奈がやったんだろ?それか、指示出してたんだろ?」
 
 「ちっ」

 陽奈は否定しようとしたが、声が出なかった。

 「いじめられた気分はどうだった?女子のリーダーが、人と話せない位落ちたもんなぁ」
 「違う!!」

 陽奈は大声で叫んだ。何年振りだろうか。久しぶり過ぎて、一瞬頭が真っ白になった。

 「違う。私じゃ、ないよ」
 「じゃ…じゃあ、誰がやったんだよ」

 陽奈の久しぶりの大声に、大樹も動揺していた。

 「分から、ない。でも、私じゃない!私、大樹の事、キモいとか、思った事、ないよ」
 「…そんなの知るかよ。さぁ、どうする?犯人はここにいる。今まで傷つけられた分の慰謝料を請求するか、警察に連れて行くか。俺的には、慰謝料で解決したいけど」
 「嘘だ。犯人は大樹じゃない。だって…」
 「まぁ、そうゆう事だから。考えといて。じゃあ。」

 大樹は、車に乗り込み走り去った。
 残された陽奈は、立ち尽くした。

 「大樹、仲良くしてたのに。信じてたのに」

 陽奈は、友人の裏切りに心が耐えきれず、しゃがみ込んだ。

 

 
 
 






 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...