1 / 1
チョコレートの木
しおりを挟む
私が小学校にあがる直前頃、家庭の都合で私は祖母の家に預けられていました。
祖母は無条件で優しく、笑顔を絶やさない温かい人でした。
祖母の家の庭には、
梅の木、イチジクの木、ザクロの木、ビワの木…
果実の生る木がさっそうと植えられていて季節の果実が私のおやつでした。
もちろん、それだけではなくて、甘いかりんとうや、八百屋で買って来たスイカも食べていました。
スイカは決まって縁側に座って食べました。
種は、プププッ…と庭に吹いて捨てていました。
すると、スイカの芽が出てきます。
祖母は「スイカは育てるのが大変やけえ…」と言って、出て来た芽を雑草と一緒にむしっていました。
ある時、「ばーちゃん、これ何ね?」
「どげんした?」
私が見つけたのは、普段、祖母から「針が刺さるから触ったらいけん」と言われていたサボテンです。
そのサボテンから何か、にょきにょきと伸びているのを見つけたのです。
「なんじゃろねえ?」
「なんやろうねえ?」
昼になると、にょきにょきと伸びたその先にあっと言う間に花が付き、大きくて鮮やかなオレンジ色の花を咲かせました。
「すごいねえー!」
「きれいやねえー!」
でも、その花は翌日には枯れてしまいました。
ある日のおやつはアーモンドチョコレートでした。
私はあのチョコが大好きでした。
そして、チョコだけを舐めて、中のアーモンドを残して庭に埋めました。
幼かった私はアーモンドチョコレートの中のアーモンドを「チョコレートの種」だと思っていたのです。
飽き性の私でしたが、毎日毎日、忘れずに水をあげました。
私の頭の中では大きな木にたわわに生ったアーモンドチョコレートがありました。
でも、芽は出ません。
「出んねぇ…」
それでも毎日、水をあげました。
近所の友達と遊んで帰ると、祖母がラーメン用の丼に山盛りのアーモンドチョコレートが入っているのを目を細めて見せてくれました。
「ばーちゃん!生ったん?」
私は大慌てで庭に出ました。
でも、アーモンドチョコレートの木はありません。
「無い!チョコレートの木が無い!どげんしたと?」
祖母は優しい声で
「すぐに枯れてしもうたんよ」
と言いました。
毎日せっせと水をやっている私についた祖母の優しい嘘だと分かったのは、もう少し大きくなってからでした。
祖母は無条件で優しく、笑顔を絶やさない温かい人でした。
祖母の家の庭には、
梅の木、イチジクの木、ザクロの木、ビワの木…
果実の生る木がさっそうと植えられていて季節の果実が私のおやつでした。
もちろん、それだけではなくて、甘いかりんとうや、八百屋で買って来たスイカも食べていました。
スイカは決まって縁側に座って食べました。
種は、プププッ…と庭に吹いて捨てていました。
すると、スイカの芽が出てきます。
祖母は「スイカは育てるのが大変やけえ…」と言って、出て来た芽を雑草と一緒にむしっていました。
ある時、「ばーちゃん、これ何ね?」
「どげんした?」
私が見つけたのは、普段、祖母から「針が刺さるから触ったらいけん」と言われていたサボテンです。
そのサボテンから何か、にょきにょきと伸びているのを見つけたのです。
「なんじゃろねえ?」
「なんやろうねえ?」
昼になると、にょきにょきと伸びたその先にあっと言う間に花が付き、大きくて鮮やかなオレンジ色の花を咲かせました。
「すごいねえー!」
「きれいやねえー!」
でも、その花は翌日には枯れてしまいました。
ある日のおやつはアーモンドチョコレートでした。
私はあのチョコが大好きでした。
そして、チョコだけを舐めて、中のアーモンドを残して庭に埋めました。
幼かった私はアーモンドチョコレートの中のアーモンドを「チョコレートの種」だと思っていたのです。
飽き性の私でしたが、毎日毎日、忘れずに水をあげました。
私の頭の中では大きな木にたわわに生ったアーモンドチョコレートがありました。
でも、芽は出ません。
「出んねぇ…」
それでも毎日、水をあげました。
近所の友達と遊んで帰ると、祖母がラーメン用の丼に山盛りのアーモンドチョコレートが入っているのを目を細めて見せてくれました。
「ばーちゃん!生ったん?」
私は大慌てで庭に出ました。
でも、アーモンドチョコレートの木はありません。
「無い!チョコレートの木が無い!どげんしたと?」
祖母は優しい声で
「すぐに枯れてしもうたんよ」
と言いました。
毎日せっせと水をやっている私についた祖母の優しい嘘だと分かったのは、もう少し大きくなってからでした。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。
桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。
それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。
でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。
そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
青色のマグカップ
紅夢
児童書・童話
毎月の第一日曜日に開かれる蚤の市――“カーブーツセール”を練り歩くのが趣味の『私』は毎月必ずマグカップだけを見て歩く老人と知り合う。
彼はある思い出のマグカップを探していると話すが……
薄れていく“思い出”という宝物のお話。
人柱奇譚
木ノ下 朝陽
児童書・童話
ひたすら遣る瀬のない、救いのない物語です。
※デリケートな方は、閲覧にお気を付けくださいますよう、お願い申し上げます。
昔書いた作品のリライトです。
川端康成の『掌の小説』の中の一編「心中」の雰囲気をベースに、「ファンタジー要素のない小川未明童話」、または「和製O・ヘンリー」的な空気を心掛けながら書きました。
ユリウスの絵の具
こうやさい
児童書・童話
昔、とある田舎の村の片隅に売れない画家の青年が妻とともに住んでいました。
ある日その妻が病で亡くなり、青年は精神を病んでしまいました。
確か大人向けの童話な感じを目指して書いた話。ガイドラインから児童書・童話カテゴリの異世界禁止は消えたけど、内容・表現が相応しいかといわれると……うん、微妙だよね、ぶっちゃけ保険でR付けたいくらいだし。ですます調をファンタジーだということに相変わらず違和感凄いのでこっちにしたけど……これ、悪質かねぇ? カテ変わってたり消えてたら察して下さい。なんで自分こんなにですます調ファンタジー駄目なんだろう? それでもですます調やめるくらいならカテゴリの方諦めるけど。
そして無意味に名前がついてる主人公。いやタイトルから出来た話なもので。けどそもそもなんでこんなタイトル浮かんだんだ? なんかユリウスって名前の絵に関係するキャラの話でも読んでたのか? その辺記憶がない。消えてたら察して下さい(二回目)。記憶力のなさがうらめしい。こういうの投稿前に自動で判別つくようにならないかなぁ。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる