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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

ルパとお菓子屋さんへ

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「あと、こっちが金貨四◯枚です」

 テリアさんは袋を僕に手渡してきた。袋の口を開けると金貨が入っている。なぜか凄い安心してしまう。

「あの。Bランク冒険者のグラスさんが大量の角ウサギの素材を持ってくると思うので、全部グラスさんの功績にしてあげてください」

「え?」

「僕はお金さえもらえれば何も要らないので。あと、角ウサギの素材は全部この街のために使ってください。今、これ以上お金を持っても僕達には使いどころがないので」

「ちょ、一気に言われてもわかりませんよ。一つ一つちゃんと説明してください。あと、ギルドカードに持って来てくれた素材を記載しないといけないので、貸してください」

「は、はい。わかりました」

 僕はギルドカードをテリアさんに渡し、出来るだけ事細かに説明した。

「ニクスさん……、ほんとにお人よしなんですね。まぁ、いいですよ。強いから色々と余裕が持てるのもあると思いますし」

「いやいや、僕は強くないんですよ。この子が強いだけですって。僕一人ではとても倒しきれる数じゃありませんでしたから、召喚獣様様ですよ」

「この子、ほんとうに召喚獣なんですか? どの資料を見ても赤色のヒヨコの召喚獣なんて乗っていませんでしたよ」

 テリアさんは眼を細め、プルスを見る。

「ぴ、ぴよ~。ぴよ~」

 プルスはヒヨコの真似をして誤魔化していた。

「ま、まぁ。召喚獣ってことにしておいた方がわかりやすいじゃないですか。僕もたまたま契約できたのでよくわかっていないんですよ」

「ほんとよくわからない人ですよね、ニクスさんって。フランツから来たんですよね。わざわざこんな偏狭の土地まで。どれだけの距離があるかわかっていますか?」

「僕は船で海を渡って来たんですよ。でも、相当遠いとはわかっています。ほぼ家出同然でやってきましたから」

「家出……。えっと、ニクスさんはルークス王国の王都の騎士養成学校を卒業しているんですよね?」

「はい、一応……」

「なのに無職ってよくわからないんですけど。王都の騎士養成学校なんて入ろうと思っても中々入れない超名門校じゃないですか。そこを卒業しているのなら各所から引く手あまたの状態だったのではないですか?」

「何ていうかその……、運よく入って運よく卒業出来た感じなので……」

 僕は事実を答えるも、テリアさんは信じてくれない。

「そんな都合よく運が続くわけないじゃないですか。もう王都の騎士と言ったら超絶優秀で全女性の憧れの的なんですよ。給料もよくてモテモテじゃないですか。私だってニクスさんが無職じゃなかったら飛びついてましたよ」

「はは……。まぁ、僕は騎士という本分じゃなかったんですよ。それよりも自分のやりたいことの方が何倍も重要だったんです」

「やりたいこと? 将来の安定を捨てて、何がしたかったんですか?」

「したかったというか、就職できなかったというか……。その、僕にはいろいろと性格に問題がありまして……」

「問題? ニクスさんにですか?」

「ニクスは変態。私の裸を見たり、お尻触ったり、耳と尻尾撫でまわしてくるの……」

 ルパはギリギリ本当のことを言っていたが、語弊がある。

「え……」

 テリアさんは露骨に引いていた。

「い、いや。不可抗力なんですよ! であった時はルパが服を着ていなかっただけですし、持ち上げる時にお尻に手を当てただけですし、尻尾と耳は可愛かったから触っただけです」

「最後だけ私情な気がするんですけど……」

「最後のは……、私情ですけど……」

「でも、ニクスさんって子供っぽいのが好きなんですか?」

「え? いや、そういう訳でもないですけど。普通に大人の方も好きですよ」

「ぺったんこでもいいんですか?」

「何がですか?」

「いや、その……。別に……」

 テリアさんは僕から視線を逸らせ、挙動不審になっていた。いったい何を考えているのか僕には全くわからない。

「じゃあ、僕達はそろそろ行きますね。あんまり長居しても意味ないですし。また、オリハルコンが必要になったら取ってきますから僕に言ってください」

「わかりました。ではまた来てくださいね」

「はい。月に一回は顔を出そうと思います。では、騎士団には気をつけてくださいね」

「そうですね。コルトさんのおっしゃっていたことが本当なら、あまり信用しない方がよさそうです。あと、グラスさんにはお説教と謝罪をしておこうと思います」

 僕達はギルドから出て、お店のある通りに向った。傭兵のおじさんが避難していた人たちに声をかけて行ったおかげか人が街中に戻って着ていた。

「うぅ……。人、いっぱい」

 ルパは僕の体にくっ付き身を震わせている。

 人に囲まれるのはまだ怖い様だ。

 僕だってルパと同じ状況なら恐怖するはずだ。

 どれだけ人に慣れていたとしても多くの人に囲まれるのは結構怖い。いったいどこで何が起こるのかわからないと言うのも恐怖を助長してくる。

 僕は人ごみを抜け、砂糖菓子の売っているお店に来た。ルパとの約束を果たさなければならない。

「スンスン……。甘い匂い……。甘いお菓子」

「気づくのが早いな。そうだよ。さ、ルパの好きなお菓子を買おう」

 僕はお店の中に入り、砂糖菓子を見て回る。お店の人がいなかったがもうすぐ帰ってくるはずだ。それまで待っていればいい。丁度人もいないのでルパも自分の好きなお菓子を見て回れるはずだ。

「ルパ、どれを買うか決めた?」

「これにする」

 ルパは金平糖ではないお菓子を手に取っていた。

「カステラか。いいの選ぶね。でも、金平糖じゃなくてよかったの?」

「金平糖は……いい。ニクスに勝ったらいっぱい食べられるから。今はこれにする」

 ルパは紙に包まれている角材のような形のカステラを僕に渡してきた。

「えっと、値段は……、金貨一枚。高い……。けど、ルパとの約束だから仕方ないな」

 僕は店員さんが戻ってくるまで待っていた。すると勢いよく走ってくる人がいたのでその人が店員さんだと思い、カウンターに向う。

 案の定店員さんで息を切らしてお店のカウンターに立っていた。

 僕はカステラを手渡し、金貨一枚と交換する。

 紙袋に入れてもらい、僕達はお店の外に出た。
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