恋文配達人

ときしろ めぐみ

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「待って、日向野さん!」
 校門を出たところで伝子は後ろから誰かに呼び止められた。
「あ……」
 振り返ると、そこには裕二が立っていた。
「み、水谷さん?」
 伝子は声をうわずらせ、さっきの体育館裏での出来事を思い出し、夕日よりも真っ赤な顔になる。それに構わず、裕二が少し震えを含んだ声で続けた。
「あのさ……」
「は、は、はい」
「オレ、『恋文配達人』から手紙を受け取ったんだ。今日」
 言うまでもなく伝子のことなのだが、なぜわざわざそんな風に本人に言うのか伝子は理解できなかった。
「真穂からこの話を聞いたとき、『お、オレにもついにラブレターをくれる女の子が現れたのか』ってすごく舞い上がっちゃったよ」
 裕二も夕日に照らされているせいか少し赤くなっているように見える。
「それでさ、『恋文配達人』に返事を頼もうかと思うんだ」
「え……私にですか?」
 普通、手紙を渡すことだけが伝子の仕事だ。だから返事は請け負ってはいない。それをなぜ、伝子に頼んでくるのだろう? 伝子がそんなことを考えていると、裕二は手に持った何かを差し出してきた。
「これって……」
 それは昨日、伝子が裕二に貸した黄色い傘だった。それを、裕二は雨も降っていないのに突然開いて、自分と伝子の頭上に差した。二人の上に黄色いひまわりの花が咲く。
「これが、オレの返事。……受け取ってくれるかな、日向野さん」
 突然の裕二の行動に、しばし、ぼーっとする伝子。何が何だか訳が分からない。その時、ふと裕二の手を見ると、見覚えのある便箋が握られていた。それは、一度くしゃくしゃになっていたものをアイロンで綺麗に伸ばしてあるようだった。そして、そこに書かれた文字は、まぎれもなく伝子自身の字だった。
「あ……」
 それに気づいた伝子の顔がさっきよりもさらに赤くなる。心臓が今までに感じたことのないくらいのスピードでドキドキしていて壊れそうだ。それでも、なんとか勇気を出して、声を絞り出す。
「は……はい。確かに受け取りました……。必ず……必ず伝えます……」
 伝子が顔を上げて裕二を見ると、照れくさいのか、顔を紅しょうがのように赤くして、あっちの方向を向いていた。それを見て、伝子はクスリと笑った。

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