チョコレートの木

黄色いウサギ

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チョコレートの木

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私が小学校にあがる直前頃、家庭の都合で私は祖母の家に預けられていました。

祖母は無条件で優しく、笑顔を絶やさない温かい人でした。

祖母の家の庭には、
梅の木、イチジクの木、ザクロの木、ビワの木…
果実の生る木がさっそうと植えられていて季節の果実が私のおやつでした。

もちろん、それだけではなくて、甘いかりんとうや、八百屋で買って来たスイカも食べていました。

スイカは決まって縁側に座って食べました。
種は、プププッ…と庭に吹いて捨てていました。

すると、スイカの芽が出てきます。

祖母は「スイカは育てるのが大変やけえ…」と言って、出て来た芽を雑草と一緒にむしっていました。

ある時、「ばーちゃん、これ何ね?」
「どげんした?」

私が見つけたのは、普段、祖母から「針が刺さるから触ったらいけん」と言われていたサボテンです。
そのサボテンから何か、にょきにょきと伸びているのを見つけたのです。

「なんじゃろねえ?」
「なんやろうねえ?」

昼になると、にょきにょきと伸びたその先にあっと言う間に花が付き、大きくて鮮やかなオレンジ色の花を咲かせました。

「すごいねえー!」
「きれいやねえー!」

でも、その花は翌日には枯れてしまいました。

ある日のおやつはアーモンドチョコレートでした。
私はあのチョコが大好きでした。

そして、チョコだけを舐めて、中のアーモンドを残して庭に埋めました。

幼かった私はアーモンドチョコレートの中のアーモンドを「チョコレートの種」だと思っていたのです。

飽き性の私でしたが、毎日毎日、忘れずに水をあげました。
私の頭の中では大きな木にたわわに生ったアーモンドチョコレートがありました。

でも、芽は出ません。

「出んねぇ…」

それでも毎日、水をあげました。

近所の友達と遊んで帰ると、祖母がラーメン用の丼に山盛りのアーモンドチョコレートが入っているのを目を細めて見せてくれました。

「ばーちゃん!生ったん?」
私は大慌てで庭に出ました。

でも、アーモンドチョコレートの木はありません。

「無い!チョコレートの木が無い!どげんしたと?」

祖母は優しい声で
「すぐに枯れてしもうたんよ」
と言いました。


毎日せっせと水をやっている私についた祖母の優しい嘘だと分かったのは、もう少し大きくなってからでした。
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